2008年04月21日

これ以下はない最悪の条件のお客さん

更新契約をしている最中にドアを開けて老人(男性)が入ってきた。

「部屋探しを頼みたいんだけど・・・」と言う。

漂っている雰囲気を一目見て、「この人の部屋探しは難しそう」と思えたが、「しばらくお待ち頂けますか?、どうぞお掛けになってお待ちください」と言うと、「いや、それでは迷惑かけるから外で待ってるよ」と出て行こうとする。それで「大丈夫ですよ、中でお待ちください」と言っても、「いやいや、いいから」と入ってこない。

ならば仕方ない、と契約事務を続けていたが、ちゃんと外で待っている気配がする。本音では「5分もすれば他所の不動産屋に行くもの」と期待(?)していたが、寒い店の前で20分も律儀に待っていた。

更新のお客様と入れ替わりに中に入ってもらって条件を聞くと、「立川で、出来れば二部屋あって、予算は5万くらいまで」とのこと。

内容は先日の老人とよく似ている。しかも、水商売で店仕舞いも考えていて、保証人を頼める人もいない、というところまでソックリで、老人は日本人であったが、これでもし特定の国の国籍の人だったならもう最悪で、何と言うか「悪い条件」が全て揃っていることになる。

のだが・・・、私はこのお客さんの部屋探しを引き受けることにした。なぜなら、20分以上も先客の邪魔をしないよう外で待っていてくれたことと、悪い条件の話も全て正直に話してくれたから、「このお客さんなら大丈夫では・・・」、と思えたからだ。

と言っても、うちの直の管理物件か、よほど仲良くしている業者の物件にしか紹介は出来ない。申し込みを入れても断られてしまうのがハナから判っているから、である。

「場所が矢川とか国分寺なら、うちの管理物件で安くていい物件があります。そこなら家主さんに相談に乗ってもらえますが・・・」と言うと、「住所が国立とか国分寺ではダメなんだよ」とのこと。

それで、ピーン!ときた。

「生活保護を受けられるのですね」と訊くと、「そうなるかも知れないんで・・・」と言う。

今は水商売で間もなく無職、高齢者、保証人なし、に生活保護・・・、
泣きたくなるような条件だが「この老人の力になろう」と思った。

「1週間ほどしたら寄ってみてください。何か探しておきますので。念のため、電話番号をお伺いできますか?」と訊くと、「家には電話はないし、携帯も持ってないんだよ」とのこと。え?マジかよ!?

電話が無いようでは殆どの不動産屋で断られてしまうに違いない。

「公衆電話ででも電話するから」と言うお客さんに、「でしたら、コレ、あげますよ」と未使用のテレホンカードを渡したら喜んで受け取る。
10円玉の持ち合わせが無ければ公衆電話も使えないのだから。

帰りがけに、「この歳になるまで、アンタのような不動産屋に当たったのは初めてだよ」、と言ってくれたが・・・、

私も、「お客さんみたいに悪条件が揃った人、初めてですよ」、と、心の中で呟いていた(^^ゞ

その後、相当な期間を要したが、その老人の新居は見つかった。うちの管理物件ではなかったが、ふだんから仲良くしている同業者に頼み込んで、「保証人なし」の条件で何とか審査を通してもらった。

今、老人は「近所まで来たから」と毎日のように私の店に寄るふらふらたらーっ(汗)



posted by poohpapa at 06:13| Comment(2) | お客さん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ちょっと感動的なお話ですね^^涙腺が緩みます。

このご老人が言うように、こんな不動産屋さんあまりいませんよ。大体門前払いでしょうね。だから心が温まるから毎日でも通いたくなるんですよ。

私も老人になってどこもすむところがなくなったら是非紹介してください笑。

別件なのですが、一つ実務上のご経験を伺いたく思います。
お邪魔だとは思いますが、メール差し上げたいのですが。
あつかましくすみません。
もしお忙しいようならば結構です。
Posted by 星輝 at 2008年04月21日 11:00
星輝さん、おはようございます

先ほど、コメントを頂いた際のメールアドレスに私からメールを送信させて頂きました。どうぞご覧ください。

それでは、とりあえず、失礼致します。
Posted by poohpapa at 2008年04月22日 07:15
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