当社で長くお付き合いさせて頂いてる娘さんから相談の電話があった。
当社で紹介したアパートを出ることになって、敷金の精算書が届いたのだが、その中で「鍵交換費用」を請求されていて、そんなものなんでしょうか?、という相談内容。
彼女は入居する際に自費で鍵交換している。元々付いていた鍵2本のうち1本を紛失していて、それで退去時に鍵交換費用を請求されることになったらしい。だが、彼女が交換した鍵は当然に外したりせず置いてきているし、次の募集広告には(入居時に)「鍵交換費用が掛かる」ことが明示されている。と言うことは、彼女が元々の鍵を1本紛失したかどうかは関係なくなる。どのみち新規の入居者負担で鍵交換させるのだから。
私から(ふだんから懇意にしている)同業者でもある家主さんに連絡すると、「では、本人から管理会社に電話してもらってください」とのこと。家主さんも不動産業者だが、自分では管理せず、管理は他の不動産屋に任せているのだ。私が「それだと『じゃあいいです』と諦めてしまうと思いますよ」と言って、家主さんから管理会社に問い合わせて頂いたものの、答えは「退去者に請求する」で変わらずだった。
「鍵交換と精算に関する覚書に署名と押印を貰っている」と言うが、考えようによっては、いや、そうじゃなくても鍵交換費用の二重取りになると思う。新入居者に鍵交換を義務付けていないなら話は別だが。
私は「アパートの鍵交換費用は当然に家主が負担すべきもの」と思っていて、当社で管理している物件の鍵交換費用は、家主さん負担か、鍵交換は任意、にしている。以前の住人の信用度によって新規の入居者と家主さんの双方に「前の入居者は信用できますから交換しないで大丈夫かと思いますよ」と勧めていて、過去30年の賃貸管理業の中で、それで事故が起きたことは一度もない。だからこの先も大丈夫、とは限らないが。ま、入居者に安全かつ安心して快適に暮らして頂くための設備なんだから貸主負担が妥当だろう。
娘さんにはまだ伝えていない。一度電話したけど出なかったから、また近日中に電話しよう。家主さんはとても人柄がいい人だけど、もうその物件にはお客さんを紹介することは無いかな・・・、と思う。
>>鍵交換費用の二重取り
鍵交換って、普通に考えたら、今まで入居していた借家人が使っていた鍵が不正にコピーされて悪用されるのを防ぐために、新規入居者のために鍵を交換しておくものでしょう。
よって、退去するものが鍵交換の為の費用をだすというのはおかしな話でしょう。
新規入居者が鍵交換費をはらうか、家主が払うかは、最初の契約書に取り決めておけばいいものではないでしょうかね。
これって、臨時収入だ、といえる悪徳不動産管理会社ではないかな。
そうですね、前の入居者が不正に、或いは必要に応じてコピーされたものが悪用されることが無いように交換します。例えば、交際中の相手に合鍵を渡している、なんてこともあるかも知れませんから、確認しようがありませんが、コピーした鍵も退去時に回収しています。
「新規入居者が鍵交換費をはらうか、家主が払うかは、最初の契約書に取り決めておけばいい」ということで借主に負担させるのは、法律違反ではありませんが、「嫌だ」と言ったら審査は通りません。ということは強制で、借主に選択肢は有りません。「そのままだと不安」というのは借主の都合だとしても、そういう不安なく生活して頂けるよう貸主は備える義務がある、と考えるのが妥当でしょう。
退去者に請求した理由はどうあれ、費用を退去者から徴収しても、新入居者に鍵交換を義務付けているのですから管理会社や家主の負担で鍵を交換しないのは明白で、不当利得だと私は思いますね。
入居か退去時どちらかの費用請求ならまだわからんでもないけど両方ってどう考えてもおかしいですよね(苦笑)長く入居している人の中には入居時に鍵交換費用を払ったことを覚えていない人もいるでしょうから文句言われるのは半分くらいなんでしょうかね?文句言われたら費用請求を取り下げるんでも結構儲かりますね(ぇ
うちも、はなくろ不動産と同じで、契約時に「マスターキーを失くしたら鍵交換費用が掛かります」、ですね。なので、お客様に「保険の意味で、スペアキーを必要本数作って、マスターキーはタンスの中に仕舞っておけば、スペアを失くしても請求されないから」と伝えたりしています。だいたいが「U9」(いちおうピッキング防止)ですからスペアキーは作りやすいですしね。ま、最近はディンプルキーも多くなりましたが。
