2007年01月29日

「造作譲渡」考

貸店舗を探していると、広告に「造作譲渡」と謳ってあるケースは多い。それは、前の賃借人(店のオーナー)が使っていた什器備品や内装等を、次の賃借人に買い取ってもらいたい、ということである。

当然に(同様な業種であれば)「直ぐ営業が始められる」という利点もあるが、「自分の好きなようにリフォームして始めたい」という人には不向きである。

その「造作譲渡」には、貸主や不動産屋の思惑も絡んでくる。

半月前に店仕舞いしたレストランは、契約時に造作譲渡という条件を飲んで借りていた。だいたい200万、と聞いている。自分がどうしても「この内装や什器備品では嫌だ」と思わないのなら、それはそれで良いのかも知れない。最初から自分でリフォームするよりは安上がりだから。だが、問題は明け渡す時、である。

現借主が「造作譲渡」という条件を飲んで、言い値の200万も支払ったのだから、貸主や不動産屋が次の借主を探す時も、とりあえず「造作譲渡」という条件を付けてくれても良さそうなものだが、そうしてはくれなかったようだ。什器備品は後で買い換えたものもあったし、店の内装も、私が見た限り契約当初と比べてさほど劣化しているとは思えない。

悪い知恵をつけるワケではないが、もし「この内装ならそのまま使えそうだな」と思っても、「やり直すからこの内装と什器備品は要らない」と言えば、困るのは貸主と元借主である。造作譲渡を受け入れる客が見つからなければ、いつまでも造作譲渡で募集してもらうワケにはいかないのだから、元借主は原状回復費用を負担させられることになる。交渉次第では「タダでもいい」、と言い出すだろう。

まあそれもフェアではないから常識的には希望価格の半値〜1/3くらいで買い取るのが妥当であろう。だが、貸主と不動産屋は元借主の言い値(相場よりかなり高い価格)で買い取らせたのだ。

それなのに今回、貸主と不動産屋は「契約内容」を盾に、原状回復して、つまり「買い取った什器備品は全て出し、内装もコンクリートの下地の状態まで戻して明け渡せ」、とまで言っているのである。貸す時には「造作譲渡」で(言い値で)買い取らせていたのに、である。

そのこと自体は違法性は無い。契約は、互いに契約内容を確認して交わしているものだから、原則的にそれに従うのは当然である。

私が重視しているのは、解約予告は3ヶ月前となっているのに、その間、その店舗の広告を私は一度も目にしていない、つまり、不動産屋が探客の努力さえしていなかった、ということである。

契約でそうなっているから、というのでなく、なぜ「できるだけ次も造作譲渡で決めてあげよう」と努力しないのか、ということなのだ。

確かに、造作譲渡との条件を付けると新たな借主を見つけるのはそれだけ困難になる。女性が結婚相手の条件として三高(高学歴、高収入、高身長、+イケメン^_^;)を譲らなければ、余程の美人でもなければ婚期を逃してしまうのと同じである。

貸主も不動産屋も、次の募集で「造作譲渡」という条件を付けたくないのは解かる。だが、「解約予告は3ヶ月以上前」との条件を付けるなら、せめてその間は「造作譲渡の条件を飲んで借りてくれる人」を探すのがスジだと思う。いやきっと「探すフリ」をしてお仕舞いなんだろうな・・・、ハナから足元を見てるから。

出て行く人にとっては、自分の時と同じように買い取ってもらえたなら有り難いのだから、同額とは言わないまでも半額にでもなれば嬉しいものだろう。下手したら成り行きで20万、30万にしかならないかも知れないが、それでもいいと思う。

契約に則って厳格に推し進めるのは正しいし大切なことではある。
だが、相手の状況や心情に配慮することはもちろん違法ではない。

借主の無知に付け込む商売」は、私はしたくない。
posted by poohpapa at 06:46| プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする