この内容はずいぶん前に住宅新報さんのブログでも書いているが、こちらでも書いておきたいと思う。
当社の風呂無し物件に8年ほど入居してもらっていた青年の引っ越し立ち会いに行った時のこと、
その青年、度々家賃を滞納していて、私が督促をして何度か纏めて振り込んでもらったことがある。私の場合は、毎月ちゃんと家賃を振り込んでくるから「いいお客さん」、度々滞納するから「嫌なお客さん」という区分けはしない。家賃をちゃんと振り込んでくるのは当たり前のことで、そんなのはお客さんを評価する一つの基準でしかない。逆に、時折り家賃を滞納されても、一生懸命家賃の遅れを追いつかせようと努力していてくれたり、真面目に生きていることが伝わってくると、つい応援したくなるのが人情というもの。
もちろん、ちゃんと家賃を払ってくれるに越したことは無いが、家賃は遅れずに振り込んでくるクレーマーもいるから一概に「どちらがいい」とは言えない。私は、どちらかと言えば善意の滞納者のほうが好き。
で、その青年、苦労人でもある。未成年時に、亡くなった親の遺産を後見人が自分の事業に注ぎ込んで使ってしまっていても「仕方が無いですよ」と文句を言うことも無く、裁判で取り返そうともしないのだ。自分は責めても人は責めない。給料が遅配になっても我慢をしているくらい。私にはとても真似できない。
直近の2ヶ月分の家賃が振り込まれていなかったので立ち会い時に現金で徴収。敷金は1ヶ月で、本人は返ってくるとは思っていない。私が「敷金はクリーニング代を引いて、少しは・・・」と言いかけると、「返してくれなくていいです」と言う。まあ3万だから、クリーニング代と細かな補修をすれば少し足が出るくらい。家主さんには「多少足りなくてもチャラで宜しいですか?」と話して了解を頂いていたので清算完了。
フローリングの床に腰を下ろし、1時間ちょっと話し込んだ。今の仕事のこと、今後のこと、彼女のことなどいろいろ・・・。私が「家賃を滞納されたり、いろいろあったけど、私はHさんのことは好きですよ。これから何か困ったことがあったら遠慮なく相談してください。この部屋を出ていってもHさんがずっとうちのお客さんであることに変わりありませんから」と言うと凄く喜んでくれた。過去にキツイことも言ったが、私のことは嫌ってはいないようだ。不思議なことに、私は家賃の取り立てをした相手から嫌われることは滅多にない。今までの34年間で「嫌われてるな」と判ったのは2人くらいのもので、そんなの「逆恨み」だけどね。
今は保証会社を利用しているから連帯保証人を付けて契約することは滅多にないけど、むしろ、連帯保証人に嫌われることのほうが多いかも。本人は「滞納している負い目」があるから督促されても納得するものだろうけど、連帯保証人は、親兄弟であっても「私に請求しないで本人に言えよ」という感覚だから。
荷物が全て出てガラ〜ンとした部屋を見ていたら、「この若者は、こんな部屋で頑張って生きていたんだ・・・」と思って、なんかウルウルきてしまった。これからのHさんの人生が幸せであることを心から願う。
「立川まで出るついでがあったら寄ってね。飯でも食べよう」と伝えて、今もたまに電話している。
2024年09月16日
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私がショックだったのは、両親の残した遺産を後見人が使い込んでしまったのに返還を求めない、ということ。金額は聞いていませんが、後見人が付くくらいですから相当な遺産だと思うんですがねえ。裁判を起こせば必ず勝てると思うし、風呂無しのアパートなんかでなく、いい部屋が借りられそう。
ま、裁判で勝っても、支払ってくれるかどうかは別ですが。離婚後の子供の養育費と一緒で。
その後見人、叔父(伯父?)さん、よく平気でいられるもの。きっと、碌な死に方はしないでしょうね。
私がいつも言ってること、「人生は押しなべてチャラ」、きっとこの先で幸せが待っていることでしょう。