2005年01月29日

挨拶しない家主

6年も、何の問題もなく入居していたご夫婦が退去のご挨拶に伺ったのに、マトモに挨拶もしない家主がいた。とくに何かで揉めていた訳でもない。そういう人格である。

そのアパートが新築された時、住宅メーカーの紹介で管理することになったのだが、初対面で、「うわっ、こんな人たちと付き合うの嫌だな」、と思ってしまった。とくに失礼とかが有った訳ではない。話していて、温かみに欠けていたから、「こういう人たちの為に一生懸命尽くしても、きっと通じることも感謝されることも無いだろう」、と直感したのだ。

新築から6年後、最初の入居者が退去した時に、「やっぱりそうか」と知ることになる。

立会いの前に、入居者が2階に住む家主に退去のご挨拶に伺うと、インターホン越しに、「ああそうですか、分かりました」、と言ったきり出てこない。入居者は、てっきり家主が出てきてくれるものと、しばらくドアの前で待っていたが、いつまで経っても出てこない。それで怪訝そうな表情で戻ってきた。「どうしました?家主さん、お留守でした?」、と聞くと、「いたんですけど、出てきませんでした」、と寂しそうな顔。

私は、「6年も入っていてくれたのですから、例え掃除中であれ料理中であれ、顔を見せるのが礼儀ですよね。情け無い話ですが、忘れてください」、とだけ話した。

だが、ヒドイのはそれだけではなかった。リフォームをする段になって私にこんなことを言う。「うちの○○も具合が悪いんで直してもらいたいんだけど、退去者のリフォーム代に乗っけて請求すること出来ないかしら?」、と。要するに、退去者の敷金の中から払わせよう、というのである。滅茶苦茶な話である。私は、わざと勘違いしているフリをした。

「ああ、下のリフォームと同時にして一緒に経費で落とそう、ということですね。それなら可能ですから業者に言っておきましょう」、と言うと、不満そうな表情を浮かべていたが、私からすれば、「入居者や不動産屋を何だと思っているんだ!」、という気持ちである。

精算書を送付しても、敷金からクリーニング代を差し引いているのに、「全額こちらで支払うのはおかしい」、と言って何度説明しても理解しなかった。私は、家主の面子を潰さないよう気配りをしながら、入居者との間に入って交渉することになる。「アンタ、これだけ言っても分からないの?馬鹿じゃないの!」、とは言ってないのである。

それやこれやで、こちらも管理するのが苦痛になっていたが、昨日、家主から「管理会社を換えたい」、と言ってきた。家主の意にそぐわないことばかり言うから嫌われたのだろう。正直なところ、努力も誠意も通じないのは悔しいがホッとしてもいる。

だが、この家主とよく似た常識ハズレな家主が過去にいた。
一部屋空いてルームクリーニングだけを業者に頼んだら、ナンと、「クリーニングを頼むんだし、うちの廊下のニスが剥がれているから、1階から2階までサービスで塗り直してくれるよう頼んでくださらない?」、と言われたことがある。さすがに、「それは、飴を一箱買うから新車を一台おまけしなさい、と言ってるようなものですよね。いやあ、冗談がキツイですね」、と笑ってごまかした。もちろん、2度と付き合わなかった。

私は人の間に入って上手く調整する能力には長けている、と自分では思っている。
この家主は私と離れて、これから苦労を知ることになるのだろう。そうあって欲しい。
posted by poohpapa at 06:00| Comment(15) | エピソード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
随分酷い家主ですね。
入居者の敷金から自分の修理のお金を差し引くよう言うなんて。
そういう事を言われる事自体腹がたちます。しかも挨拶もしないなんて。
家主と入居者は対等の立場なのにおかしいですよね。
Posted by ちい at 2005年01月29日 10:22
ちいさん、こんにちは

時折いるんですよ、こういう家主。
同時に修理して、請求書には部屋のリフォーム代と一緒にして、支払いは自分でして経費で落とす、と言うなら、それくらいの操作はお安い御用です。それが、クリーニング代に載せて退去者に請求しようというのではお話になりません。そういう人がいるから「大家なんてあくどい」と言われてしまうのです。

挨拶はして欲しかったですね、本当に。

コメント、有り難うございます。
Posted by poohpapa at 2005年01月29日 10:47
今晩は。

いえね、昔昔、東郷神社裏「○ローマンション」に住んだことがありまして、短期間ですけど。
そこを退去する時病気をして田舎に帰ったものですから、清算を電話のやり取りで済ますことになりました。
私には何の落ち度もなかったのに、敷金を返してもらう段になったとき遠方であることをいいことにあれやこれや言われて危うく敷金もらい損なうところでした。
散々話し合って返してもらう(?変、返してもらう?)ことになりましたが、その段階で大家さんには一度も面会できませんでした。電話のみ。やっぱり変。
いつまでたっても入金されず、結局いただきませんでした。

そのままにしておく田舎もんの私。
そのまま逃げ切った田舎もんを侮る大家・・・。

私に残ったものは、超、超のカビハウスで(三部屋のうち一部屋はまったく使えなかった)鼻炎などのアレルギーであり、それから25年苦しむことになった。今はゲルマで完治!

