うちのの郷里、岩手の一関市には、失礼な物言いだが「なんでこんな田舎にこんなに美味しいお菓子を作る店があるの?」というお菓子屋さんがある。ケーキは作っていないけど葬祭用の饅頭や、フランス菓子に似た焼菓子もあって、この味なら伊勢丹の「東北物産展」に出店できるんじゃないかと思うほど。
ただ、どれも味は美味しいのだがネーミングがダサくてイマイチ。「ケルン物語」 「キリシタンの里」 「野焼まつり」 「白藤」などなど、地元に史跡があったり、由来があってのネーミングみたいだけど、名前からは美味しさが伝わってこない・・・、惜しい。
ノルンが家に来たころ、人間の食べ物には鰹節以外は興味を示さず、「こんなのテーブルに置いといても大丈夫だろ」と「白藤」(饅頭)をテーブルに置きっぱなしにして寝て、朝起きたらノルンの歯形とヨダレが付いていたことがある。今は懐かしい思い出。
で、私は焼菓子の「ケルン物語」がとくに好き。今回の緊急事態宣言で、それぞれの事情があって、辛い思いをしながら働いている人とか、仕事を切られて長く家に待機せざるを得なくなっている人とか、普段から親しくさせて頂いている人たちに届けて元気になってもらおうと、その「ケルン物語」をうちのの実家にお願いして大量に送って頂いた。実は、「ケルン物語」だけは、割れやすいので店は送ってくれない。仕方なく、実家にお願いして送ってもらったのだが、大きな段ボールに2箱、金額にして3万ほど。
うちが食べる分も入っているけど、それくらいの金額で、いろんな方が笑顔になってくれたら安いもの。人間、美味しいものを食べたら笑顔がこぼれる、心からの笑顔が出れば元気も出る、それが狙い。
昨日も、荷物を届けてくれた郵便局の配達員の方に、「いつもご苦労様です。気を付けて頑張ってくださいね」と声を掛けて缶コーヒーを渡したら笑顔を返してくださった。今、そういう人たちのお陰でかろうじて世の中が回っている状態。自分で言うのもナンだけど、そういう小さな気配りが大切だと思う。
うちは緊急事態宣言以降は休業していて必要に応じて店に出るくらいだが、業種的に言えば飲食業や観光業ほど致命的なダメージを受けていない。命の危険と最前線で向き合っている医療関係者や、休むワケにいかない人たちと比べたら遥かに恵まれている。だから自分にできる範囲で恩返ししたい。と言っても、私の懐具合では「全部の人に」というワケにもいかず、周りの人に少し笑顔になってもらうだけ。寄付は、本当に困っている人には届かず、池に一滴のインクを垂らすが如しだからしない。
悩んでいることもある。お菓子を届けようと思った伊勢丹のスタッフにメールしたら、「母もいるので、子供と3人、とにかく、なるだけ誰とも接触しないようにしていて、買い物も週に2回にしているくらいなので、嬉しいのですが辞退させてください」との返信・・・。それが正しい判断なんだろな、と思う。うちは、週3回の買い物とランチで外出する程度だけど、それでも多いのかも。レストランなんか、客が来なくて(馴染みの)スタッフのシフトが削られたり解雇されるようなことがあったら困るだろうな、と思って、回数を増やしたりはしないけどいつも通り行くようにしていて、それも、本当に相手のことを考えたら行かないほうがいいのかも。テイクアウトを利用すればお店には貢献するけどホールのスタッフには関係ないし。
少しだけ幸いなことに、伊勢丹のスタッフ、店側が4月分の給料については、休業していて働いていなくても8割を補償してくれるみたい。だが、5月以降に関しては不明とのこと。さぞかし不安だと思う。
私はいちおう仕事もしているし、どこまで(どこから)が不要不急なんだろ・・・。「絶対に今やらなければならないこと」以外は不要不急なんだろうけど、そんな単純なものでもない。皆が外出自粛を厳格に守れば早期に終息する、とも思えないし、その前に潰れてしまう店があったり解雇される従業員がいる・・・。独り善がりでなく、自分たちのためと人様のためにできる最善は何だろう、と悩んでいる。