2019年10月04日

心根の優しい妹さん

今から10年以上前に、面白いキッカケでうちの管理物件に入居して頂いた老姉妹がいらっしゃる。

昨日、妹さんから「契約書って、どのくらい前までの分を保存しておけばいいでしょう?」との問い合わせの電話があった。私が「前回の更新の分と一番最初のを保存しておけば大丈夫ですし、なんてことになれば全部なくなっちゃっても心配は要りません。うちにも家主さんにも控えはありますから」と言うと、安心したように「じゃあ、その言葉を信じて全部処分してしまいます」とのこと。それは信用しすぎだが。

その老姉妹、以前に住んでいた武蔵小金井の貸家が老朽化して立ち退くことになったのだが、家主からの補償がなく、一面識もない私に相談してきた。朝日新聞に私の本の書評が載っていて、興味を持ったとかで買ってきて、読みながら笑い転げていて、「移転先はこの人に相談しよう」と決めたんだとか。出版社の五月書房さんに「どこの不動産屋か」問い合わせたが教えてもらえず、そこで引き下がらず「手紙を転送してくれるよう」依頼して、私のほうから連絡して訪問し、会うことになった。ふつうは「教えられない」と言われた時点で諦めるものだろう。歳に似合わず、その行動力は凄いし、これもご縁である。

移転先は・・・、「ここしかない」と私が思っていたアパートがあって、1階だし、場所も間取りもちょうど良く、家賃以外はドンぴしゃりの部屋。募集中の家賃は10万8千円、共益費が3千円だったが、私が直接家主さんのお宅に出向いて、「こういう状況の老姉妹がいます。生活保護ではありませんが家賃の支払いは貯えがあるので心配は要りません。ただ、今の家賃だと将来的に厳しくなりますので、9万円なら助かります。いかがでしょう、値下げして頂くワケにはいかないでしょうか?」と伺うと、笑いながら「これも人助け、一部屋ぐらいそうやって貸すのもいいんじゃないかな」と、快くOKしてくださった。

ずいぶん滅茶苦茶なお願いをする不動産屋もあったものだが、私には「きっとOKしてくださる」との確証があった。今までも、常に「家主として自分がどうすれば入居者の方たちに快適に暮らして頂くことができるか」を考えていらっしゃって、必要な出費を惜しまない、そういう家主さんだから。

別の、同居しているお母さんが亡くなった娘さんには「来月分の家賃は払わなくていいのと、来月から1万値下げします」と言ったり、敷地内で野良猫の世話をしている女性に、「それだとあなたの生活費が圧迫されて家賃の支払いにも難儀するだろうから」と、奥様の同意の下 餌代として5万円を支援したこともあるとか。私はミスった・・・。私も生活苦であることを家主さんに伝えておくべきだった (^◇^)

その老姉妹の妹さん、昨日の朝一度電話してきて、夕方また電話してきた。「朝は言わなかったんですけど、坂口さんの声が小さくて、体調が悪いんじゃないかと心配になって・・・」とのこと。そして、こんなことも言う。「姉は寝たきりですけど、私は姉の介護ができることを本当に幸せに思います。姉は明るくて優しくて、私は何度も助けられました。こんな状況でも笑って暮らせるのは姉のおかげです」と。

そんな人柄なので、私が家主さんのお宅に伺う際は声掛けしたり、たまにはお菓子をお持ちする。部屋の外回りに常にお花を飾っていて、家主さんも「いい方に入って頂いて・・・」と喜んでくださっている。大幅に値下げして頂いた家賃も、他の部屋を徐々に値下げしたことで今はだいたい同等になった。

このアパートはきっと老姉妹の終の棲家になってくれるだろう。

posted by poohpapa at 07:01| Comment(4) | お客さん(入居者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする