2005年06月05日

ドアスコープを壊されて

道を歩いていたら携帯が鳴った。出ると、女性専用アパートの家主さんだった。或る入居者の部屋のドアスコープが何者かによって外から壊されてしまった修繕費用に関して、「どうしても家主負担になる訳ね」、というクレームとも問い合わせともつかない用件だった。

その一週間ほど前、入居者から電話を貰ったので、「私から家主さんにお話して、業者に出来るだけ早く直してくれるよう連絡します」と話して、直ぐ家主さんに事情を伝え、「ドアスコープが壊されたことについては入居者には責任がありませんので、この場合費用は家主さんの負担になってしまいます」、と話して了解も取り付けていた。
金額にすれば手間賃を含めても数千円の話である。

で、業者から請求書を受け取ったところで私に電話をしてきた。
「今回は私が払いますけど、次また同じことが起きたら入居者に請求できるのかしら?」と言うのである。私が、「う〜ん、それは難しいですね。入居者に安全に暮らして頂く為に家主さんがすべき補修と考えられますから、2度目だからと言って入居者に請求することは出来ないでしょう」、と言うと、入居者の交遊関係などの例を挙げて「全く関係ない相手がやったとは断定できないでしょ?あの方の部屋だけで起きたとしたら本人にも責任があることになりませんか?」とのこと。一理はあるがそれを証明することは難しい
だいいち、そんなこと本人には言えない。

だが、もし私が「家主さん、それは間違いです。そんなことは出来ません」、とハッキリ言ったなら、家主さんは私に対して不信感を持つことになって管理会社を換えかねない。やんわり話しても拒絶反応なのだから。さりとて、入居者に請求しようものなら私は正真正銘の悪徳業者になってしまう。入居者は芯の強い女性だからアッサリ退去してしまうことも考えられる。

私は「次、また同じことが起きるかどうかは分かりませんし、その時が来たら考えましょう」、と話して電話を切った。今の時点でまた起きるかどうか分からないことの支払い義務を議論したところで始まらない。家主さんはただ言っておきたかっただけなんだろう。

不動産屋が間に入って、「家主と入居者との間のトラブル」を未然に防いだり丸く収めていることは多々あるものだ。それが仕事でもある訳だから「理解してくれ」などと甘ったれたことは言わないが、私は今に深い人間不信に陥りそうな気がする。いや、もう陥っている。

世の中で、不動産屋ほど不条理に遭遇する仕事は無いと思う。

posted by poohpapa at 07:50| Comment(14) | 家主さん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年06月27日

「穴」の思い出 2

さて、エアコンの「穴」によるトラブルで、2週間で退去されてしまったアパートであるが、その後も新たなトラブルに見舞われることになった。

次のお客様がなかなか決まらずにいたら、家主から「不動産業者を替えたい」、と連絡があった。私はそういう場合、けっして引き留めたりはしない主義であるから、「かまいませんよ」と言って、地元の優良な会社を紹介してあげた。

その会社で、2組のお客さんから申し込みをもらったらしいが、一組は「職人だから」、もう一組は「ご主人が外人だから」ということで断ってしまったとか。そうなると業者も冷めてきて一所懸命に客付けなどしてくれなくなる。結局、5ヶ月も空いたままになった。

途中、家主が何度も当社を訪れて、「オタクでもいいお客さんがいたら紹介してくれないかなあ」と頼む。本音では「どのツラ下げて」だが、「分かりました」と答えておいた。

そうこうしているうち、近所の病院で賄いをしていらっしゃる方の息子さんが、結婚するとのことで来店した。やはり希望地域からは外れていたが、そのアパートを案内すると気に入ってくれた。予算が少しオーバーしていたので、たまたま案内の時に庭にいた家主と値引き交渉するとアッサリOKしてくれた。これで問題なく契約になる、と思っていた。

翌日の朝、新管理会社から抗議の電話が入る。「勝手に値引き交渉しないでくれ」、というのである。それで、「元々は当社の管理物件だったから家主さんは良く知っているし、あの家主さんが家にいる時に案内すれば、すぐに家から飛び出してくることはオタクだって知ってるハズ。うちが直に取引しようとしたのならオタクが怒るのは分かるけど、ちゃんとオタクの会社を通して申込書を入れているのだから、文句を言われる筋合は無い!」と反論すると、すぐ誤りを認めて謝罪してくれた。

それでやっと落ち着くかと思ったら、業者から再び電話。「家主が、今回3千円値下げしたから更新の時には5千円値上げする、と一筆入れてくれ、って言ってるけどどうしましょうか」とのこと。「もう勘弁してくれよ〜」である。私が「そんなことできる訳ないでしょう。だったらこの話は無かったことにしてくれる?」と言うと、向こうも嫌気がさしていたのだろう、「ああ、そうしましょう」とアッサリ白紙に。

その後、3ヶ月ほどして家主が再び店にやって来た。「またイイお客さんがいたら・・・」と言うので、接客中だったし、「外に出てくれる!二度とうちの敷居は跨がないでもらいたい!」と追い出した。

それほどのトラブルがあっても、私はこの家主が嫌いではない。むしろ、家主としては、いい方(ほう)なのだ。それに奥様も、とても優しい人である。

その後、7年間も音信不通になっていたが、3ヶ月前、奥様と2人でおみえになった。ドアを開けて、「入ってもいいかなあ」と言うので、「どうぞどうぞ」と迎え入れた。なんでも、この7年間、私にお詫びをしなければ、と、ずっと気になっていたとか。「できれば、またオタクで管理してもらえないかなあ・・・」との嬉しい言葉ではあったが、私からすればまだその時期ではないのでやんわり辞退した。

だいいち、私が紹介した今の管理会社に対して、「また当社で管理させてもらうことになりましたので・・・」などと言える話ではない。それでは同業者を利用したことになってしまう。

だが、空き部屋が出た時には気にかけてあげようと思う。このご主人が無理なことを言う心配はもう無いのだから。

posted by poohpapa at 06:00| Comment(8) | TrackBack(1) | 家主さん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年06月26日

「穴」の思い出

東京の郊外にある3DKのアパートの管理をしていた。

ある夏の日、飛び込みで、大企業の取締役部長をしているお客様がカップルで来店した。たまたまそのアパートに空き部屋があったのでお客様をご案内することにした。お客様には持ち家もあり、家庭もあるが、一緒に来店した女性は奥様ではない。その女性は会社の部下で、言うなれば「駆け落ち不倫」であった。ご希望の条件からは少し外れていたが、ご案内すると一発で気に入ってくれて契約する運びとなった。

ところが、入居してすぐに退去することになる。破局したから・・・、ではない。

そのアパートにはDKにだけエアコン用のスリーブが空いていて、他の入居者たちもDKに1台だけエアコンを取り付けて暑さを凌いでいた。お客様が入居してすぐ当社に、「全部の部屋にエアコンを付けたいんだけど、どうすればいい?」と電話してきたので、「元々のスリーブは1ヶ所ですから、他の部屋には新たに穴を開けなければならないでしょう。家主さんにはこちらから連絡しておきますので、どの位置に穴を開けたら良いか家主さんと電器屋さんとで打ち合わせをしてください」、と言って電話を切った。

それからすぐ家主に連絡すると、「とんでもない、エアコンなら1台取り付けてあるでしょう。僕のアパートに穴を開けないでくれよ」、と言う。家主は人柄は悪くないが、とても神経質で、「アパートに穴を開ける=傷モノになる」、と思ってしまっている。そこで、「ふつうの人」である奥様と電話を代わってもらった。私が、「入居者が、エアコンを付ける為に家主さんに無断で壁に穴を開けたとしたら問題ですが、『エアコンを取り付けたいから壁に穴を開けさせて欲しい』と言ってきたのを拒むことは常識的に考えればできないと思います。奥様からご主人様を説得して頂けませんか」、と頼むと快く受けてくれた。電話口でしばらくやり取りしていたようで、ご主人が再び電話に出て、「じゃあ、イイことにするよ。だけど、どうしても穴を開けたいのかなあ・・・」と、まだ言っていた。

私は嫌な予感がしたのでご主人に釘を刺しておいた。「ご主人様も一度了解なさったことですから、これから○○さんと顔を合わせても、絶対にエアコンの穴の話はしないでくださいね。今度その話をする時は、電器屋さんを交えての打ち合わせの時ですからね、いいですね」、と。「うん、分かったよ」、と言ってはいたが、それでも不安だった。

翌日、その不安は的中する。お客様からクレームの電話が入った。「話が違うじゃない!、さっき駐車場で顔を合わせたら、『どうしても穴を開けるの?』って聞いてきたけど、どうなってんの!?」、と。お客様のご立腹はもっともである。

私はすぐに家主に電話して猛抗議をした。家主は平謝りだったが、もう遅かった。入居者が退去を決意してしまったのだ。お客様の入居期間はたったの2週間であった。

そのお客様は私にとっては誠に有り難いお客様であった。退去を決めるとすぐにまた来店して、「もう一度最初から部屋探しをし直してくれないか。もちろん、手数料もちゃんと払うから」、と言ってくれたのである。そう言われても、「ああ、そうですか」ともらう訳にはいかない。下手をすれば「損害賠償モノ」だったのだから。

改めて国立にある3LDKのマンションを紹介して契約してもらうことになったが、手数料の15万円は辞退した。「気にしないで受け取って」、と再度仰ってくださったが、もらえるものではない。このトラブルは私の所為ではないとは思うが、ご迷惑も掛けているし、自分でも納得がいく仕事ができていない以上、頂く訳にはいかない。私も「プロ」だから。同様の理由で、私は年に何回かは手数料を辞退することがある。

この家主とはトラブルの続きがある。それはまた明日。

posted by poohpapa at 06:01| Comment(2) | TrackBack(0) | 家主さん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年02月21日

立派な見識の家主さん

家主、といえば、強欲、ケチ、というイメージが付いてまわりますが、中には驚くほど立派な見識をお持ちの方がいらっしゃいます。あ、8割かた、普通の方々なんですけど(爆)

ある日、家主さん宅を訪問すると、明らかに東南アジア系の顔立ちのお客様がいました。で、理由を尋ねると、そこには感動的なドラマがありました。

そのお客人はラオス人のご家族で、娘さんの「三口(兎唇)」の手術のために来日中でした。ご承知の方もいらっしゃるでしょうが、手術は3回にわたって行われますので、その度に来日する必要があります。技術的には困難な手術ではなく、キレイな顔立ちになりますが、精神的、経済的な負担は大きいものがあります。

家主さんはボランティアで勤めている「外国人のための日本語教室」の講師をしていて、そのご家族と知り合われたとか。で、事情を聞いて、3度の手術費、家族全員の渡航費、滞在費など、すべて出して差し上げることにしたのだということです。その額は、保険もきかないので、およそ300万円にものぼったそうです。幸い家主さんの周囲で募金活動も起こり、大学にも補助して頂けることになったとか。でも、それにしても、「額」の問題ではありませんね。人の為には千円のカネだって出し渋る人は私の周りにも大勢いますから(*^^)v

私が、その家主さんを「立派」だというのは、お金を出したから、そのことではありません。
実は家主さんの奥様は、子供の頃、あるお医者様の養女となり、大人になって今のご主人と結婚する時に反対されて家を出て、その後養父母がお亡くなりになって遺産を相続なさったのですが、「これは本来、家を出た私が受け取るべきものではない。いつか困っている人たちや世の中のために遣おう」と心に決め、それを実行なさっている、ということにあります。

人の心は変わります。お金が必要な理由はいくらでもつけられます。私なら、「自分も困っている」と思おうとしたかも知れません。また、それで普通なんだと思うし、奥様がそのお金を自分のために使ってしまったとしても誰も非難などできません。奥様が、2人の娘さんに「私が養父母から相続した分はあなた達にも遺すことはしません」と宣言したとき、娘さんは2人とも心から賛成してくれたそうです。もちろん、ご主人様も。

不動産の仕事をしていて、「お金がないから家賃が払えない」「あるから払える」というものでないことはよく分かります。お金がなくてもキッチリ払ってくる人はいますし、持ってても払ってこない人もいます。お金の使い方を見ていれば、その人の人格はよく分かります。

崇高で立派なご家族に出会えて、私も幸せに思います。
posted by poohpapa at 13:21| Comment(2) | 家主さん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする