先月28日に隣室の入居者からの連絡で、室内で孤独死しているのが発見された男性の部屋に入った。鍵は1本だけ、ご遺族の一人であるお姉さんが持っていて、その姉夫婦と一昨日「ある目的」で入った。
警察の話では死後2ヶ月ほど経っていて、事件性は無く、病死であろう、ということだった。真冬の2ヶ月でなく、この時期の2ヶ月、ご遺体は搬出されていたけど死臭は強烈に残っていた。何度も嗅ぎたくない臭いだ。私の店まで車で来てもらい、アパートに向かう途中、お姉さんから「こないだ、こんなところまで歩いて来てくれたのですか?、しかも夜遅くまで立ち会って頂いて・・・」と声を掛けて頂いた。
私はその言葉で十分に報われた。当初は「弟とはもう6年も音信不通になっていたんだし、今更そんなこと言われても・・・」と言っていたのだが、会ってみるとご夫婦ともに「自分たちが片付けなければ」という認識でいるのが解かった。家主さんの責任ではないから、それには本当に安堵した。
ところで、「ある目的」・・・、
それは、「都民共済の証書」を探すことだった。生前、それこそ何年も前、故人はお姉さんに「俺にもしものことがあったら、テレビ台の下に都民共済の証書が置いてあるから、それを葬式代にしてくれ」と言っていたようで、その証書は直ぐ見つかったのだが、部屋の中はお酒の空き缶だらけ。よくホームレスが自転車の後ろに大きな袋いっぱいに回収した空き缶を乗せて走っていることがあるが、そんなのが2袋。元々は几帳面な人だったが、どうしてゴミ回収に出さなかったのか不思議。
発見された時には炬燵に足を入れて布団に横たわっていたようで、体液が洩れ、布団には大きな蠅の死骸がビッシリくっついていて白地に黒の水玉模様のようになっていた。とにかく室内が散らかっていた。仕事が切られていたとすると、室内を片付ける意欲も無くなっていたことだろう。
早々に部屋を出て、店に戻り、私が都民共済に電話。令和2年の保険金完済証明書が一番新しく、令和3年に保険金を払っていたかどうかは不明。電話の相手は「ご親族の方以外からの問い合わせには応じられません」とのことで、「今、私の目の前にいらっしゃいますから電話を代わります」と言って代わったが、「いくらお支払いできるかは現時点では不明ですから後ほどこちらからご連絡します」だと。
元々、私が埼玉に住んでいた頃から「県民共済は保険金の支払いでいろいろ難癖をつけて払おうとしない」という評判は聞いている。ちゃんと掛け金を払っていたのなら、亡くなったのだから1千万を支払うのが当たり前。「今はもうお掛け頂いてないですね」とは言わなかったから「生きている契約」だとは思う。だが、もしかすると半分くらいにされたりして。うちが代理店になっている日本共済とはエライ違い。
その日本共済、亡くなったことを連絡すると、「孤独死特約も付いていますので上限で30万円お支払いいたします」とのこと。申請書類をすぐに送ってきてくれた。それによると、保険金の請求者は遺族か家主、そのどちらかの口座に振り込まれる、とのこと。遺族が原状回復費や滞納家賃について「そんなのは知らない」と逃げるようなら家主さんの口座に入るように、そうでなく責任を取ってくれる意思が伝わってきたなら遺族の口座に入るよう、私の判断で決めるつもりでいて、お姉さんはたとえ都民共済の保険金が下りなくても責任を取ってくれるようなのでお姉さんに申請書を渡した。
お姉さん、以前も家賃滞納の際にちゃんと連帯保証人としての責任を果たしてくださったし、以前には故人と私とお姉さんとで、故人のアルコール依存症の治療の相談で、保健所や病院に行っている。今のアパートの連帯保証人はお姉さんの夫(故人の義兄)だが、逃げたりはしないだろう。家主さんも91歳で施設に入り、娘さんも癌が転移して治療中でもあるから、ご遺族の負担で片付けてくれたなら有り難い。
店に戻った際、私は心からお姉さんに謝罪した。「居酒屋の調理のバイトを掛け持ちでしていたようですが、このコロナの影響でどちらも仕事が無くなっていたかも知れません。私はTさんを信用していましたし、お姉さんに連絡されたくなかったでしょうから督促など全くしませんでしたが、どうして、食べる物にも困っているのではないか、と気付いてあげなかったのか、『飯くらい奢るよ、声かけて』と言ってあげなかったのか、悔いが残ります。本当に申し訳ありませんでした」、と。
