一昨日、某住宅メーカーのカレンダー配りに同行させて頂いた。当社の管理物件であるアパートを、その住宅メーカーで建てた家主さんが対象である。ただし、別の営業マンが担当として付いているケースは除くが。一日では回り切れず2〜3日かけて回るのだが、アパートの管理をさせて頂いていても普段は滅多に顔を合わせることが無い家主さんに挨拶できるから、私としても助かるしメリットがある話で有り難い。
その中の一軒のアパートにかれこれ20年ちかく入居なさっている娘さんがいる。国立病院で看護師長をしていたお母さんと二人で暮らしていて、そのお母さんが病に倒れ、当初は2階の部屋に住んでいたが、1階の部屋が空いたのを機に母親の為に1階に移り、長いこと母親の看病(介護)を続けていた。その母親が亡くなったのは2年ほど前。ところが、である。兄と姉は、気の優しい娘さんに母親を任せっきりにして、母親が亡くなった際も、お線香の一本もあげに来なかったとか。娘さんはそれで心を病んでしまった。
もともと、長く看護をしていた間も母親の顔を見に来ることも経済的な支援をしてくれることも無かったから最初から期待していなかったかもだけど、それでも亡くなったならお線香をあげに来てくれると微かに期待はしていたようだ。だが、兄姉で示し合わせていたのか、同じ多摩地区に住んでいるのに来なかった。それで、身寄りは誰もいなくなった。事実上、いわゆる「天涯孤独の身の上」になってしまった、ということ。
兄と姉はそれぞれに結婚して幸せな家庭を築いている。だが、娘さんは母親の介護などで恋愛どころではない。お化粧しておしゃれをしたなら可愛い女性だと思うのだが、結婚もできず、友達と遊びに出掛けることすらできず、世の若者のように外でストレスを発散することも叶わなかった。あまりに理不尽な話。
お母さんが亡くなって、外に出られるようになったものの、日常の買い物と通院以外ではもう外には出られない。私が「食事でもしませんか?、それくらいご馳走しますよ」と言っても、「そういうところに行くと震えがきてしまいますから難しいです」と辞退。「だったら気分が良くなったら声を掛けて」と伝えて、その後も機会あるごとに「食事に行こうよ」と誘って、ようやく1年ほど前にファミレスでモーニングをご一緒した。
贅沢は全くしていないのは知っていたので、近所まで行く機会があった時は美味しいお菓子を届けたりしていた。で、一昨日、以前このブログでも紹介した queen's 伊勢丹のキャラメルポップコーンを届けた。
「もし気に入ってくれたら、またお代わりを届けますよ」と言ったら、「いいです、いいです」と笑って辞退していたが、気に入らないワケがない。そのうちチョコレート系の他のお菓子も一緒に届けて差し上げよう。
と、思っていたら・・・、昨日電話があった。「あのポップコーン、もの凄く美味しかったです。止まらなくなりますね」とのこと。そこまでは良かったのだが、「私は糖尿も持っていますのでヤバイです。あれ?、以前に話してますよ」だと。いけねえ、お菓子を届けることしか頭に無くて失念していたよ。うわあ大失敗(滝汗
私は「喜んでもらおう」と思いながら娘さんの寿命を縮めていたりして・・・。でもまあ、言い訳がましくなるけど、そのあたりは娘さん自身で健康管理して頂こう。幸い、まだそんなに重症ではないし(無責任 ^-^;
一人で、友達とも会わずに生活していたならそれくらいの細やかなサプライズでもなければ心の病から解放されないことだろう。私には話してくれたが、冷たい兄や姉を責めるでもなく、一人で部屋に引き籠っていたのでは人生に絶望してしまうだろう。その状況で、よく自殺しなかったもの、と私は思っているくらい。
私は娘さんから信頼されていると思う。もしかすると、お医者さんは別にして、私は「娘さんが唯一信頼できる男性」かも知れない。いつも気に掛けてくれている、と認識しているだろうから。自画自賛だけど、そういう存在が一人でもいるのと全くいないのでは雲泥の差、だと思う。これからも娘さんの信頼に応えよう。
それにしても世の中「不公平」だ。こんな気立ての良い娘さんの苦労が報われないなんて。やっぱり神様などいないんだろな。「解かってくれる人が一人でもいるなら、それだけでいい」と思ってくれたら嬉しい。
うん、私はまだまだ死ねない。この娘さんだけでなく、私なんかを頼りにしてくれる人は何人もいるから。