店番をしていたらヒョコッと若い家主さんがやって来た。家主さん、といっても当社では管理をしていない。頼まれたけど、どうも気が進まなかったので断ったから、である。
その事情はさておき、ドアを開けるなり「あのさあ、今、ホントにお客さんて動いてないの?」、と訊く。どうやら、その家主さんのアパートには長く空室になってる部屋があって、管理会社に様子を問い合わせてそう言われたものの、信じていないようであった。
「うん、動いてないよ」
「全く?」
「うん、全く、だよ」
「1月も2月も動いてなかった?」
「うん、3月も4月もね」
「そっか・・・、じゃあウソじゃなかったんだ・・・」
「家賃下げれば決まるかなあ?」
「そういう問題ではないと思うよ。今、アパートの部屋がダブついてて相当余ってるから、よほど下げれば話は別だけど、3千円、5千円下げても状況は変わらないと思う。賃貸の状況は酷いモンだよ」
しばらく重苦しい沈黙が流れた後、思い出したように言う。
「そうだよなあ・・・、GWに○○さんが仕事してるんだモンなあ。いつもならどっか旅行に行ってるハズだもんなあ・・・」
私のほうから「GWに休まないで店を開けている理由」を説明した訳ではない。うちで管理していないので直接利害関係が無く、冷静でいられるから気が付いてくれただけの話で、もしうちで管理していたなら穏やかに話してはいられないものだろう。
私は、年末年始、GW、お盆、以外では連休は取らない。ふだん連休を取っていないからGWくらいは休みたい。だが、現在8部屋も空室を抱えているから、家主さんの手前、連休は取れない。
全ての家主さんと信頼関係が築けている訳ではない。「連休させて頂きます」と言えば、(部屋が空いていても)快く「どうぞ」、と仰ってくださる家主さんのほうがきっと多い、とは思う。そうしないのは、私も或る意味「家主さんを信用していない」から、である。
当社の空室率は低いほうであるし、ほとんどの同業者はしっかり休んでいる。だいいち、GWに部屋探しする人など滅多にいない。強いて言うなら、「GW前に契約して、GWに引越しをする人」、ならいる。
うちだけ店を開けていてもあまり意味が無いのは分かってもいる。
「○○さんも休めばいいじゃん!」
「ありがとね。でもね、オタクのアパート、うちで管理してたなら『連休なんか取りゃあがって!』って言うよ、絶対に!」
そん時は、よその不動産屋に行って訊いてるに違いない。
「今、ホントにお客さんて動いてませんか?」、って。