2018年02月06日

今の場所に店を出して25年間で初めての体験

夕方、予定していたお客さんから電話があり「15分ほど遅れます」とのこと。その電話を切った直後に店のドアが開く気配・・・。

「あのお・・・、ちょっとお尋ねしたいんですけど、このへんに小学校ってありますか?」とご婦人が遠慮がちに訊く。「ああ、たぶん五小のことだと思いますが、小学校ならまだだいぶ先で、この先のローソン99ショップを過ぎた角を左に曲がって150mほど行くと工事中のグラウンドがありまして、そこです」と言うと、「近くに銭湯がありますか?」とさらに訊く。五小の近くに銭湯は無いから、「もしかすると、小学校ではなく立川女子高校の勘違いでは」と思い、地元(東京)の人かどうかを訊いてみた。

すると、「気仙沼から来ました。この近くに〇〇荘というアパートがあって、伯父と娘が住んでいますので、久しぶりに東京に来たもので訪ねてみようと思って・・・」と言う。地方の人とは思えないほど訛りが無い。住宅地図で辿っていったら探しているアパートは直ぐ判った。だが、土地勘のない人には判りにくい場所にある。きっと、近くまで行ってまた迷うことだろう。立川女子高校の傍には銭湯はあるがアパートを探すための目印にはならない。地図をコピーして渡しても良いのだが、それでも迷うだろう。

来客の予定はあるが、それまでに帰ってこれるくらい直ぐ近くなので私が一緒に行くことにした。目の前まで行って「ここですよ」と教え、直ぐ店に戻ると、数分して予定していたお客さんがおみえになった。商談をしているとドアが開いて、先ほどのご婦人だった。「先ほどはすみませんでした、わざわざ連れて行って頂いて助かりました。有り難うございました」とお礼を言う・・・。

私が、この記事の表題を「今の場所に店を出して25年間で初めての体験」としたのはそのこと。年に何度も道を尋ねられたりご案内しているが、用を済ませた後でわざわざ戻ってきてまでお礼を言ってくださった方、初めてである。もちろん、どのケースもお礼の言葉は掛けて頂いているし感謝してくださっているのは解かっているから戻ってきてまでお礼を言って頂かなくて全くかまわないのだが。

寒いから店に入って頂き、商談を終えていた先客も交えて三人で雑談。名刺を渡して、「何か不動産取引で困ったこととか有りましたらいつでもご遠慮なく電話くださいね」と言うと・・・、「え?、私が不動産のことで困ってる、って、よく判りましたね」と驚く。

正直、私はそんなことは判らなかったし直ぐに相談を持ちかけられるとは思っていなかったのだが、「実は二つ困っていることがありまして・・・」と、うちの店が「不動産無料相談所会場」に変わることになった。

なんでも、気仙沼に相続を受けて使っていない家があって、その家を巡って相続人5人で揉めていて、売却して5人で分けるのがいいとは思っても、この先お墓の管理など見てくれる者が多く貰えて当然、ということで意見が纏まらないようだ。ハッキリ言って、5人で分けたら大した金額にはならないと思う。当事者同士で話し合うから結論が出ないもの。相続は、皆が「自分はいくら貰えるか」から入っていくと解決策は見えなくなる。平等と公平は違うし、平等に分けるのは簡単だが公平に分けるのは難しい。

もう一つの悩みは、76歳の老人に土地を貸していてその土地の上に老人名義の家が建っていて、間もなく借地契約が切れるのだが、途中で亡くなるだろうし、鉄骨の家の解体費用が700万ほど掛かるとの見積もりが出ていて、老人は「解体費用は払うから更新してほしい」と言っているが、そんなのは老人には払えないのはミエミエ。更新するかどうかより、夜逃げされるのが一番怖い、とのこと。

そこまで行くと弁護士に相談するのが一番良いし、そうすべきだと思うけど、「気仙沼の弁護士は誰も信用できない。カネを持ってる方に付くような弁護士ばかりだから」とのこと。それを言われてしまうとどうにもならない。私が「相談に乗る」と言っても、不動産屋の職責と知識の範囲内でしか乗れないし、弁護士の仕事の領域まで踏み込むことは出来ないのだから。

