2007年11月11日

家主さんの、「軽い滞納者」への対応について

昨日、るんるんタロウさんから頂いたコメントに対する返信、長くなりますので、記事という形でさせて頂きます。るんるんタロウさん、ご了承ください。でもって、ちゃらQさんから頂いた鍵交換問題に関するコメントへの返信記事は、この後になります。順番が前後しますこと、ちゃらQさん、どうぞご了承くださいませ。


さて、るんるんタロウさんのアパートに入居中の滞納者のケース、

我が家でも古いアパートを一軒所有していて、そのうちの2軒が毎月10日以上家賃の振込みが遅れます。
黙っていると平気で1ヶ月近く振り込んできません。


と、ありまして、出来れば契約解除もしくは契約更新をせずに退去してもらいたい、とのこと。それに対して管理会社(不動産会社)は、

「法律で半年前に入居者に伝えないと違法になり引越し・退去費用を大家側で出す必要がある」、と言っている、とのこと。

これは、管理会社が言っていることが「正しい」、と言えます。

その根拠は、契約解除もしくは更新拒絶するには正当理由が必要だからです。自己使用(例;息子に住まわせたい)、家賃滞納、不法行為や著しく信頼関係を損なうと認められる行為の存在、等です。

で、10日〜1ヶ月、家賃が遅れることが、正当理由に該当するかどうか、と言えば、該当しない、と思われます。それが毎月のことであったとしても、です。

民法の規定では「賃借料の支払いは後払いでよい」となっていて、借りた物を返す時に支払えばよい、ということになります。それでいくと、毎月の家賃は月末までに支払えばよいことになります。もちろん退去する時に「後でまとめて払えばよい」、ということではありませんで、1ヶ月ごとに賃料を支払ってもらうのは当然です。

ただし、宅建業法では「家賃の前払い」を認めていて、二つの法律が賃借料に関して「違う見解」を示しています。この場合は一般法である民法の規定ではなく、宅建業法が優先されますので、世間一般どこでも「家賃は前払い」が当たり前になっています。

そうなると契約書に謳ってある「前月の末日までに翌月分を支払う」という条文に触れていても、「当月分を当月中に支払えば民法上の規定は満たしている」ことになって、必ずしも契約違反を問えないことになります。ということは、もし入居者と裁判で争うことになったとしたなら、「必ずしも不法性は無い」「著しく信頼関係が損なわれているとは言えない」との判断が下されるのは明らかです。

ちなみに、観光地で双眼鏡や自転車を借りる場合、「保証金」という名目で相応の金額を先に預かったりしますが、これは、民法の規定に従って営業していると「持ち逃げされるリスク」が発生するので、それを防ぐ目的であって、形を変えた前払い、と言えますね。

話を戻しまして、

るんるんタロウさんのアパートの入居者の場合、残念ながら、生活権という観点からも、正当事由による退去、更新拒絶が認められることは無いでしょうから、どうしても「出て行ってもらいたい」ということであれば、「家主都合による退去」になってしまいます。不誠実な借主であることは間違いありませんので、理不尽ではありますが、日本の法律では仕方ない、ということになりますね。

で、管理なさっている不動産業者の対応ですが、

「我が家から直接、入居者に連絡することは禁じられております」とのことですから、とても良心的な業者さんだと思います。これ、世の中のほとんどの家主さんは勘違いなさっていますが、家賃の請求や取立ては不動産屋の仕事ではなく、本来は家主さんが自分でするべきこと、なんです。私も、理由があって、家主さんから督促依頼の連絡があれば無報酬で対応しますが、「本来は誰がすべきか、ということを理解していらっしゃるかどうか」は、不動産業者にとって非常に大切な意味があります。そこが解ってない家主さんは何かにつけて業者に責任転嫁してきますから。

もちろん、管理料を頂いていたり家賃管理契約を結んでいる場合、督促等は当然に管理会社の仕事であり責任を負うことになります。

先ほど、理由があって、と書きましたが、それは「家主さんが直接話をすると感情的に拗れてしまう」ことが多々あって、事態を悪化しかねないからで、間にワンクッション入れることで丸く収められる可能性が高くなります。ましてや、家主さんが同じ敷地内にお住まいだったりすれば尚のこと、ですね。業者が督促したりする理由としては「そういうこと」ですが、無報酬でやるのは別の理由です。もし「対価」を請求すれば、他の業者に管理を移される可能性があるから、なんです^_^;

これね、誤解を受けそうですが、私は「カネくれよ」と思っているワケではありません。理解してくださっていればそれで充分なんです。

不動産会社の担当者が「毎回入居者をかばい、仕方ないですねえ〜などと言って、まともに取り合ってくれない」とのことですが、担当者の方は「入居者の状況や人柄」など判っているでしょうから、その都度の催促は控えたい、という思いがあるのでしょう。普段から催促ばかりしていると「ここ一番」という時に話し合いが噛み合わなくなります。物は考えよう、で、「1ヶ月空室だった」と思えば腹も立たないものでしょう。無責任な発言に聞こえるかも知れませんが、それくらいの気持ちのゆとりがないと、アパート経営など出来ません。

私なんか、3ヶ月とか半年とか滞納されて、それを家主さんには立替えて支払っていたりしますから、本音で言えば「後ろから金属バットで殴ったろか!」というくらいの入居者もいますが、グッと飲み込んで気長に督促しています。幸か不幸か、私は非常に短気な面と気が遠くなるくらい気長な面と両方併せ持っていますので、それで「この仕事に向いている」、と思っていますわーい(嬉しい顔)

脱線してしまいましたが、更新の際に、業者から「家主さんも気にしていらっしゃるので、これからは月末までに翌月分をちゃんと支払ってください」と注意してもらう、というのがベストかと思います。

「不動産屋を上手く使う」「気持ちよく働かせる」、そんな家主さんになることも、良きアパート経営には不可欠な要件かと思います。

失礼な言い回しも有ろうかとは存じますが、どうぞご容赦ください。






posted by poohpapa at 07:14| Comment(3) | プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月19日

