自宅から店までは徒歩3分ほど。その途中に、ブロック塀に幾つもプランターをかけて、お花を育てている家がある。奥さんが花好きで、玄関周りも花だらけで、前を通ると、いつも奥さんが花の手入れをしていて気軽に挨拶してくれる。いっぽうで、ご主人は「偏屈」との噂で、顔を合わせても挨拶しない。
2ヶ月くらい前に町内会の掲示板に訃報が貼ってあって、名前を見たのだが、その奥さんだとは思わなかった。わりと珍しい苗字だが下の名前は存じ上げないし、近くに親族もいる。だいいち、つい最近まで元気そうだったから、「ご親族の方が亡くなったんだろな」とばかり思っていた。だが、「最近お顔を見ないなあ、毎日、店と家を3往復くらいしていて5回は顔を合わせていたのに・・・」と思っていて、別件で隣家のAさんの奥さんと話していて亡くなったと知った。歳の頃は還暦過ぎくらいだったかなあ。
元々が心臓が弱かったそうで、その日はご主人が「床屋に行ってくるよ」と奥さんに声を掛け、1時間ほどして帰宅したらお亡くなりになっていたとか。ご主人のショックはいかばかりか・・・。きっと「何もこの日に俺が床屋になんか行かなければ」、とご自分を責めたに違いない。
Aさんの奥さんの話では、葬儀を家族葬で済ませた後、それまで近所とはほとんど付き合いが無かったのに、ご主人が近所の人に会った際、「私も一人になって、今は何も考えられなくなってしまって、このままボケてしまいそうなので、見掛けたら声を掛けて頂けませんか」とお願いしたんだとか。
それは正直な思いだろう。周りが勝手に「偏屈」だと決め込んでいたけど、口下手で人付き合いが苦手なだけで、ごく当たり前の男だったのではなかろうか。私も、今まで夫婦で家の前に立っていて挨拶してもご主人とは顔も合さなかったけど、これからは声を掛けるようにしようかな、と思う。
口下手で人付き合いが苦手・・・、そういう人のほうが意外といい人だったりするもの。社交的で、よく喋る放送局のような人が「いい人」だった例が無い。いえ、私のことね (滝汗
うちも、順番と平均寿命で言えば私が20年くらい(うちのより)先に逝くだろうけど、人生何が起きるか判らない。私は日常的に誰かと話していないと精神の安定が保てない性分で、伊勢丹が2ヶ月閉まっていただけで頭がおかしくなりそうだったくらいだから、もしうちのが先に逝ったなら憔悴ぶりはそのご主人の比ではないと思う。私の場合、再婚するだけなら相手は簡単に見つかるだろうけど、うちの以上に私と(価値観が合う)相性のいい女は絶対に現れないと思う。それは、惚気でなく本当の話。
これからは自分の健康だけでなく、うちのの健康にも少しは気を遣わなければ・・・。