体調は悪くても、ずっと店を閉めているワケにはいかないもの。どのみち、店に出ていても同業者さんから空室確認の電話が入るだけで、飛び込みのお客さんなど来ないから、他人様に風邪をうつすことも無い。この2週間、風邪の引き始めの最初の2〜3日は寝込んでいたが、その後は店に出ていた。
で、ほぼ体調が戻った4日の夕方、お客様を案内することになった。ワケあって当社の管理物件を当社で案内するが、申込みは同業者さんから、ということになる。その経緯はいずれ書きたいと思う。
約束の4時に時間どおりに来店した女性は、楽器ケースを背負っていた。とても感じの良い女性で、物件を見て頂くと気に入ってくださり、借りて頂くことになった。その部屋は・・・、うちの店の斜め上の部屋。そのまま家主さんに会って頂いたのでそれで審査も完了。驚いたことに、4時にご来店頂いて審査も完了して精算書を渡すと、6時には契約金が振り込まれていた。案内〜申し込み〜審査〜精算書等を渡してお帰りになる〜契約金の入金、までがたったの2時間。この仕事をして30年になるが、当然に、今までの最短記録である。
2時間でも十分に早いが、もし世間話をしていなければ1時間で完了していたと思う。
風呂無しの部屋で、今の住まいに荷物が入り切らなくなり物置代わりに借りたいとか。たまたまヴァイオリンを習っていて、下も両隣も無いから音出しも気兼ねなく出来るので練習場としても使える。
私も音楽は大好きなので、「それ、ヴァイオリン?、見せて頂いても宜しいですか?」と訊くと、快く「いいですよ」とケースから出してくださった。50年ぶりくらいにヴァイオリンに触れたが、自分が弾けない楽器は手にするのも怖い。「何か弾いて」とお願いすると一曲奏でてくれた。「タイスの瞑想曲ですね」と言うと、「そうです」とのこと。実によく響くヴァイオリンで、値段が気になったので訊くと・・・、
「130万です。でも、これでもプロからすればおもちゃだと言われています」と謙遜して仰る。とんでもない、素晴らしく良い音で鳴っていたのだから。たしかにヴァイオリンの値段はピンキリだが、高ければ「よく鳴る」とは限らない。現に、正月の特番の「芸能人 格付けチェック」でも、億の値段のストラディバリウスと50万の練習用ヴァイオリンを比べて常に皆が正解するとは限らないのだし。
「どうしてもヴァイオリンが弾きたくて5年前から始めた」とのことだが、本当にヴァイオリンという楽器が好きなのが十分に伝わってくるから聴いていてとても心地よい。そういう思いは音色に現れるもの。
うぉっほん!、クラシック音楽を1曲弾いてもらって曲名がスッと出るあたりは私もまだボケてはいないかも。「タイスの瞑想曲」は誰もが聴き覚えのある曲だろうけど曲名が出る人は少ないんじゃないかな。
で、そのお客様から「渡辺茂夫さんて、ご存知ですか?」と訊かれた。初耳である・・・。
5歳でヴァイオリンを始め、7歳でコンサートを開き、11歳で世界の名だたるオーケストラとも共演しているのだが、たまたま来日していたハイフェッツに認められ、14歳でニューヨークのジュリアード音楽院に留学することになったとか。「たられば」や「もし」が無かったなら、ジュリアード音楽院に留学していなければ、世界でも最高のヴァイオリニストになっていたのでは、と言われていたらしい。
そのあたりはお客様が教えてくれた貴重な動画を是非ご覧頂きたい。
天才バイオリニスト 神童・渡辺茂夫
「よみがえる調べ 天才バイオリニスト 渡辺茂夫の半生を追う」1996年放送 スペースJ
(テレビ朝日「驚きももの木20世紀」の1998年5月22日放送分)
信じて頂けないかと思うが、4分34秒あたりから流れるメンデルスゾーンの Vn 協奏曲の第一楽章の音を聴いた時、私は涙が溢れてきた。それまで、この曲のベストの演奏はアイザック・スターンだと思っていたが、一瞬でひっくり返された。以前も書いているが、私は、特定のピアニストの音色の違いを聴き分ける耳を持っているし、音楽に関する感性は他人より優れていると自負している。その私が、出だしの音を聴いただけで泣いてしまったのだ。それほどの演奏家のことを知らなかったのも恥ずかしく思った。
番組の動画を観ていて、私は「もしかすると一種の人種差別で潰されたのかな」と思った。選べなかったであろうけど、師事する相手を間違ったのかな、とも・・・。世界は違うが、野茂もイチローも「基本と違う、そんなんじゃダメだ。俺の言う通りにしろ」と無理やり矯正されていたなら活躍はしていなかっただろう。
お客様が、数年前に発売された渡辺茂夫氏のCDを貸してくださるとのことなので、お借りしたらPCと3台のウオークマンに収録しよう。こんな出会いもまた、不動産屋冥利に尽きる、と思えて嬉しかった。
>>契約金の入金、までがたったの2時間
おめでとうございます。部屋がうちの店の斜め上の部屋とは、あのスナックの2階?
