先日、あるアパートの新規契約が終わり、家主さんに契約書と精算書を送ったら、直ぐにお電話を頂いた。
「広告代、1ヶ月分、取ってください」、と仰るのだ。その事情は・・・、
現在、ほとんどの空室募集が手数料配分「客付け100%」になっていて、お客さんを案内して申し込みを入れた業者が、消費税も含めた仲介料の全てを手にすることになる。そうすると、募集を行っている元付け業者の取り分は無いことになる。それどころか何度も打っている広告代がマイナスになってしまう。
そこで、元付け業者は家主さんにお願いして、契約金の中から「広告代」名目で1ヶ月分を頂戴するのだが、家主さんも含めて業者間でそういう手法が一般的になって以降、私は直ぐには家主さんに「広告代」の話はしなかった。と言っても、他所の物件が「手数料、客付け100%」になっているのに、当社だけ「折半」で広告を打つ訳にはいかない。それでは業者は見向きもしないことになる。
それで、当社も「手数料、客付け100%」で広告を打ち、家主さんから広告代として1/2ヶ月分を頂くことにして、踏ん張れる間、しばらくは我慢していた。そうは言っても、新築の貸アパートやマンションの建築ラッシュで貸室数が増加しているから、何度広告を打っても簡単には決まるものではなく経費は嵩む一方で、やっと入居者が決まった頃には既に赤字になっていることも多い。背に腹は変えられず、ついに当社も管理物件の家主さんに順次、事情を説明して「広告代1ヶ月」をお願いすることにした。まあ、直ぐに「1ヶ月分頂戴!」と言わなかっただけ良心的だったとは思う^_^;
中には、こちらからお願いする前に「広告代はちゃんと払いますよ」と仰って頂いて、いつの間にか自然に広告代「1ヶ月」になってしまった家主さんもいるが、私は全員の家主さんにはお願いしなかった。何人かの家主さんは今も1/2ヶ月分のままである。
お電話をくださった家主さんも、その中のお一人である。
私が「1ヶ月分」をお願いしない家主さんは、ふだんから不動産屋の苦労を理解してくださったり、いろいろとお気遣い頂いている家主さんである。こちらの目先の利益だけで「一律に」などとはとても出来るものではない。その家主さんは、以前管理していた大手住宅メーカーの事情で当社に管理が移る際、わざわざ家主さんの方からご挨拶におみえ頂いた。従業員が一人でやっている場末の不動産屋に、である。私は、その時の感激を今も忘れない。
家主さんは、少し離れたところに別のアパートをお持ちで、そこは地元の業者に管理を任せているから、そこでは既に「1ヶ月分」ということになっているのだろう。それで気にしてくださったのかも知れない。だが、他所は他所、うちはうち、である。
断固辞退する私に、「どうしても取ってください」と家主さんも引かないので、「それでは次回から」、と有り難くお願いすることにした。
今年に入って、その家主さんのアパートは6室のうち2室が空いてしまって空室のままだったが、ようやく昨日、一室に申し込みが入った。それで家主さんに電話をして、「それでは今回から広告代として1ヶ月分を頂戴させて頂きますが、畳の表替えは今回当社で出させて頂きます」、とお伝えした。もちろん、家主さんは「それはそれ。費用は私が払います」と仰ったし、理屈はその通りだが、私も引かなかった。お互い、強情である^_^;
最近は、畳の表替えを退去時のリフォーム時にしてしまうと入居が決まる頃には黄色くなってしまうので、入居者が決まり次第発注することにしているから、直ぐにリフォーム業者に表替えを発注し、「請求書はうちに送って」と依頼しておいた。
目先の利益や損得勘定など、私には関心が無い(もちろん嘘^_^;)