店番をしていたら、「金の積み立て」の女性営業が来た。
年の頃は20代前半、器量は、というと、まあ35点くらいってトコで、正直なところ、とり立てて美人でも可愛くもなかった。
私が「おカネも無いし興味も無いよ」、と断っているのに、なかなか出て行かない。「おカネが無い、ってことはないですよね。凄い時計もしているし」、などと失礼なことを言う。おおかた会社で「先ず、相手の時計を見ろ」とでも教育されているんだろう。
「ああ、これ、イミテーションだから。香港で1万で買ってきた贋物だよ」と言ったのだが、「不動産屋さんだし、ホンモノなんでしょ?」と迫る。ホンモノと認めれば「おカネ持ってるじゃないですか」と勧められるから嘘をついたのだが、私も「ホンモノであるのに贋物」と言ったのは初めてのことである。いや、「贋物をホンモノ」と言ったこともないのだが。ま、それはこの際どうでもよい。
その彼女が、いきなり話題を変えて、こう言ったのである。
「私、こう見えても『ミスさくらんぼ』だったんですよ」
(ほえ!?ホントかよ!、で、金の営業とどういう関係あんだよ!?)
「ミスさくらんぼ」だと言えば、客が有り難がって喜んで契約する、とでも思っているのだろうか。いくら私がスケベでも、女性に関しては食べ物以上に「偏食」や「食わず嫌い」ってモンがある。
これが、誰が見ても「可愛い」と思える女性なら納得いくが、そうではないから、どこの「ミスさくらんぼ」だったのか訊きたくなる。
どうにか断りきってお帰り頂いたが、出て行って直ぐに、PCで「ミスさくらんぼ」を検索したのは言うまでもない。もし本当に本家本元の山形での「ミスさくらんぼ」だったなら記録が残っているハズである。置いていった名刺の苗字はとても珍しく、まだ独身だろうから姓は変わってないだろうし、と思って7〜8年位前まで遡って調べたが出てこない。ミスでも準ミスでも見当たらなかったのだ。
かといって、彼女が嘘を言っているとも思えなかったから、どこかで引っ掛かってはいるんだろう。だが最近は「ご当地ミスコン」も応募者が減っていて、「応募者27人の中から選ばれました」なんて大会のニュースも耳にする。「オイオイ」というグランプリもいる。
で、考えた。
彼女は自分が美人だと思っているのだろうが、世の中、受賞者が「私は○○を受賞しました」などと自慢することがコンクールの権威を損ねることに繋がってしまうケースもあるだろう。なまじ言わないほうが得策、ということもある。私は「嘘でしょ」という言葉を飲み込んだが、そのうち誰かから突っ込まれないとも限らない。
少なくとも、私の中では「ミスさくらんぼ」の価値は暴落している。


