お婆ちゃんは未亡人で、現金で購入した新築のかなり広めの3LDKに1人で暮らしていた。その部屋はマンションの最上階のすぐ下の階で、その階と最上階は、ワンフロア各1室しかない。その階でエレベーターが止まって人が降りてくれば、確実に自分の客ということになる。贅沢な造りである。
最初はもう少し下の階の3LDKを新築時に買ったのだが、半年もしないうちに、一人暮らしであるのに「それでは狭い」と、高くて売れ残っていた今の部屋に買い換えた。その時点で2割も値下がりしての売却になった。そしてまた、購入時より3割近く値下がりすることを覚悟しての売却である。2度の売却で半分近く目減りしている。
私は、売却した後どうするのか聞いてみた。すると、「もっと郊外の中古の一戸建てに移りたい」、と言う。マンションの売値(査定)より購入予算は1千万ほど低い。
それで、ピーンときた。
「お婆ちゃんね、一戸建てに住み替えたいんじゃなくて、現金が必要になったんでしょ。だったら、売るの止めなさい。ここに居る限りは家賃は掛からない。せいぜい管理費と修繕積立金くらい。食べてく分くらいは小料理屋の売り上げで何とかなるでしょう」、と言うと、図星だったようだ。お婆ちゃんは預金残高が心細くなったので、自分が住んでいる不動産を安い物件に買い換えて、差額で当面食い繋いでいこうとしているのだ。
やれやれ・・・、これではまさに、タコが自分の足を食っているようなものである。
お婆ちゃんは、40歳を過ぎてから初婚で或る資産家の後添えになった。ご主人はけっこうな財産を遺して5年ほど前に他界した。そこからお婆ちゃんの滅茶苦茶な浪費人生が始まる。
グルメ、旅行、家具、衣服から墓石まで、カネに糸目をつけず遣いまくった。ゆえに、たった5年でご主人が遺してくれた億単位の莫大な遺産も底をつきはじめる。
お婆ちゃんは年に数回、知り合いを何人も引き連れて石和温泉に旅行している。その費用も全部お婆ちゃん持ちであった。
私は、「お婆ちゃんね、そんなことしたって誰も感謝なんかしてくれませんよ。いつも払ってもらってるからタマには私が払います、って人、1人でもいますか?、いないでしょう。お婆ちゃん、ただイイ顔をしたいだけでしょう?、それこそ無駄遣いというもんです」、と言って聞かせたが、その後も石和温泉ご招待は続いた。
だが、最大の浪費は20歳も年下のヒモであった。
お茶を頂きながらゆっくり話を伺うと・・・、(以下、18歳未満は退場願います)
男は40代後半のマッサージ師で、治療に通って知り合ったとか。私も会ったことがあるが、ハッキリ言って、その男はイタダケない。ある時、3人で外食していて支払いをする時に、私が伝票を取ろうとすると、その男が「いいからいいから」、と私を制した。で、自分が払うのなら分かるが、伝票をお婆ちゃんに渡して知らん顔である。こういうのはマズい。
お婆ちゃんは私に照れくさそうに言った。
「何回か肉○関係もあったのよ、○回くらいだったかしら」
それは、「私はまだ枯れてなんかいないわよ」、という女の見栄、性(さが)であろう。
先日テレビで室井佑月さんが、「別れた男とHした日を手帳に付けていて、男に貢いだ額を回数で割ると、アタシって、一発8万払ってヤラセていたことになるのよね」、と言っていたが、何てこたアない、そのお婆ちゃんは計算からいくと一発百万にはなる。
うちのお客さんが以前新宿のホストクラブに勤めていて、客のご婦人から家まで送ってくれるよう依頼され、送っていくとそのまま家に監禁されたという。部屋の外には屈強な用心棒が24時間立っていて、とても逃げられる状態ではなかったとか。そして、なんと、ご婦人はトイレに入って、今出したばかりの湯気が立っているウ○コを皿に乗っけて持ってきて、「これを一口でも食べたら百万あげる。さあ、お食べなさい」、と迫って、拒まれると、2百万、3百万、と値段を吊り上げていったとか。3日目にスキを見て命からがら逃げ出して、恐くなって、すぐ店も替わったという。
私が、「で、食べたの?」、と聞くと、「まさか〜、食べませんでしたよボクは。でも、後で知ったんだけど、同僚も同じメに遭っていて、ソイツは3百万で一口食べた、って言ってましたよ」、とのこと。なんとも凄まじいモンである。
もし皆さんが、「百足(ムカデ)の姿焼き」と、「オバさんのウ○コ」を出されて、どちらかを絶対食べなければならないという究極の選択を迫られたら、百人が百人、ムカデの方を食べるだろう。ウ○コの皿に300万が載っていたとしても、である。
不動産業界は不景気である。私もそのマッサージ師と歳はいくらも違わない。目の前に百万積んでくれたなら、私だって目も耳も鼻も全部塞いでお相手仕(つかまつ)ったかも知れない。「ホストの体験談」よりよっぽどマシであろう(失礼)
そんなお婆ちゃんに結婚話が持ち上がった。お相手はお婆ちゃんより一回り年下で、とても好人物であった。お婆ちゃんが私に、「どう思った?」とコッソリ聞くので、「いい人ですね(例のマッサージ師よりずっと)」、と答えた。
ここで問題が残る。その「ヒモ」である。
お婆ちゃんは私に、「貸していたおカネ(300万ほど)を取り戻したいんだけど、何かいい方法ないものかしら」、と相談してきた。私はひと言、「諦めなさい」、と答えた。返ってくるわけがないカネである。諦めきれないようだったが、束の間の夢を見させてもらった、と諦めるより仕方がないだろう。「それは返していらないからこれっきりにしてくれ」、と言わなければ別れられるものではない。相手にとってはカネヅルなんだから。私は、マッサージ師にそう言えば、天秤にかけて別れる方を選ぶだろうと読んでいて、事実そうなった。それにしても高い。しかも、呆れた手切れ金である(爆)
マンションを売るのには、結婚の支度金を用意する意味合いもあったようだが、私は、引き受けなかった。私が断ればヨソの不動産屋に話が行き、その業者が儲ける、それだけの話である。
私の仕事は、またしても「ただの人生相談」になってしまった
その後お婆ちゃんはマンションを捨て値で売り、郊外の中古住宅に引っ越した。今頃はきっと、その家も売ることを考えているだろう。
「カネに色は付いていない」という。だが、私は後味の悪い利益は得たくなかった。強がりではなく、私が本気になればいくらでも儲けようがあるのだから。
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