2004年02月22日

世にも珍しい会社

私の勤めている会社は、世にも珍しい会社、だといえます。
世間の常識とはかけ離れています。

以前、私が勤めていた不動産会社が13年前に倒産をして、私が残務処理をしている時に、今の社長から声をかけられました。「良ければ不動産部を新設してあげるから、やってみないか」と。要は、開業資金を出してあげるよ、と言われたわけです。

普通ならここで、「有り難うございます。よろしくお願いします」と頭を下げるべきところでしょうが、私は違ってました。
「お引き受けしてもいいですけど、2つ条件があります。1つは、私の好きなようにやらせて頂けること。もう1つは、休みは好きなように取らせて頂くこと。それで宜しければお引き受けします」と、逆にこちらから条件を出しました。すると社長は、「ああ、いいよ」と、あっさりOK。「カネは出しても口は出さないでくれ」という要求を呑んでくれたのです。

以前はかなりいい給料を取ってたこともありますが、私自身、もうノルマとか目標に追われることには疲れていました。

だいいち、有給休暇を貰うのにも、数週間も前から上司の顔色窺って順番にハンコを貰って、周りに気を遣いながら、やっと休める、なんて、人間らしい休みとは思えません。朝起きて、雨戸を開けて、「うわーあ、いい天気だなあ、こんな日に仕事してるのはバカらしいなー。よし、休んじゃえ」というのが本当の休み、だと思うのです。それを社長に言うと、「僕もそう思うよ」とのこと。1人で営業しているので、私が休む、即ち、会社が休み、ということになるのですが。

この13年間に「雨戸を開けて」休んだことはまだ有りませんが、頭にきたことがあって、昼前に店を閉めて帰ったことは何回か有ります。そんな時も、社長に「今日はもう帰りますから」と電話すると、「ああ、嫌な客でも来たか。そんな時は早く帰って家族の顔を見るのが一番だよ」と言ってくれます。間違っても、「営業時間は守りなさいよ」などとは言いません。ですからストレスも溜まりません。社長は私の一番の理解者です。有り難いことです。

社長はひと月に一度くらいお店に来ますが、この13年間、ただの一度も社長から「ちょっと台帳を見せてごらん」と言われたことはありません。言われないから見せてもいません。「出資してるんだから、儲かったなら僕に少しはよこしなさい」とも言ってきません。それどころか、「儲かったら全部取っても構わないよ。その代わり、ここから先は苦しくても助けを求めてくるなよ」とさえ言ってくれます。もちろん承知していますが、それにしても驚くべき経済観念です(爆)。
たまに副収入(家主さんからのお小遣い等)があった時に、「社長、臨時収入があったんでメシ奢りますよ」とご馳走すると、それだけで喜んでくれます。

その会社に社員が永く居つくかどうかは、他所の会社と比べて給料がいくら高いとか低いとかいうことでは決まりません。上に立つものが、部下の苦労や努力をいかに理解してくれているか、とか、部下が仕事をしやすいようにいかに配慮をしてくれるか、に尽きると思います。結果だけ見てガミガミ言ったり、部下の手柄を横取りする、なんて上司は腐るほど見てきました。私は転職13回です。学校を出て、最初の会社に5年、次いで6年、今の会社に13年ですが、その間の10年間に転職11回です。ホント、目まぐるしく変わりました。ですが、その甲斐あってか、ようやく「この人にならついて行ける」という人に出会えた思いです。

社長はこんなことを言います。「人間、遊び心を持って仕事をしないと良い仕事はできないものさ。ふだん遊び心を持って良い仕事をしている人のところに大きな仕事が舞い込んで、気合を入れて遊び心抜きで100%の仕事をすると、つまらない結果しか出ないことがよくあるもの。ま、常に80パーセントくらいの力で仕事するのが一番だよ」と。
社長、申し訳ありませんが、私は80パーセントが「遊び心」です(爆)

さて、私がうちの会社を、「世にも珍しい会社」、というのにはもう1つ訳があります。

うちの「春闘」は、世の中と全く逆だからです。
ふつう春闘は、労働側が「もっと出せ」、経営側は「そんなに出せない」という攻防のハズです。
うちの会社は、私の給料は私が決められるということもあって、社長が私に、「もう少し給料持っていきなさいよ」と言い、私は「いえ、いいですよ。これくらいあれば何とか生活できますから」と辞退しています。社長は私の半分も給料を取っていません。私はそれを知っていますから(笑)

私は40歳を過ぎた頃から、「分相応」と「足りるを知る」をモットーに生きています。
それを教えてくれたのも社長かも知れません。

私は今、公私とも、とても充足しています。
posted by poohpapa at 23:08| Comment(8) | TrackBack(1) | うちの会社、社長、同僚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
だからここの文章は面白いのですね。
文章に人柄でるんだなぁ。
Posted by 化ヶ學兄 at 2004年09月10日 03:33
化ヶ學兄さん、おはようございます

お褒め頂きまして有り難うございます。今のところ、「文系」の方にも、「理系」の方にも、喜んで頂いております(*^^)v

ご指摘の通り、良くも悪くも「人柄」が文章に出てしまっております。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

コメント、有り難うございました。
Posted by poohpapa at 2004年09月10日 05:50
はじめまして。

「嫌な客」で検索してこちらにたどりつきました(済みません)。
まだ途中までしか読んでいないのですが、
もう我慢できません。書き込みさせてください。

現在の社長さんとpoohpapaさんの信頼関係があるからこそ
全面的に任せる、任せてもらう、という仕事ができるのですね。

会社の大小にかかわらず、最近はそういった会社での人間関係はほとんどないと思います。
本当にうらやましいです。
poohpapaさんのお人柄がうかがえます。
昨年、ちょうど賃貸マンションを探していたのでお世話になりたかったです。

私はお客様から電話でのお問い合わせにお答えする仕事をしています。
どうしてもストレスが貯まるので、
毎日仕事中に読ませていただいています(爆)が
本当に、がんばろう。がんばって良い対応をしよう、と思えます。
内容によってはよくぞ言ってくださった!とすっきりすることも
しばしばです。
これからもお邪魔したいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
Posted by 蒼い炎 at 2005年03月01日 17:15
蒼い炎さん、こんにちは

アクセス解析を辿ると、けっこう仕事中にお読み頂いてる方が多いようで(爆)

私の父親は既に他界していますので、社長は親父のような存在でもあります。先日も、独り者である社長に、「もし社長のお子さんが誰も社長の老後の世話をしたくない、と言ったなら、うちで看させてもらいますから」、と伝えました。「そういう訳にもいかんだろう」、と仰ってましたが私は本気なんですよ。むしろ、血の繋がった子供とその伴侶の元に身を寄せるなら、他人の方がよほど良いかも、と考えているからです。ちなみに、社長には財産は無く、借金だけ背負っています。したがって、遺産狙いではありません(笑)

これから休止状態になるサイトですが、ごゆっくりお寛ぎくださいね。
コメント、有り難うございます。
Posted by poohpapa at 2005年03月02日 10:25
はじめまして。

自分もpoohpapaさんと同じ業界の
雇われの身であります。

素晴らしい社長の様で、本当にうらやましい
です。

ウチの会社はというと、社員は少ないのに
高回転で、社員が目まぐるしく入れ替わります。
会社の経営内容は良いのですが、困ったモノです

原因は社長が何かあると、社員を苛めちゃうん
です・・・それが原因で何度か社長とぶつかった
事はあるのですが、結局その後1週間は良くても
また、復活・・・・

ハッキリ言って社長の『病気』がなければ
もっと大きな会社になっていると思います
Posted by browneyes at 2005年03月21日 11:31
browneyesさん、こんにちは

本当に私は恵まれています。四半世紀の間、いろんな会社を転職しましたが、「この人ならついていける」という人に巡り会えましたので。今までにも、ある一点だけを見れば充分にそう思える人に出会えましたが、この人なら、とまでは心酔しませんでした。

私にとっては、ある意味、親父以上の存在です。それは、他人だからこそ、ということですね。

先日、私が勧めて宅建を取らせた女性に不動産会社への就職を斡旋しまして、その会社も browneyesさんの会社同様社員の出入りが激しいんですね。社長は悪い人ではありませんが、大事なところでの気配りに欠けているようです。完全を求めている訳ではなく、及第点で充分なんですが^_^;

コメント、有り難うございます。お互い、頑張りましょう(*^^)v
Posted by poohpapa at 2005年03月21日 13:22
暇に任せてサーフィンしていたら、このプログにぶつかりました。
非常に楽しく読ませてもらっております。
でも、本当に世の中、いろんな人がいるもんですね。私もサービス業に携わっており、嫌な客もいれば、「本当にお相手させて頂いて本当に良かった!」、と思うことがあります。
結局、お金の問題、と引け際の態度、というので、かなり相手の評価が違って来るということなんでしょう。
自分も気をつけないと。

Posted by occhan at 2005年12月16日 22:28
occhanさん、こんばんは

お楽しみ頂けたようでホッとしております。と申しますのも、最近は、とみに言い切る文章や記事が多くなっておりまして、これでは敵を作るばかりだなあ、と、自分でも気にしておりますもので^_^;

occhanさんが仰るように、カネに対する価値観、引き際、というのは、人として本当に大切ですね。

実は、今日も社長と話をしていまして、当社の出資者が私をクビにしたがっているとのこと。話して分かる相手ではないので理解してもらうのは難しいのですが、社長が「私の良き理解者」であることだけが頼りです。まあ、その件では近々記事にするつもりでいます。またどうぞお読み頂き、一緒にお考え頂けたらと存じます。

コメントを頂きまして有り難うございます。
Posted by poohpapa at 2005年12月16日 22:50
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