いるんですよ。こういう奴!(怒
Posted by at 2005年01月29日 22:07
変変とか言って自分の文章変でした。
大家さんとは入居したときから一度も会いませんでした。ジャンジャン。
Posted by at 2005年01月29日 22:13
桜さん、おはようございます

原宿の東郷神社のあたりは緑も水(池)も多く、湿気が高い地域だと思います。
環境的には最高で、元妻とのデートコースになっていました。ナンといっても、明治神宮を散歩するのにカネが掛かりませんので(笑)

桜さんが田舎モンかどうかではなく、誰に対しても口実を付けて敷金の返還を拒もうとする家主だったんだと思いますね。そういう家主を管理会社がしっかり教育するのも当然に仕事なんですけど。

まあ、でも健康が戻っているから何よりです(*^^)v

いつもコメント、有り難うございますね。
Posted by poohpapa at 2005年01月30日 07:34
こうした家主さんがいるというのは本当に驚きです。と同時に「やっぱりな」という思いも同時にこみあげてきます。
敷金の返還などは常にいろんなメディアで問題になっていますが、それだけにぜひお金の流れを透明化して欲しいですね。また、ぜひともpoohpapaさんのご紹介される部屋に住みたいものだなあと思ってしまいます。
家主がこうしたわがままを言うのは、管理会社によってはそれを受け入れる場合があったからではないかと思えます。となるとそれが私の住んでいる部屋の管理会社かも・・と疑心暗鬼になってしまいます。
結局は敷金がどれほど使われたか、部屋の修理のどの程度までが敷金の負担となるのかはさっぱりわかりませんので、良い管理会社に当たることを祈るのみです。
やはり管理会社さんは「プロ」なのですから、それに従わざるを得ませんものね。
こうした「プロ意識」が全ての管理会社に行き届くことを願ってやみません。
poohpapaさん、頑張ってください!!
Posted by イチ at 2005年01月30日 10:08
イチさん、おはようございます

統計的?には100人に1人くらいだとは思いますが、いることはいますね。

イチさんが仰るとおり、管理会社が「管理を換える」と言われたくないために、そういう無茶も受け入れていたりしていたことも原因と思います。こちらの割合は1割くらいでしょうか(恥)

うちは、リフォーム代の請求書の明細を、家主負担分も含めて全部お客さんに明示します。印をつけて、これは家主負担、これは借主負担、と分かるようにしておきます。そうすることによって、後で借主からクレームが来ないようにしている訳です。実際、リフォーム代の7??8割は家主が負担しているのですから、まずほとんどクレームはありません。ま、中にはありますけど、それは常識外の入居者ですね。

そんな訳ですから、自分で酷く傷めておきながら「リフォーム代なんて、そもそも家賃を取っているんだから当然その中から払うべきものでしょ!」などと文句を言われるとガッカリしますね。

調整力、交渉力、というのは不動産屋にとって重要なものですが、その技量が正当に評価されることはまずありません。因果な商売です。

すみません、愚痴になってしまいました。
コメント、有り難うございます。
Posted by poohpapa at 2005年01月30日 10:49
こんにちは。
今住んでるところは、全部で6軒の小さな町内会です。その中の1軒が、先週引越ししていきました。前の持ち主が去年きれいにクリーニングした後、貸したそうです。
ところで、いまだにその人の名前を知りません。もちろん顔も見たことがなかった。
その日の朝、トラックが入って来るのを見て「あっ、あそこだな」とピンときました。引越しを見た人がいうには、あいさつはともかく顔も会わさなかったそうです。
そういえば以前、夜逃げ同然で一晩でいなくなった一家がいました。まあみんな、どこに引越ししたかは知ってるんですけどね。
住民は、確かに欲どーしくて癖があるけど、そんなに嫌わなくても ...
Posted by sekiyo at 2005年01月30日 11:35
sekiyoさん、こんにちは