倒れそうな部屋ですが大丈夫なのでしょうか?
まあ、物置代わりでヴァイオリンの練習場なら最適です。寝ていたほうが、良いお客がくるような気がしますね。
スナックの2階はスナックで使っているので違いますけどね。いずれにしても、その部屋なら楽器でも大音量オーディオでも平気です。ピアノは置けませんが、音大生の練習部屋としても使えますね。
だいぶ老朽化してますけど、まだ倒れはしませんよ。ですが、うちと建物としては繋がってるから倒れるとしたら一蓮托生ではありますね。
<<寝ていたほうが、良いお客がくるような気がしますね。
そうなんですよね、どうしてなんだろ・・・、って、放っといてくれ ( `ー´)ノ
体調を取り戻されたようで、良かったです、毎朝このブログを読まないと一日が始まりません。
さて今日の話題、本当に悲劇です、あたら日本の才能を潰してしまいました。
久し振りに元NHKコンマスの江藤氏を見ました、五島みどり、龍兄弟、諏訪内など多くのヴァイオリニストが現われていますが、巨匠と言われる彼の言葉’渡辺茂夫ほどの才能はいまだ出ていない’の言葉が印象的です。
音楽史上、本当の天才と呼べるのはモーツァルトだけと思われますが、彼が学校に行きましたか?
ジュリアーノという虚栄の名前に負けたのですね、所詮凡人が天才を教えられるわけがないのです、そこを勘違いしたようです。
天才は放し飼いに限るのです、天秤に恵まれている人間を凡人がどうにかしようとしたのが間違いの元です。
僕も以前クラシックが好きでCD100枚以上持っているはずですが、どこへ押し込んだかな?、久し振りに探して見よう。
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聞いた時、その解説文の中に、ある作曲家が一生に一度だけでいい、このようなメロディーを着想したいと言ったそうですが、聞いてみて、なるほどと思ったことがあります。
一目瞭然ならぬ、一聴瞭然ですよ。
東響だったかな、大谷康子さんのグアルネリだったかを初めて聞いたとき、
当時は、クラシックはいつも2〜3列目で聞いていたのですが、大谷さんの音だけが聞こえた、というくらい音が違いました。
それまで、名器というものを持っている方の演奏は、ソロアーティストとして演奏していたものしが聞いたことがなかったので、それがよく聞えるのは当然だったと思っていましたが、オケのコンミスでこんなに音が混ざらずグアルネリだと聞こえるんだ、、と思った覚えがあります。
私は比較的耳がよいそうなのですが、普通以上に耳が悪い(と私は思っている)まめですら、そのときは、大谷さんの音だけがヴァイオリン隊の中で混ざらず聞こえる、と言っていました。
伸びと響きが全然違います。テレビだと、それはオーラのようなもので、こちら側までは届かないのですよ。
ただそれは、芸術全般なんでもそうでしょうが、慣れていなければ分別がつかないものです。当時まめは、隔月ペースでクラシックを現場2列目で聴いていましたので、、
天才は放し飼い、たしかにそうです。それこそが、日本のそれまでの反省に基づく、ゆとり教育の目的でした。
ただ、数十万人に一人のための制度を残り99.99999%の凡人にあてはめてはいけなかった、、
凡人は詰め込み教育が最善なのです。
私は、天才を救済できる制度さえあれば良いと思っているのですけどね、、
日本は結局、そこはまたおきざりにして詰め込み教育に振れてきていますから、天才は、海外に逃げるしかなくなっています。
>特定のピアニストの音色の違いを聴き分ける耳を持っているし、音楽に関する感性は他人より優れていると自負している。
それは普通じゃない?耳が優れていなくてもピアニストが違うのが分かるくらいは。本当に自己承認が強くてお幸せね。
私は、辻井伸行さんを大人になってからはまだ聞いていなかった頃、ヴァンクライバーンコンクールのまったくあっていないラフマニノフ2を、まめが遠くのテレビで見ていた音声がベッドに聞こえてきて、全然あってないけどこの人スゴイ!と飛び起きたのを覚えています。
