2007年11月13日

気が重かった引越し立会い

ここ1週間ほど私を憂鬱にさせる引越し立会いがあって、私の仕事に関しての悩みは、ほぼその一点に集中されていた。

1ヶ月ほど前、当社で管理している貸家の引越し立会いをしたのだが、今までで一番の傷め方で、業者に見積もりしてもらったら原状回復にかかる費用は368万なり、で、もちろん過去最高額である。

4LDKの貸家は天井まで汚されていて、システムキッチンも交換せざるを得ず、浴室に至っては傷だらけで、窓ガラスも割れ、汚し放題という有様。敷金は42万預かっていたが、家主さん負担分を差し引いてもそれで足りるハズはなく、不足分をどう出させるか、という問題である。入居者は貿易商を営む外国人だが日本語は通じる。

1ヶ月前の立会いには日本人社員が来ていて、見積もりが相当金額になったので、改めて本人に来てもらうことにした。

私は約束の時間前に現地に行っていたが・・・、本人は来ない。「なんだよ、これもスッぽかしかよ!」と思って電話をすると、「9時半じゃなくて10時半と言ったでしょ!」だと。「いちじ」と「ひちじ」なら聞き違えることもあるだろうが「くじはん」と「じゅうじはん」を聞き違えることは無い。ムッときたが我慢して待つことに。

10時半にやってきた本人は、私の「1項目ごとに細かくチェックするだろう」との予想とは違い、浴室とキッチンの傷の確認だけすると、「見積書、ありますか?」と私に訊き、渡してやると、サッサと数字を書き込む。「私は全部で60万払います。だからあと20万払います。OKね」と勝手に決めて言う。日本人でも難しい「減価償却」という言葉も意味も知っていて、「それ以上は出さない」と言う。

「ダメです。この傷が無ければ家の取り壊しまで交換しなくて良かったハズのものです。再調達価格で出してもらいます」と言うと「これは交渉です。あと20万です」と譲らない。それじゃ丼勘定である。

私は「ルームクリーニングと浴室ユニット交換の計90万を負担してくれれば他は一切家主さん負担にして頂くから」と伝えてあって、それだと50万は支払ってもらうことになるが、まあ、そこまで「出す」とは言わないだろう、とは思っていた。90万でも譲歩している額であって、厳密に査定したなら150万にはなったであろう。

実は、家主さんは、最悪「敷金放棄以外は一銭も取れない」ものと覚悟していらっしゃって、私に全部一任してくださっていた。家主さんは「任せる」と言ったら本当に「任せてくださる」方で、結果について一切の文句を仰る方ではない。そういう面では気楽であったが、管理会社としての腕前を問われる事案ではある。

相手の反応から、「相手も早くアッサリ決着したいと思っているな」と判ったので、「それじゃ、こうしましょう。あと10万上乗せして30万振り込んでください」と提案すると、「OK、それでフィニッシュね」と合意が成立した。「直ぐに振り込むから領収証を送ってくれ」とのことで、もちろん異存は無い。

これ、もし入居者が中国人や韓国人だったら、まず追加で払うとは言わなかったろう。「家賃払ってるね、家主が負担するの当たり前ね」でお仕舞いにされたと思う。私は何度も経験しているから。

家主さんのお宅にご報告に伺うと、「それで結構ですよ」と笑っていらっしゃった。結構、と言っても家主さんは300万以上負担することになる。それは不動産会社の設立資金、いや私の年収とほぼ同額である。こんな事案ばかりでは大家稼業などやっていられない。

家主さんの負担は追加工事を含めると約320万になるから、入居期間4年弱のうち1年4ヶ月無償で貸していたのと同じことになる。

とにもかくにも原状回復費用を取り損なったなら信用問題であるから例え30万でも追加で支払ってもらえることになってホッとした。それより、当社が訴えられる可能性が無くなったことに安堵した。

家主さんから「ご苦労さま」とビールと柿とどらやきを頂いて帰社すると、私が「それやこれや」で何となく手が付けられなくていた案件の家主さんお二人から電話が入っていた。急いで処理したものの、そちらの家主さんからの信用は失ったかも知れない^_^;

体は一つでもいいが、心臓は2個欲しい、と思ってしまった。
posted by poohpapa at 07:26| Comment(10) | お客さん(入居者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「丼勘定」は結構ですが、何が根拠なんだろう?
「減価償却」を知っていて、見積書も見たのに・・・当然家の有様もその原因も知ってるわけだし・・・
酷いなぁ。
Posted by ハリケーン at 2007年11月13日 09:32
ハリケーンさん、おはようございます

一つ一つの項目に文句をつけなかった、ということは、「自分たちがしたこと」という認識は持っている、と思います。そのうえで、如何に安くしてもらうか、安く上げるか、だけの問題になります。外国人の場合、自分がしたことでなければ、つまり「自分に責任が無い」ことに対しては一銭も払おうとはしませんから。少しでも払うつもりでいた、ということは、「責任は認めている」ということになります。

家主さんは、ここで長引いて工事の着工が遅れることを心配なさっていて、大幅に譲歩してくださいました。入居中の別の貸家のリフォーム代金200万を全額出してあげた家主さん、でもあります。

家主さんからは直ぐ工事に入ってくれるよう依頼されましたが、反面、まだ広告を打たなくても良い、とも言われました。「今のままお客さんを案内しても決まるハズもないから、無駄なことはしなくていいよ」とのことで、私共にも充分な配慮をしてくださっています。

