「馬鹿野郎、余計なことするな!」、である

野球中継が「いいところ」で終わり、11時のニュースのスポーツコーナーまで試合結果を見ないようにして楽しみにしていたのに、友達が電話してきて「9回裏、2アウト満塁から押し出しで同点になってパスボールで逆転サヨナラなんて、酷い試合だったなあ」と、頼んでもいないのにペラペラ話しちゃうようなものだ。どこの世界に「読み始めた推理小説の真犯人を先に知りたがる」読者がいるものか!
いくらCMを飛ばして急いで観ているといっても、気が利かないにも程がある。私はそんな娘に育てた覚えは・・・無いワケでもないが

思えば、娘が訪ねてきたタイミングも最悪だった。
以前、島田紳助の番組で紹介して全員一致で「旨イイ」評価を獲得した抹茶バターケーキ「抹茶満月」の姉妹品「ガトーショコラ抹茶新月」を一月ほど前に2個買って、1個はすぐ食べ、頂き物のお菓子や物産展で買ったお菓子が途切れなかったので1個は冷凍しておいて後でゆっくり、と言うか、ちょうどその日の昼から食べようと思って、朝、解凍しておいたのだ。6つに切れば二人で3日は楽しめる、と楽しみにしていたのだが、そこに予期せぬ訪問者、である。
まあ何というか「物凄く鼻が利く」娘である。ハイエナ以上、いや、海中で2キロ先から血の臭いを嗅ぎ分けるホホジロザメ以上だろう。
まさかに目の前で我々だけ食べるワケにもいかないんでいちおう娘に「おまえ、抹茶モノ、ダメじゃなかったっけ?」と訊いてみると、「そんなことないよ、大好きだよ」とのこと。心の中で「うん苦手、と言ってくれ」と渇望していたのだが、「食うのかよ!」である

仕方なく提供すると「美味い、美味い」と喜んで食べていた。当たり前だ。「抹茶満月」は今も数ヶ月待ち、「抹茶新月」だっておいそれとは買えない。それを駄菓子でも食べるような勢いで食べていた。行きがかり上、娘が食べた分は私の分を諦めるしかない(トホホ)
で、ハタと気がついた。娘にはまだ「食い物の恨みは恐ろしい」ことを教えていなかった・・・

だが、それだけではない。お昼も食べると言うから急遽うちのがベトナム炒飯を作ったり、口内炎がひどいと聞いていたのでケナログも一本あげたし、パンも買って持たせた。そして極め付けがコレ、
「美容院、行ってるのか?、お父さんが行ってる床屋さんに連れてってやろうか?」と訊くと、「いい、行かない」とのこと。「散発代、お父さんが出してやるぞ」と言うと、「なら行く」と翻す。金欠で美容院にも行ってないだろうな、と思っていたが当たっていたようだ。
最後は理容院で別れたが、娘に対して私が至れり尽くせりになるのには単に親馬鹿だから、というだけでなく、それなりにワケがある。
娘は、私が家を出た直後は私を恨んでいて母親に付いていた。いろいろあって、その娘が今はうちのに懐いている。私が娘に何かするためには「うちのの理解」は欠かせないということは娘にも解かっていると思う。私が何かする、ということは「うちのがしている(させている)」ことになる。逆の場合は「うちのがさせない」ということだ。それで良好な関係が保たれるなら多少の出費は必要経費であろう。
娘は娘なりに、うちのの好物のワインを手土産に持ってきてくれたりもするが、気配りはまだまだ、である。
「鼻は利くけど気が利かない」娘に、追い追い教えていかなければ。