2012年11月07日

真逆の引越し立会い

先日、あるアパート(2DK)の引越し立会いに行ったら、退去者のCさんからこんなことを言われた。

「長いことお世話になっていたので敷金から戻す分があったとしても返金して頂かなくてかまいません」

お客様は沖縄県出身の30代後半の男性。入居期間は10年ほどで、出張も多く、実質的な入居期間は通算して半分くらいだろうか。室内もキレイで、敷金は2ヶ月分お預かりしているから当然に返却分はある。私が「これだと10万くらいはお返しできると思いますよ。Cさんのお気持ちは家主さんにお伝えしておきますので遠慮なく返金してもらってください」と、伝えたのだが固辞された。

そういう方はたまにいらっしゃる。以前は日野市のアパートで、生活態度がだらしない旦那を持つ若夫婦の奥様が献身的に尽くして見事に旦那を立ち直らせて、退去する際に「ご迷惑をお掛けしたので敷金はお返し頂かなくてけっこうですので」と言われた。家主さんと相談して「敷金の返還分は頑張った奥様へのご褒美くらいに考えて受け取ってください」と言って普通に清算させて頂いた。奥様は立会いの際、私にバーバリーのハンカチをくださって、それは今も私の宝物になっている(過去ログ参照)

「返さなくてけっこうです」と言われれば「返したくなる」し、「なるだけ多く返せ」(それで当然)と先に言われれば「何か清掃代以外に引けるものはないか」と探したくなるのが人情。とくに私の場合はわーい(嬉しい顔)

逆にこんなケースもあった。

住宅新報さんのブログに書かせて頂いたものだが、もうここで書いてもよいかな、と思うので書きたい。

それは、私の賃貸仲介管理業23年の中で最悪の立会い。引っ越し後の室内の様子ではなく、立会いに来ていた連中(5〜6人の男)が、である。

退去したのは88歳の老婦人。私が約束通りの時間に行くと本人はもう移転先(おそらくは長女の家)に行っていて不在。ご高齢なので娘さんがいてくれればそれでかまわない。到着すると直ぐ、リーダー格と思しき50歳前後の男が、自分は名乗りもせず、しかも「長い間お世話になりました」でもなく、いきなり「あなたの従業員証明書を見せて下さい」と言う。私は持って行っていなかった。「客が見せろと言ったら直ぐ見せるよう宅建業法で決まっていますよね。明らかに違反ですよね」と畳み掛ける。たしかにその通りだが、入居時の契約も更新契約も私がしていて私のことは入居者も娘たち(60代前後)も当然に知っているのだから、退去する段になって「従業員証明書を見せろ」などと言われることは想定外で油断していた。これが契約時に言われるならまだ解かる。一人でやってるんだから従業員証明書でもないもんだが。

さらに男は「敷金は全額返してもらえますよね。今時クリーニング代を差し引く業者なんていませんよ」と言う。「契約書を見せてください」とも言ったが、「それはその都度ご本人にお渡ししてありますし、持ってきてはおりません」と言ってやったが、要求通り店に「従業員証明書」を取りに帰るついでにコピーして渡した。徒歩での往復で30分のロスにはなったが仕方ない。たいていの不動産業者は引越し立会いに従業員証明書を携帯していないのを承知しているからこそ要求した、つまり「その道のプロ」だと判る。渡して見せた従業員証明書と取引主任者証の内容をしっかりメモしていたのは私に対する威嚇であろう。

改めて敷金の全額返金を要求したので、私が「いいえ、クリーニング代は差し引かせてもらいます。当初からそのように説明しておりますので」とキッパリ断ると、「私は都庁の3階には何度も行っていてよく知っているんですよ。あなたが違反行為で処分されるでしょうけど、それでもいいですか?」と言うので、「どうぞどうぞ」と言ってやった。すると男は「でしたら、一旦敷金を全部返してください。都庁に訊いて『それは支払いなさい』と言われたら振り込みます」とのこと。都庁が「払え」だの「払わなくていい」だの言うワケがない。全く払う気が無いのは明白だから拒否した。

情けない話である。8年前、お仲間の業者さんから「80歳で、どこも貸してもらえないのですが、何とか家主さんにお願いして頂けないでしょうか?」と相談を受け、たまたま空室募集していた当社の家主さんに相談して「何かあったらオタクで責任を取ってくれるなら」とのことで私が了解して受けた経緯がある。何かあれば連帯保証人だけでなく私も責任を負わされることになるのを承知して審査を通したのだ。

それでいて、そういう心無い言葉の数々である。入居時には感謝の言葉を頂いているが、「あの言葉はナンだったの!?」くらいの話である。法律以前の人間性の問題、と思えてならない。

その後、敷金から清掃代を差し引いて返金したが、何も文句を言ってこなかった。私が添え状をつけたからであろう。中身は、それまでの経緯と私の考え方、である。とくに、

「あなた方は母親の顔に泥を塗っているんですよ。お母様があの場に居合わせたなら何と仰ったでしょうか。『敷金は全額返してくれ』と仰ったでしょうか。あなた方のお母様はそんなことを言う方ではありませんよ。私は、何かあったら私が責任を持つことで審査を通してもらっています。近所まで行った際には用がなくても安否の確認で訪ねたりしています。それでいて『従業員証明書を出せ』だの『敷金は全部返せ』ですか。私のやり方が不満であれば都庁にでもどこにでも訴えればいいでしょう。私は洗いざらい話させて頂きますから」と書いて送ったのだ。今回は相手が相手だからキツイ文面にしたが、ふだんは穏やかに相手の心情に訴えるような文面にしている。でなければ事態を拗らせてしまうこともあるし。