そういうお話なら任せてください(*^^)v

親愛なる「◆やんちゃ姫通信◆」さんで、こんなお話が出ていた。

実は、一つ前の「醤油」の話を読んで、私も思うところあって、記事の下書きも出来ていたのだが、そのアップは先送りして、私にとっては専門分野(?)の話から書かせて頂こうと思う。

yumichさんの記事によれば、家の前半分の土地が売りに出されているとかで、どんな人が買って住むことになるのか心配なご様子。

そのお気持ちは実によく解かる・・・・・、つもりである。

以前、yumichさんのサイトに、お家と周りの景観の写真が出ていて、とても素敵な雰囲気だったので、目の前に人様の家が建つとしたら、その人の趣味によっては、せっかくの素敵な雰囲気が壊れてしまう恐れもある。だいいち、見晴らしが悪くなる。

背の高いビルが世界遺産の京都の歴史的景観を損ねるかどうか、などどうでもよく、yumichさんにとっては我が家の前がどうなるか、のほうが大問題だと容易に推察できる。宝くじを買いたくなる気持ちも解かる。だが、買い手が付かなくなる方法がないワケではない。

先に私の口座をyumichさんに知らせてから記事をアップしようとも思ったのだが、日ごろ仲良くして頂いているので、私も今は金欠ではあるが相談料は諦めることにして・・・ふらふら

その、とっときの方法とは・・・
posted by poohpapa at 03:56| Comment(5) | プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月14日

気になる「ある裁判」の行方

昨日のこのニュース、不動産業者としては考えさせられる話です。

確かに、同意の上とはいえ、一年契約で毎年更新料を支払わされるのはどうかとは思いますが、賃料の設定が、更新料も加味した算定基準になっている可能性もあります。一概に阿漕(あこぎ)とは言えないように思います。

なぜ一年契約で更新していたのか詳細な事情を知りたいものです。

それより、「この条件なら借りたい」といって借りておきながら、後で「納得いかない、返せ」と言う借主のほうが問題アリですね、卑怯です。それを通してしまったら、契約の概念が崩れます。知らなくて騙されたというワケではなく、解かってて契約してますから。

どうしても食べたい「レストランの料理」があって、ネットや店頭やメニューに「サービス料10%」と明記されていて、それを承知した上でその時は納得して食べていながら、帰宅してから「サービス料を取るのはおかしい。そんなのはそもそも代金に含まれていて当然である。返せ!訴えてやる!」と騒いでいるようなものです。

途中で家主との間で別のトラブルでも有ったのかも知れませんね。レストランで言えば「思ったより料理が美味しくなかったし、サービスもサービス料を取れるほど良くはなかった」とか・・・。

ま、レストランだって「サービス料は不当」となれば料金をアップせざるを得なくなるでしょう。賃料も同じようなことが言えます。更新料がもらえなくなったら「今の家賃」で貸すことは出来ません。次の更新では値上げせざるを得ず、新たなトラブルが発生するでしょう。


それと、更新料はたいていは家主と管理会社とで折半しています。有名ないくつかの大手業者では家主に渡さずに独占しているようですし、ごく稀に「更新料1.5ヶ月分」と広告に謳ってある物件もあって、それは管理会社と家主で0.75ヶ月ずつ分けているのでなく、いずれかが1ヶ月分を取っているのだと思います。ま、管理会社でしょうね。1ヶ月分全部欲しいのだけど家主も「半分くれ」と言うから、なら入居者から1.5ヶ月もらおう、ということでしょう。あと、更新料とは別に事務手数料を取る業者もいます。それらは間違いなく「阿漕な業者」と言えるでしょう。

「返しなさい」との判決が出たなら、家主は業者にも「返してくれ」と当然に言うでしょうね。業者は返さないでしょうけど・・・(笑)


個人的には「更新料はまかりならん」との判決でもOKですが、同意しての契約なんですから、遡及させて効力を持たせるようなことは有ってはなりません。

これで裁判所が「更新料の意義」まで踏み込んで「違法性あり」との判断を下すようだと、賃貸仲介管理業者の多くは潰れることになるかも知れません。それを「当然の報い」などと考える人がいたなら、失礼ながら、間違いなく利己的で短絡的な人、だと思いますね。そういう場合、深く考えずに便乗して騒ぐ輩というものが必ず現れます。隣国での反日暴動のように、「何も考えずに石を投げる奴」が・・・。


過去ログにも有りますが、私は7〜8年前、宅建協会の本部に行った際、「この先、法律や制度が変わって更新料や礼金は受領できなくなるでしょうから、賃貸が主たる業務である不動産業者は原点に返って、今のうちに家主さんから管理料を頂くシステムに移行して、収入の糧を仲介から管理に求めるよう協会は指導していくべきでは」との自説を唱えてきましたが、お偉い人からは全く相手にされませんでした。もちろん、管理料を頂く為には「それなりの仕事」をする必要があります。この業界は時流から完全に乗り遅れていますね。

そういう話は、その時が来て慌てて対策を講ずるのでなく、先を見越して組織的かつ計画的に対策を講じなければならないのにふらふら


さて、判決は、如何なりますことやら(*^^)v
posted by poohpapa at 06:55| プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月15日

「行列のできる法律相談所」より、よくある話

前回の日曜日の放送分、ご覧になられた方も多いのでは、と思いますが、OAされた中で、過去に家主との間で不快なトラブルがあった若い女性が、次の物件を探す時、不動産屋に「大家さんはどんな人ですか?」と訊き、不動産屋が答えなかったケースで、不動産屋がそういう質問に答えなければならないか、という事例。

内容は番組のHPの「今週のトラブル」から見ることが出来ます。


弁護士軍団の回答は分かれましたが、「答えなくて良い」が大勢。

たしかに、私もお客さんからよく訊かれます。私の場合は、うちの管理物件なら家主さんの人柄はよく分かっているワケで、人柄の良い家主さんなら、エピソードを交えてありのまま話します。そうすれば、お客さんは決断しやすくなりますから。

そうでない人、つまり、私から見て「問題あり」の家主さんの場合は、「普通の方ですよ」と話します。いえ、そうとしか言えません。それは何処の不動産屋でもそうだと思いますね。なので、もし不動産屋が「家主さんは普通の人」などと答えたなら、「かなり問題ありの家主かも」と疑って掛かったほうがいいでしょう。

まあ、家主さんの場合は「直ぐに代替わりする」ことは少ないので、決断に際しては大切な要素だとは思いますが、それより同じアパートに住む他の住人に関しての情報のほうが重要でしょうね。もちろん不動産屋が迂闊に漏らすワケにもいきませんし、入居者は遅かれ早かれ入れ替わるものだから、それほど神経質になる必要もありませんが、注意するに越したことはありません。不動産屋に訊けば、個人情報保護法に引っかからない範囲で教えてくれますよ。

でね、そういうのにも「訊き方」というのがあります。不動産屋に「このお客さんになら(この程度までは)話しても大丈夫かな」と思わせるテクニックがあるんです。もちろん、人柄も重要です。

番組の中の再現ビデオにあるような訊き方ではマズイし、不動産屋も「あんな(つっけんどんな)拒否の仕方」などしないものでしょう。
どっちも気配りがなく極端です。

というより、

知ってて教えてくれなければ、「それが答え」ですわーい(嬉しい顔)
posted by poohpapa at 07:03| プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月29日

「造作譲渡」考

貸店舗を探していると、広告に「造作譲渡」と謳ってあるケースは多い。それは、前の賃借人(店のオーナー)が使っていた什器備品や内装等を、次の賃借人に買い取ってもらいたい、ということである。

当然に(同様な業種であれば)「直ぐ営業が始められる」という利点もあるが、「自分の好きなようにリフォームして始めたい」という人には不向きである。

その「造作譲渡」には、貸主や不動産屋の思惑も絡んでくる。

半月前に店仕舞いしたレストランは、契約時に造作譲渡という条件を飲んで借りていた。だいたい200万、と聞いている。自分がどうしても「この内装や什器備品では嫌だ」と思わないのなら、それはそれで良いのかも知れない。最初から自分でリフォームするよりは安上がりだから。だが、問題は明け渡す時、である。

現借主が「造作譲渡」という条件を飲んで、言い値の200万も支払ったのだから、貸主や不動産屋が次の借主を探す時も、とりあえず「造作譲渡」という条件を付けてくれても良さそうなものだが、そうしてはくれなかったようだ。什器備品は後で買い換えたものもあったし、店の内装も、私が見た限り契約当初と比べてさほど劣化しているとは思えない。

悪い知恵をつけるワケではないが、もし「この内装ならそのまま使えそうだな」と思っても、「やり直すからこの内装と什器備品は要らない」と言えば、困るのは貸主と元借主である。造作譲渡を受け入れる客が見つからなければ、いつまでも造作譲渡で募集してもらうワケにはいかないのだから、元借主は原状回復費用を負担させられることになる。交渉次第では「タダでもいい」、と言い出すだろう。

まあそれもフェアではないから常識的には希望価格の半値〜1/3くらいで買い取るのが妥当であろう。だが、貸主と不動産屋は元借主の言い値(相場よりかなり高い価格)で買い取らせたのだ。

それなのに今回、貸主と不動産屋は「契約内容」を盾に、原状回復して、つまり「買い取った什器備品は全て出し、内装もコンクリートの下地の状態まで戻して明け渡せ」、とまで言っているのである。貸す時には「造作譲渡」で(言い値で)買い取らせていたのに、である。

そのこと自体は違法性は無い。契約は、互いに契約内容を確認して交わしているものだから、原則的にそれに従うのは当然である。

私が重視しているのは、解約予告は3ヶ月前となっているのに、その間、その店舗の広告を私は一度も目にしていない、つまり、不動産屋が探客の努力さえしていなかった、ということである。

契約でそうなっているから、というのでなく、なぜ「できるだけ次も造作譲渡で決めてあげよう」と努力しないのか、ということなのだ。

確かに、造作譲渡との条件を付けると新たな借主を見つけるのはそれだけ困難になる。女性が結婚相手の条件として三高(高学歴、高収入、高身長、+イケメン^_^;)を譲らなければ、余程の美人でもなければ婚期を逃してしまうのと同じである。

貸主も不動産屋も、次の募集で「造作譲渡」という条件を付けたくないのは解かる。だが、「解約予告は3ヶ月以上前」との条件を付けるなら、せめてその間は「造作譲渡の条件を飲んで借りてくれる人」を探すのがスジだと思う。いやきっと「探すフリ」をしてお仕舞いなんだろうな・・・、ハナから足元を見てるから。

出て行く人にとっては、自分の時と同じように買い取ってもらえたなら有り難いのだから、同額とは言わないまでも半額にでもなれば嬉しいものだろう。下手したら成り行きで20万、30万にしかならないかも知れないが、それでもいいと思う。

契約に則って厳格に推し進めるのは正しいし大切なことではある。
だが、相手の状況や心情に配慮することはもちろん違法ではない。

借主の無知に付け込む商売」は、私はしたくない。
posted by poohpapa at 06:46| プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月27日

「構造計算偽造問題」、再びのまとめ

姉歯元一級建築士に懲役5年の実刑判決が言い渡され、そして未だにこの問題に関する私の過去ログへのアクセスが相当数ありますので、再度まとめてみたいと思います。


この事件がニュースになった時、誰が何をどれだけ負担すべきか、真っ先に考えました。


先ず、各人(各法人)が責任の重さと比率によって相応に負担すべきで、「国」はひとまず置いておいて、私の価値観では、建築業者、販売会社、検査会社、購入者、金融機関、の順になります。ここに「国」を入れようとすると無理があります。「国には責任がない」というのではなく、「国の責任」は全てに被さってくるからです。


