2004年04月25日

妥当な敷金精算の方法は

入居者が退去する時には、一般的に管理(不動産)会社が立会いをすることになる。
本当は、それは不動産会社の仕事ではない。敷金の精算は、貸主と借主の問題であって、不動産屋とは関係の無い話である。たとえ管理会社であっても、家主と特別な契約を結んでいない限り、本来は「立ち退きのチェック」は家主が自分ですべきもの、である。

ところが、不動産業者は、「大家さん、自分でやってください」、とは言えない。
言えば、「あそこは面倒見が悪い」、と、他の業者に管理を換えられてしまうからだ。

本来は不動産屋の仕事ではない、と分かっていても我々不動産業者が立会いをするのには、他にもう一つ、重要な意味がある。それは、「貸主と借主が直接話をすることで起こる無用なトラブルを避ける」、ということである。直接対話、となれば、貸主は借主の要求や質問に対して即答しなければならなくなるし、逆に借主が気が弱ければ家主に押し切られることになる。それでは公平性は保てない。

私は口が軽い。相当に軽い。だが、貸主と借主の間に入って、お互いに「相手のことをなんと言っているか」、だけは絶対に喋らない。誉めているなら話もするが、ほとんどは逆だから、私が口を滑らせたら「血を見る」ことは火を見るより明らかだ。間に入って互いの妥協点を頭の中で調整しながら、日にちと時間をかけてゆっくり話をすることにしている。

ただし、私の調整だけで物事が丸く収まるほど世の中甘くは無い。過去には滅茶苦茶なトラブルも起きている。それぞれのケースはいずれ紹介するとして、今、誰もが納得できる分かり易いルールが何より必要だと思う。

すでに東京都の住宅局により平成10年3月にはガイドラインがとりまとめられていて、今回さらに改定が加えられ、新しく「東京ルール」と呼ばれる「敷金精算に関する条例」が施行されようとしていると聞く。これは、「入居者の汚し具合に関係なく、敷金は全額返却する」、というもので、なるほど、これなら分かり易い。

なワケないだろ、馬鹿ヤロー!、である。

誰がどう考えたって、キレイにお使い頂いた入居者と、汚し放題荒らし放題の入居者と、同じように敷金を全額返すことは明らかに不公平で納得がいかない。

うちの場合、退出時には原則として「ルームクリーニング費用」だけ頂くことにしている。その代わり、換気扇もトイレも風呂も、一切掃除をしないで良いことにしている。どのみち、プロの業者が入って、費用を請求するものだから、入居者に掃除してもらっても無駄になってしまう。それなら、次に入る部屋の準備をしてもらった方が建設的というものだ。入居者に、契約時にそう説明すると、皆んな喜んでくれる。ただし、タバコを吸う人や、短期間の入居でけっこう汚している場合には相応に負担してもらうことになる。

実は、うちの「原則クリーニング代だけを請求」、というやり方で家主さんに納得してもらうのに8年の歳月を要している。それは、当初管理をしていた住宅メーカーが、クロスや襖の張替えから畳の表替えまで、全部入居者に請求していたので、うちのやり方に家主さんが拒絶反応を示したから、である。それで、1人退去する度に、「今回は畳だけ家主さんが負担してください」、「今回は畳と襖を負担してください」、という具合に、少しずつ家主さんの負担割合を高めていったことによる。いきなり私のやり方を押し付けようとしたなら拗れるだけだったろう。これは、家主さんが悪いのではない。住宅メーカーが説明責任を果たしていなかったことが原因である。プロの仕事ではない。

