中村吉右衛門さんの(歌舞伎を離れての)代表作と言えば「鬼平犯科帳」で、池波正太郎さんの本は全巻、家と店に置いてある。私にとってのバイブルだから。DVDも全話揃えてあって、いつでも観られる。
最終シリーズの後で、特番なんかを観ていたら、すでにセリフ回しが覚束なくなっていたので、「もう難しいんだろうな」と思っていたのだが、こんなに早くお亡くなりになるとは思わなかった。享年77歳・・・、私もあと7年か、怖い。
鬼平のシリーズの中で、特に好きなのが「間取りの万三」、密偵の大滝の五郎蔵から「絶対にお縄にしないとの約束を頂きたく願います」と請われ、「分かった」と約束をし、五郎蔵の情報から大盗賊を捕らえ、最後に観念して両手を揃えて差し出した(労咳に罹っている)万三に「何の真似だ」と言い、呼び寄せた万三の女と用意した籠を指差して、「あの女とどこにでも好きな所へ行け。来年の桜が咲くころまで元気でいろよ」と金子を渡して逃がしてやる。「これでいいか?、なあに、約束ってのは上様との約束も盗人との約束も同じ、守らなくちゃならねえものさ」と事も無げに言う平蔵に、肩を震わせて泣く五郎蔵・・・、最高の見せ場で、何度観ても涙が出る。本で読んでも同じ。
何人もの俳優が平蔵を演じているが、吉右衛門さんが最高。粋で、華があるから。
今日は更新をお休みさせて頂こうと思っていたけど、吉右衛門さんの訃報はスルーできないわ。
心からご冥福をお祈りしたい。