年配の男が二人、広告を見て「これは遠いんじゃねえか」とか「これは木造だよ」とか言っている。年配の男同士、ということで内容は察しがつく。俺は帰りたいんだから入ってくるなよ、と思っていると、
入ってきた・・・
「外に貼ってある☆☆コーポって、まだあるんかい?」と、いきなり訊く。「それは当社の物件でなく、よその会社で管理している物件なので問い合わせてみますが」と言うと、「古くても構わないから、他にも4万くらいまでで鉄骨ので何かないかい?」と訊く。
どうやら駅に近い物件を探しているようだし、鉄骨で風呂付の4万は厳しい。だいいち、この二人、私が欲しがっている情報を未だ話してくれていない。ま、話さなくても判っていることではあるが・・・。
借りるのは年長の男性のほうで、一人は付き添いである。雰囲気はさっきまで開催されていた競輪帰り、という感じである。耳に赤鉛筆こそ挟んでないが、きっとそうであろう。どう見ても競輪仲間だ。
問い合わせてみると、63歳という年齢でアッサリ断られた。別の物件でもう1社にも当たったが同様だった。そう伝えると、
「収入の心配なら要らないんだけどよ、俺は生活保護で役所が保障してくれるからさ」
やっと、私が「最初に聞かせて欲しかった話」が出た
まあ良心的な人なんだろう。一人暮らしの生活保護の場合、住居費は5万以上出るのに安い部屋で決めようとしているのだから。
私が相談に乗っている間、本人はテーブルの上の資料を一枚一枚めくって全部に目を通していて真剣そのものなのだが・・・、
オイ!、ちょっと待て!、いちいち指を舐めながらめくるな!
全部の広告にベットリ唾をつけてるじゃねえか!
今ここで私がこの男に殺されても、しっかりDNA鑑定できるだろう。
すっかりテンションは下がったものの、部屋は何とかしてあげなければならない。それで、こう話した。
「お客さんの年齢だと、当社から空室確認しても断られてしまう可能性が高いです。それは、本人に直接会っていなくて人柄が判らないということと、手数料を当社に分けなければならなくなる、ということからで、直接自分の会社に来てくれたなら自社の管理物件を紹介してくれることも有り得ます。お客さんの希望する条件だと、持っていそうな会社は限られています。このあたりでは◎◎不動産か★★不動産くらいでしょう。そちらに直接あたってみては如何でしょう」
残念ながら、当社の空室で希望条件に合うものは今は無い。
ついでに、「この不動産業者には行くだけ無駄」という会社も教えておいた。嫌な気分になるだけで、時間の浪費にもなってしまうから。
すると、★★不動産には既に行って、断られた、とのことだった。
オヤジ二人組は丁寧に礼を言って帰っていった。
私も、やっと帰れる