一週間、胃が痛む思いでしたが救われました。有り難いことです(^^ゞ
Posted by poohpapa at 2007年11月13日 10:01
敷金精算に対する考え方は貸主借主両方ここ10年で変わってきたと思います。
私が住む地域は敷金5ケ月が主流でしたが、最近では敷金3ケ月以下が目だってきました。(移動しやすいように契約金を抑える傾向)
昔は”全部キレイにして還しなさい”が通っていましたが、最近では実費精算はやりにくく、敷引きが多くなってきました。しかしこれも裁判になると全額認められないケースがあるようです。
国土省のガイドラインも全国で統一できるはずもなく慣習に左右されるところもあるでしょう。
いっそ条例で”原状回復は○○”と決めてもらったほうが間に入る業者としては頭を悩ます必要がないと思うのですが、、(^^;
Posted by mallory at 2007年11月13日 10:08
おはようございます。

しかし寛大な家主さんですねぇ^_^;」

どちらかと言うと自分本位の方が多い印象ですが、そのような方だと逆にどうにかしないといけないと思いますよね。

胃の痛むケースは本当に毎日が憂鬱になります(>_<)

お疲れさまでした☆
Posted by えびけん at 2007年11月13日 10:19
malloryさん、おはようございます

敷金精算は不動産会社にとって最も頭の痛い仕事ですね。malloryさんが仰るように、敷金や原状回復費用についての考え方や常識というものが、ここにきて大きく変わってきていますね。

私は、「なぜ入居者ばかりが保護される必要があるのか」「当たり前の費用を請求してどこが悪いのか」、いつも疑問に思っています。貸主と借主の権利や義務は、互いに公平公正に認められ課されるものでなければ理不尽だと思うのですよ。

「今までが何でも入居者に請求していたから」ということであって、その反動で今は思い切り針を逆に振ってしまっているんでしょう。ただ真ん中に戻せばいいのに・・・。

それと、マスコミの報道の仕方や姿勢が「誤った(必要以上の)消費者保護」に偏っている、ということが言えると思います。それによって、消費者は「自分に都合よく」解釈します。

「人様から借りたものを傷めたなら、弁償するのが当たり前」、だと私は思うのですが・・・。
Posted by poohpapa at 2007年11月14日 07:55
えびけんさん、おはようございます

そうなんですよ、そういう家主さんの場合は私も「少しでも何とかしなければ・・・」と責任をより強く感じてしまいます。

仮に失敗したとしても「私を責める」ことは決してなさらないし、管理会社に対してそういう対応をなさることで、結局は家主さんが「お得」なんですけど(*^^)v

それはもちろん、「口と腹が一致していなければなりません」で、私に言ってることと本音が違っていたりすれば、それは直ぐ判ることなのでかえって不愉快になったりします。そのほうがマズイですね。

お互い、胃を痛めながら精進しましょうね(爆)
Posted by poohpapa at 2007年11月14日 08:04
お疲れ様でした。
 ちょっとお尋ねしたくてコメントなんですが、
・天井まで汚れている←タバコのヤニ他ありますね
・システムキッチンも交換←錆や酷い傷、破損ありますね
 は解ったのですが

・浴室に至っては傷だらけ
 これが理解できないのです。こんな奴が金属タワシで掃除したとも思えませんし。。。
 犬猫が一緒に居たとかなんでしょうか?
 差し支えありませんでしたらお返事よろしくお願いします。
Posted by やす at 2007年11月14日 12:51
やすさん、こんにちは

天井は、何かの塗料が飛んでいました。水鉄砲にインクでも入れて飛ばしたのかな、と思われます。タバコではありませんでした。

システムキッチンは掃除してなかったのか、錆で全体的に腐食してました。ステンレスが、なんです。これはやすさんの仰るとおりでして、ただ呆れたのは、オーブンの中に調理中の食材が入ったままになっていて、引越し当日の朝に食べるつもりでいて途中で運送業者が来てしまったのかな、みたいな感じでした。夜逃げみたいですね。

で、お風呂なんですが、子供が金属のおもちゃで遊んでいたのか、擦り傷だらけなんです。浴槽の縁も底も、傷で黒くなっていました。表面を磨いて落ちるものではなく、交換せざるを得ませんでした。

他にも、障子は穴だらけ、フローリングもシミだらけで、凄かったです。

ま、こんなところであります^_^;
Posted by poohpapa at 2007年11月14日 16:04
海外の賃貸物件ってペンキ塗りの壁が多いから少々汚しても全くお咎め無しです。(笑)
でも300万オーバーの修繕費って・・・建て替えみたいなものですね。きっと想像を絶する状態なんでしょう。

裁判するぞとか入国管理局の知り合いに連絡して二度と日本に入れないようにするぞとかブラフをかましてみるのも良かったかも知れません。中国、韓国人は論外としても下手に出た時点でアウトですよ。まぁ逃げられたらもっと始末が悪いですが・・・

領収書の宛名にはSOBと書いておいてください。(嘘)
Posted by おやぢ at 2007年11月14日 17:10
おやぢさん、こんばんは

家が大きかったので、大工さんを入れるとそれくらいなってしまいます。浴室なんか、そっくり取り替えるので75万もかかりますもん。

よく「減価償却してるハズ」などと主張する退去者がいますが・・・、

「減価償却してるから」というのは、家主さんが言うならともかく、傷めたり汚した人間が主張できることではない、と思うのですよ。借主がソレを言ったら「無責任」です。「私が傷めたのだから、ご請求頂ければちゃんと支払います」と言われたなら多少の手心も加えますが、「減価償却」を口にされたら「少しでも多く負担してもらおう」と思ってしまいます。私は臍曲がりなので^_^;

Posted by poohpapa at 2007年11月14日 17:38
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