責任の重さに応じて、とは書きましたが、それだけで振り分けると逆に不合理になります。杓子定規に責任に比例して負担を強いると「払えない人(企業)」が出てきて新たな不公平が生じるからです。

そこで、もう一つ、「現在の資金力に応じた負担をする」という考え方が有っても良い、と私は思います。そうすると、誰が最も負担すべきか、の順番はガラッと変わってきます。

私は、「銀行」が最も多く負担すべき、と考えます。

責任順位では「金融機関」が一番後ろに位置しますが、現実に一番多くを負担すべきは「金融機関」、つまり「銀行」だと考えます。

メガバンク合計で、今期の経常利益は13兆円とか。この数字は日本の国家予算の15%にも相当します。政策的にも法律的にも国から充分すぎる保護を受け、そして金融危機の際には税金から巨額の資金を注入して助けてもらい、国民の預金を元手に利息を稼いでいるのに、「うちは知らない。追加担保を出せ」は無いものですよね。

住宅ローンを組む時、当然に契約書には「担保物件が抵当割れを起こした時には債務者は新たな担保を提供すること」と在って、金融機関は契約内容を盾に「直ぐに新たな担保を差し出せ」と言ってきたハズです。一見それは「正しい」ように思えますし法的には問題ありませんが、この件に関しては必ずしも正しいとは言い切れません。

これが自動車ローンや学資ローンであったなら、事故で車が大破しようが大学を中退しようが全額返済するのが当たり前です。銀行には何の責任も無いからです。では、住宅ローンはどうでしょう。

銀行の審査部や融資部は何をやっていたのでしょう。「必要書類だけ揃っていたならメクラ判を押す」のがお仕事なんでしょうか。

銀行は、当然に借り手の内容だけでなく、担保物件や建設会社、販売会社の審査もしているハズです。それが欠陥マンションであったというなら、銀行の審査部の目は節穴だった、ということになります。購入者が「住宅ローンが組める、ということで物件を信用してしまった」としても当然です。銀行には全く責任が無い、などとどうして言えましょう。欠陥担保物件であることを見抜けなかった責任が当然に発生します。

「追加担保など出せるハズも無い債務者に、追加提供を要求する」ということは、「うちには一切責任は無い」と言っていることになります。銀行に責任、無いワケがありません。まったくもって理不尽です。ま、昔の恩を忘れられるから銀行やってられるんでしょう(*^^)v


それと、

アパートを借りる時も、おカネを借りる時も、契約書は「貸す側が用意した書式」を使います。要するに「この条件を受け入れるなら貸してあげるよ」という内容です。自分で作ったルールを盾に、「約束していたことだから」と言うのでは、法律上は問題が無くても道義的には問題が有る、と言えます。銀行からすれば、「貸したカネは返すのが当たり前」、ということでしょうが、それは、「一連の話の中で物事を部分的に切り取った上での話」です。フェアではありません。


別の観点から、

当該マンション購入者数は210世帯、と伺っています。もし、平均して3千万の住宅ローンを組んでいたとして、総額はたかだか63億です。更に増えていたとしても100億には達しないでしょう。購入者が全員同じ銀行でローンを組んでいたワケではないでしょうから、主要銀行で割れば一行あたり10億ちょっとの負担です。今の銀行にとって、10億くらいの損害は「蚊に刺された」ようなものです。


もののついでに、私はこんなことも考えてました。

どこかの銀行がいち早く調査して「当行は当該物件の住宅ローンの支払いを猶予もしくは免除いたします」って発表すればいいのに、と。こういうことで株主代表訴訟を起こされるとは考えにくいし、これから新たに住宅ローンを組もうとする見込み客からの問い合わせも増えるだろうに、と。私が頭取なら、そう指示を出したでしょうね。ま、なれないから言ってる、ということもありますが^_^;



で、本当は、こうすれば良かったのでは、と思っています。

「購入者は」

既に支払った頭金やローンに関しては諦める。
移転先への引越し費用や契約金、家賃は自分で支払う。

「金融機関(銀行)は」

残りのローンの支払いを免除(損金として処理)する。

「国は」

当該建物の取り壊し費用を負担する。

「建築会社および販売会社、そして検査会社は」

法的な処罰とは別に、可能な限り弁償して償う。
補強で持ち堪えられる建物に関しては補強費用を負担する。


現実には(期限付きですが)家賃の補助だの不必要な保護をしてますね。購入者は必ずしも「純然たる被害者」ではないハズですが。


結論の結論ですが、「銀行が残債の支払いを免除する」ことで、金銭的には大方片付いた話、だと思います。そして、厳しい言い方ですが、購入者の多くが「建設会社や販売会社に全額補償させよう」とし、国や行政に保護を求めたのは判断の誤りであって、甘えです。

それぞれの立場で「自分の責任と為すべきこと」を冷静に考え行動し、責任を果たさなければ、物事の道理からも外れてしまうし、解決の糸口は見出せないものでしょう。
posted by poohpapa at 06:31| プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月01日

松岡さん、べつに僻んでるワケではありませんが・・・

翻訳って、本が当たればそんなにも儲かるモンなんですね(*^^)v

「ハリーポッター」翻訳家かつ出版社社長の例の節税問題で、図ったように公認会計士のSさんからメールを頂きましたのでご紹介。

長くなりますが、さすがプロの視点から見ると、私のような素人考えとは一味も二味も違います。メールは三通も頂きました。



一通目

<日本人なら・・・>の記事について(笑)

私も昨日から気になっていろいろ調べていたところでした。

とりあえず、日本人だからとか、国籍がどこにあるかとか、は考えずにあくまで税法に則して考えてみます。

松岡さんの日本での居住の実態が、いまひとつ報道だけではわからないので、断定的なことはいまの段階では言えないのですが、直感的には「安易な課税逃れ」という印象を私は受けました。

