始めにお断りしておきますが、今日の話は表面だけで理解することは危険です。
目先の利益だけでものごとを判断する人は、読んだことが裏目に出るでしょう。
賃貸の部屋探しをして、いい部屋が見つかると、申込書を入れて、審査が通ればいよいよ契約、という段取りになります。今日は、お支払い頂く仲介料についてお話します。
さて、不動産屋が受け取ることが出来る手数料は宅建業法上、貸主、借主から0.5ヶ月分ずつ、合計で1ヶ月分ということになっていますが、現行では借主だけが負担させられているのが実情です。法律では折半となっていますが、特例として、「借主が了解した場合のみ1ヶ月分全部を借主から受け取ってよい」、とされているからです。
契約前には「重要事項」の説明があって、要するに、どういう物件をどういう条件でお貸しするのか、正しくご理解頂いたうえで契約することになるのですが、その「重要事項説明書」の一番最後に、「以上の内容を理解した上で仲介手数料1ヶ月分を支払うことを了解します」、とあって、そこに署名捺印を貰うことで「了解を得た」、と見なしていますが、これは大変なマヤカシ、つまりインチキです。
お客様のほとんどは、そういう法律になっていることを知りません。申込書を書いて、契約時に必要な金額が書かれた精算書を貰うと、既に仲介手数料1ヶ月○○○円、となっています。それで何の疑問も無く「そういうもの」だと思ってしまうでしょう。
「知らない」、ということと、「理解して了解した」、ということは違います。
本来ならば、「法律上、手数料の半分は貸主さんが出すことになっていますが、貸主さんが手数料を出してくれることはまずありません。そうすると不動産屋は食べていくことが出来ません。申し訳ありませんが借主さんに1ヶ月分の負担をお願いしたいのですが、いかがなものでしょうか」、と伺って、「ああ、けっこうですよ」、と仰って頂くことが「了解した」、ということであって、知らずに払わされるのとは全く意味が違います。
では、その通りに正直に説明して払ってくれる借主さんがどれだけいるでしょうか。
信じられないことかも知れませんが、実は、全員が払ってくれます^_^;
私はちゃんと説明して、拒絶されたり渋られたことは本当に一度もありません。とは言っても、理解して了解した訳ではなく、「まあ、仕方ないか」くらいのお気持ちでしょう。
ですが、最近はその説明をしていません。駐車場を借りた若い夫婦に、いつも通り手数料の説明をすると、快く「ああ、いいですよ、それくらい」、と言っていたのですが、1年ほどして「今週末で解約するから保証金は全額返してもらいたい」、と連絡してきたので、「解約予告は1ヶ月前という規約になっているので1ヶ月先までの日割り賃料が発生しますから、その分を差し引いてお返しすることになります」、と言うと、「だったら、不動産屋に騙されて手数料を1ヶ月分払わされた、と都庁に訴えてやるけど、それでもいいのか」、とのこと。ちゃんと説明して了解を貰っていても、たった5千円でソレです。その女房も一緒になって「家主にもオタクのことを悪徳業者だと電話してやるから」などと電話をしてきて閉口しました。法律に則ってちゃんと説明していても、借主が「聞いた覚えが無い」、と言えばそれまでで、業者の言い分は通らないものです。で、止めました。
法律の主旨に則って正しく説明して後で逆手に取られるなら説明などしません。
30年ほど前に仲介料に関する法律の改正があった時に、「借主が了解すれば」などという特例を付けたことがそもそもの間違いで、それは、「貸主も負担して欲しい」、という話をすると貸主がいい顔をしないのが分かっているから、業界が、「家主を教育するより借主に負担させた方が楽」、という判断をして政治家に陳情したからに他なりません。
抜け穴ばかりで「仏作って魂入れず」では、かえって自分の首を締めることになります。今になって、かつて業法違反で業務停止処分を受けた会社の掌返したような「当社は手数料は0.5ヶ月分しか頂きません」、などという広告に戦々恐々としているなら、最初からルールを厳格に遵守していれば良かった訳で、この業界は遅れています。
では、これから不動産屋で申し込みする時に、「手数料は0.5ヶ月分でいいんですよね」、と言えば、その分、得するのか、と言うと、必ずしもそうではありません。
このコラムの冒頭の警告は、この後、意味を持ちます。
それもまた、(なるだけ早い)別の機会に!
2005年01月13日
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今年もコラム、楽しみにしております。
この続き。。。「礼金0、敷金0」とは違う結末になるんでしょうか?
ウチは、借主(社宅ですが)でもあり、
去年買ったアパートの貸主でもあるので、興味津々です。
知りたい。知りたい。知りたい。。。
ホントにホントに気になります(爆)
今年もよろしくお願いします。
さて、三田さん、鋭い!
この問題は「礼金0敷金0」にも密接な関係があります。この件は、貸主、借主、管理会社の思惑と利益が複雑に絡んできますので、説明して正しく理解して頂くことは非常に困難を伴います。したがって、誰かが自分の利益だけ考えてしまうと話が先に進みません。この手数料の話は、実は昨年の3月3日に下書きをしていましたが、まだ公開する時期ではない、という判断で、ずっと温めていました。自分が書くことで、自分も傷つけることになりますし、申し訳ない言い方ですが、読み手さんに正しく理解してもらえる保証もない話で、それでもようやく、「一石を投ずる価値はある」という判断に至りました、って、大袈裟ですかね(*^^)v
なるだけ早く整理して続編を出すつもりです。今晩できるかな・・・。
コメント、有り難うございました。
ひょっとすると、私だけが複雑に考えているだけかも知れませんが^_^;
もっと早くに不動産業協会などが先を読んで的確な手立てを講じていれば良かった話だと思います。
ハイ、なるだけ早く続編書きます(*^^)v
もちろん、違法では無いのですが・・・
ちょっとえげつないですね。こういう業者が不動産業の評判を悪くしてるようで残念でなりません。
悪徳さん!業界の評判向上の為、頑張ってくださいね!応援してます!
駐車場の手数料5ヶ月分というのは凄まじいものですね。それでも経営が続けられることが驚きです。法律に引っかからなければ何をやってもいい、とか、法律を遵守しているから絶対正しい、ということはない訳で、世の中、「自分の利益だけ得られれば何でもあり」、という考え方が充満しているように思います。
ご同業の方からのエールは何より嬉しいものがあります。感謝しております。
コメント、有り難うございました。