私には「人生の恩人」と言える人が何人もいるけど、その中でも特別な存在が2人いて今もお付き合いを頂いている。お一方が中学時代の恩師、1年と2年時の担任の先生で、もうお一方が高校時代の先輩のFちゃん。恩師とは60年ものお付き合い、Fちゃんとも、私が15歳の時からだから57年になる。可愛がって頂いてた。帰省する度にお宅を訪問させて頂いたりしているが、恩返しはしておらず、不義理していた。
ところが、である。2016年(平成28年)3月26日に北海道新幹線が開業する日に合わせて、一人で北海道の道南を旅して、帰りに小樽駅に寄って、電車の時間までだいぶあったので、駅前の三角市場を散策して、その中の武田鮮魚店に寄ったら店頭に立派な蟹が並んでいて、「そうだ、これで日頃の不義理を埋め合わせしよう」と思い立った。3月だからちょうど蟹の旬の時期、だと思っていたら・・・、違っていた。
武田鮮魚店のKさんが、「皆さん勘違いしていますが、蟹の旬の時期は冬ではなく夏なんですよ。それと、毛蟹は『大きいほどいい』というものではなく、500gくらいが一番美味しいですよ」と教えてくれた。
それで諦めようかと思っていたら、Kさんから「もう少ししたら『いい毛蟹』が入ってきますから、そうしたら送りましょうか?」とのご提案。この人は信頼できる、と思えたのでお願いすることに。うちのに電話して「うちの分も要る?」と訊くと、「要らない。おとうちゃんが食べたければ頼めばいい」だと。私も食べない。
それで、さんざんお世話になっていながら半世紀以上も何も恩返ししていなかった恩師とFちゃんに毛蟹を2杯ずつ送ることに。水揚げして直ぐ浜茹でしたものを冷凍便で送ってくれるらしい。以後、毎年初夏の頃に武田鮮魚店からパンフレットが送られてくるんで、年一度(小樽から愛知へ)お願いすることにした。
ところが、である。今年は初夏にパンフが届かなくて、「不漁だったのかなあ」と思っていたら、数日前に届いた。え?、冬だけど・・・、と思ったけどパスすることはできない。毎年送らせて頂いているものが届かなければ、たかさんじゃないけど「あれ、どうしたのかな、店が潰れたのかな??」と思われそうだし(爆
ただ、私が毛蟹を送ることで恩師にもFちゃんにも気を遣わせてしまっている。恩師からは田舎の水産物なんかが届いたり、Fちゃんからは旬の果物が届いている。ならば「お互いに何もしないほうがいいか」とは考えない。互いに「気を遣う存在」があることで生きていることを実感できたりするものだから、ほんと。
ちなみに、Fちゃんは会社を経営していて、地元のロータリークラブの会長に就いたりしていたけど、そろそろ引退を考えているみたい。そこは私と同じ。(恩師にも)互いに生きている限り毛蟹は送り続けよう。