所得税法は個人については、日本人だから日本に税金を納めよ、という考え方はしておらず、日本に住んでいる人(居住者)や、居住者でなくても日本で所得のある人は所得税を納めよ、という言い方をしています(所得税法第5条第1項・第2項)。
これは憲法30条のように「国民は納税の義務を負う」という言い方とはちょっと違っていて、たとえば外タレが武道館コンサートで荒稼ぎしたときのギャラも日本の所得税の課税対象になります。

「居住者」は、国内に住所がある個人、または現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいうとされ(所法2条1項3号)、「住所」は民法22条に定義する「各人の生活の本拠」と同じ意味を差すと考えられています。

では、国内に住所を有するかどうかの判定ですが、これには明確な規定はなく、判例では「客観的な事実、即ち住居、職業、国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有するか否か、資産の所在等に基づき判定」すべきということになっています(最高裁昭和63年7月15日判決)。

こんな漠然とした判定方法ではわかりにくいのですが、判決文のほかのところを読むと、たとえば、国籍が日本国籍かどうか、国内に持ち家等があるか、家族がその持ち家等に住んでいるか、一年における国内での滞在日数が何日か、また国外のどこかに住所があると主張するならばその住所とされる国に何日滞在していたか、国内企業の代表取締役といった重要な地位にあるか、などいろんなことが判断の材料とされます。
そのほかにも日本に出入国する際、どの空港を利用しているかなども考慮に入れられているようです。たとえば、出入国地が成田ばかりであれば、やっぱり東京周辺に生活の本拠があるんだろうというような判断がなされたりします。

また、国内外で活躍する人については、国外で継続して一年以上居住することを通常必要とするような職業に就いていること、外国籍を持ち永住の許可を受けている(国内に親族がいない場合)などの条件が揃えば、国外に住所があると推定されます(所得税法施行令15条)。

それで、ハリポタ松岡さんの話に戻るのですが、松岡さんは翻訳家であると同時に静山社という日本の出版社の代表でもあるわけで、静山社の経営が松岡さんなくして成り立たないような状況である限り、松岡さんは「居住者」と考えて良いように思えます。
ご家族がどちらにお住まいなのか、スイスでどのようなお仕事をされているかなどは情報が不足していてわかりませんが、すくなくとも静山社の経営を考えれば、所得税法施行令15条(国外に住所があると推定される規定)の要件には当てはまらないのではないか、と考えるわけです。

松岡さんは国税に対して不服申立てをしているようですが、仮に訴訟に発展しても、勝てる見込みは少ないだろうというのが、現在知りうるところから判断した私の結論です(ただし、日本とスイスの相互協議の結果次第では状況が変わるかもしれません)。


ところで、スイスの所得税は最高税率が40%とのことですが、ここで思うのは、所得税にしろ、法人税にしろ、いまの日本のこの税制のままでは、優秀な頭脳や優良企業の国外流出は避けられないだろうということです。
中途半端に行ったり来たりの人もいるでしょうが、そのまま国を捨てる人もたくさん出てくるんじゃないでしょうか。
もちろん日本よりも重税を課す国は他にもあるでしょうが、これも国から国民への行政サービスとのバランスによります。税は重くても行政が充実していてバランスが取れていれば、国外流出は阻止できます。
しかし、いまの日本は税負担に比べて行政があまりにお粗末。政治家や官僚の中に国を売る者まで出てくるようでは、とてもバランスが取れているとは言い難い。

少子高齢化が進む中で移民の受け入れを真剣に考えなければならない時期に来ているというのに、優秀な純粋日本人の流出に歯止めがかけられないとなれば、国の行く末はとても明るいものとは言えないでしょう。
私自身、日本の国土も食べ物も好きですし、言葉も日本語しか話せません。本音で言えば、祖国に住み続けたいです。でも、ミサイルが飛んできても何もできず、政府はますます重税を課して、役人ばかり肥え太るような状態がこのまま続くならば、日本に住み続けることに何の夢も持てなくなります。
まず、自分自身が何かできることを始めなければとは思いますが、それも断念せざるを得ないようなら、ホント、どこか逃げちゃいますよ(^_^;)



二通目

<<私としては、「先ず、税金は日本に納める」、そのうえで「節税対策をする」、というのが基本かと思います。(私のメールから引用)

そうですね。
これは個人なら国籍に関わらず日本国内で所得があれば、また法人なら外資系であっても国内に本店があれば、日本に納めるというのが基本です。


<<日本は税金が高いから便宜上「海外に移住したことにして」、というのが×ですね。(私のメールから引用)

まったくその通りです。「便宜上」というのはいけません。
以前にもお話ししたと思いますが、税法は形式より実質を重視しますから、形式だけ「移住」なんていう中途半端な輩は当然にペケです。
どうしても日本に税金払うのがイヤで移住したいんなら、もう日本に帰ってこないぐらいの覚悟で出てほしいものです。

昨日のメールでは、「居住者」であると判断された判例のことを書きましたが、逆のケースもあり、盆暮れ正月GWだけの帰国では「居住者と認められない=非居住者」という判断が下った判例もありました。


三通目

ハリポタ松岡さんと居住者のお話、いろいろな意味でむつかしいですね。私としては理屈はだいたいわかっても、松岡さんについての情報が少ないのがちょっとつらいですね。
poohpapaさんは「日本人ならば、日本に」という思いがお強いのでしょう。
別にそれが間違っているのではなく、どちらかというと憲法の考え方だと思います。そして各税法はそれとは違った考え方をしているにすぎません。

かなり大雑把なたとえですが、憲法の考え方は経済指標でいう国民総生産(GNP)に近いのではないでしょうか。
片や税法の考え方は国内総生産(GDP)に近いのでしょう。
そして国内での所得に課税するというのがいまの税法の考え方です。
海外との取引が多くなるにつれ、近年ではGDPのほうを経済指標として重視するようになっていると聞きます。
やはり実態をなるべく正確に把握するにはGDP的発想のほうが便利なのでしょう。

交通機関や通信手段の発達で、日本人に限らず、世界を股にかけて活躍する人は今後ますます増えてくると思います。
松岡さんのようにどちらの国で税金を納めるべきかでもめごとを起こす人、会社も増えてきそうです。
そういう状況では、昭和時代の最高裁の判例に頼っているようでは、やはり充分とはいえないので、もう少し明確な基準をつくることも必要なのでしょう。

あ、ちなみに松岡さんについてですが、この方は日本にまったく税金を納めていないわけではありません。
おそらく私と妻と義姉とうちの妹とうちの父と私の友達全員が納める税金の合計よりも多額の税金を日本に納めているハズです。
日本で発生した著作権料については、出版社から著作権者に報酬を支払う時点で所得税を源泉徴収(基本的に10%)されます(所法204条、205条)。
特に非居住者に対しては居住者よりも高い税率(20%)が適用されます(所法212条、213条)。なので源泉所得税だけでかなり高額の税金を納めることになります。ただし、申告がスイスなので追加で日本に納めるべき税金を納めていないのです(スイスへは、日本に納めた源泉徴収額を差し引いた税額を納めます)。

もちろん、だからといって実態とはかけ離れた外形によって税金を納めればいいという話にはなりません。
日本に生活の拠点があるならば、やはり日本で申告すべきで、安易な課税逃れはやめてほしいと思います。



うん、きょうはよく寝たから頭が冴えているかもしれない(爆)



で、不動産屋の立場から
posted by poohpapa at 05:33| プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月01日

引越し立会いに「菓子折り持参」は絶対お得(*^^)v

一昨日ご紹介させて頂きました「目標!バブリー不動産」さんの記事から逆流してのネタになります^_^;



不動産屋がお客様から菓子折りを頂く機会としては、圧倒的に退去時が多いのですが、正直なところ、それ、絶対お得です。いえ、貰った不動産屋が、ではなく、菓子折りをくれたお客様が、です。

ここから先は人間性を疑われるようなお話になりますが・・・、

どういうことか、と言うと、「敷金精算に手心を加えることがある」、ということであります。

引越しの立会いでは、ほとんどの退去者は「敷金がいくら戻ってくるか」だけを気にしていて、不動産屋を気遣うことはありません。ところが、稀に、「お世話になりました」と仰って菓子折りをくださる方がいらっしゃいます。そうすると、不動産屋だって人間ですから、「敷金精算に手心を加えてあげよう」と考えるものです。もちろん、許容誤差の範囲内ではありますが、それでも菓子折りの代金よりは大きくなります。

私は以前、引越しの立会いの時に、素敵なハンカチーフを一枚くださった方がいて、「いろいろご迷惑をお掛けしたので敷金は戻してくれなくて結構ですから」と言われましたが、ちゃんと計算して4万ほど返金する内容で家主さんに精算書を送付したことがあります。そのケースでは敷金を全額没収しても問題はありませんでしたし、当初はそのつもりでしたが、奥様から丁寧なご挨拶を受けて気が変わりました。

これは、私が意地汚いのではなく、いえ意地汚いのは認めますが、人間そんなもの、ということなんです。露骨に「いくら戻ってきますか?今はほとんど返すようになってるんですよね」、と訊かれれば、「そんなことはありません、ケース・バイ・ケースです」、と答えます。

でもって、最悪のパターンは、立会いに行って、明らかに菓子折りの袋があるのに、不動産屋へのものではなく、後で家主さんに届けるもの、というパターンね。いえ、くれなくてもいいんですよ、本当に。
ですが、不動産屋には用意してないなら、「見えるところには置いておかないほうが良い」、ということです。妙な期待をさせてはいけませんよ、ということなんです。敷金没収になったりもします(冗談^_^;)

これね、実は、私は菓子折りを貰い慣れているんで、目の前に置いてあれば「私あての」と思っちゃうだけのことなんですけどね、って、くれなくてもいい、というのが嘘っぽくなっちゃいますが^_^;

重ねて言います。立会い時の菓子折りは代金以上の効果があります。え?「それじゃ家主さんが損することになるだろ!」ですって?

そんなことはありません。許容誤差の範囲内でしか変わりませんから誰も損をしないのです。菓子折り一つで退去者も不動産屋も少し得をしますが、だからと言って、その分は家主さんが損をしている、ということにもなりません。

え?今度は何?
「許容誤差って、アンタが勝手に言ってるだけだろ!」ですって?

悪いけど、あまり突っ込まないでくれる!?わーい(嬉しい顔)

posted by poohpapa at 05:32| プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月26日

公認会計士(で税理士)Sさんから届いたメール

24日の橋下弁護士の「申告漏れ」の記事に付き、ふだんから親しくお付き合いさせて頂いている公認会計士(で税理士)のSさんから、非常に詳しく解説のメールが届きました。

長編ですが、さすがにプロですね、とても解かりやすい内容です。
ご本人の了解の下、(改行以外は)そのまま転載させて頂きます。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


橋下弁護士、荒れてますね(笑)
私の感覚からすると、完全な白ではなさそうですね。
かといって黒ではありません。
おそらく税法面だけみればアミカケ10%ぐらいでしょうか。

「悪徳」ブログとご本人のブログとでの話題をいろいろ私なりに整理すると、こんな感じにまとめられるのではないかと思います。

(1)マスコミの虚偽報道
(2)公務員の不正
(3)本業と副業の関係
(4)たんなる経費の否認か脱税か


このうち、
(1)についてはいろいろ言いたいこともありますが、きょうはやめておきます。

(2)についてはいろいろ言いたいこともありますが、守秘義務違反については(4)で補足します。

(3)についてはいろいろ言いたいこともありますが、いわゆるタレントもどきで一番嫌いなのは糸井重里(笑)とだけ指摘させていただきます。


で、(4)ですが、と〜ても長くなりますが、以下、私の考えるところをつらつら書いてみます。



<橋下弁護士、たんなる経費の否認か脱税か>


(a) 橋下、脱税か否か

結論から言うと、橋下弁護士は脱税はしていません。

なぜかは簡単で、今回のケースは次のような理由で、脱税の定義にあてはまらないからです。


所得税法上、「脱税」の定義はおよそ次のようになります
(ところどころ省略したり、要約しています)。

「偽りその他不正の行為により、所得税を免れたり、所得税の還付を受けること」(所得税法238条)

まず、橋下弁護士に「偽りその他不正」があったかどうかですが、彼のブログの内容から判断する限り、その可能性は低いと思います。もし「偽りその他不正」があったとしても、次の理由から、いわゆる「脱税」ではないことになります。

たしかに、所得税法238条の規定を文面通りに読むと
1,000円でも所得を不正にごまかせば、即、脱税となりますが、実際問題、国税職員がそのような少額の脱税をすべて否認して回ることは不可能です。

そこで、いわゆる脱税と判断されるのは、国税犯則取締法による犯則事件に関するものに限って考えることが多くなります。
つまり、局の査察(マル査)が出てくるような場合です。

では、どのような額になれば犯則事件に該当するかですが、
いろいろ調べたのですが、明確な規定が見つけられませんでした。
ただ、補脱税額にして1億円以上というのが定説のようです。


ちなみに罰則ですが、同条に
「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とあります。

さらに脱線ですが、こんな規定もあります。
「所得税に関する調査に関する事務に従事している者又は従事していた者が、その事務に関して知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用したときは、 これを二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」(所得税法243条)

橋下弁護士の修正申告内容をリークした国税職員は、この規定を肝に銘ずるべきでしょう。



(b) 領収証のない経費は認められるか

税法は一般的に、形式より実質を重視しています。
なので、現実として支出が発生したのであれば、その事実は認められると考えるべきです。

つまり、
領収証がなくても、現実の支出があればOK
逆に、
領収証があっても、現実の支出がないとNG
です。

(a)に書いた脱税の(実際上ではなく)厳密な定義から判断すれば、
領収証がなくて現実の支出を経費計上した場合より、現実の支出がないのに領収証があって経費計上した場合の方が悪質です。だって、支出がないのに領収証があるってことは、私文書偽造ですから(笑)
「偽りその他不正」にもろに該当します。

日常の生活で、領収証を受け取れない支出は多いです。
いまでこそプリペイドカードが発達して領収証を受けとりやすくなりましたが、電車・バスなどの交通費は領収証がなかなかむつかしいです。
あるいは香典など、シチュエーション的に「領収証ちょうだい」と言えないことも多々あります。

そういう現状で、領収証のない経費計上がすべて否認なんてあり得ません。
これは納税者自身が誤解している部分も多いので注意が必要です。
「現実の支出がない経費計上は否認される」と考えるべきです。

※ただし、支出があると認められたことと、
「収入」から差し引ける「必要経費」として認められるかどうかは、また別の問題になります。



(c) 「申告漏れ」という言葉

かなり曖昧な言葉です。
報道では、白に近いグレイを黒に近いグレイにでっち上げる言葉として、ズルイやり方で使われているようにも思えます。

今回のケースはたしかに申告漏れなのですが、
「見解の相違等により経費の一部を否認された」
と表現するのが正しいように思います。
さらに言うなら、「結果として、過少申告であった」と。


ちなみに、合法違法含めた税額を少なくする方法には、およそ次のようなものがあると考えられます。
報道では節税以外、すべて「申告漏れ」と表現されるものです
(いや、むしろ脱税は「脱税」と書かれるか)。

・脱税(違法・故意の課税逃れ・悪質)
・租税回避行為(合法・故意の課税逃れ)
・節税(合法)
・見解の相違(故意・過失を問わず、合法と違法の間のグレイゾーン)
・単純ミス(過失)

租税回避行為というのは、海外子会社などを利用したり、税法の意図しない、かなり不自然な取引を使って税額を少なくしようとするものです。
最近の例では、航空機リースを利用した事件などがこれにあたります
(国側敗訴)。

見解の相違というのは、納税者が認められると考えていても、国税当局が課税逃れと判断する場合です。
最近の例では、萬有製薬の交際費課税の事件などがこれにあたります
(国側敗訴)。

節税は、よくあることですが、
奥さんを専従者にしたり、個人事業を法人化したり、子供をたくさんつくったり(笑)と税法の意図する範囲において税額を少なくすることをいいます。


(d) 「修正」と「更正」の違い

ここまでの話だけだと、
橋下弁護士は完全な白のようにも見えます。
でも、私にはどうも腑に落ちない部分があり、それが0%でなく10%と考える理由です。

橋下弁護士は修正申告しています。
「更正」ではなく「修正」です。
私にしてみれば、なんでそんなことするの??て感じです。

修正申告というのは、
自ら誤りを認めて(自主的に)申告しなおすことです。

これに対して、
更正処分というのは、
国税が強制的に所得額とか税額とかを変更させる処分のことです
(国税通則法24条)。

これも納税者の誤解の多い点ですが、
「税務調査で指摘されたことはすべて修正しなければならない」
わけではありません。処分と言われるとビビッてしまうのですが、もし国税の指摘に納得いかない点があるのなら修正申告には応じるべきでないと思います。

修正に応じた時点で、自ら誤りを認めたことになりますから、
その時点で「終わり」です。
納得いかないままに納めた税金は一生戻ってきません。

ところが「更正処分」に対しては、不服申立てができます。
納得いかない部分について、国側にもう一度考え直してもらうことができるのです。
不服申立てはまず税務署長に対してします。
だから、国税はなるべく更正をさけて修正するよう言い含めてきます。
不服申立てされたら、やっかいですから(^_^;)


