2015年11月19日

こんな外国人もいるもんだ・・・

これは先月、住宅新報さんで書かせて頂いた記事だが、ネットブログでも書いておきたい。


店番をしていたら、誰かが静かに入ってくる気配が・・・。

たどたどしい日本語で、「ワンルームでもいいです、お部屋を紹介してください」と言う。

年齢は私より少し若いくらいのご婦人で、椅子に掛けるよう勧めて、ゆっくり「お国はどちらですか?」と訊くと、予想していた通り「フィリピンです」とのこと。日本には22年もいて永住権もあるとか。

「今度、〇〇〇で働きます。おカネはあまりありません。保証人を頼める人もいません。寝起きできればいいです」と言う・・・。駅前の大手不動産会社に行ったのだが、連帯保証人が要る、とか、保証会社の審査が通らないかも、と言われて、商店街をぶらぶら歩いて、うちの店に入ってきたようだ。

ゆっくり、部屋探しをすることになった経緯やご事情を伺って不覚にも涙が出てしまった。と言うより、一緒に泣いてしまっていた。壮絶な苦労をなさっていて、頭にバカが付くくらいに正直な人である。

日本人のご主人と結婚して22年、ご主人は2度の脳梗塞で具合が悪く、その面倒を見るのが嫌で別居する、というのでなく、むしろ逆、と言ってもいいくらいの話であった。息子さん二人は現在フィリピンにいて、下の息子さんは向こうでバイクの事故に遭って左足の膝から下を切断していて、今も病院に通っている。日本から「良い薬」を送ってあげたいのだが規制の壁に阻まれて思うに任せない、とのこと。

ご主人は私と同年であった。喧嘩したワケでも、看病が嫌でもなく、仲が良いのに別居する・・・、

理由を訊くと、ご主人が生活保護を受けることになって、「自分はそれが嫌だった」とのこと。生活保護を受けることを潔しとしていないのだ。他にも「いろんな制約を受けるのが辛い」とも言っていて、「片意地を張らないで福祉のお世話になることも生き方の一つだし、自立できる時が来たら辞退すれば良い」と伝えたが、「生活保護を受けるのは恥」だと言って聞かない。今時、日本人にもいないタイプだ。

昭島の友人のアパートにいて、そこだって、いつまでもお世話になっているワケにはいかない。

別居していても頻繁にご主人のアパートを訪ねて、洗濯や食事の世話もしている。ご主人からも周りの人からも母国に帰ることを勧められるが、「病気の主人を置いてはいけない」と頑なに言う。3度目の脳梗塞があったらおそらく助からない、と知っていて、だからフィリピンには帰れないでいるのだ。

「本当はフィリピンに帰りたい」と言っていて、病気のご主人と怪我の息子さんとの間で板挟みになっているようだ。私が「日本に来て大変な苦労をなさいましたね」と声を掛けたら抑えていたものが溢れた。

世の中に生活保護を食い物にしている輩は多いが、福祉のお世話にならずに自分の力で生きたいと言う。だが、部屋を借りるためにも「先立つもの」が無い。手持ち資金は6万くらいで、月末にパートの賃金が6万くらい入ると言う。足して12万では部屋を借りるのもしんどいし生活が出来ない。

そこで、「私が一緒に社会福祉事務所に行って差し上げます。もしかすると救済制度があって、契約金の補助が受けられるかもしれませんよ。先ず率直に相談してみて、ダメだったなら改めて考えましょう。生活保護ではありませんから気にしなくていいですよ。私は社協の人たちとは仲がいいから任せてください」と言って、週明けに一緒に相談を受けに行くことにした。

その結果を受けて、どういう部屋を紹介したらよいか一緒に考えたいと思っていたのだが・・・、

予め社協には電話して概略も話しておいたが、結局は行かないことになった。どうも「社協に相談に行く=生活保護を受ける」と思ってしまったようだ。そうじゃない、と、よく説明したんだけど・・・。

再び、店に寄ってくれた際、現在の状況では部屋探しは困難であることから、ご主人と一緒に生活保護を受けることを勧めると、「ちょっと考えさせてください」とのこと。

帰りに缶コーヒーを2本渡そうとしたら「1本でいいです」と言って頑として1本しか受け取らない。まあ、そういう人である。だから精一杯お力になりたいと思う。

しばらく顔を出さなかったが先週フラッと来店した。「どこの不動産屋さんに行っても『部屋探しは無理』だと断られました」と言う。友人のアパートからも出て、今は再びご主人と暮らしているとか。だが、あの様子では、一人分(単身者)の生活保護費しか受け取っていないのではなかろうか・・・。

それでも相変わらず一人暮らしは諦めていない。私なんかよりずっと頑固、江戸時代の武士なみである。その頑なさには閉口するが、「世間様にご迷惑は掛けられない」という一途な思いには共感するし、この人なら家主さんや管理会社に迷惑を掛けることは無いだろう。困難な部屋探しだからこそ力になりたいと思う。「遠く祖国を離れて日本に来て本当に良かった」と思ってもらえるように。

ちなみに携帯電話は持っているがプリペイドで着信専用にしていて先方から連絡してくる時は公衆電話。なので、私が財布の中に(何かの時の為に)いつも入れているテレホンカードを差し上げた。今回も缶コーヒーは1本しか受け取らない。きっと自分では飲まずにご主人に渡していることだろう。




posted by poohpapa at 05:40| Comment(12) | お客さん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする