イルカの代表曲「なごり雪」を駅のストリートピアノで11歳の少年が演奏していて、演奏自体は粗削りだけど、それがまた何とも言えず「いい味」を出していて、昔のことをいろいろ思い出して、心に沁みたのだ。
今から55年前の、ちょうど今頃の季節だったかなあ・・・、
その演奏が、こちら。
以前も書いたけど、私には中学2年の頃から死ぬほど好きな人がいて、彼女は一年上。最初は、彼女を好きだと言っている先輩がいて、からかっていたのだが、私も好きになってしまった。同じ高校に一年遅れで進み、彼女は高校を卒業して國學院大學に現役で進み、中野区に、狭い部屋(風呂無しの三畳一間)を借りて住んでいたが、引越しをしたいということで、荷物も少なかったので会社のライトバンで先輩に頼んで引っ越しを手伝った。私は前の晩からアパートに行き、荷物をまとめる作業を手伝っていて、気が付けば終電の時間を過ぎていた。その前に「もう帰っていいよ」と言われると思っていたのだが、彼女が「もう寝ようか」と言う・・・。荷物をよけて布団を敷き、死ぬほど好きだった人と一つ布団で一緒に寝た。
私は指一本、彼女に触れなかった。彼女は当時、交際している人がいて、相手は彼女が帰省中にアルバイトしていた中部電力の社員。一緒にスキーに行って、彼が足首を捻挫して、帰ってから接骨院に車で通っていて、その帰りに公衆電話から彼女に電話して、帰宅する途中にお婆ちゃんを撥ねて死なせてしまったとか。それで彼女は「私に電話なんかしなければ、僅かな時間の差で、そのお婆ちゃんは死なないで済んだかも知れない」と自分を責めていた。もちろん、「それは違うよ」と慰めたけど凄く気にしていた。
引越しを終えた後、一旦帰省するとのことで東京駅の新幹線のホームまで送って行って、「〇ちゃん、もしも昨日の夜、僕が変な気を起こしていたら、どうした?」と訊いたら、しばしの沈黙の後、「その時はなるようになる、と思ってた」だと。たぶん、当時の彼とは、まだその時点で大人の関係じゃなかったんだろな。私が襲い掛かったなら許してくれる気だったんだ・・・、と、その時に初めて気付いたけど、時すでに遅し。
その時は、「もし私が彼女にとって最初の男になったから、それで私に決めた」というのは絶対に嫌だった。それだと、何かにつけて彼のことを思い出すだろうから。意地を張っていても私は猛烈に後悔したよ。
もしかすると、私は彼女と結婚できてたかも知れない。でも、間違いなく言えることは、そうなったなら、2人とも幸せにはなっていなかっただろうな、ということ。私は今、幸せだし、彼女も今はきっと幸せだろう。
彼女が大学を卒業して郷里の母校の教員になった時、私と〇ちゃんのことを知っている先輩教師が「坂口はもう結婚するみたいだぞ」とからかったら、「あんなの、いいわ」と言ったとか。そうとしか言えなかったんだろな。私がどんな思いでいたか知る由もないのだし。でも、お互いに結果オーライで良かったかも。
当時はまだ純粋だったんだね、今の私からは考えられないくらい。で、話が非常に遠回りしたけど・・・、
引越しを済ませたその日、東京駅の新幹線のホームまで送って行った際、4月で、雪などチラついてはいなかったけど、その時の想い出が、「なごり雪」の歌詞に出てくるシーンとダブる。なんとも不思議なことにイルカ本人の歌唱でより、この少年の演奏でのほうが、強烈に想い出を蘇らせる。この少年に感謝 (^^♪