2014年10月17日

投機、でなく陶器の話

「趣味は広く浅く拘りは深く」ということで、ふだん倹約しているが使うところでは思い切って使っている。

その趣味の一つに、好きな陶芸家の作品を持つ、というのがある。よほど(直感的に)「ピン!」ときたものしか買わないので所有しているのは数点でしかないから、趣味、とまでは言えないものだろうけど。

ま、これも腕時計の話と同じく「嫌味スレスレ」の話になるとは思う・・・、十分に嫌味かあせあせ(飛び散る汗)

昨日、機械式腕時計の小さな歯車の規則正しい動きを眺めていると心が落ち着く、と書いたが、「陶器」も眺めていて心が落ち着くものの一つだ。私は陶芸の経験は無いし詳しくもないが、良い器は飽きずにいつまでも見ていられる。それは、美術館で好きな絵の前から離れたくなくなるのと似ているかも。

私の田舎の隣町の常滑市は古くから「焼物の町」として知られていたが、常滑焼(朱泥焼)にはずっと安物のイメージを持っていた。新茶を2袋購入するとタダで常滑焼の急須がついてきたりして・・・。

田舎を離れて何年かして、常滑を訪れて親友に焼物店を紹介してもらった際、ある陶芸家の「とっくり」を見て衝撃が走った。同じ朱泥でもこんなに「深み」が違うものか、と・・・。その作者は後に人間国宝となる三代山田常山氏、であった。以前からお名前だけは聞いていたが、さすが、であった。

たぶん、その頃から陶芸品に興味を持ち始めたかと思う。今は帰省の度にショップを廻っている。

常滑市の職員は半額で買えるとかで、市の職員である親友から「買ったってもええぞ」と言われたが、当時で「とっくり2本」で5万・・・。私の月収より高かったので辞退した。失敗した、と後悔しているわーい(嬉しい顔)

今、我が家には「いつまでも眺めていたい器」が何点かある。それを紹介したい。

サイドボードの棚の一段に、こんなふうに飾ってあるのだが・・・ ↓

DSC08204.JPG
奥にある二組の黒っぽい器は、清水焼と常滑焼のビールジョッキ。常滑焼のは衝撃に弱く壊れやすくて怖いのだが、ビールを注ぐと泡のキメが細かくなって格段に美味しくなる。飲む前に器を冷蔵庫で冷やしておいて使っている。ここには写真を出さないが、夏に帰省した際にも普段使いのを1個買ってきた。

先ず、郷里の親友が知人から頂いて、「自分が持っているより・・・」と私に送ってくれた酒盃、

DSC08191.JPG
谷川省三氏の作品で、常滑焼だが朱泥ではない

飾っているだけでは勿体ないので、この酒盃は良い日本酒が手に入った時に惜し気もなく使っている。風合いが大好きで、「飾って観て楽しむ」より「実用的」な器だと思う。物凄く気に入っている。

次いで、萩白釉粉引で知られる清水啓功氏の酒盃。

DSC08199.JPG
谷川氏の酒盃より大振り

清水氏は人間国宝三輪休雪氏に師事して薫陶を受けるものの、ただ師の技法を踏襲するだけでなく、粉引きの「剝がれやすい」という最大の欠点を克服するなど独自の技法を開発して注目を集めているとか。人間国宝に最も近い陶芸家かも、と思う。

そして、人間国宝の作品をご紹介、

10代三輪休雪氏の酒盃、

十代三輪休雪 酒盃.jpg

DSC07966.JPG

私が一番好きな陶芸家は三輪休雪氏。10代と11代はともに人間国宝でありご兄弟。どちらの作品も好き。もっとも、あらゆる焼物の中で、備前焼と並んで萩焼が一番好きでもあるし。華やかさは無いが渋くて上品で見ていて落ち着くから、というのがその理由。

この酒盃は、ヤフオクで見て「これだ!」と一目で気に入って落札。落札価格は37000円だった。

そして11代三輪休雪(壽雪)氏の夫婦湯呑、

DSC08193.JPG

残念ながら11代三輪休雪氏はちょうど2年前(平成24年12月11日)に鬼籍に入られた。

こちらの湯呑は、正直、真贋のほどは分からない。ではあるが、本物だと信じて飾ってある(*^^)v

なんとなく、安っぽく感じられて・・・。似たような湯呑は今も出品されているが・・・。ま、いいやたらーっ(汗)

そして、先日落札した11代三輪休雪氏の茶碗、

DSC08187.JPG

11代三輪休雪2.jpg
2枚の写真のうち下のほうの写真はヤフオクの説明写真より拝借。出品者様のご了解は頂いている。

さすがに二重箱に入っていて豪華。実は、11代三輪休雪氏の作品は一目見て「11代三輪休雪氏の作品」と分かる、なんてことはなく作風は様々。そこが同じく人間国宝の陶芸家金城次郎氏と違うところ。

