2016年01月25日

血の通った判決

産経新聞の(ネットの)記事から、

平成23年に死去した資産家の女性(当時97歳)の「遺産は全て家政婦に」との遺言に反し、実娘2人が遺産を不当に持ち去ったとして、家政婦の女性(68歳)が遺産の返還を実娘側に求めた訴訟の判決が18日、東京地裁であった。伊丹十三監督の「マルサの女」でも、冒頭に、病院で余命いくばくもない資産家の老人が若い看護婦のおっぱいを吸わせてもらい実印を渡してしまうシーンが出てくるが・・・、

この家政婦はそうではない。ま、どちらも女だし・・・。いや、そういうことでなく、普通よくあるパターンでは家政婦が老人を誑かして遺言書を都合よく書かせる、というものだが、この家政婦は当初こそ6万円の手当を貰っていたが、老婦人の夫が死んでからは無給だったとか。

どういう約束になっていたかは不明であるが、使い込もうと思えばいくらでも出来たハズだが、そうはしなかった。だからこそ「全財産を家政婦に・・・」となったのであろう。

反して、二人の娘は出来が悪かったようだ。何かにつけてカネの無心をしておきながら「財産はもっとあったハズ。家政婦が使い込んだに違いない」と主張している・・・。私の周りにも、こういう人間はいる。

裁判長は「介護せず資産のみに執着する実娘2人と違い、資産家女性に50年以上、献身的に仕えてきた。遺産で報おうとした心情は自然だ」と判断し、実娘側が持ち去った宝石類や約3千万円など全遺産の返還を命じた。つまり、家政婦の全面勝訴、である。

相続で揉める話の8割方は「ある日突然、父親の隠し子が現れた」という話ではなく、それまで本当に仲が良かった兄弟姉妹の間で起きるもの。もっと言うなら「連れ合い」が裏で糸を引いてたりして・・・。うちの家主さんの中にも、親の死後、骨肉の争いに発展して一家が離散してしまったケースがある。不思議なことに、遺族間の遺産相続争いは数億円単位の話で起きているものでなく、数百万円単位で起きていることが多い。たった「それだけの額」で、それまでの家族の歴史にピリオドが打たれるのだ。

過去ログにも書いたが、私も似たような経験はしている。義父母の老後のお世話を長女である元妻と私とですべく二世帯住宅を建てて一緒に暮らす際、私は元妻に二つの条件を出している。一つは、一切の相続を受けないこと、というもの。3姉妹で3等分、ではダメなのだ。これが他人の話なら、遺産の程度にもよるだろうけど「同居して最期まで介護して見送った者が全て相続して、他の兄弟は相続放棄するのが当たり前」くらいに思うのだが、自分のこととなるとそうは言えないし、それは周りが気を遣うべき話。気を遣いそうもない相手なら、後々のトラブルを考えたら「うちは要らない」と先に宣言してしまったほうがストレスが無いだけ楽。

後で姉妹の仲が悪くならないためには「うちのが相続を受けないようにするしかない」と思っていたのと、私が義父母を旅行に行かせたり美味しい物を食べに連れて行ったりするのを義妹たちが見たなら「財産目当て」と勘繰るのが分かっていたから、である。それだと私はやりにくくなる・・・。その心配は当たっていた。

所詮は人のカネである。義父母が生きているうちに使い切って「ああ、楽しい人生だった、有り難う」と言って死んでくれたらそんなに嬉しいことは無い。余った預貯金(現金など)や残った土地建物も義妹たちに渡して出るつもりだったが、「うちは要らない」と言ったことで逆に疑われてしまったようだ。

ちなみに、もう一つの条件は、

「どんなに人柄の良い両親と同居するとしても、一緒に暮らしている人間にしか解からない苦労や辛さというものは必ずあるもの。それを、オマエや義妹夫婦たちがちゃんと解かってくれていること。それが伝わってくるならどんなに嫌なことがあっても俺は我慢するから」、というもの。義妹夫婦たちだけでなく、義父母も解かっていなかったからどうにもならなかった。それでも我慢出来るほどの器ではないし。

まだ義父母が寝込んでいたワケではないけど、義妹たちが我々に気を遣ってくれたことなど一度も無い。そういうことで声さえ掛けられたことが無い。ただの一度も、である。

妹の一人は熱心なクリスチャンで、何かと言えば「イエス様、イエス様」で、自分が何かする際、例えば勤め先の歯科医院の慰安旅行でハワイ旅行に行くのにも牧師に相談していて、「行かないほうが良い」と言われて参加しないでいた。そんな牧師はインチキであろう。牧師の娘が出産する際、義妹に手伝いさせているし。イエスの教えには従順だが、人の心は分かろうとしない。私がキリスト教を嫌う一つの理由にもなっている。

残念なことに、私と仲違いしている同級生のB君(過去ログ参照)も、その昔、私が「死ぬほど好きだった」悦ちゃんも、義妹と同じ「プロテスタントのペンテコステ派」の信者である。B君の中身はクリスチャンなんかでなく、やってることは教義に反して人を陥れてばかりいる俗人でしかなかったが・・・。

私の子供は「お爺ちゃんとお婆ちゃんが亡くなって、お母さんが相続を受けて、お母さんが亡くなったとしても、元々がお爺ちゃんとお婆ちゃんのカネなら相続は受けたくない」と言っている。私と同じで金銭欲は無いから。「その時が来たら貰っとけば?。お父さんは関係ない話だけど、オマエが『要らない』と言ったら義妹やその子供が喜ぶだけだし、一息つけるぞ」と言っておいたが、判断は子供に任せる。

私は元々貧困家庭で育っているので親の遺産など無かったし、幸い親が抱えた借金も無かった。鹿児島に僅かばかりの山林があったが、終戦直後の大阪の土地同様、人に取られてしまっている。


話を元に戻すが、この家政婦も、亡くなった資産家の気持ちを思えば裁判を起こすのは辛かったと思う。自分はちっとも悪くないのに「恩を仇で返すような後ろめたさ」を感じていたことだろう。そもそもが、いくら「食べる心配はしないで済む」と言っても、無給で世話してくれていたなら、娘たちは感謝しなければならない話。職を失うことになるのだし、その後のことも気に掛けてあげなければならないもの。

産経新聞の記事によれば、

 「使途不明金はカネ遣いの荒い実娘側に渡るなどしたと考えられる。女性による着服は認められず、推認すらできない」と断定。「遺言作成当時は介護を期待できる実娘も移住してしまっていた。その中で長年自分を支えてきてくれた唯一の存在である女性に感謝し、全資産を譲る心境になるのは自然だ」とし、遺言は適正なものだったとした。

 さらに「実娘2人は吉川さんの資産に執着し、無心を繰り返してきた。『遺言は不合理だ』とする実娘側の主張は、それまでの自身の行いを省みないものだ」と批判し、訴訟費用も全額実娘側の負担とした。


不謹慎な言い方だが、もしもこの家政婦が資産目当てだったなら、50年も尽くさずにもっと早い段階で資産家を(事故を装って)殺していたのではなかろうか。裁判長は双方の人と形(なり)を的確に見抜いたと思う。

実に小気味いい判決と判決趣旨ではないか。記事を読んでいて涙が溢れてきた。血縁関係など、親身になって世話してくれる他人の前では吹けば飛ぶような縁でしかない。この裁判長もきっと苦労人なんだろう。

posted by poohpapa at 05:43| Comment(6) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
家政婦というと、海外のニュースで悪い話を聞きますが、これは全然違いますね。
50年ですよ、この家政婦さんが尽くした年月は。
この女性、同じ日本人として誇らしいです。

娘?
こいつら、人の道にももとるわ。
Posted by ピーちゃんの身元引受人 at 2016年01月25日 09:07
ピーちゃんの身元引受人さん、おはようございます

50年・・・、半世紀ですもんね、凄いですね。遺産目当てであったなら、そんなに長く辛抱していられませんよね。心が通い合う何かが有ったんだと思います。それに比べて、娘たち・・・、犬畜生にももとります、って、犬に失礼ですが。

