夕方、女性のお客様が来店した。せっかくのご来店だが条件は頗る厳しいものだった。当社にお越しになる前に何軒かの不動産屋に行ったが物件は見つからなかった、とのこと。それはよく分かる。
バスの始発前に家を出るご主人の仕事の関係でバス利用不可、なので立川から徒歩圏で、2DKで、予算は5万5千円から6万、しかもペットがいる。とても感じの良いお客様だったので何とかお役に立ちたかったが、少なくとも私が知る限り該当物件は無かった。
ま、だいたいが、その条件で部屋を探すのは、「家賃6万で六本木の高層マンションを紹介してくれ」というようなもので、もし運よく見つかったとしたなら「ワケあり」「事件モノ」であろう。こんなことを言ってはナンだが、よその業者に行ったなら、条件を言った途端に「ああ、無い無い」と素っ気なく扱われるであろう。
それでも、僅かな可能性にかけるべく当社の近隣で「ひょっとすると何か持ってるかも」と思われる業者を数社教えてあげて、(他社が間に入ると受けない可能性があるので)当社を介さずに直接行くことを勧めたのだが・・・、業者の名前を聞くと表情を曇らせてこう言う。
「その中のA不動産は今借りている部屋を紹介してもらった業者さんで、ちょっとワケがあって行きにくいんですけど・・・」、と。
それって、家賃滞納とか犬の鳴き声などで騒音トラブルを起こしたとか、そういうことではないだろうか。何より、A不動産と当社はとても仲が良い。私が電話したなら一発で「お客さんが行きにくい理由」が判明してしまうだろう。当社としては、後々何かのトラブルに巻き込まれたくはないので正直に話してくれること自体は有り難いのだが、聞いてしまったら紹介できなくなる可能性がある。
少なくとも「手数料だけ入れば後のことは知らない」という商売はしたことがない。お客さんが「ワケあり」の場合は相手の業者さんに正直に事情を話すことにしている。当社の信用問題だから。それで貸すかどうかは管理会社と家主さんが判断することである。
お客さんは「つい口が滑った」のだろうが、自分にとって不都合なことになるかも知れない情報は極力伝えないほうがいいものだ。私が聞いてなければそれまでの話だが、何か(良くない)事情がありそう、と知ってしまったなら「聞かなかったこと」には出来ない。
今日にでもA不動産に問い合わせしてみよう。その結果によっては当社での部屋探しは不可能になる。当社にとっては「当社が事情を知っていたかどうか」は後々重要な意味を持つし、信用問題というだけでなく、無駄と分かっている努力をさせられるのは辛いから。
この方、何故A不動産紹介の今の家を出て、
新しいところを探すのでしょうか。
行きにくいというのはそれに関係あるのではと
思います。
その通りなんです。不動産会社は「転居の理由」を尋ねることがよくあります。理由が、通勤とか手狭になった、という理由なら何の問題もありませんが、話していて、「ん?」と不思議に思うことも多々あります。今回は、たまたま仲良く付き合っているA不動産の名前が出たので本人には訊きませんでした。この場合は、本人より不動産会社の言い分のほうが正確ですので。
賃貸申込書にも「転居理由」を書き込むことにしている会社もありまして、それはとてもいいことですね。書かれている内容が必ずしも「本当の理由」とは限りませんが、審査の参考にはなります。
で、ご本人は「更新が近付いてるのと、今は1DKで狭いから」と最初に仰ってまして、それもあるでしょうが、他にもありそうですね。
今から1時間後には真相が判ります。とくに問題が無ければ出来る限りの尽力はするつもりです。