テレビの影響力は凄まじい。
旅番組でホテルを紹介すると、番組が終了しないうちに予約の電話が殺到し、1年以上先まで予約が埋まることもあるし、グルメ番組で紹介された店には行列ができる。
時として、我々不動産業者にも多大な影響が出る場合がある。
数年前、テレビ朝日の「ニュースステーション」で、「礼金、更新料」に関する特集を組んだ。
元々、テレビ朝日、とりわけ「ニュースステーション」は報道の姿勢が偏向している。さも、「我々は視聴者(一般市民)側の視点で物事を捉えていて、常に消費者の味方」、であるかの如きスタンスをとっていて、「報道のタレ流し」をすることもしばしばある。「所沢野菜ダイオキシン汚染報道」など、典型的な例だ。
特集は、「礼金、更新料は、払う必要の無いもの」という取り上げ方で、視ている側、とくに賃貸入居者にとっては都合のよい内容で、「そうだよなあ、そうだよ!よく言ってくれた!」と思わせるものであった。
特集の中で、いきなり街の不動産屋(2軒)にリポーターが入っていって、「すみません、何故、礼金とか更新料という制度があるのですか?」と尋ねるシーンがあった。
不動産屋は2軒とも、「さあ、昔からそうなってるからねえ」というような答え。なんの心の準備もなく、マイクとテレビカメラが入ってきて普段は考えたこともない事柄について質問されれば、無理も無いというものだ。おそらく、もっとたくさんの不動産屋を取材しているはずだし、正しく説明した不動産屋もいたのだろうが、番組の趣旨からすれば、その2軒の不動産屋のコメントは、「待ってました!」というものだから、他はカットされているに違いない。
「昔からそうなっているから・・・」という回答を得ることで、視聴者に「明確な根拠もなく払わせているカネである」と印象づけることができる。いろんな番組で、街の人や近所の人に意見を聞いたりしているが、集まった意見のうちどれを取り上げるか、どう編集するか、は制作者の意のままである。テレビで放映された(インタビューへの)回答者の中には、「私の言ったのはそんな意味じゃないのに・・・」と困惑する人もいるであろう。我々視聴者は、ゆめゆめ「それが全部」、と考えてはならない。
特集の後、久米 宏が、「私はねえ、どうも欲の深い大家と阿漕(アコギ)な不動産屋が結託して消費者から意味の無いカネを巻き上げようとしている、そうとしか思えないんですよねえ」と笑いながら、隣にいた朝日新聞論説委員に話を振っていたが、「愚かの極み」ともいえる暴言である。久米 宏に、ニュースを伝える資質は無い。与えられたソースについて「事実かどうか、正しいかどうか、自分の頭で先ず考える」ということをする人物ではないからだ。だから、「所沢野菜ダイオキシン汚染報道」訴訟も起こされるし、多くの政治家からも、しばしば番組内容を問題視される。
放送直後、うちに更新にみえたお客さんから10人以上連続で「更新料って払わなくてもいいんですよね」と聞かれた。驚異的な視聴率である(爆)
私はこう答える。
「はい、そのとおりです。六法全書のどこにも、払いなさい、とは書いてありません。
でも、一応、私の説明を聞いてから更新料を払うかどうか判断なさってください。
アパート経営もビジネスです。家主さんはアパートを建てる際に、いくらで貸すか(貸せるか)を先ず考えます。もちろん、定期、不定期に入ってくる礼金や更新料も計算に入っています。入居者の退去の際に、次の人に貸すためのリフォーム代もかかります。退去者より家主さんの負担の方が圧倒的に多いものです。もし、明日から法律が変わって、礼金、更新料は受け取ってはならない、となったら、家主さんは今の賃料のまま貸すことはできなくなります。それは、お分かりになりますよね。誰だって、赤字になってまでアパート経営なんてしません。賃料収入より、ローンや税金やリフォーム代や修繕管理費等といった支払総額の方が多くなるなら、駐車場にしていた方がマシなくらいですから。
