うちの管理物件の入居者である老婦人から電話があった。
「相談したいことがあるから来てちょうだい」とのこと。ここ数年は何かあれば私を呼びつける。家賃も振り込みでお願いしているのだが、ATM の使い方がよく分からないからと現金で届けていて、最近は私に集金に来させる。店からは徒歩10分くらいだが、駅と反対方向なので「ついで」が無いと辛い。
「20年以上の付き合いだから、それくらいしてくれて当然」と思っていて、「それが顔に出ている」のでなく、そう言われている。「申し訳ない」とも言うが、「してくれて当然」という気持ちのほうが強く出ているから、同じことをさせられても、「喜んで頂ければ私も嬉しい」にはならない。
一人暮らしで、以前も入院していた際に、私に「オタクに預けてある合鍵を商店街の〇〇屋さんに届けてちょうだい。着替えなんかを届けてもらいたいから、お願い」と電話してきたが、どうやら相手に話を通していないようで、それだとトラブルになるから「先方に話を通してから再度電話ください」と言うと、「私の頼みだと言えば断らないから大丈夫」と言って聞かない。押し問答の末、「じゃあもういい!」と癇癪を起こされて電話を切られたことがある。その後はしばらく音信不通になっていた。
で、用件は「市役所から届いた書類の意味が解からないから見てちょうだい」というもの。急ぐ内容ではなさそうなので「今度そっちに行くついでに寄りますから」と伝えたが、もう一つ、大事な用件があった。
「オタクの奥さん、ダイヤのネックレスなんかする?」と訊く。「うちのは宝石は欲しがらないし金属アレルギーなので着けないですね」と言うと、「ダイヤのネックレスの一本くらい持っていたっていいじゃない、女の人なんだから」と言うが、うちのは本当に宝飾品には興味が無い。何度かブローチをプレゼントしたけど、それも着けていないほど。うちのはノルンにしか関心が無い。
老婦人が言いたいことは判っている。
「再来月の更新料が払えないから、私のダイヤのネックレス、買い取ってくれないかなあ・・・」ということ。ほうらおいでなすった、である。その老婦人がイミテーションを持っているとは思わないが鑑別書は無いと言うし、私に「宝石を喜ぶ愛人」でもいれば話は別だが今はいない。と、見栄を張ってみる (^◇^)
私の娘も「カネに換えられるかどうか」ということでしか興味は無いだろうし。
「とにかく見てちょうだいよ」とのことで、仕方なく行ってきた。役所の書類は簡単に説明できたが、ダイヤのネックレスのほうが問題。「質屋に見せたのよ。でも2万くらいでしか受けないって言うから、それなら日頃お世話になってるアンタに買い取ってもらったほうがいいと思って・・・」と言うから、てっきり「2万でどう?」という話だと思っていたら、「5万くらいで買い取ってくれないかねえ・・・」だと。
舐められたものである。質屋が2万しか出さない品を私に5万で買い取れと!? ( `ー´)ノ
「他の質屋さんも当たってみたら?。ネットオークションに出すという方法もあるけど高くは売れないだろうし、代行してくれる人に2割くらいは手間賃を払わないといけないから、質屋さんのほうがいいと思うよ」と進言したが、「行きたくないのよ」と言う。プライドが邪魔しているんだろう。
私としては更新料を払ってもらえないと困るから、「じゃあ私が預かって何軒か質屋さんに当たってみようか?」と言うと、「じゃあお願い」とのこと。現品を預かってきて、今、私の手元にある。
石の大きさは0.5カラットくらいだがデザインが古い。爪でダイヤを留めているのでなく埋め込んであって、今時流行らないデザイン。以前商店街にあった時計店で20万で買ったとのことで、その店、私が上京して最初に勤めた眼鏡光学器の卸商のお得意さんだった。ま、これもご縁かな、と思ったりして。
その老婦人が「質屋に出入りしている」のを誰かに見られたくないのと同様に私も誰かに見られたくはないのだが、ま、仕方ない。高齢の入居者も増えてきたので、これから似たような依頼は増えるかも。
そろそろ不動産屋をやめたいと思っているので、いっそ古物商の免許を取って私が質屋を始めるか 😃