それでも、そのご婦人が「私はご縁を大切にしています。このお店に道を尋ねて社長さんに出会えたのも凄く良いご縁だったと思います。これからも宜しくお願いします。また東京に出てきたら必ず寄らせて頂きます」と仰ってくださって、それは嬉しかった。この後も気仙沼から相談の電話が入ることだろう。

posted by poohpapa at 06:49| Comment(10) | 私の街 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
田舎の土地って信じられないくらい安いですね。まあ5等分したらほとんど残らないのでは。鉄骨造の民家の解体で700万円って信じられませんね。そんなの重機で2、3日で無くなってしまいますけど?

Posted by たか at 2018年02月06日 09:23
職業柄道を聞かれることは多いけど・・・確かに用事を済ませてからお礼に来てくれた人はいなかったなぁー


って振り返ってみて思い出した!!一度だけ・・・・「一言主神社に行きたいのだけれど迷ってしまって」って訪ねてきた人に道を教えたら帰りに大判焼き買って来てくれたことありました!!しかも迷ってウチに来ただけで全然帰り道じゃないのにwww

その帰り道に迷わなかったかどうか心配でしたよ(笑)

それでもその1件だけですわ。


あまりいませんよねー
Posted by はなくろ at 2018年02月06日 09:47
たかさん、こんばんは

遺産相続で揉めるのは、ほとんどが「一人の取り分300万円以下のケース」とのことですもんね。

鉄骨住宅の解体、そんなに大きな家ではないので、せいぜい300万くらいじゃないでしょうか。だいぶボッタクられている見積りですね。借地人が76歳・・・、そりゃあ地主は更新したくないでしょう。

今日地元にお帰りになったようで、新幹線の中から何通もメールを頂きました。信頼して頂いているようですし、できるだけお力になりたいものです。
Posted by poohpapa at 2018年02月06日 19:11
はなくろさん、こんばんは

ああ、わざわざ遠回りして大判焼き・・・、そういうのは嬉しいですよね。

私は「本当は無類の方向音痴」なんですが、不動産屋なので住宅地図という味方があるし、地元のことはそこそこ詳しいので何とか案内は出来ます。

以前は、昔お向かいに有ったお好み焼き屋さんでランチしていた時に「多摩北高校ってどう行ったらいいんでしょう?」と店の人に尋ねる親子がいて、私が「ここからだとけっこう距離がありますよ。歩いてだと大変です。もう食事を終えますから車で案内しましょう」と言って、車で連れて行ったこともあります。入試の説明会に来たとかで、「ちゃんと下調べしてから来なさいよ」とは思いましたが、まあ喜んでくれました。受験して合格したかどうかは分かりませんが。

逆に、岡山を旅していて、寿司屋で食事していたら隣の席の男性に「どこに泊まってるか」訊かれて、ホテル名を言ったら「ここから坂道を登って帰るのは大変だから車で送っていってあげるよ」と言われて、初対面なのに親切にして頂きました。

なので、自分がされた親切を誰かに返して廻しているだけなんですけどね。そういうことで社会が良くなっていってくれたら嬉しいですね。日本を旅する外人さんが感激する気持ち、よく解かります。

Posted by poohpapa at 2018年02月06日 19:25
相続で意見が纏まらないのであれば、ほっておくのが一番です。
30年もすれば代替わりして、思い出や柵も消えていきますので、事務的に処理するだけのことになります。
酷い言い方ですが、当事者全員がいなくなってしまったほうが、清算はしやすいと言えます。

「後に残された人が困る」というのは大抵が言い訳でして、当事者間の感情的な問題がほとんです。
それに、相続の金銭をあてにしている場合は、困るのは「後」でなく「今」なのですね 苦笑

ほっておいて困る人は妥協せざるを得ませんから、ほっておくということが一番の解決策ではあります。


それよりも貸地のほうは、だいぶおかしな話になっていますね。
借地契約の期間満了が近いということは、平成12年以前の旧借地借家法の適用範囲になるかと思います。

旧法では、借主の権利が強いため更新拒絶はまず不可能です。
そもそも借地権は、「人」が持つ権利でありますが、実体としては「建物」に対して存在しています。
「建物」がそこにある限り、「借主」(=建物所有者)の老人が逝去されたとしても、「建物」の相続人に権利が引き継がれます。

借地権の存在は、「借主」の生死によって決まるものではなく、「建物」の有無によるものです。
つまり、借地権は「建物」の消滅によって失われるものですが、旧法上では「建物」の建替を拒絶することもまず不可能になりますので、実質的には半永久的にその土地に「建物」を建てて使用する権利と言えます。

そのため更新の可否に、建物解体費用や借主の年齢という話が出てくることが大変おかしな話になりますね。


しかし、法律上はそうだとしても、奇妙なローカルルールが存在し、破れば村八分みたいなこともあるかもしれないので、地域が違うところのことは何とも言えません。
都内ですら、少し地域が変われば、微妙にローカルルールが違うと感じることもありますから。
Posted by AK at 2018年02月09日 01:29
AK さん、おはようございます

いつもながらに鋭いご指摘と解説を有り難うございます。

<<相続で意見が纏まらないのであれば、ほっておくのが一番です。

そのご意見、ビックリしました。たしかに、仰るとおりですね。私は何とか早く解決するような方向でのアドバイスをしなければ、と考えていましたが、言われてみれば「放っておく」という選択肢もありますし、それが一番かも知れませんね。私からすれば「目から鱗」でした。実は、似たような案件の相談をいくつか受けておりまして、もちろん、なるだけ早く解決する、つまりは関係者の誰もが納得できる落とし処を提案しなければ、と思っていたのですが、場合によっては「突き放す」というのもアリですね。

平等に分けるのは簡単ですが公平に分けるのは困難で、関係者の全員が納得できる解決策など簡単には見つけられるものではありませんもんね。第三者として客観的に、なるだけ公正なアドバイスができれば、とは思っていますが。私は弁護士ではありませんので、依頼人の利益を先ず考える、ということもしませんで、普段の仕事でも「貸主側にも借主側にも立たない」ようにしていて、社会通念上「これが一番妥当ではないかな」と思える提案をしています。なので相談してきた人から嫌われることもままあります。人間てそんなものなので全く気にしていませんけど。

ですが、私に無かった「ほっておく」という選択肢が生まれたことは、AK さんに感謝です。

<<「後に残された人が困る」というのは大抵が言い訳でして、当事者間の感情的な問題がほとんどです。
それに、相続の金銭をあてにしている場合は、困るのは「後」でなく「今」なのですね 苦笑

それも、ほんと、その通りですね。理由は後で何とでも付けられますね。いろんなケースを見ていると、中途半端に財産を遺されるのが一番厄介かも、と思うようになりました。少ないから揉めるんですね。

借地契約に関しても、AK さんのアドバイス、お考えは非常に的確で有り難いです。私も「借地契約の更新拒絶は基本的に難しい」とは伝えてありますが、76歳の借地人、更新料も払えないでしょうし、「解体費用は支払う」との一筆を入れていますが、死んでしまったら払えないし、まあ生きていても払えません。相続人となる娘さんもいますが、たぶん払ってはくれないでしょう。

76歳の借地人本人が死んでも建物が残っていて、その中に家財があるのですから、借地人が死んだとしても勝手に処分するワケにもいかず、それより怖いのが「夜逃げ」ですね。弁護士に相談して、あらゆるリスクを想定した契約書や約定書を作るのがベストですが、契約書に関しては、本人の同意なく従前の契約内容を勝手に変えることもできないことでしょう。

土地は「貸したら盗られたも同然」というのは本当ですね。借地権というより法定地上権の問題ですし。気仙沼には「良い弁護士がいない」と嘆いていましたが、それでも弁護士に相談して、なるだけリスクを少なくできる方法を模索するしかないかな、と思います。いちおうそう伝えてお帰り頂きました。

