退去される方は大手住宅メーカーの女性部長で、大変な人格者である。入居なさってまだ1年ちょっとなので、「どうしてなんだろう」、と不思議に思って尋ねてみたら・・・、
「可愛がっていた猫(ヒマラヤン)が亡くなったので、ここで暮らすことに耐えられなくなったんです」とのこと。なんでも、蚤取りの薬へのアレルギーが原因で、まだ8歳と2ヶ月という年齢だったとか。ペットショップにいつも使っている薬が無かったので別のものに替えて、最初は何の変化もなかったのだが2度目に使った時に急変して、急いで動物病院を探して連れて行った時には手遅れだったと言う。
「立ち直るのに3ヶ月も掛かってしまいました」、と寂しそうに語る表情に、ペットに対する愛情の深さを感じた。不可抗力ではあろうが、飼主として自分を責めるお気持ちはよく解かる。
私もかつて飼っていたシーズーが亡くなった時には2週間もの間、お店でも放心状態でずっと泣いていた。お客さんが来店して見られたとしても、もうどうでもよかった。所謂「ペットロス症候群」である。
「こんな辛い思いをするなら、もう二度とペットは飼いません」との言葉に、「今度、私がここに引っ越してきて猫を飼うんですよ」、とはとても言えなかった。言えばその方はきっと喜んでくださるとは思っているが・・・。
完全室内飼いなので蚤取り薬の心配は要らないのだろうが、ペットを飼っていれば不測の事態も起こり得るものだろうから、ノルンには細心の注意を払わなければ、と思った。
ペットは飼主を選べないし、口の利けない弱者なのだから。
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