2004年02月28日

「別れた方がいいよ」その1

長いこと営業をしていると、新婚さんの部屋探しなどをしていて、そのカップルが先々別れるかどうかはすぐ分かる。それだけは100%外さない自信がある。

あるお客さんなど、これから婚約する同僚(カップル)を連れてきて、私としばらく話をさせて、一緒に店を出た後すぐ引き返してきて、「今の2人、どうでした?上手くいくと思います?」と私に尋ねる。「あたしゃ、占い師かい!」(爆)

私の営業方法は、商売と関係が無い雑談が7??8割を占める。そのほうがお客さんと打ち解けて本音も引き出せるからだ。同時に、本音の中から本性も見えてくる。

別れるかどうか何故分かるか、と言うと、「私の第六感」、なんかではない。明確な根拠があるのだ。
別れることになるカップルの共通項、それは「思いやる気持ち」の欠如である。両方、あるいはどちらかに欠けていても別れることになるし、今はアツアツで表面に出ていなくても、「やがて出始めるな。そうしたら保(も)たないだろうな」ということは容易に予測できたりする。ほとんどが顔に出ている。

さすがに客商売だし、私も家族を養わなければならないから、すぐに「アンタたち、早く別れた方がいいよ」とは言わないし、求められるまま部屋探しをする。「言ってやった方が親切」などとは考えない・・・、ことにしている。

それでも、15年間に、2組だけ、「すぐに別れた方がいいよ」と言ったことがある。その1組目・・・

どんなカップルだったかというと・・・、
店に入ってきた時に、私はとにかく驚いた。彼の方は、「どこにでもいる若者」、という感じで、着ているものも質素で目立たない。彼女の方は、というと、「さっきまでパリコレの舞台を歩いていたんじゃないか」というくらいのお洒落な装い。ツバ広の帽子は、さながら「マイ・フェア・レディー」のオードリー・ヘップバーンであった。スタイルもよく、かなりの美人。この2人が並んで街を歩く姿は何に例えられるのであろう・・・。

「アンタ、自分のファッションにそんなに気を遣ってるのに、なんで彼氏の服装には全く無頓着なの?」と言いたい気持ちを抑えて希望条件を聞くと、予算は無いのに求めているおウチは「風と共に去りぬ」に出てくるような洋館のイメージ。(なるほど・・・、で、そのファッションね!)

彼氏の方をチラッと見やると、下を向いている。有るわけない、と分かっているのだ。

早々にお引き取り頂いた。
が、1年経って、またやって来た。条件は1年前と変わっていない。相変わらずヘップバーンであった(笑)

彼女が何かでちょっと店から出た時に、彼と率直に話をした。

「有ると思う?」
「いいえ。でも、それが彼女の夢だから・・・」
「あの後(1年前)どこかで決めたの?今どんなところに住んでるの?」
「結婚前から住んでる僕のワンルームに2人で暮らしています」(なんとまア・・・)
「あのね、あなたに負担を強いていながら、いつまでも自分の夢だけを追い続けているなんてヒドイ話ですよ。あなたの表情には疲労が滲み出ていて、相当に辛いのがよく分かるよ。現実を理解させるべくちゃんと話をして、それでも彼女が譲らなければ、この先もあなたの心労は溜まるばかりでしょ。あなたの我慢だけで幸せが成り立っているような夫婦なら、早く別れた方がいいと思う。奥さんがキレイなだけでは幸せにはなれないよ。あなたにも幸せになる権利が有るし、人生やり直すのなら早い方がいいに決まってるじゃない」(我ながらキツイことを言ったものだ≠爆)

そこに彼女が戻ってきた。

「何か出てきたら連絡しますね」とだけ言って帰ってもらった。

数ヵ月後、2人は別れた。
posted by poohpapa at 18:22| Comment(0) | エピソード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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