今までにいろんな作風の茶碗が数多く出品されているが、その中で、最も気に入った茶碗であった。

ちなみに、同じ11代休雪氏の茶碗が他の出品者さんで出ていて、落札価格は411000円だった。←商品説明の写真は数日のうちに消えると思う。通好みなんだろうけど、私には良さが解からない。

以前、「欲しいな・・・」と思っていた茶碗も37万ほどで落札されて、とてもとても手が出なかったが、今回の落札価格は私でも手が出るほどの額。たまたま連休中の終了で他の入札者が少なかったのと、出品者さんが「儲けよう」としていない良心的な方であったのも大きい。私にとっては幸運であった。

個人の好みなんだろうけど、私が落札した茶碗のほうが遥かに景色が良い、と思えるのだが・・・。

私が落札した茶碗は貫入が目立たない作品で、以前は貫入がヒビみたいに思えて好きではなかったが、最近は貫入の入り方に「なんとも言えない味わい」を感じるようになった。貫入は釉薬(うわぐすり)の掛け方や厚みによって様々に表情が変わるし、同じ作者でもいろいろ試しているようで面白い。ではあるが、私はオーソドックスな器のほうが好きだし、お抹茶を入れた際の器の表情を想像して評価している。

これからも気に入った器があったら入札したいと思っているが、うちのは「どうせ使わないんでしょ!?。お父ちゃんが死んだら棺に入れるから」と呆れているふらふら

posted by poohpapa at 05:35| Comment(12) | 文化・芸術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
へえ、陶器ですか。
poohpapa さんがそんな高尚な趣味をお持ちとは。
お燗に使ったあと、最後はお棺に入れる、という案に僕も賛成であります。
それまで茶碗としといてね。
Posted by ピーちゃんの身元引受人 at 2014年10月17日 08:08
すごい、趣味ですね。人は見かけによらない(≧ヘ≦)なんて
言葉ありますが。。。。。

我が家の陶器の食器はほとんど、貫入が入っています。洗っている時によく落とします。

食器洗い器を買いましたが、落下率はかわりません。最近は、プラスチック製にかわりつつあります。




Posted by たか at 2014年10月17日 08:37
ピーちゃんの身元引受人さん、おはようございます

<<お燗に使ったあと、最後はお棺に入れる・・・

なるほど、上手いこと言いますね、って、こらっ!(*^^)v

昔は、好きな音楽を聴いている時が一番落ち着きましたが、今は違ってきましたね。それだけ歳をとった、ということでしょうか・・・。

何十年も掛けて習得した熟練の技が生かされているのが陶器だったりして、時計もそうですけど・・・、あと、何十年(モノによっては100年以上)も寝かせた琥珀色のブランデーを見ていても落ち着きます。

目の前の器は小さなものですが、それが生まれるまでの歴史や人生に思いを巡らせています。
Posted by poohpapa at 2014年10月17日 08:38
たかさん、おはようございます

だから〜、貫入とヒビは違うんだってば(*^^)v

最初は、なんか直ぐ壊れそうな気がして貫入が好きではありませんでしたね。味わいなんて、とても思えなくて。ですが、この貫入こそが陶磁器の顔でもあるんですね。

私の持っている器には、あまり貫入が入っているものはありませんが、そのうち、見事な顔をした器を買いたいと思っています。

何十万もする茶器をオークションで見かけますが、あまりに殺風景で「良さが伝わってこない器」もけっこうありますね。

どのみち使わずに眺めるだけなので、オネエサンと同じく「見た目重視」であります(^^♪
Posted by poohpapa at 2014年10月17日 09:13
poohpapa さま

こんにちは。
常滑といえば大学時代の同級生が常滑にある窯元の息子でした。
今でも陶器を焼いていると思うので、そのうち有名になるかも…?
他にも金沢で人間国宝に弟子入りして精進している友人もいますが、こちらはいつの間にやら幾つも賞を受けているようで、すっかり油絵なぞ描かなくなってしまった自分には羨ましい限りです。

何事も地道に続けることが第一であり大事なのだと思う次第です。

いいものって、一つ持ってしまうと幾つも手元に置いておきたくなりますね。
収集癖があるので、いいものを見つけても我慢の連続です(^^;
Posted by のの at 2014年10月17日 11:04
ののさん、こんにちは

骨董とか焼物の収集に手を出すと、ひと財産失くしますし破産一直線ですよ〜(^◇^)