私は、自分の子供がカネに執着しない人間に育ってくれたのが嬉しいです。遺産は無いのですから、それで何かしてくれたなら「心から」ですし。などと財産を残せないことを正当化してみる・・・ ^^;
Posted by poohpapa at 2016年01月25日 09:29
poohpapaさんおはようございます。

 この判決は妥当というか、当然の結果というべきでしょう。まあ、親の面倒もみないで、遺産はよこせ、という実娘もあきれます。
 しかし、家政婦のおばさんも68歳で97歳を面倒みていたなんて、大変だったでしょう。今度は面倒をみてもらうほうではないでしょうか。
 poohpapaさんも隠している秘密の遺産を残さないで全部つかってしまいましょう。
Posted by たか at 2016年01月25日 09:35
たかさん、こんにちは

こんなのを裁判で争わなければならなかった家政婦さんも辛かったでしょうね。世の中には、兄弟の誰かに親の介護を全部任せておいて、相続が発生した時には「法律で護られている私の分をよこせ」と言いだす兄弟は多いものですね。

うちの実家の場合も、次兄のお嫁さんが遺産など何もない両親を最期までしっかり看てくれました。今は兄弟の縁を切っていますが、こういう商売をしているので、何かで大きな手数料が入ってきたなら、少し纏まった額を送ってあげたい、と、ずっと思っています。なかなか思うようにはいきませんが・・・。

まだ地裁段階なので確定ではありませんが、裁判長からここまで言われて控訴したならアホですね。

隠し財産ねえ・・・、あれば子供には遺さず女房に遺しますね、当然です。
Posted by poohpapa at 2016年01月25日 11:47
poohpapaさんこんにちは

ウン年前に東京地裁に行ったとき、一階に本日の
取り組み、じゃなくて審理の予定表がおいて
あったんですが、民事の裁判で訴訟人と被訴訟人の
苗字が同じ裁判がかなりありました。
私が弁護士に「苗字が同じってみんな離婚裁判ですかね」
と聞いたら「いや、ほとんど財産関係です。親子、兄弟姉妹、
親戚関係だから苗字が同じ件が多いんです」
と言われました。恐ろしい・・・・

特に結婚とかしてると、財産遺産に関係する本人より、
本来は関係ないはずの配偶者がいろいろ口出しして問題を大きくすることが
多いそうな。
この二人姉妹の件など、姉妹の旦那たちがまともな常識を持っていれば
「くだらん裁判なんかするな!!」と嫁を一喝して諌めるはずなのに
この経緯を見ると、むしろ嫁と一緒になって悪知恵を巡らした
ようですねー。
鬼平に征伐して欲しいわ、こういう悪人は。


Posted by トントン at 2016年01月25日 18:32
トントンさん、おはようございます

私も、東京地裁のホールで本日の裁判の予定表を見たことがあります。原告と被告が同じ名前であること、たしかに多いですね。

で、それまで仲が良かった兄弟姉妹が親の遺産を巡って訴訟騒ぎにまで発展する裏には「連れ合い」がいることも多いでしょうね。誰かに入れ知恵されたりして、旦那や嫁の袖を引っ張ったりして・・・。

そういうこともあるでしょうけど、一切そんなことは何も言っていないのに、「あれは嫁さんが裏で糸を引いてんだよ」とか決めつけられるケースもあるんでしょうね。私も経験していますが、堪りませんよ、そういうの。だったら「ぶんどってやろうか」と思ってしまいます。

うちのは、私が二世帯住宅を出る時に、「もし、女房が『全部くれ』と言ったら全部置いてきていいか」と訊いたら、「いいよ」とアッサリ言いましたね。それで当時の価値で1700万くらいの株券や、幾らあったか知りませんけど預貯金や、不動産も家財も全部置いてきました。

後で私名義になっていた株券(400万ちょっと)だけ長男経由で私に戻してきましたけど、私は何も文句を言っていないのに元妻から「カネに汚くて情けない人」だと非難されました。ワケ分かりません。それと、同級生のB君が、私が「全部持って行ってしまった」というデマを同級生に流していたようです。

いろんなことがあります。とくに、カネが絡むとね、僅かばかりのカネでも・・・。
Posted by poohpapa at 2016年01月26日 07:11
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