この話に登場する「鍵」は・・・、元々付いていた古い鍵と、お客さんが自費で交換した鍵で、失くしたのは「元々付いていた古い鍵」の2本のうちの1本。「お客さんが自費で交換した鍵」はそのまま残っていますし、たぶん管理会社に交換した鍵の1本は渡していると思います。
でもって、新規に契約する入居者には鍵交換費用を義務付けているワケでして・・・。覚書を交わしていたとしても、元々の古い鍵は返ってこなくてもいいじゃん、請求されるなら自分で交換した鍵はシリンダーごと外して持って行っても良かったか、と思ってしまいます。
くどくなりますが、新規入居者に鍵交換を義務付けるなら、今までの鍵を失くしても弁償させる必要はないかと思うのです。管理会社、どうしてそれくらいの融通を利かせてくれなかったのかなあ、と残念です。
含まれていないことは、借主側に別途請求ということになります。
給排水・空調・衛生などの設備は基本的に貸しているものですから、その期間に応じて対価が発生してきます。
一方で、畳表や網戸(の網)、蛍光灯に代表される消耗品は、貸すものではありませんから、本来であれば何もつけていない状態で、入居者さんが自分で用意することが適当と言えます。
それではあまりも不便ということで、最初は貸主側で用意しているものですが、これが問題を複雑化させています。
初期の消耗品費用を賃料で回収(いわゆる貸主負担)しようとすれば、回収が終わった後でも賃料は変わりませんので、ずっと支払いが続いていくことになります。
この不公平をなくすためには、消耗品が消費された後でも、貸主側で消耗品を交換しなければなりません。
それによって、消耗品であっても設備に近い性質を持たせることができる。(現況では、たかだか消耗品の交換くらいで、逐一連絡や交換日時打ち合わせなどの手間がかかるのは無駄という考え方が支配的です。)
そうでないならば、入居時の一時金(いわゆる借主負担)として処理したほうが扱いが明確になるものです。
消耗品は、最初だけは貸主側で用意して、以後は借主側の費用で取り替えていくという形態が、賃料で回収するという方法に明らかに馴染んでいないのです。
鍵はさらに複雑になります。
もし入居者さんごとに錠前を取り替えるのであれば、入居者さんごとに消費されるものになってしまい設備の考え方にそぐわないものになります。
その一方で、耐用年数から考えれば消耗品としての扱いにはちょっと馴染みません。
そのため設備にも消耗品にも当てはまらない、ちょっと特殊な分類となってしまいます。
さらにやっかいなことには、鍵の返却が明渡し成立の要件の一つになってしまっていることです。
借主さんが鍵を紛失してしまっていれば、明渡しが成立しません。
他にも一般的な設備や消耗品とは異なる点があって、借主側に完全に貸し与えているわけではないということですね。
貸主側でも管理し保管しておく必要があり、賃貸借期間中であっても緊急事態であれば使用しなければならない種類のものです。
これら全てのことを考えると設備とも消耗品とも言えない完全に独立した「鍵」という分類になってしまいます。
私は、こんな複雑な性質のものを賃料の中で処理しようとすることが間違いのもとで、初期費用として分離すべきものだろうと思っています。
さて、少し気になった部分にコメントを。
「自費で交換した錠前を置いてきている」
これは鍵交換費用とは関係がないことですね。
あくまで退去時には原状回復をしてもらうことになりますので。
ここに価値を認めてしまえば、有益費請求権につながっていくので、ちょっと危険だと思います。
「退去時に貸与した鍵を紛失している」
これは鍵の交換費用の問題ではなく、鍵を返してもらえないことによって明渡しが成立しなくなるという問題になってきますから、オリジナルキーを補充してもらって返してもらう必要があります。
次にその錠前を使うかどうかの問題なのではなく、明渡しに関する鍵の性質の問題なのです。
オリジナルキーを補充してもらって返してもらうまでは、明渡しが成立せず賃料も発生する、となってしまうと大変です。
現実的には、その費用を支払うことで鍵を補充してもらって返してもらったことにしましょうという処理をすることになります。
