今の時期、地方から、進学や就職で上京しての部屋探しに母娘で来店されるケースも多い。
いくつか条件に合う物件をご案内して、その中に、マンションの入口が「オートロック」になっている物件があると、母親はたいていこう言う。「あら、○○ちゃん、オートロックよ。ここなら安全ね」、・・・ではなかった、「あんら、おったまげたナァ、ずどうドアだべさ。こんだらもったでぇじょうぶでねえけ」と喜ぶ。
だが、「オートロック」は本当に安全なのか。
答えは「NO」である。むしろ、「安全」だと思い込む心理にスキができる。
私は、100%、オートロックの建物に侵入できる。泥棒は既に「この手」を使っているだろうから、あえて公表する。
「オートロック」の仕組みに関しては、改めて説明するまでもないと思うので、ここでは省略する。
まず、一般的な方法としては、中から誰か出てくるのを待つ、というもの。
外から居住通路に入るには鍵や暗証番号が必要だが、中から出る時は単なる自動ドアだから、出てくる人とすれ違うように入ることができる。出てくる人は入ろうとする人に「あなた、ここの居住者ではないでしょう。入らないで下さい」とは言いにくいし言わない。
もうひとつ、これが高等テクニック(笑)
入口にあるインターフォンを使って堂々と進入する手口である。
どの部屋でもいいから適当に部屋番号を押す。できれば、郵便受けに名前が書いてある部屋を選ぶ。留守なら他の部屋番号を押してみる。その部屋の住人が居れば、「○○さ??ん、郵便局です。書留です」と言う。「○○さ??ん、宅急便です」のケースもあるが、ロビー脇に宅配ボックスが設置してあると、この手は使えない。ここで重要なのが名前である。名前を呼ばれることで、相手は「本当に郵便局員」だと信じこんでしまう。すぐに部屋の中からマンション玄関のドアを開錠してしまうので、これで建物内に進入することはできる。
「郵便局」だと言われた住人は、部屋のドアの内側でハンコを持って待機しているだろうし、「宅急便」だと言われたら、郷里からの「米やリンゴ」を思い浮かべてワクワクしながら待つだろう。だが、いつまで待っても来るはずはない。住人が居る部屋には用がないからだ(爆)。「おかしいわねえ」と思った頃にはひと仕事終えられている。
「オートロックだから安心。不審者は入って来れない」、と思い込むことで危機管理意識が薄れてしまうことが怖いのだ。
安全対策としては、「表札に父親のフルネームを書いておくことで、男性の部屋だと思わせる」とか、「洗濯物には男性用の下着を混ぜて干す」とかが、よく言われる方法で、実践している人も多い。
ここで、夜の安全対策として、とっておきの方法をひとつ紹介しよう。
「寝るときに、玄関(外側)に向けて黒っぽい(暗い色調の)傘を広げておく」というものである。
狭い玄関に外向きに傘を広げられると、容易にはタタメないし、うっかりぶつかればガリガリと物音がする。
それだけで合鍵やピッキングでの侵入を回避できる可能性がある。
もちろん、窓側には通用しない方法であるし、照明を点けっぱなしで寝る人には効果的ではない。
かつて、私が案内した物件には、こんなのもあった。
建物に到着すると「オートロック」であった。私は自信満々にお客様に説明した。「どうです、オートロックです。ここならご安心頂けますでしょう」
すると、お客様はこう言った。「でも、横っちょの壁に大きな空間がありますよ。ここからフリーパスで入れちゃうんですけど・・・」
たしかに、そこには「常にドアが外してある」というような空間があった。「オートロック」どころか「フリーエンター」である。
何も言わず次の物件に向かった・・・。
2004年03月04日
この記事へのトラックバック
高級フラットのセキュリティ
Excerpt: 悪徳不動産屋さん(^.^)が「オートロック」は安全かと書かれていた。 日本に居たとき、私もオートロックマンションに住んでいた。が、なんといきなり6Fに...
Weblog: ★☆ From Sydney ☆★
Tracked: 2004-03-06 23:30
安心が呼ぶ危機
Excerpt: モラルハザードモラルハザードって言いますけど、わりと誤用が多い言葉です。本当の意味はこちら。 例示すると本当のモラルハザードというのはここで書かれ...
Weblog: 3blog18
Tracked: 2004-03-17 23:06
また読みたくなりました。