もし、あなたが、更新料は払いたくない、と言うのであれば、私も無理にとは言いません。ですが、今回、値上をしなかった現在の家賃は見直さなければならなくなります。当然ですよね。
私はどちらでも結構です。どうなさいますか?」と。
お客さんは、100%、「なるほど、そういうことですか」と、納得して更新料を支払ってお帰りになる。
私自身、礼金や更新料が良い制度だとは思っていない。それどころか、終戦直後から残る「悪しき慣例」だと思っている。
終戦直後に、焼け野原となった街を、子供の手を引いた親子がトボトボ彷徨(さまよ)っていて、焼け残った家の主が、「どうしました?行くところが無いなら、幸いにうちは焼け残っていて、使ってない部屋もあるから、そこにお入りなさい」と声をかけ、「ありがとうございます。本当に助かります。ただ家賃を払うだけ、という訳にもいかないので、別に何がしか受け取ってください」、というのが礼金の始まりだったのであろうか。
別の見方をすれば、昔の人は心に余裕があった、とも言える。
更新料にしても、「引き続き住みます」と言ってくれる有り難い入居者から何故2年毎にカネを取るのか、理に適っていない。
礼金も更新料も、地域によって制度のあり方が違うので、法律として統一したり全廃するには時間もかかるし、クリアしなければならない問題もたくさんある。いずれにしろ、やがてはなくなるものであろう。
私に言わせれば、礼金、更新料よりもっと奇々怪々なものがある。
それは、「手数料」だ。その問題は、また、いずれ。
物事の表面だけを見て事の善悪を判断するなら、「浅はか」の謗(そし)りは免れない。マスコミにあっては尚のことだ。
3月末で、「ニュースステーション」のメインキャスターである久米 宏が降板する。非常に喜ばしいことだと思う。
2004年03月02日
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私は平成12年に宅建を合格し去年管理業務主任者試験に合格したのですが、今年5点免除にもかかわらずマンション管理士の試験に挑戦しましたが、見事に敗退いたしました。。
会社の3人で受験して社長が39点(早稲田の法学部)男子社員が34点(6大学)私(高卒)30点だったのですが、その時点で私の不合格は決定していましたが、タックやレックの解答がどんどんかわって社長34点男子社員32点私28点になり誰も去年の合格点に届かないことになりました。(去年38点合格8%)今年も8%くらいになる予定なんですが、各専門学校で合格推定点がバラバラで34点から30点ということです。最高で8点も落ちる試験なんてあるのでしょうか?宅建講師時代にありましたか?
私は今、会社の中でつらい思いをしています。ちなみに大学に行っていないのは私だけ。。。
なんなら合格点35点になってくれーと(悪意)心のなかで叫んでおります。悪徳さんの推定点があれば教えてください。恨みません約束します。
悔しいお気持ちは良く分かります。
合格ラインが前年より8点も落ちる試験なんて・・・、有るんですね、それが(笑)
平成元年までの宅建試験は50問中、35問正解していれば合格していました。翌平成2年、出題陣のメンバーが総入れ替えになりまして、問題の傾向がガラリと変わりまして、従来の「法律ではどれが正しいか(誤りか)」、という設問から、「裁判所が法律をどう解釈して運用したか」を問うようになりました。これで、合格ラインが一気に26点になりました。それでも、例年の合格率の平均13%弱には及ばず、合格ラインを25点にする話もあったそうですが、いくらなんでも「資格試験で半分正解していれば合格」、という訳にもいかず、26点になったということです。例年の合格率にするためには22点にする必要があったといいますから、酷い話です。出題者の自己満足に振り回されてしまった受験生がたくさんいたと思います。私の知人にもいました。
私は最低限、「宅建」を持っていれば困らないので、それ以上勉強しようとは思いませんが、さくらさんの妹さんは偉いですよ。若いから、なのかなあ。
また頑張りましょう!