近所に世界的に著名なとあるピアニストが住んでいるのですが、実は、それなのにまったくご近所でもそれが知られていなくて、私は、実はそこに誰が住んでいるか、人から聞いたことはまったくなかったのですが、
「絶対その人だ!」
と信じていて、まめにも
「あそこに住んでいるのは〇〇〇さんよ。」と話していました。
昨年、偶然、奥に入り込んだ形のそのお宅の門のまん前までタクシーがつけているのを見て、あら、と思ったらまるで妖怪のようなその方が現れ、1歩だけ外に出てタクシーに乗っていかれました。。
まめに
「やっぱりあの家〇〇〇さんの家だったよ!今日初めて見た!」
と言ったら
「知らないのに言ってたの?私小学校でさんざんみんなに言っちゃったよ、、」と怒られました。
音だけは表までよく聞こえるので、私は昔からよく外の石に腰掛けて聞いています。そんな人誰もいませんけど。
そういえばジュリアード、いまたしか、五嶋みどりも教えています。
常に、あのクラスの方々が教師にいます。。
才能が潰れたのは残念ですが、一人で音楽は作れないから、実技教育も重要ですし楽典の勉強も重要。。
誰が教師ならよいのでしょう。。。
ただ、教師になるやつなんて才能ない、、うちの近所のピアニストも以前テレビでおっしゃってましたわねえ、、だからアナタ、独奏しかできないのよ!て思いますけど。。
モーツアルトが天才なのは、勉強していないのに音楽理論が完璧かつ、それまでの理論になかった理論で音を作り出せたことではないかしら。
作曲家は本当の天才、神に直接理論を授かるような、ならそれでもいいのかもしれない、、でも弾く方は、勉強が必須ではないかしら。。そうでなければ、オケとも協力できないし、一人で弾くとしても、本当によい音は作り出せないのではないかしら。
ただ、教育の見極めは本当に難しい。ニューヨークのあのあたりは、今も冷たい街ですし、昔は差別もひどかったでしょうしね。
繊細な子なら、大量の勉強に、ストレス、、、
やはり、某姫君の元彼くらい図太くなければ、ニューヨークでやっていけませんわよ。
いつもお気遣いを頂きまして有り難うございます。半月以上経ちますが、咳が止まらなくて、症状としてはあとはそれだけなんですけど。
ところで、この渡辺茂夫さん、私は全くお名前を存じ上げていなかったのですが、間違いなく神童でしたね。まさに、モーツァルト以来、と言えるかも知れません。ハイフェッツも「まさかこんなことになるとは思わずに善意でジュリアード音楽院への留学の道筋を作ってくれた」のでしょうけど、これ以上の悲劇はありませんよね。睡眠薬の多量服用の影響か、失礼ながら、晩年は「ただの廃人」ですもん。
私も、天才は放し飼いに限る、と思いますね。その天才より(技量的にも人間的にも)明らかに劣る人間が、自分が教授であるというプライドと自己保身だけで才能ある若者を潰してしまうのですから赦される話ではありません。日本のプロ野球の世界を見ていても、コーチの名前を聞いて「アンタ、現役時代にどれだけの実績を残したの?、アンタに新人を教えられるの?」と思うこともしばしばです。たしかに、「教えることに関しては優れている、教え方が上手い」という人もいるでしょうけど。
高校時代も、教科担任より優れている生徒っていましたもん。
話が逸れますが、私は友だちに持つなら「努力型の秀才」でなく「ゆとりがある天才」ですね。もしくは、どちらでもなく「勉強しないタイプ」であります。「努力型の秀才」は、どうも人を見下す奴が多くて・・・。私自身は自分のことを、才能が足りない天才タイプ、と思っております。努力とか根性という言葉は大嫌いですね。
そうそう、小学4年の音楽の授業でメンデルスゾーンのVn協奏曲を初めて聴いた時、「ヴァイオリンの曲は世界にこの1曲だけでいいくらい」と思いました。この曲がヴァイオリンの持つ表現力を全て備えているように思うのです。他にも好きなVn曲はありますが。