お姉さんは私から「えらい迷惑です。親族なんですから責任を取ってください」と責められると思っていたかも。だから驚かれたと思う。もちろん、それは私の本音だった。家賃を振り込んだ時、「今、1ヶ月分振り込みました。来月の半ばに0.5ヶ月分振り込みますので」とか、「今月は仕事が無くて家賃が払えません。来月まで待ってもらえませんか」と電話してくるのは、33年の賃貸仲介管理生活でTさんだけ。頑張っていると判っていたから、家主さんには申し訳ないが、本人にも連帯保証人にも督促しないでいた。
「さっき、酒の空き缶の山を見ましたけど、私は『そんなカネがあるなら少しでも家賃に回せよ』とは思わないのです。Tさんにとっては、それくらいの楽しみが無ければ生きていけなかったことでしょうから」とも話した。家主と借主の間に入って、妥当な落としどころを探るのも私の仕事。ただし、そのあたりの判断をする際、感情や人情を入れすぎるのが私の悪いところである、と自覚しているけど。
後で家主さん(娘さん)に電話して、「滞納家賃も特殊清掃費用もお姉さんのほうで負担してくださるみたいですから安心してください。ただし、これから家財の処分なんかと一緒にやってくれる業者を探して手配するのと、都民共済の保険金申請の手続きとかありますので、少し時間は掛かるかと思います」と報告して了解して頂いた。家主さんは「他の入居者さんはTさんの孤独死を気にしていらっしゃいませんか?」と訊かれたので、「それは大丈夫だと思います。本来ならアパート全体が事故物件ということで家賃を下げなければならないかも知れませんが、とくにそんなことは言われていませんし」、と答えた。
家主さん(お母さん)の施設の費用は、そのアパートの家賃から出している、とのこと。それを伺って、申し訳ないことをしたな、と思った。かと言って、強硬に取り立てをしたとしても、払えないものは払えないのだし、入居者にも事情があるし・・・。ただ、管理会社としては間違いを犯していたかも。
この件に関しては経緯や結果をこちらのブログで報告したいと思う。
さて、昨日よりは腕が上がるようになったし、頭痛も和らいだ。今日は店に出よう。
うちのアパートで孤独死があった時は、幸い発見が早かったので事故扱いにはなりませんでしたが、
子供さんに残置物処分の念書に一筆お願いしても一切関わりたく無いという強硬な姿勢で、
仕方なく一時空いた場所に保管してから処分しました。
生前からさんざん子供さん達に迷惑をかけていたようで、縁を切ったんですね。
自業自得といえばそうですが、そんな死に方したくないですね。
本人は自業自得で済みますが、赤の他人に迷惑をかけて「ヨシ」とするのは筋違いですよね。私は、実の娘と縁を切っていて親子間では縁切りしていますが、元娘が借りている部屋の連帯保証人になっているので、何かあれば私が弁償しなければなりません。
管理会社に連絡して、次回の更新から保証会社を使ってくれるよう依頼しましたが拒否されましたので、まあ、何かの際はこのまま責任を負わされることになります。下りようと思えば下りられますが、こういうブログをやっていて「逃げる」ワケにもいきません。辛いところです。
ところで、ブログ仲間のCyberが孤独死した時は、バーダックさんのお客さんの孤独死のケースよりもっと寂しい結末でした。Cyberが、離婚して親権が母親に渡った娘さんの為に掛けていた生命保険金の受け取りを拒否されたのですから。2千万くらいだったかなあ・・・、それだけあれば一息付けるでしょうし、娘さんの学資にもなったでしょうし、何より故人の意思だったのに、私の説得に応じませんでした。
よほどに確執があったんでしょうね。Cyberの人間性だと、奥様が拒否する気持ちは解かりますが。
受け取ってもらって、片付け費用を負担してもらえたなら有り難かったのですが、頑なに拒否をされてしまって・・・。死んでも「それ」では寂しいですよね。ほんと、そんな死に方はしたくないものです。
おはようございます、何か晴れそうですね。
不動産屋さんと言うのはいろんな人生に巡り合いますね。
孤独死の場と言う愁嘆場でもほっとする瞬間を見出す、これは正に天職と言えます。
流石に技や資格を持つのは有利ですね、自分が望めば何時までも働けますから。
早期退職するような僕には到底できません、その面ではある意味羨ましいです。
僕も技術的には自信あったのですが、その技術が見る見る陳腐化して、ついて行けなくなりました。
最後は管理者をやらされましたが、技術的な裏ずけの無い管理者なんて侘しいもんでしたよ。
昨日歯を抜いたのですが、その歯医者さんもワクチンの副作用で2日間高熱と腕の痛みで苦しんだそうです、poohpapaさんも苦しまれたようだしどうしようかな?
来週から調布でも予約が始まります。
ワクチンの副反応には個人差があるみたいですね。私なんかはまだ楽なほうだったかも知れません。で、あれこれ悩まず是非お受けになってください。副反応が出たとしても辛いのは数日なのですから。
ところで、この歳で、まだ働かせてもらえるのは有り難いことなのか・・・、定年退職して退職金と年金で悠々自適で暮らしている同級生のほうが幸せなのか、自分では「今も働けるほうが幸せ」と思いたいものですが、退職して趣味に生きる友人を見ると、「若い時にサボったツケ」なんだな、と思います。
まあ、うちのは「家にずっといられないからそれは幸せ」と思っているようですが。
昨今は、面倒だから結婚しない、なんて若者がいますが(うちの子供もそうですが)、孤独死の現場を見ると、そうなってほしくない、と切に願います。一度、現場を見せようか、と思ったりして。自分は死ねば判らないのですからそれでいいかも知れませんが、片付ける人の身にもなってもらいたいものです。
<<孤独死の場と言う愁嘆場でもほっとする瞬間を見出す、これは正に天職と言えます。
有り難いお言葉ですが、それは、(ハートのある)相手があっての話、ですね。相手にハートが無ければ、修羅場にしかなりませんもん。ですが、温かいお言葉、有り難うございます。
共済の証書が見つかってよかったですね。poohpapaさんやご親族に保険をかけていることを伝えていたのは、亡くなったTさんの遺言なのでしょう。空缶が膨大に残されていた。普通?のアルコール依存症は効率よく酔うことを考えるので、缶は買わないと思うのです。Cyber氏はウィスキーを通販で買っていました。仕事帰りに財布の中と相談して買っていたので、缶チュウーハイとかになったのでしょう。Tさんは携帯電話は持っていなかったのでしょうか?ロックがかかっていると無理ですが、電話帳や着信履歴とかから、行動履歴がわかるかもしれませんね。Tさんは体調が悪かったのか、コロナ禍の影響を受けていたのかとかが、少しわかると、私たちはこれからどう生きていかなければならないのか、参考になるかもしれません。
良く生きないと良い始末ができないことがわかりました。ありがとうございます。
いえいえ、今回の都民共済の証書の件は、バラキさんのコメントが無ければ進展していなかったかも知れません。Cyberの時といい今回といい、孤独死で二度もバラキさんに助けられました。バラキさんは、まさに「孤独死の神」です。冗談でなく、ほんとの話。
あとは、いくら保険金が下りるかで、契約が有効なら滞納分を清算して頂いて特殊清掃を入れてもお釣りがくるかと存じます。快く協力してくださっているお姉さんに、なにがしか残ってくれると嬉しいです。
Tさん、普通におカネがあればボトルや大瓶で買ったかも知れませんが、生活に困窮していたことから自販機やコンビニで一本ずつ買っていたのかな、と思います。本当はもっといっぱい飲みたかったのでは、と思いますね。なのでそういう飲み方は生活苦から、でしょう。食事をとらずに缶の酒を飲んでいたかも。冷蔵庫もほとんど空でしたし。肝臓を病んでいたかも知れませんね。
携帯電話はありましたが、携帯も滞納して切られていました。警察が解析していたと思われます。事件性が無い、ということで、お姉さんに返されたようです。亡くなっていたのを知っていたかどうか不明ですが、最近になって昔の職場の同僚女性からお姉さん宅に何度も電話が入っているようですし、お姉さんも気になっているみたいです。
充電してやれば履歴は出るでしょうね。バラキさんが仰るように、行動の様子が分かれば、どうコロナが影響したのか、我々に考え方、向き合い方の正しい指針を示してくれるかも知れませんね。
そう、良い死に方をするためには良い生き方をすべき、というのは真理ですね。