2004年02月25日

「殺してやる!」その2

さて、もう1人の「殺してやる!」男、のお話です。

こっちの方が複雑怪奇です(爆)

実はこの入居者も、例の「○価○会」の信者です。現在40代半ば過ぎ。契約解除時は44歳くらいだったと思います。彼とは不思議なことに最近まで交流がありました。

入居していた期間は10年ほど。入居時は34歳、外資系のコンピュータ会社に勤務していて、申込み内容は悪くはありませんでしたし、家賃もきちんと払っていましたが、「電圧を変える特殊な機器を付けると電気代が半減する画期的な装置」という物の販売を知人に勧められて会社を退社してしまったところから雲行きがおかしくなりました。たしか、この「装置」に関しては、今も全国で裁判が行われていると思います。

家賃の滞納が始まり、滞納額も半年分にもなりました。少しずつ払ってくれてた時期もありますが、滞納が始まってから明け渡しを完了するまでの期間は6年を超えます。私にとっては本当に長くて苦しい戦いでした。

彼が入居していたアパートは当社で賃料管理をしているので、入居者が当社に家賃を振り込んでこない場合、当社で立て替えて家主さんに送金することになります。当社の立替分は50万を超えていました。もちろん、その間に何度も催促しています。始めのうちは向こうから連絡をくれていましたが、それがだんだんとこちらから連絡しないと何も言ってこなくなり、やがては何度連絡をくれるようお願いしても何も言ってこなくなりました。ま、皆だいたいそんなものですが。

留守電に録音したり、アパートまで出かけていってドアに「至急連絡下さい」という張り紙を何度貼っても、です。ちなみに、ドアへの張り紙には、「連絡下さい」と「私の個人名」しか書けません。もし、「至急家賃を払ってください」などといった具体的な用件や「不動産会社名」を書いてしまうと、不特定多数の人に「この人家賃滞納してるんだ」と知らしめることになって、裁判にでもなればこちらが負けることになります。ホントは「知らしめたい」くらいの気持ちですが。

催促の過程では、彼に就職先を紹介して、「給料が入るようになってからでいいから少しずつでも追いつかせるようにしてよ」と言って聞かせたこともあります。失業してカネのない人間に「さあ払え」と催促するより、金が入ってくるようにしてやってその後に払ってもらう方が合理的だと私は考えているからです。でも、その会社も3ヶ月で辞めてしまいました。

私からの催促に、彼は「アパートに火を点けて死んでやる」などと言うようになります。私は「死んでもいいけど他の人を巻き添えにするようなことはしないでくれよ」と言ってやります。本当に死ぬ人は黙って死ぬものです。「死ぬ!死ぬ!」と叫んでいる間は死んだりはしません。

この男、金がなくなるとモノを全く食べなくなります。今もそうですが痩せ細っています。
で、「殺してやる!その1」で登場したレトルト食品やインスタントラーメンを届けてやることにしたのです。全部で50食分以上ありました。「こんなものは栄養にはならないから、腹の足し、くらいに考えて、日に3度のメシはちゃんと食べなさいよ」と言うと、「分かっています。2日前から何も食べてなかったから助かります」とのこと。
(アンタ見てりゃあ食べてないことくらい分かるよ;爆)

ですが、家賃の滞納は相変わらずで、保証人である母親に連絡しても、「それはアタシだってねえ、払いたいよ。払いたいけどねえ、無いもんはどうしようもないもん」という無責任な言葉だけ。

食糧支援(爆)をした直後にまた連絡が取れなくなり、当社も限界で、やむを得ず「契約解除」の通告書を出すことに。(援助を受けながらも協議に応じないどこぞの独裁国と似ています)

翌朝出勤すると会社の郵便受けに茶封筒が・・・。昨日届けた通告書でした。カッターで斜めに切り裂かれていて、封筒の表には、自分の血で書いたと思われる大きな「死」の文字が・・・。
情けなくなりました。

彼が派遣で勤務していた会社からも当社に、「そちらで管理していらっしゃるアパートに住んでる○○さんと連絡が付かなくて困っています。何か方法はないでしょうか?」との問合せの電話がありました。なんでも、「もう来ないなら来ないでいいから、会社のIDカードだけは返してもらいたい」とのこと、ごもっともです。で、彼の留守電にその用件を入れると、すぐ折り返しの電話が。「分かってますよ。これから会社に行って皆殺しにしてやる!」と叫んで電話をガチャン。

私は直ぐにその会社に電話をして、「気を付けるよう」言いました。私は彼が「本当にやる」ことを知っていたからです。

彼は警備員と駆けつけた警察官に取り押さえられました。警察から「調書を作成したいのでこちらまで来てもらいたい」との要請があって、半日店を閉めて出かけたりもしました。

私は警察官にこう言いました。「彼がやったことは確かに犯罪です。私も家賃の滞納に手を焼いていました。ですが、大変気の毒な境遇で育って、今もそれは変わりません。根は本当に真面目なんですよ。真面目だからこそ追い詰められてしまうのです。その辺の情状は酌んでやってください」と。

彼は「心神喪失」として起訴猶予で釈放されることになりました。
その後、郷里の伯父さんがアパートを明け渡して滞納分もきちんと精算してくれました。半年に1度くらい、思い出したように電話もかかってきて近況を報告してくれます。

ですが、昨年の11月に「すみません、今、都内にいるのですが、財布を落としちゃって家まで帰れません。おカネ貸してもらえませんか?」との電話。「いくら必要なの?」と聞くと、「1万でも5千円でもいいです」とのこと。「田舎に帰るのにそんなになくても足りるでしょう。会社のカネに手をつけることはできないから、僕の財布の中にある分でよければ貸してあげるけど」と言うと、「あ、それでもいいです」と言うので、財布の中にあった全財産(恥)1260円を貸すことに。家に帰る為、だけなら充分だったハズです。

彼は「財布を落とす」ような人ではありません。嘘であることは分かり切っていました。「1週間くらいで返せると思います」と言って帰っていきましたが、すでに3ヶ月。返ってこないことも分かっていたし、1260円は、金額的には返らなくても諦めのつく額です。

電話を受けた時、「これで縁が切れるな」とも思いました。
だから貸したのです。
posted by poohpapa at 08:05| Comment(0) | エピソード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]