ですから、請求名目が間違っていますね。
請求名目は「鍵交換費用」ではなくて、「鍵複製(オリジナルキー作成)費用」です。
私がこの歳まで生きてきて、AK さんは一番「物事を的確に捉えて理路整然と解説できる方」だと思いますね。どんな弁護士さんなんかでも敵わないと思います、本当に。
さて、今回の件、私は AK さんとは違う見方をしています。先ず、契約書上「原状に復して明け渡す」と謳ってあって退去者に原状回復義務があったとしても、その費用を(敷金から差し引いて)受け取った貸主が、最初の古い鍵のマスターキーを作って戻す、なんてことは有り得ません。新規入居者に鍵交換を義務付けているのですから、徴収した原状回復の鍵交換費用は別の用途に使うことでしょう。
退去者には原状回復の義務があってそれを負担してもらっただけのことで、受け取った費用を何に転用しようが貸主の勝手、にはならないと私は思います。それじゃ半分詐欺です。ちゃんと最初の古い鍵に戻すのでなければ、そして新しい鍵を貸主負担で交換するのでなければ、フェアではありません。もちろん、裁判ともなれば、残念ながら家主の言い分が認められるとは思いますけど。
例えて言うなら、老朽化して取り壊す予定のアパートの入居者に立ち退きを要求していながら敷金の中から(当然にやりはしない)クリーニング費用を差し引くようなものです。原状回復義務はあるにしても、やらないなら請求するのはおかしいでしょう。実は、以前、一人いました、そういう家主。
鍵交換・・・、するなら家主が負担すべきです。宅建業協会にも「いろんな費用負担について、どちらが負担すべきか協会として明確な指針を打ち出したほうがいいのでは」と提案しましたが、貸主借主の合意があればいいんだから、と、うやむやにして逃げています。保証料なんかも同じですね。
<<私は、こんな複雑な性質のものを賃料の中で処理しようとすることが間違いのもとで、初期費用として分離すべきものだろうと思っています。
それら各種費用について、何が賃料に含まれているか、いないか、を明確にすることは必要でしょうけど、難しいことでもありますね。きっちり決めてしまうよりグレーゾーンを設けておいたほうがやりやすい、ということも承知しています。ただ、それだと、どの不動産屋や家主に当たったかで差が出てしまいますが。そういう不公平は無くしたいものですけど・・・。どの不動産屋に行っても同じでないとね。
何でもかんでも「そんなの家賃に含まれているだろ」と借主が主張する昨今の風潮はおかしい、とも言えます。何でも家賃に込み、にされるなら家賃を値上げしないと採算など取れませんし。
ところで、今の業協会の指導者、みんな知恵が無いんですね。やる気も、です。業界の将来が全く見えていません。今回のような細かな案件の積み重ねが不動産業界の将来に危機をもたらすことになる、と私は思うのですが・・・。それぞれの業者が好き勝手に法律や慣習を解釈して営業しているようでは業界に将来は有りません。などと、一抹の不安を感じております。
AK さんがどちらの支部の業者さんかは不明ですが、本部の役員になってどんどん意見を発信して頂けたらなあ・・・、と思わずにはいられません。嫌味でなく、既に役員でいらっしゃるなら済みません。
入居者負担で鍵交換したものを退去時に置いてくる(置いていかせる)ことが有益費請求権につながっていって危険、とのことですが、たいていは契約書か覚書に「退去時には置いていく」、もしくは「買い取り請求はしない」と謳ってますね。エアコンなんかの残置でも起こりえますもんね。
鍵を返してもらえないことによって明渡しが成立しなくなるという問題、については、全部の本数が揃っていなくても、新入居者に鍵交換を義務付けているなら何の問題も起きません。家主負担で鍵交換しているなら退去者に請求するのは当然でしょうけど。
一方的に鍵交換を義務付けられて、返却された鍵が足りないから原状回復しろ、というほうが間違いでしょう。今回は、とくに交換する前の鍵ですから尚更です。
こういうのって「予め貸主借主の合意があれば」でなく「一方的に借主にとって不利な特約」じゃないんですかね。不動産屋が加担して貸主側が法律を都合よく解釈している、と言えなくもないような・・・。