実は、私も6世帯のアパート(他社管理)に入っていますが、知っている人は一人もいません。下に入っていた韓国人留学生とは親しくしていましたが、その方が退去してからは全く誰も分からなくなりました。隣の方とは廊下などで顔を合わせれば挨拶はしますが、街ですれ違っても分からないと思いますね。まあ、その方が有り難いと思いますけど、刑事さんということですから^_^;

ただ、やはり寂しいものだと思います。私自身は好きではありせんね。

コメント、有り難うございます。
Posted by poohpapa at 2005年01月30日 12:55
いつも楽しく拝見させていただいてます。

本題とはちょっとずれるんですが、文中に出てくるpoohpapaさんのとぼけ方というか、ごまかし方というか、この遣り取りにしびれてしまいました。いやぁ勉強になります。
…勉強したテクニックを使う機会が、今のところなさそうなですが(笑)


以下、今まで以上に関係のない話で失礼します。
以前、「悪徳…」に一度だけコメントをつけさせていただいたことがあります。
「父親が不動産業をやっている」というようなことを書いたら、「話を聞いてみると良いですよ」、といった内容のお返事をいただきました。今さらながら、少しだけそのことについて。
父親の仕事上でのエピソードは、昔からよく聞きます。退去時のエピソードが多いですね。あと、同業者の話。poohpapaさんの仰るのと似たようなこともよく言ってますよ。
感動的なお話とか、「いいお客さんだったよ」という話をあまり聞かないのが、気になるところですが…(^^;
Posted by ナンバ at 2005年01月31日 10:42
ナンバさん、こんにちは

いえ、まともに受けてしまうと逃げようがなくなってしまうのですよね。それと、間というのも重要です。ほぼ間髪入れずに笑い飛ばさないと怒りをかってしまいますので^_^;

でも、悲しくなくても人は泣けますが、可笑しくもない時に笑うのは至難の技です。
最近、やっと笑えるようになりました(ハハハ)

ナンバさんのお父さんも、やはり敷金の精算などで、家主さんや借主さんの間に入ってご苦労なさっているんでしょうね。トラブルの多くはそこに集中していますから。私が時折でも感動ネタが書けるのは、当社の「客層」によるところが大きいです。皆さん、経済的には苦労なさっていますので、そういう生活の中からこそ、感動的な人情話が生まれるんですね。お金持ちの相手をしていても、全く出てこないですから、そういうの^_^;

それと、嫌な話の方が印象が強烈なんですよね(*^^)v

私なんかがお父さんとお話したなら、夜明けまで話し込んじゃいそうです(爆)

コメント、有り難うございました。
Posted by poohpapa at 2005年01月31日 13:37
初めて書き込みさせていただきます。
私はルームクリーニングの仕事を開業していて
「ついでにアレもやってください」と言われる側です。幸い不動産会社さんで止めてもらっているようで、そこまで理不尽なことは言われたことはありません。むしろ「あそこのオーナーさんは厄介だから(物件の隣に住んでいるけど)挨拶に行かない方がいいとか、名刺渡すと危ないよ」などと気を使ってもらっているようです。
おかげさまで共用部の清掃とか草むしり程度で済んでいるようです(済んでいるのかな?
しかし、この仕事を始めて不動産業も大変だと思うようになりましたよ。変なお客、オーナー多すぎですよ…。
Posted by あくい at 2005年02月08日 20:14
あくいさん、こんばんは

不動産屋は何でも屋でもあり調整役でもありますね。時として利害が対立する家主と借主と、時として出入りの業者との間に入って、互いの顔を立てながら妥当な落としどころを探るのも大切な仕事の一つです。と言っても、「やってらんねーや!」、と思うこともしばしばです。

これでも最近は家主さんは良くなりました。入居者の方が間違った権利意識を持っていることが多くて困ります。

お互い、頑張りましょうね(*^^)v
Posted by poohpapa at 2005年02月08日 21:53
おはようございます。
大正時代の お引っ越し日記 ? が あるので、自分のページに 載せてみました。
ちょっと悲しい 内容ですが。
(↓の sekiyo を ポチッと 押せば そのページです)
Posted by sekiyo at 2005年02月11日 09:06
sekiyoさん、こんにちは

記事、拝読しました。
私が記事にしているのも、程度の差こそあれ、人間の日々の営みを通した「心」です。人の悲しい裏側、厳しさ、そして血が通った生身の人間の優しさです。

でも、もう終わりにします。
Posted by poohpapa at 2005年02月11日 10:46
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