昨日、駅前の銀行に行って店の前まで戻ると、スーツ姿で自転車を曳いていた老紳士が寄ってきた。私に、「ちょっとお尋ねしたいのですが、このあたりに梅の湯という銭湯はありませんか?。その近くに、とても有名な質屋さんがあるそうですが、ご存知ありませんか?」と訊く・・・。
とても有名な質屋、かどうかは不明だが、裏道にある大丸屋の前は日に二、三度は通っている。ま、最近は大通りや駅前の雑居ビルに店を構える質屋もあるが、昔からある質屋は、たいていは表通りには無い。人目につくと客は入りにくいから。どんな用件かは知らないが、「ああ、それなら大丸屋さんでしょうかね。向こうに見える信号を右に曲がると梅の湯があって、その角を左に曲がると大丸屋の看板が見えますよ」と教えた。
「とても有名な質屋」などという表現を使うあたりで、ちょっと変わった人、と思っていたが・・・、私が訊いてもいないのに事情を話し始めた。「この腕時計、20年前に香港で1万円で買った偽物なんですよ。中の機械は CITIZEN だから問題なく動くんですがね。今日が24日で、ちょっとカネが入り用なので、明後日まで5千円貸してもらおうと思って・・・。いや、本物なら128万もするんですよ」と言う。そりゃあ本物ならね。プロが見れば瞬時に偽物だと判る腕時計に値段が付くハズが無い。最近は ROLEX にプレミアが付いていて買取価格が高騰していると聞いてはいるが、あくまで「本物なら」の話。
見たら、私のと同じ型の偽物の ROLEX の紳士サイズ。文字盤に10ポイントでダイヤが入っているのも同じ。ワイシャツの袖を捲っていたので、私の時計を見た老紳士、「おや、あなたのは本物ですか?、本物なら50万くらいは貸してもらえますよ」と言うが、大きなお世話である。
だいたいが20年前に1万で買った偽物の ROLEX で質屋が5千円出してくれるなんて有り得ない。それなら先日老婦人から預かったダイヤのネックレス、大丸屋に持ち込めば10万にはなりそう (^◇^)
そこまでで充分に「頭がおかしい」と思えたが、自転車を曳きながら駅方向に歩き始めて後ろを振り返り、私に「国立(くにたち)の〇〇です」と名乗る・・・。そんな用件で道を尋ねたなら身分は知られたくないものだろう。「わざわざ名乗るか??、普通・・・」、である。
店に入るとすぐにうちのが来て、一緒に駅前に行く際、大丸屋の前を通りがかったら・・・、老紳士の自転車があった。近いうちに例の老婦人のネックレスを持って行って相談したいので、「こないだ、偽物の ROLEX で5千円貸してほしい、というオジサンが来ませんでしたか?」と訊いてみよう。