私が8年かかったことを、免許権者である都庁は「もっとキツイ基準」で一気にやろうとしている。愚かなことだし、配慮にもバランス感覚にも欠けている。

例え東京都の条例(法律と同じ効果を生じる)であっても、私は従わない。
この記事へのコメント
妥当な敷金精算・・・・・・・・

当社の管理する物件では、借主さんに、クリーニング代・畳表替え・襖表替えの費用を負担してもらっています。かなり使い方が荒く、破損等がある場合でもこのほかの費用は、請求しません。通常は、10万円ぐらいの費用です。この精算方法で、借主さんからの苦情は、2年に1件ぐらいです。大家さんも、なかなか大変ですが、納得してもらっています。
社長がいないのでコメントしました。
Posted by osamu at 2004年04月25日 11:23
以前、退去のときに、夫の仕事の都合で私一人で引渡しをすることになりました。やってきたのは、その不動産会社の男性2人。一人はヤクザ風でした。室内を点検してその場で費用を見積り、「この金額になりましたが払っていただけますか?」と詰め寄られました。それはクリーニング代、畳・ふすま紙・壁紙・床材、浴室のドアなどの交換代で、敷金を超えた額! きれいに使っていたつもりだったので戸惑っていると、「当社は退去ごとにすべて張替えが基本です。払わないと言う場合は、『それなりの手段』をとらせていただきますよ」とヤクザ口調で。さらに、外し忘れた蛍光灯を「すぐに外してください!」と怒鳴り、手が届かないためオロオロする私をにらみつけるのです。隣りに住んでいた大家さんのところに行って踏み台を借りましたが……まるで他人事のような態度。結局、全額払うということでサインしてしまいました。翌日、納得がいかないのでその不動産会社に電話したのですが、「引渡しは下請け業者に任せているのでうちは関係ない。サインした以上変更はできない」と。今思い出してもムカつきます。以来、退去のときはコワモテの男性につきあってもらうことにしています(笑)。
Posted by tan at 2004年04月25日 12:40
osamuさん、こんにちは

それ、そろそろヤバイかも^^;

お客様も最近は予備知識が豊富だから、ぼちぼち改善したほうが良いと思いますです、ハイ。
アパート経営なんて、ホント、割に合わないビジネスですよね。アパート建てる資金があるなら、他の商売でもやったほうがよっぽどいい、というものです。家主さんは大変ですよね。

お互い頑張りましょうね。
Posted by poohpapa at 2004年04月25日 15:16
tanさん、こんにちは

ひどい業者と家主に当たってしまいましたね。最近はそういうのはかなり少なくなっていますが。できれば、免許権者(都道府県知事とか)に電話して相談すると良かったですね。今度から是非そうしてください。あ、私でもいいですけど^^;

そういうことしてるから不動産業者は信用されなくなるし、結局、自分の首を絞めてることになるのに気付くべきですね。

同じ不動産業者として心からお詫びいたします。申し訳ありませんでした。

コメント、いつも有り難うございます。
Posted by poohpapa at 2004年04月25日 15:26
poohpapaさん、こん**は。
私も転勤等でたまに引越ししたりしてるのですが、前回の引越しのときは、なんと50万も請求されてしまいました。まぁ、会社契約なので自分の懐は痛まなかったのですが、異常に高いですよね。

前に私が住んでいたところは、見かけはそれなりにきれいだったのですが、断熱材がきちんと入っていないような感じで、かなりの箇所で結露が発生していました。そのため壁紙はどんどん剥がれ、壁にカビも生えて来るような状況でした。その負担が非常に大きかったわけです。ほぼ全面張替えでしたね。欠陥住宅といってもいいのではないかと思うほどです。

相手も「会社契約」だからかなりふっかけてきたようにも思います。住宅は見かけで決めちゃだめですね。いい教訓でした。
Posted by おやじまん at 2004年04月25日 16:16
おやじまんさん、こんにちは

いやあ、法人契約だからいい、ってもんじゃないですもんね。
うちの場合、壁紙のカビに関しては、入居者に責任を求めることはありません。たしかに、普段から換気を良くしていてくれれば避けられたものかも知れませんが、「構造上の欠陥」や「立地上の問題」であることのほうが多いのです。

