うちら夫婦と長男がいつも行っている理容院のお兄さんMさんからの依頼だから。居住用でなく店舗の契約。26年も経営していたマスターのKさんが引退することになり、そのまま店を引き継いでいて今回が最初の更新。その保証会社、当社も代理店になっていて、「緊急連絡先は親族に限る」と常々言っているから、私から先に電話を入れておくが私で通るかどうかは不明。ダメならお兄さんに頼むらしい。
連帯保証人でなく緊急連絡先というだけの話なんだから、最初からお兄さんに頼めば良さそうなものだが、そこは田舎の人、余計な心配を掛けたくないのと、いちいち説明しなければならず、「それが面倒」とのこと。その気持ちはよく解かる。だいいち、KさんとMさんには16年前に我々が婚姻届けを出す際に保証人になってもらっているし、長い付き合いの中で何かで迷惑を被ったことなど一度も無い。
ただ、心配していることもある。前マスターのKさんが店舗の賃貸借契約を個人の名前で結んでいるのか理容店の名前で結んでいるのか、ということ。理容店の名前で結んでいたなら「経営者が代わった」というだけのことで、保証会社を使うのだし特に問題は無いが、個人が借主になっていたなら、貸主から「改めて新経営者が契約を結び直してくれ」と要求されるかも知れない。26年も事故なく借りていてくれたのだし、このコロナ禍で「出て行かれても困る」だろうけど、貸主も最近代替わりしている・・・。
当社なら、家主さんと相談して承諾してもらい「新規に契約し直さなくても結構ですよ」と言うところだが。Kさんが引退する際、そのことも考えて「実質的には経営を退いて店の権利をMさんに譲渡するとしても、Kさんが健在である限り店舗契約書上はKさんが経営者ということにしておいたほうがいいかも」とアドバイスしている。幸い管理会社は実情を知っていて、「新たに契約締結し直すことなく借主名だけ替えて条件はそのまま」ということで了解しているから、「今回は黙って契約すれば良い」と伝えた。
管理会社は最近替わっていて、厳密に言えば、新規に契約し直すなら仲介料も発生するし保証金の清算も一度済ませなければならない。口約束ほど怖いものは無いし、そのままずっと、というワケにもいかないから、なるだけ早い機会に貸主の承諾をちゃんと取っておいたほうがいいとは思う。そのあたりは、全く無関係な人間に経営譲渡するワケではないから貸主も柔軟に対応してくれる、と思いたい。
もしかすると、貸主は管理会社から説明を受けて了解しているのかも。だといいのだが・・・。私の悪い癖で、良く言えば「阿吽の呼吸で進める」けど、悪く言えば「なあなあで済ませようとする」から、注意深く様子を見て、藪蛇にならないよう適切にアドバイスしよう。
本当は家賃の値下げ交渉もしたいところだが、それは既成事実を作って(次の更新まで)3年待ったほうがいいだろうな。契約者が代わっても「そのまま継続」させてくれるなら、そのほうが借主にとっては遥かに得だし面倒も少ない。Kさんは「経営を引き継ぐなら自分が預けている保証金を戻してくれ」とは言っていない。設備もそのまま置いていってくれて「造作譲渡」も無い。Mさんも不安があって悩んでいたが、こんな条件の良い独立話は無い。実のところ、私は双方から相談を受けていた。
KさんとMさんはどちらも沖縄の出身、同郷ということもあって互いの信頼関係は強い。マスターのKさんを指名するお客さんもいたから、Mさんが引き継いだ後、しばらくはKさんが店を手伝いに来ていたけど、今はもう来ないとか。うちのはとくに指名したワケではなかったが、ずっとKさんにやってもらっていて、これからはMさんにお願いすることになる。ま、中には、それで来なくなるお客さんもいるらしい。
「緊急連絡先に・・・」と言われて先日の一件を思い出してしまったけど、正直、Mさんなら連帯保証人でも引き受けられるほど。世の中に「信用」ほど尊くてイザという時に役立つものは無い、と思う。