入居者本人である母親は「全く承知していない話」だったと思う。だが、私の顔を知っている娘たちも引越しの立会いの際に居合わせたのに、男たちに任せて黙っていた。いや、下を向いていた。情けない話だ。

娘に「あの男性はどういう人ですか?」と訊ねると、困ったように「婿です」と言うが、そんなハズはない。年齢が釣り合わない。もし本当に婿なら、頼り甲斐がある婿でなく出来の悪い婿である。どういう経緯や繋がりで依頼したかは不明だが、おそらくは「そういうのを専門に扱っている団体」なんだろう。来ていた男たちは親族でも婿の会社の同僚というふうでもなくバラバラだったし。どのみち人間としてはクズである。


私は「返せ」と言われても「返さなくてもいい」と言われても当たり前の清算をしている。もちろん、それはどこの業者も同じだと思う。言えるのは「どうせ同じなんだから『返さなくてけっこうですよ』と言ったほうが得」ということ。ま、中には「けっこうです」と言われるまでもなく「返しようがないケース」もあるが(爆)







posted by poohpapa at 07:53| Comment(4) | お客さん(入居者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こういう人もいるんですね。びっくりしました。毅然たる態度に敬服します。
Posted by たか at 2012年11月07日 08:18
たかさん、おはようございます

こちらがうろたえたり、スキを見せたらどんどん突け入ってくると思いますね。母親の知らないところで事態が動いていたんでしょう。年老いた母親に「そんな場面」を見せないで済んで良かったです。娘たちも、そういう展開になるとは思わずに任せたんだと思いますが、どういう経緯で「そういう人たち」に依頼することになったことやら。

男たちの中には本当のお婿さんもいたようですが、リーダー格の男は娘の誰かと結婚したなら旦那のほうが10歳は年下、と思えるので不自然でした。本当のお婿さんと思しき男性は穏やかで、私の言うことにいちいち頷いて耳を傾けていましたが、リーダー格の男はとても攻撃的でした。

愚痴になりますが、ここまでやってもタダ働きであります。不動産屋は皆そうです。何だかなあ・・・(*^^)v
Posted by poohpapa at 2012年11月07日 09:25
poohpapaさま

お久しぶりです。
そういうことを請け負う輩っているんですね…。
何も事情を聞いていないのか、聞いていても兎に角少しでもお金が必要だから返金を迫ってきたのか。
無償で請け負っているとしても、人間性がおかしいとしか思えませんね。
本当にどうしてそんなことを依頼しようと思うのやら。

さて、実は先日私も引越しをしまして、ついに?新居を構えてしまいました。
結局自分の育った土地に戻った形です。
自分の引越し自体は友人達に手伝ってもらいましたが、引渡しの立会いも家主さん不動産屋ともに15年ほどの付き合いということもあり、非常にスムーズでした。
むしろ、もう少し傷とか確認しなくて大丈夫なのかな?と思うほど。
まあ、家主さんと同じ建物ということもあり、毎朝のように挨拶したり建物の不具合について相談をしあったりしていたからかもしれませんが(笑
家主さん夫妻には、顔と名前が一致する人がいなくなる!と寂しそうにされたのがちょっと嬉しくもあり寂しくもありな気分です。
Posted by のの at 2012年11月07日 11:17
ののさん、こんにちは

そういうのを請け負う団体がいくつかあるのは承知しています。無償で請け負うのか、基本料金+成功報酬なのかは不明ですが・・・。ただ、そういう交渉事は司法書士とか弁護士しか受けられない法律になっていたかと思いますので、とりあえずは無償でやって、後で別の形で支払ってもらったり選挙で投票してもらったり、ということかも知れません。

HPで、「こんな相談を受けて、こうしたら幾ら返ってきた」とか実例を書いている団体もありますね。弱い人の味方になって、正当に要求しているのならけっこうなことですが、ほとんどはそうではないでしょう。「我々はこれだけ力がある」と誇示することも目的でしょうから、理由も事情も約定も関係なく「取れるだけ取ろう」とするでしょう。彼らに正義や道徳観念はありません。

最近では、司法書士がHPで「敷金返還交渉を代理します」と謳っていたりします。公正に清算してもらうのが目的ならそんなのは必要ありませんから、やることは記事本文にある団体と変わりないでしょう。

ところで、ののさんも新居に移られましたか(*^^)v

今までの家主さんが残念がるのもよく解かります。気心が知れていて、何もトラブルを起こさないご家族であれば、ずっと入居していて頂きたいものです。私も、そういう入居者さん、けっこういます。出ることになって残念がられる入居者さんは「良い人たち」と言えますね。私なんか、正直なところ逆に「出て行ってくれたら嬉しい」入居者が何人かいます。そういうのに限って出て行かないんですよね、これが(爆)

でも、ご自分の育った土地に戻られたのなら快適に過ごされていることでしょう。良かったですね(*^^)v
Posted by poohpapa at 2012年11月07日 12:06
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