毎年続けて同じ相手だったり、現れては消える相手に、もう60年も出し続けている年賀状・・・、悩みは多い。今年も去年も、「年齢的に辛いので来年からは年賀状はやめます」という連絡を頂いている方も何人かいて、そういう連絡があればハッキリしていて有り難いのだが、そうでない場合は悩む。
先ず、(今年は)出すかやめるかの判断。去年出したのに向こうから届かなかったから今年は出さないでいたら届いたり、とにかく「やめるタイミング」が難しい。やめたら、それが「ご縁が切れる」ことに繋がりかねない、いや、ほとんどそうなる。いつも顔を合わせている相手に年賀状は無いもの、とも思う。実のところ、年賀状を出している相手の数の何倍もの親しい間柄の人がいて、年賀状が届いたか届かないかなど今後の付き合いに全く影響しない人もたくさんいる。お互いにだろうけど最初からそうだと楽で助かる。
商売をしているから、全ての家主さん、普段から仲良くしている同業者、取引先、(一部の特に関わりが深い)現入居者さん、退去なさって何年も経つけど印象深い元入居者さんなどなど、こちらから出させて頂くのは当然のことと受け止めているが、本音で言うと、中には「当社(私)に年賀状一枚出さないかねえ・・・」、と思ってしまう相手もいる。立場が違う(私のほうがお世話になっている)から家主さんから年賀状が届かなくてもかまわないが、中には、年賀状一枚届かないことに納得がいかない家主もいる。
このブログは何人かの家主さんもお読み頂いているのは承知の上で書くけど、(個別の対価や見返りは求めず)無償でいろいろ尽力していることを知らないハズが無いのだから、年賀状一枚出しても罰は当たらないだろうに・・・、と思ってしまう。そう考えるくらいならこちらから出さなきゃ良さそうなものだが、出さなければ、そういう人に限って「家主の私に年賀状も送ってこないのか」と思ったりして・・・。
お中元やお歳暮など送ってくださらなくても、旅行のお土産を買ってきてくださらなくてもいい。年賀状なんかで「ハートが有るか無いか」が透けて見えてしまうのが寂しい。単に「年賀状を出す習慣が無い」というだけのことかも知れないが、習慣が無くても、管理会社には年賀状は出しておいたほうがいいと思う。
ずっと以前に記事にしていて、ご記憶の方もいらっしゃるだろうけど、
某住宅メーカーの紹介で滞納家賃の取り立てと立退き交渉を依頼してきた家主・・・、入居者を当社に呼んで話し合ったけど埒が明かず、どうにか退去してもらい、その後も取り立てを行っていて、一方で退去後の新規入居者の募集をやらせてもらったのはいいのだが、三鷹のお蕎麦屋さん組合の会長、東京電機大学の教授(ご主人が外国人)、社員7〜8人の広告代理店の法人、の3者からほぼ同時(同日の午前中)に申し込みが入り、家主に報告すると、「個人に貸して懲りたから、その中でなら法人にしてくれ」とのこと。
私が「法人契約と言っても従業員7〜8人では法人契約とは言えない内容です。地元で長く商売をしていて組合の会長に推されるような人なら信用できますよ」と進言したが聞き入れず、結局、広告代理店で契約。私が大学教授を推さなかったのは、えてして世間知らずで理屈っぽくて面倒だから。
ところが、その広告代理店、実は武闘派で知られる暴力団で、マンションの部屋の前に組事務所の看板を出していて、それが判ると家主は「宜しくお願いします」でなく「オタクで追い出してくれ」と簡単に言ってきた。私の進言を受け入れず、決めたのは家主自身なのに。
契約にはサラリーマン然とした男が謄本と社判を持ってやってきたが、カバンの他にスポーツ紙を持っていたのが何となく嫌な感じだった。それはともかく、そこから命懸けの交渉が始まる、調布警察に相談に行ったり、新宿で「暴力団専門の法律相談」も受けてきた。その一方で退去した滞納者の取り立ても引き続き行っていた。どちらも、経費さえ請求せず無償の仕事。