地主としては「どうにもならない話」で、不動産屋が立ち入れるのはここまで、かと思います。
Posted by poohpapa at 2018年02月09日 07:53
いまや大部分の地方の不動産は財産ではなく負の遺産、ババ抜き状態です。
欲しい人にあげるのが最善の方法。
ほおって置いても関係者だからと後始末させられるのが一番困るのです。
Posted by 陸の孤島 at 2018年02月09日 09:39
陸の孤島さん、こんにちは

この場合の「放っておく」というのは無責任な意味合いでなく、相続人たちが本気で「解決しなければ」と思うようになるまで待つ、という意味合いですね。人間、どうしようもなくなったら知恵も出しますし譲歩もしますので。欲と意地を張り合っていると互いに損、ということに気付くまでは、誰がどうアドバイスしてもタメでしょうね。

「あんなに兄弟仲が良かったのに今はこんな拗れてしまって・・・」というのはよくあるパターンです。話が纏まるケースは「私は要りません」という兄弟がいる場合ですね。

遺産は当然に「負の遺産」もありますし、誰が親の老後の世話をしたか、とかも考慮すると完全な公平にするのは難しいものですもんね。個人的には「親の老後の世話を最後までした人が全部相続してもいいのでは、と思いますが。自分がその立場だと自分からは言えないものなので、第三者が言ってやるのが一番ですね。

欲しい人にあげる・・・、みんなが「要らない」と言えれば最善ですね。とかく「いくら貰えるか」しか考えないで相続のデメリットには無関心だったりしますけど、正しい知識は不可欠ですね。

<<ほおって置いても関係者だからと後始末させられるのが一番困るのです。

その場合は相続を放棄すればいいかと・・・。居住用不動産は別にして、財産なんて一代限り、使い切れなければ全部没収でいいように思いますね。そうすればカネも廻って景気も良くなるでしょう。
Posted by poohpapa at 2018年02月09日 13:09
このお話は色々と奇妙な点が多いので、相談に乗るにしてもどこかで線引きをしておくことが大切ですね。

法定地上権と借地契約は同時に存在できるものでありませんし、
契約の更新は、あくまで従前の契約内容を引き継ぎ、契約期間だけを延長するものですし。。。

地主さんがご心配されている問題に対しては、事前に採れる対策はほとんどなく、全て事が起きてしまってから対処するべきことになってくるかと。

気仙沼の弁護士さんにも、同様の指摘をして下さる方がいらっしゃるかと思いますが、
地主さんがその弁護士さんを「良い弁護士」と思うかどうかは分かりませんからね。
Posted by AK at 2018年02月10日 02:06
AK さん、おはようございます

重ね重ね有り難うございます。

<<このお話は色々と奇妙な点が多いので、相談に乗るにしてもどこかで線引きをしておくことが大切ですね。

はい、私もそう思います。乗り掛かった舟、ではありますので、親身に相談には乗りたいと思いますが、貸主側の話しか聞いていませんで、「物事には相手があるもの」なので慎重に対処いたします。

「契約の更新は、あくまで従前の契約内容を引き継ぎ、契約期間だけを延長するもの」ということもそのとおりでして、それも貸主さんには伝えてあります。「事前に採れる対策はほとんどなく、全て事が起きてしまってから対処するべきことになってくる」のも仰るとおりですね。貸主にとっては非常に厳しい状況で、弁護士に相談しても貸主が喜ぶ結論は出ないことでしょう。

私としては、被害とかリスクを最小限にする方法より、まさかの時の心の準備をしてもらうのが狙いになっています。とても人柄の良い地主さんでしたので、出来る限りは協力したいのですが、最終的には弁護士の仕事ですもんね。信用できなくても腕が悪くても・・・。

いつも的確なアドバイスとご意見を有り難うございます。
Posted by poohpapa at 2018年02月10日 06:15
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