ついでに、小学3年の時に、やはり音楽の授業でレハールの「金と銀」を聴いた時には、「世の中にこんなにキレイな曲があるのか・・・」と感動しました。クラシック音楽が好きになったのは、その「金と銀」からであります。ちなみに「金と銀」は、ロベルト・シュトルツ指揮のものが断トツで素晴らしいですね。
さて、渡辺茂夫さんのCDが間もなく借りられます。凄く楽しみです。
すみませんが、返信、少々お待ちください。でもって順番が前後するかも、です。ご了承ください。
たしかに、テレビの音と生の音はまるで違いますよね。音色だけでなく、残響とか奥行きとか・・・。私の場合、特定のピアニストの音色の違いを聴き分けられる、というのは最も違いが判る「生で聴いて」でなく、ラジオから流れてくる音でも違いが判るんですよ。自分で言うのもナンですが、それって凄いことかと・・・。
<<それは普通じゃない?耳が優れていなくてもピアニストが違うのが分かるくらいは。
いいえ、普通の(耳の)人に判るワケがありません。ま、音だけでなく曲想の付け方なんかも参考にしていますが。たぶん、著名なピアニストは同じピアノ「ニューヨーク・スタインウエイ」を使っていますので、音色が違うとしたら鍵盤へのタッチの差だと思います。その違いが誰でも聴き分けられる、なんて、有り得ませんよ。沙耶さんの持つ抜群で繊細な(原材料の違いまで判る)味覚を万人が持っている、と言うようなものです。
ま、違いが判るようになるためには何度も何度も聴かなければならないでしょうね。クラシックの名曲、それぞれに好きな演奏があって、私が好きな演奏かそれ以外の指揮・オーケストラによるものか、なんてのは簡単に区別がつきます。そのくらいなら、音楽が好きなら誰でも判るとは思いますけど。
でね、大谷康子さんのコンサートで、大谷康子さんの音だけが混ざらずに聴こえる、というのは、コンサートにおいてはあまり良いことではないかと思います。Vn協奏曲の独奏者、というならいいのですが、オーケストラはあくまでハーモニーなので。
たまに思うのです。もしもオーケストラの中にストラディバリとかを持ってて演奏している楽団員がいたならハーモニーが崩れるだろな、と。ま、ソリストクラスでなければ持ってないか・・・。
話が逸れますが、私は基本的にオーケストラの中で使われている楽器の協奏曲、例えばヴァイオリンとかクラリネットとか、ホルンとかチェロとか、そういうのの協奏曲は存在意義を認めません。オーケストラの中に無い楽器、ピアノとかハープとか、そういう協奏曲なら存在意義があるかと思いますが。もちろん、モーツァルトのクラリネット協奏曲は大好きですけどね。メンデルスゾーンのVn協奏曲も。
でも、まめさん、失礼、お嬢さんも「いい耳」をしてますね。近い将来お母さんを超えるかも。
で、渡辺茂夫氏、誰にも師事しないほうが良かったんでしょうね。ヴァイオリンは14〜15歳までにあらゆる技巧を身に付けないと大成しない、と言われていますが、一番大切な時期に余計な回り道をして潰されてしまったような・・・。だいたいが、先生の言う通りにしていたら、その先生を超えることなどできませんよね。悪意で弟子を潰すことも簡単に出来てしまうような・・・。
天才は凡人とは別枠で育てていく必要もあろうかと思います。世の中、親も教師も画一的に「俺の言うことを聞け!」ですもんね。子供や生徒、弟子を支配したがる大人のナンと多いことか・・・。
五嶋みどりさんもジュリアードで教えているんですか・・・。弟さんの龍さんも東大からハーバードに進んで一流のヴァイオリニストでもありますね、しかもイケメンで・・・。羨ましい家系ですね。
ところで、沙耶さんちの近所に住んでいる著名なピアニストって誰なんでしょう。凄く興味あります。
いずれにしても、繊細な味や音の違いが判る、ということは、それだけ鋭い感性を身に付けているということで、それは自慢してもいい事では、と、思っています。他に自慢できるものも無いもので (おい