そこで、年賀状、である。
私はその間、2年続けてその家主に年賀状を出しているが、家主からの年賀状は届いていない。経費も持ち出しで命懸けの仕事をしているのに、である。3年目は出さなかった。そうしたら初めて家主から届いた。印刷された年賀状に手書きで、「11月分が振り込まれていませんのでよろしく」、とあった・・・。退去者に約束させていた滞納家賃の支払い分のことである。その年賀状で、ようやく決断した。
「私にできることはここまで。後は専門の弁護士に頼んでください」と伝えて以後は全く連絡を取らなかった。初めて年賀状を送ってきたかと思えば「督促の依頼」が目的なんだから、読んで怒りに震えた。
私が退去させた母子、母親は80歳、息子は独身で50歳。転居先に何度か訪問していて、その際に老母から「坂口さん、全部終わったら一緒に食事でもしましょうね」と言われたことがある。私が「家賃を払ってないんだから直ぐ出て行け!」という対応をしていたならそんなことは言われなかったと思う。息子は碌なモンじゃなかったけど、この老母、家主と逆でハートが有る・・・。家主を気遣ったことを後悔した。
ちなみに、この母子を退去させるに当たって当社管理の2DKの部屋を紹介して、「家主さんに事情を説明して、何かあったら私が責任を取りますから、と伝えて了解を頂きます。今より相当に家賃が安くなりますから、それなら払えるでしょう、2人なら広さ的にも2DKで充分でしょう」と言ったのだが、息子は「アンタの世話にはならない」と拒否。滞納していたマンションと同じくらいの家賃の貸家を自分で探して契約して、そこでも最初の家賃から滞納が始まっていたようだ。
そんな奴のことを家主さんに「何かあったら私が責任を・・・」などと約束しないで済んで良かった。母親は間違いなくもうお亡くなりになっていると思う。ご存命なら100歳を超えていらっしゃるから。でもって、あの(プライドだけ高い)息子が幸せになることはけっして無いだろうな。今頃は孤独死しているかも。
今でこそ非弁行為は咎められるが当時はそれほどでもなく、不動産屋が取り立てや立ち退き交渉などしてもうるさく言われることも無かった。だが、今思えば、そういう意味からも危ない橋を渡っていたかも。
もし、その家主のほうから毎年年賀状が届いて、「いつもお世話になっております、今後とも宜しくお願いします」と手書きで書かれていたなら当然に私の対応も違っていたことだろう。と言うか、他の不動産屋なら「取り立てや立退き交渉だけ」なんて引き受けないだろうし、引き受けてもとっくに投げていたと思う。そこまで「自分のことしか考えない」家主は稀有だけど、ハートの無い家主は今も何人かいる。
「無償じゃやってられない」と言っているのではない。「この家主さんの為なら報酬など要らない、関係ない」と思える家主さんは何人もいらっしゃる。綺麗事を言うつもりは無いが、カネやモノでなく、心からの感謝の気持ちが伝わってきたなら報酬など要らない。そんなの求めなくても後から何かで付いてくるのだから。まあ、カネとかモノは、感謝の気持ちを伝えるのに一番解かりやすいツールではあるけど・・・。
話を戻して、
親しい間柄なら新年の挨拶もLINEやメールで済んでしまう時代、もう年賀状でもないかな、とは思う。ただし、家主さんとか目上の方とか、こちらがお世話になっている立場の方へはこれからも出させて頂くとは思う。商売の上での付き合いではさほど悩まないが、プライベートでは悩む。それでご縁が切れてしまう可能性があるから、である。消息を定期的に知ることができる便利なツールでもあるし。
私の場合は新しい友人知人はこの歳でも増え続けているけど、だからと言って古くからの友人知人とのご縁が消えていくのは辛いし寂しい。でも、そろそろそういうのも受け入れなきゃダメなんだろな・・・。
今年の年末もきっと同じことで悩んでいると思う。ま、生きていれば、の話だけど。