4年ほど前、今さらながら、「おくりびと」 という記事を書いているが、その続編。
この映画、数ある黒澤作品と並んで邦画では最高峰の作品、と思っていて、私は20回以上も観ている。ヤフオクなどでDVDは7枚落札していて、私が死んだら子供たちに1枚ずつ遺産分けで渡すつもりでいる。私が子供に遺すのは、「おくりびと」のDVDと何かの形見分け程度。カネも不動産も遺さない。
なぜ「おくりびと」のDVDを子供たちに遺すのか、と言えば、「人生の全ての要素と人の心の優しさ」がその映画にギッシリ詰まっていて、私が伝えたいことのほとんどがその映画に含まれているからだ。
7枚落札して、3枚は子供たちに、1枚は自分用、そして、あとの3枚は「観て頂きたい人」が現われたら差し上げるため、である。既に、奥様に先立たれた家主さんと東欧旅行で知り合った(私の大好きな)娘さんにお送りし、そしてあと1枚を当社の管理物件の入居者さん(娘さん)にお届けすることにした。
幼稚園の頃から、更新契約の度にお母さんに付き添って当社に来てくれていた娘さん、である。お母さん、先月20日にお亡くなりになったようだ。娘さんからは少し前「そう長くはないと思います」と伺っていて、数日前に「ご相談したいことがあります」と電話があったので、「あ・・・、お母さんがお亡くなりになったな」と分かった。ご家族全員に看取られての最期だったらしい。それは救いだったと思う。
私が前妻と生活していた二世帯住宅を出ていた時、更新契約に来てくださった際に愚痴を溢したら、帰り際「奥様を大切にしてあげてね」と仰っていたのが私への最後の言葉。いや、その後も何か話しているとは思うが、その言葉が一番印象に残っている。その後に癌が再発して、以降の更新はお兄ちゃんや娘さんが来てくださっていた。それでも再発してから長くもったほうなんだろう。
一年前、「レンタカーを借りて運転手も引き受けるから、お母さんと兄妹の皆で温泉に行かない?」とお誘いしていたが、それも叶わなかった。と言うより、元々お母さんは旅行とかお好きでなかったようだ。
葬儀は故人の意思で行わず、ご仏壇もとくには無いとのこと。同じ敷地に暮らす家主さんも、私が(娘さんの了解の下)お話しするまで気付かなかったくらい。ここんとこバタバタしているので一週間くらい先になるが、ご焼香だけさせて頂けることになった。「おくりびと」はその時に持って行ってあげよう。
ご相談内容はここでは書かない(書けない)が、気丈に笑顔で話していても時に涙ぐんでいた。話していて、ふと、「おくりびと」を観て頂こうと思った次第。もちろん、貸すのでなく差し上げる。折に触れて何度も観て頂けたらと思うから。きっと何かの支えになってくれるだろう。
この仕事をしてると、本当にいろんなことがある。
<< DVDをあげるのは、もう少し間を置いてからの方がいいような気がします。
たぶん、この娘さんは大丈夫かと思います。とても聡明な娘さんですし、私の思いもちゃんと伝わることでしょう。それと・・・、
オチまで話してしまうくらいに映画の内容を伝えてしまっているので、ご自身で「観てみよう」と思った時に観てくれることでしょう。
それより、病気で親を失くした同級生を「マッドマックス2」に誘ってしまったことのほうが・・・。その同級生の方、人間ができてますね。もっとも、親の死と重ねて観ていたことはないでしょうね。同級生の方の言葉はそのまま受け取っていいかと思います。
こういうのは、たしかに、相手のあることなので難しいですね。