「何でも鑑定団」なんか観てると、奥さんが知らない間にン千万使った、なんてご主人がたまにいて、それまで奥さんが気付かないくらいだから裕福なんでしょうね、離婚もしてないし、羨ましくなります。

お友達、なんてお名前なんだろ・・・、たぶん、お名前を伺えば私の親友なら直ぐ分かると思いますね。

金沢のお友達もご活躍で、ののさんのお仲間さん(お友達)も素晴らしいですね。何にしても、友人や仲間が偉くなってくれるのは嬉しいものですね。
Posted by poohpapa at 2014年10月17日 11:25
初めまして。うろうろとしていて、辿り着きましたw.
休雪のやわらかな風合いの景色、私も好きです。。
(といっても、まだコレクションはありませんが・・)

好きなものを眺めるている時間は、ひとを豊かにしてくれていると
自分が、そうだったりするので、共感してしまいました。

最近、ペットをなくしペットロスに陥りそうでしたが、
好きな陶器や、雑貨に目を向けるようにしています。

高価なお値段よりも、心に馴染むものに触れることpoohpapaさんに
共感いたしました。。
Posted by おず at 2014年10月17日 13:32
細川元首相の茶器も似たようなお値段で販売されてました。
Posted by じさま at 2014年10月17日 22:13
おずさん、おはようございます

萩焼は、どこか柔らかくていいですね。三輪休雪氏の作品は(10代、11代ともに)大好きですが、実は吉田萩苑氏の作品はもっと好きです。将来的に11代三輪休雪氏の後に萩焼の陶芸家として人間国宝になるのでは、と思っていましたが、残念ながら亡くなられてしまいました。

たしか、同じ種類の陶芸から二人の人間国宝が出る、ということは無いんですよね。惜しいですね。

好きなモノを、ぼーっと眺めて心を落ち着かせる、なんてのは日本人特有の感覚なんでしょう。

イメージ的に、「硬」なら備前焼、「軟」なら萩焼、が、私にとっての陶芸の双璧であります。

そう言えば、私も15年ほど前、飼っていたシーズーが亡くなった際、2週間くらい、店に出ていても泣いておりました。まさにペットロス症候群でしたね。自分を責め続けました。辛いのですが、今も、そのシーズーの写真をリビングの「見える所」に飾っています。今飼っている猫に対して同じ失敗や後悔をしないよう自分に対する戒めにしています。

ま、そこまで思っているのに、うちの猫は女房にしか懐きませんで、私には猫パンチします^_^;

無責任で他人事のような言葉で私は好きではありませんが、「時間が解決してくれる」と思います。

お互い、充実した生き方をしていきましょう(^^♪
Posted by poohpapa at 2014年10月18日 07:40
じさまさん、おはようございます

<<細川元首相の茶器も似たようなお値段で販売されてました。

へえ・・・、そうなんですか・・・。それはまた「身の程知らず」でありますね(*^^)v

本人が付けた値段なのかどうかは不明ですが、あの方では「付加価値」も無いものでしょうに・・・(爆)
Posted by poohpapa at 2014年10月18日 07:43
陶器の値段が上がる原因は
1.作品単体の美しさ
2.お付き合い購入の多さ
3.希少性
となります。

細川さんの作品は、2によって異様に高い値段となっています。

ただ作品自体はそう悪いものでなく、政治家としての評価が、陶芸家としての評価の足を引っ張っている印象があります。
Posted by AK at 2014年10月31日 05:48
AKさん、おはようございます

陶器の値段が上がる原因、納得です。人間国宝でありながら、あまりの「多作」陶芸家もいますよね。そういう方の作品は希少性がなく値上がりしないのはよく分かりますね。

細川さんの作品、いくつかネットで見ましたが、これが細川さんでなく一般の陶芸家が作ったものであれば相当に良い出来、と思われるものもありました。私なんかも、AKさんのご指摘のとおり「政治家としての評価が、陶芸家としての評価の足を引っ張っている印象」です。むしろ逆に「元総理の作品でなければさほどの価値もないのでは」とついつい思ってしまいます。

ま、片岡鶴太郎や八代亜紀の絵と同じでしょうか。普通の人より上手い、というくらいで、サイン色紙よりは高くても仕方ない、くらいの感じです。

細川さんの作品1個で(人間国宝である)三輪休雪の作品が10個以上も買えてしまうのもどうかな、と思ってしまいますね。

ただ、大切なのは、所有している人がどう評価しているか、大切に思えるか、なんでしょう。私なんかが、もし細川さんの茶碗を誰かから頂いたなら、日常的に卵掛けご飯の器に使うと思いますね。
Posted by poohpapa at 2014年10月31日 06:42
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]