賃貸物件に限らず、分譲マンションでも、このテの問題はよく起きています。断熱材は「壁の中」なので、手抜きや材料費を落とすのに最適なんです。ですから、お隣の壁はアセをかかないのに、うちは雨漏り状態、なんてことも起きます。

本当に災難(人災)でしたね。あ、いえ、会社が・・・(笑)

コメント、有り難うございました。
Posted by poohpapa at 2004年04月25日 17:03
わわわ、、poohpapaさんに文句を言ったわけではないのに、お詫びだなんて、すみません……。つい怒りが爆発してしまって。社名を書きたいくらいなんですが、やめておきます。なるほど、免許権者に相談すればいいんですね??。勉強になりました。
あれ以来、大手には懲りたので、街の小さな不動産屋さんを選ぶようになりました。今世話になっている不動産屋さんは、大家との間に入っていろいろやってくれているし、poohpapaさんみたいなスジが通った悪徳なので(笑)信頼しています。
Posted by tan at 2004年04月25日 17:44
tanさん、こんばんは

大手なんですか、信じられませんね・・・。

各県庁などの代表電話にダイヤルして、「不動産業者とのトラブルで相談したいのですが」、と言うと、すぐ不動産業指導課に繋いでくれます。そこで事情を説明して、「違法性あり」と判断されれば、業者に対して改善勧告が出されることになります。と言っても、敷金の精算は、本来は家主と借主の問題なので、業者が間に入っていて違法性がある場合のみ相談に乗ってくれます。その場合、結果如何に関わらず、業者には(免許権者から)電話がいきますから、効果は充分あります。泣き寝入りは、悪質な家主と業者を増長させるだけですから、是非避けて頂きたいものです。
・・・なんて、悪徳不動産屋が言うのもオカシなもんですが(爆)

今後ともよろしくお願いします。
Posted by poohpapa at 2004年04月25日 18:22
先日は転居挨拶について、書き込みましたら、早速コメント頂き、ありがとうございました。
一度、通常の会話が成立しない最悪な業者の管理物件に入居してしまったことがあります。
何かの折に、単に確認をしたいことがあって、尋ねただけだと思うのですが、「テメーは女のくせに生意気だ!!」と罵倒されたことがあります。入居から退室までずっとその調子でギクシャクした関係が続きました。
悪徳ではないのですが、名義借りで免許申請した、無知なオヤジが経営する不動産屋も最悪です。
Posted by mari at 2004年06月03日 10:56
mariさん、こんにちは、再びのコメント、有り難うございます。

本当に本当に、同じ業界の人間として、申し訳ありません。今も、一部の業者に「ヤクザもどき」のがいて、お客さんに不愉快な思いをさせることが多々あるようで何とも恐縮です。やがては淘汰されていくとは思いますが、業界の指導や監督が行き届いてないことは恥ずかしい限りです。

交渉の過程とかで、何か困ったことがあったら、直ぐに「免許権者」(都道府県知事、または国土交通大臣の各省庁の不動産業指導課)に連絡してやってください。スネに傷持つ業者なら、たいていはそれだけで大人しくなるものですから。

もし私どもで宜しければ、コメントを入れてくだされば私どもでもご相談に乗らせて頂きますね。

今後ともどうぞよろしくお願いします。
Posted by poohpapa at 2004年06月03日 13:31
すみません。けっして業界への非難では・・しかも、大変なお気遣いまでさせてしまい申し訳ありません。
私もどちらかというと相談を受ける側でして、不動産業界出身者です。当時のことは良い勉強になりました。
最近、15年ぶりに少しだけ復帰しまして、法改正も含め、勉強し直している今日この頃です。
これからも楽しみにしております。ありがとうございます。
Posted by mari at 2004年06月03日 16:15
mariさん、こんばんは

そうでしたか^^;
いえ、非難を受けて当然なんですから、mariさんこそ気になさらないでくださいね。

こちらこそ、これからもよろしくお願いします。

度々、有り難うございました。
Posted by poohpapa at 2004年06月03日 19:32
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック