2004年06月09日

「癲癇(てんかん)」のお客さん

皆さんの身近に「癲癇」というご病気をお持ちの方はいらっしゃるだろうか。

私の同級生にもいて、この病気は、外見は健常者とは全く変わらないが、日常の生活の中で突然に発作が起き、意識を失い全身が硬直する。たいていは数分??数十分で回復するが、倒れる時の状況では危険も伴う。現在も原因は解明されていなかったと思う。

先日、この病気をお持ちの方が来店された。あちこちの不動産屋を廻ったが、病気のことを話すと、どこも断りが入ると言う。当社でも、仲間の業者や家主さんに問い合わせをしてみたが、「もし万一、火を使っている時に発作が出たら怖いので、やはり辞退したい」、と、全て断られてしまった。確率的には低くても、業者や家主さんが心配する気持ちは分かる。で、仲間内には、直のお客さん(手数料が全部自社に落ちる)なら何とかOKするであろう業者があるので、そこに直接行くよう紹介した。

しばらくして、当社で、家賃を3ヶ月滞納して逃げ回っている男性客を電話で捕まえて、夜、仕事が終ってから会社に来てもらうことにした。来たのは8時過ぎであった。例によって、こちらから何度電話するよう連絡しても何も言ってこないことを責めていると、なんと、男が突然「癲癇」の発作を起こして意識を失い、その場に倒れて硬直してしまった。

これはマズイ。相当にマズイ。中は煌々と灯りが点いていても外は暗い。ということは、客が床に倒れているのが外から丸見えの状態である。何と言っても場所は不動産屋の事務所である。知らない人が見れば、「すわ、殺人事件!」、と思うだろう。

「まいったなあ、勘弁してくれよ」、であった。さあ、どうしたものか、と私は迷った。放っておいてもそのうち回復するのは分かっている。だが、それまでの間、知らん顔もしていられない。何人かは店内の様子を見てしまうだろう。とりあえず、意識が回復するまで電気を消して真っ暗にしておこうか、とも考えた。だが、万一の場合、「なぜ、すぐ救急車を呼ばなかったのか」、と責任を追及されることも有り得る。私は仕方なく、119番に電話した。ところが、消防署の言うことには・・・、

「ハイ、すぐ伺いますが、消防自動車も1台一緒に伺うことになりますのでご了承ください」、とのこと。それで、「火は出てないよ。人が倒れてるだけだよ」、と言うと、「最近はそういう規則ですから」、とアッサリ言う。「ちょっと待ってよ、本当は救急車に来られるだけでも迷惑な話なのに、消防車にまで店の真ん前に来られたらタマンないよ。じゃあ、こうしてよ、救急車頼んでても緊急性は無いから、サイレン鳴らさずに来てくれる?」

我ながら、滅茶苦茶で勝手な要求をしたものだ、と思う。もちろん却下された。
どのみち、私が119番しなくても、中を見た通行人の誰かが110番通報しただろう。
その方が圧倒的にマズイ。仕方なく、消防車も一緒の出動を了解した。
我々ビジネスの世界では、こういうのを、「抱き合わせ販売」、と言う(笑)

私が、救急車が来るまでの間ず??っと考えていたことは、「頼むから救急車が来るまで意識が戻らないでくれ」、ということだった。消防車まで来るのに、これで意識が回復されちゃってたら隊員から何言われるか分かったものではない。「意識が戻ればタダの人」、要するに、健常者と全く同じだから、である。

やがて、静まりかえった商店街にサイレンの音が近づいてきた。
事の外、サイレンの音がデカい。当たり前である、2台分なのだから(苦笑)

救急車と消防車が店の前に止まると、閉店間際の近所の商店から人が出てきて、通行人も立ち止まって中の様子を窺っている。
私は腹の中で、「見世物じゃねえ、あっちに行ってろ!」、と叫んでいた(爆)
幸い、客の意識はまだ回復していない。

隊員は私から客の名前を聞くと、客に名前で呼びかけて揺り起こそうとした。
私ならしばらく待つが、隊員は手慣れている。客はすぐ意識を回復した。隊員が、「これから病院に行きますからね」、と言うと、客は「もう大丈夫だから」、と断固拒否した。
仕方なく、隊員が1枚の書類を出した。それは、「駆けつけたが、本人が病院への搬送を断った」、という確認書である。私も署名、捺印させられた。確かに、万一のことがあったら「遺族から訴訟でも起こされかねない」訳だから、絶対に必要な書類だろう。

もう、こうなってくると家賃の督促どころではない。早々にお引取り頂いた。
病気は気の毒なものではあるが、本音で言えば、どこまでも迷惑な客である。
翌日、近所の人と顔を合わせるごとに、「何があったの?」、と聞かれて閉口した。

ところで、以前にはこんなこともあった。
私が近所の書店で立ち読みをしていると、突然、隣で「ドタン」という凄い音がした。
ひょい、と見ると、どうも私の隣で立ち読みをしていた青年が「癲癇の発作」を起こして、倒れる際に書棚に額をぶつけたらしい。額から少し血も出ているが大したことはなさそうで、ただ、硬直して震えがきていたので、これ以上どこかにぶつからないよう私が頭を支えるように抱きかかえていた。物音に驚いた店員が飛んできて、「すぐ救急車を呼びましょうか」、と聞くので、「しばらく様子を見ましょう、すぐ回復するでしょうから」、と言ってそのままにしていると、すぐ青年は意識が戻って、私に礼を言って、気まずそうに店を出て行った。発作は、いつ、どこで出るか、本人にも分からないし、まだまだ周りの理解が得られていないから、本当に大変だと思う。

さらに前には、西武池袋線の「江古田」駅のホームで、側にいた人が発作を起こし線路に転落したケースに遭遇したこともある。顔面をレールに強くぶつけたようで、額はザックリ割れて血が流れ出ていた。私ともう1人の男性が線路に下りて、この男性をホームに上げて駅員を呼び、救急車の手配をしてもらった。幸い通過列車も無く、事なきを得たが、タイミングが悪ければ命を落とすこともあるだろう。大した手間ではなかったが、翌日、西武鉄道の職員の方が私の自宅までお礼に来てくれたのには恐縮した。

今は自分が「健常者」であっても、人間、明日のことは分からないから、そういう立場の人と出会ったら、「なるだけ自然に」力になれるよう心がけている。
posted by poohpapa at 06:00| お客さん(入居者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする