8年ほど前に、飛び込みでLPガス納入業者のF氏がやって来た。
うちの管理物件でも「ガスがプロパン」という物件はいくつかある。当然に、それらを「当社に替えてもらえませんか」という話である。以前は大手のレ〇ンガスの営業がやって来て「当社に変更してくれたら一部屋ごとに、或いは一物件あたり〇十万の謝礼を差し上げます。その後、入居者の利用額の一割を御社にバックすることもできます」とのこと。実に魅力的な提案だが、管理会社と言えどもガス納入業者を決める権限は無いから断った。
だが、断った本当の理由は「権限の有無」ではない。そんなものを受け取っていたら、何かあって事が明るみに出た際に今まで20年もコツコツ積み上げてきた家主さんとの信頼関係がいっぺんで崩壊するから、である。つまりはリスクのほうが圧倒的に大きいのだ。それに、裏金を貰っていたら言いたいことも言えなくなる。
そのF氏も、「変更してくれたら紹介料を出します」と言っていたが、きっぱり断った。辞退したのでなく断ったのだ。すると、「今まで立川の不動産会社さんはほとんど廻らせてもらいましたが、紹介料をハッキリ断った業者さんは御社を含めて2社しかありませんでした」と言う。もう一社がどこか訊いたら「T不動産さんです」とのこと。露骨にカネを要求する業者もあれば、要求も辞退もしない業者もあるようで、ほとんどが後者。成り行きで、もらえるのならその時に考えよう、ということなんだろう。
うちの入居者からも「LPガス料金が高い」という苦情が何件か届いていたので、「バックは要らないから極限まで下げてもらえないか?」と提案すると、話を持ち帰って数日して回答があった。今の(他社の)料金より4割ほど値下げになる金額である。それで、家主さんに事情を説明して「もしかするとLPガス料金が高いということも理由の一つになって入居者が退去してしまう、ということもあるかも知れません。ガスの納入業者を変更なさっては如何でしょう」と勧めると、多くの家主さんが応じてくださった。
一方で、今の納入業者と裏で「一部屋に付き10年に一度給湯器の交換費用をガス会社が持つ」といった約束が結ばれていて、既に何台か交換してもらっていて、業者を替えたくても替えられない、なんてこともあった。その場合、ガス料金はガス会社の言いなりになる。ガス会社を替えるとなれば当然に「今まで負担していた給湯器の交換費用を支払ってくれ」という話になる。「そういう話になったら私がガス会社と交渉しますから、替えましょう」と伝え、実際、替えた後で3件は既存の業者と揉めた。揉めた、と言うより私が突っ撥ねた。20年も同じ業者を(言い値で)使っていたんだから、元は取っているハズなんだし。
ガス会社を替える際、F氏には、「最低でも3年間は値下げした料金を維持すること。たとえ天然ガスの相場が高騰しても値上げは認めない」という条件を飲んでもらった。そういうのも、うちが紹介料だのバックマージンを受け取っていないから言えること。F氏は約束をしっかり守ってくれたが、その後、ガス業界に再編の嵐が吹き荒れて、今は元の価格に戻っていたようだ。徐々に値上げしていたのと、ガス料金の請求書に基本料金や単価が書かれていないから入居者が気付かなかったみたい。
そこで、久しぶりにF氏がやってきて、ガス料金を値下げ時の水準近くまで戻させる相談をすることになった。バックマージンを貰わない代わりに「まったりキャット」を買いに行かせたりはしているが、まあ、それくらいは許容範囲だろう。ちなみに、私は「どんな場合でもバックマージンは断っているのか」と言えば、そんなことはない。貰っていい、と私が判断したものについてはしっかり頂いているし、時に(実際にはその分を負担している)家主さんにも内容を伝えている。打ち明けられたら気分は良くないだろうけど、それで「嫌だ」と言われたら付き合えない。不動産屋は「タダでさせられている仕事」が多いから、私としては、それで帳尻を合わせているのだ。陰でコソコソやるのは不本意だから、「正当に堂々と仕事の対価をもらいたい」というのが本音。
そういうのも立川支部に「不動産業者が知識と経験を生かしてプロの仕事をしたならちゃんと対価を貰えるようなシステムを構築すべき。そうすることで不明瞭なカネを受け取らないようにすべきでは」と他にも10項目ほど提案したが、「理事の総意で回答いたしません」との返答だった。いくら前支部長が私を嫌っていても、それは無い話。5年間で不動産仲介管理の売り上げが12600円という人物が(対立候補が出られない仕組みの)八百長選挙で支部長をやっていたんだから、まあそうなるもの。30人近く理事がいて、誰も「それはおかしい」と言わないのだから立川支部は腐っている、と私は思っている。当時の理事は今もほとんど残っていて、「理事のなり手がいないから我々は仕方なくボランティアでやっている」と言う役員もいるが、不動産屋が何の見返りもなくボランティアで働くワケがない。何かで旨味があるから続けている。当たり前である。
で、この続きは・・・、もしかすると住宅新報のほうのブログに書かせて頂くかも。