ふだんから仲良くしている同業者に、以前は大手賃貸仲介管理会社に勤めていた従業員さんがいる。これはその人から聞いた話。
物件を多数管理している会社では何年かに一度くらいは住民から「隣の部屋の人、ここ数ヶ月姿を見てないんだけど、ここんとこ悪臭やハエの発生が凄いので調べてほしい」という通報が入るとのこと。
私はこの仕事に就いて20年あまり経っているが、幸運なことにそういう場面に出くわしたことが無い。死後数週間して遺体で発見された場合など、腐乱も始まっているし体液が流れ出して畳や床板まで沁み込んで物凄い異臭(死臭)がしたり、蛆虫が湧いていたりするとか。夏場など、近所からの通報で部屋を空ける頃にはどんなことになっているか、台所の生ゴミの比ではないのは容易に解かる。
ご近所からそういう連絡が入ると、その会社では必ず事前に最寄の交番に連絡して警察官に立ち会ってもらうようにしているとか。
で、ここからが大切なこと。管理会社といえども、絶対に「自分で鍵を開けて一番先に中に入ってはならない」、ということだ。
どういうことかと言えば、管理会社ということで自分で鍵を開けて一歩でも先に中に入ると、例え警察官が同行していてほぼ同時に室内に入ったとしても、もし住人が変死していたりすれば(ほとんどがそうなっているらしいが)必然的に自分が第一発見者ということになるから、その日は遅くまで警察で事情聴取を受けるハメになるとか。あくまで先に発見した人が変死者の第一発見者になるのである。
それは「今朝お爺ちゃんが起きてこなくて、もう冷たくなってて死んでるみたいで・・・」と119番通報してはいけないのに似ている。そう連絡すれば、警察が来て事件性が無いか捜査される。どう考えても死んでると判っていても、先ず掛かりつけの医者に「お爺ちゃんの様子が変なんで診てください」と連絡しなければならない。そうしないと遺体を司法解剖に回されたりして面倒なことになるとか。
話を戻して、では、第一発見者ならない為にはどうしたらいいか、と言えば、きわめて当たり前だが「警察官に鍵を渡して警察官にドアを開けてもらい、先に中に入ってもらう」しかない。
当社では、以前、浴槽の中で心臓発作を起こして死亡していたお年寄りがいて、それは同じアパートの別の部屋を借りていた家族が発見したので事なきを得ているが、滅多に無いこととはいえ、とても参考になるいい話を聞かせて頂いたと感謝している。
これから高齢者の一人住まいは増えることだろうから、いつか私も「入居者の変死」という現実に直面するに違いない。その時には慌てて第一発見者になるようなことが無いよう心しておきたいと思う。
2009年10月15日
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