別々の2人の入居者から、「殺してやる」と脅迫状をもらったからです。
2人には共通点がありました。
それは、2人とも、家賃を半年も滞納していて、私から「契約解除」を通告されていた客なのです。
まず、1人目。25歳の韓国籍の男。
風呂なしの家賃3万という部屋に住んでいました。お父さんは立派な方で、若干の知恵遅れがあるその息子を連れて来店し、「何かあったら私が責任を持ちますからよろしくお願いします」と丁寧に挨拶されました。その息子の生い立ちから現在までを正直に打ち明けてくれ、責任を持つ、とのことなので、ある家主さんに相談すると、「結構ですよ」というご返事。建物も古く、お世辞にもキレイとは言えない部屋に案内すると、お父さんは「これで充分です」とのこと。男は近所のコンビニで働いていて、契約後、数ヶ月は家賃もちゃんと払っていました。それが、滞り始めます。
男には悪い癖がありました。「ギャンブル」です。父親は、それを直すために男を家から独立させたのです。
私は父親の思いも分かっていたので、「責任を取る」と言っていた父親にはあえて請求をせず、できるだけ本人が払うように本人に連絡を取り続けました。ですが、何度連絡しても返事が帰ってくることはありませんでした。徐々に滞納が嵩んでいったので、やむを得ず父親に状況を説明すると、できる範囲で送金してはくれました。
男のアパートの向かいに、たまたま当社の管理物件の空室(2階)があって、夜、その部屋から男の帰りを待ち続けたこともあります。気分は殆ど「探偵」でした。
ある時は、部屋に入ろうとした男の後ろから声をかけて、逃げようとする男を投げ飛ばして腹這いにして上に乗って、携帯で警察を呼んだこともあります。時には「刑事」にもなります(爆)
半年分ほど滞納したところで、父親が「ご迷惑をおかけしました。もう出します」とのこと。キレイに部屋を明け渡してくれました。父親は涙ぐんでいました。「情けないですよ・・・。何でこんなふうになってしまったものか・・・」と、私に、泣きながら話しました。
男はその後、家には戻らず友人のアパートに転がり込んだようですが、直後に「脅迫状」、です。
会社の郵便受けに「俺をこんなメに合わせたお前を殺してやる。毎日後ろを気にしながら歩くことだな」という内容で、差出人の名前はありませんが、その男に間違いありません。
父親に電話すると、「それは息子に違いありません。自分が悪いのに逆恨みなどして・・・」と絶句。
その父親も、当初は月に1万ずつ送金してくれていましたが、今は止まっています。焼肉店をやっていて、不況に「狂牛病」の追い討ちです。苦しいのは分かっています。私としては家主さんへの責任も果たさなければいけませんが、請求は控えています。私は、その父親を信じています。今は本当に払えない状況にあるのでしょう。
言葉で表現するのは難しいのですが、私は、結果だけ見て、「払ってくれたから信用できる」、「払わないから信用できない」という判断はしません。「結果が全て」というお考えの方も相当いらっしゃるでしょうが。
男はその後も当社の近所に住んでいて、たまに見かけます。お尻のポケットに「競馬予想紙」を入れて歩いてたりします。ある時、街で見かけて後をつけてみるとデパートに。「何しに行くんだろう・・・」と更に後をつけると、足早に「デパ地下」に直行。そう、試食品をつまみ歩いていたのです。・・・侘しくなって尾行を止めました。
こんなこともありました。男は暫くバイトしていたコンビニをクビになったのですが、その理由というのが「レジから10円を盗み出したところが防犯カメラに映っていたから」というものです。父親はそのことも、「恥ずかしい・・・」と苦笑しながら話してくれました。
男の退去時に、住んでいた部屋の押入れには大量のレトルト食品とインスタントラーメンがあって、「処分してください」という父親から私が譲り受け、そのまま別の入居者のところに持って行きました。それが、2人目の「殺してやる」の男です。それはまた続編で。
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