(e) 橋下弁護士はどうすべきだったか

橋下弁護士の話に戻りますが、
本当に支出があって経費として認めてもらいたいのなら、
「どうぞ更正してください」と言うべきでした。
その処分について、不服があればとことん闘えばいいんです。
 異議申立→審査請求(ここまでが不服申立て)
 →(ここから訴訟)地裁→高裁→最高裁・・・
最後まで闘えば良かったんです。

そうしなかったところを見ると
(ここから先は私の勝手な推測ですが)、
ひょっとしたら橋下弁護士にも後ろ暗い部分があったではないでしょうか。
なんてったって、「不法団体」ともおつき合いですから(笑)
裁判になれば、どうしたって当事者が公表されてしまうので、それを避けたかったのでしょう。そこはやっぱりちょっと怪しいです。

(c)で、「『見解の相違等により経費の一部を否認された』
と表現するのが正しい」と書きましたが、
「見解の相違」でなく「見解の相違等」である理由もここにあります。
自分でも納得せざるを得ない部分があったのでしょう。

そんな訳で、こうした話をまとめると、
橋下弁護士の申告は犯則事件となるような脱税ではないにしても、自分で修正を認めざるを得ない部分があるようなので、
グレイ度10%ぐらいなのかな〜と考える次第です。

ちなみに、刑法面を考えるとグレイ度はさらにアップします(笑)



(番外) 税法に詳しい弁護士?

新聞の見出しに
「橋下弁護士、申告漏れ 税法…詳しくなかった?」
などと、ほとんど揶揄状態で書かれていますが、
いくら法律家とはいえ税法に詳しい弁護士は希有の存在です。
民法、刑法だけでも得意不得意でるくらいですから。
税務訴訟専門の方を除いては、ほとんどいないでしょう。

というより、いてほしくないですね。
私がおまんまの食い上げになっちゃいます(爆)



(補足) 橋下弁護士、「更正」知らなかったか!?

上の(e)で、橋下弁護士は修正申告に応じたという点で、10%のグレイだと言いましたが、
もう一度考え直すと、橋下弁護士が「更正という手段を知らなかった」という可能性もあることに気づきました。
調査にあたり、税理士をたてなかったそうですから。

でも、もし、そうだとすると次のようなことも言えます。

一つは更正を知らないで修正に応じたことは
税務面でより白に近くなる可能性が高くなること。

もう一つは、更正処分とそれに対する不服申立てといった手続は、税務争訟に限らず、もっと一般的な行政訴訟、あるいは民事訴訟の手続にも通じるわけで、それを知らないということは、
完全に弁護士失格ということ(爆)





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S先生、大変なお手間を取らせて相すみませんでしたm__m
お陰でスッキリいたしました(*^^)v



posted by poohpapa at 06:25| プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月20日

国籍を理由に断るのは当然だと考えます

大切なことなので、改めて明確に意思表示します。

私は、「中国人、韓国人、北朝鮮人の部屋探しはしない」と表明していて、それは東京都の人権課の考えや指導には明らかに反しています。ですが、「国による差別をしないように」という言葉だけを考えれば間違いではありませんが、「現実に即していない指導である」と言わざるを得ません。誰に貸すか貸さないか、は理由の如何に関わらず貸す側の自由です。面と向かって言いはしませんが、「お前の顔が気に入らない」という理由でも構わない、と思っています。

過去には、国籍を理由に貸してもらえなかった人が損害賠償の訴えを起こして賠償命令を勝ち取ったケースも有りますが、そんな判決が出たのではアパート経営をする人などいなくなります。だいいち、貸す側の権利は全く存在しないことになります。

問題は、それらの国の人たちが家主や業者から敬遠されるのには「それなりの訳」がある、ということであって、それでも「国籍に関係なく拒否するな」と言うのであれば、何か問題が有った時には「拒否することを許さなかった」機関が責任を持たなければなりません。もし「責任は取らない、保障もしない」というのであれば、全く無責任な「丸投げ」ということになります。

もっと解かりやすく言えば、お上から「オタクの娘に、どんな男が結婚を申し込んできたとしても断ってはならない」と指導されたら、素直に従うことが出来ますか、という話です。

言葉の問題もありますよ。彼らはトラブルになると急に日本語が話せなくなったりします。そういう時に、お役所で速やかに通訳を用意してくれるのでしょうか。有り得ませんよね。

先ず、「差別された」とする国の人たちは、訴えを起こす前に「何故そうなるのか」を自省しなければなりません。断られる理由に思い至らず、反省すること無く文句ばかり言うからこそ断られるのです。
中韓北の高官が、日本に対して外交問題で「どういうイチャモンをつけているか」を見ていれば、そういう国の人に部屋を貸せばどうなるか、自ずと分かります

私は基本的に、肌の色や職業で差別することはありません。黒人の方に入居して頂いたこともありますし、水商売の方の部屋探しもします。相手の信用性を商談の中で見極めて自分で判断しています。私が「中韓北の人たちの部屋探しをしない」というのは、アメリカにおける「(根拠の無い)人種差別」とは違います。多くの経験から「貸せば碌なことが無い」と知っているから、です。彼らとひとたびトラブルが起きると他の業務にも大変な支障が出ます。家主や業者がリスクを避けるのは当然のことであって、監督権者が「差別するな(リスクを負え)」と押し付けることが正しい指導とは思いません。あくまで、お役所としての「建て前」だけの話であって欲しいですね。

よく、私のような意見を述べると、「私はそれらの人を全部ひとからげに見るようなことはしない」という意見が出ますが、さぞかし人格者でいらっしゃるか、世間知らずの理想論者、だと思います。それは「暴力団にも良い人はいます」と言っているようなもので、「警察官にも立派な人はいます」と言うのとは訳が違います
その違いが解からない人には、私の見解も理解できないでしょう。

貸室賃貸は物品販売業と違って「商品を渡して代金をもらえば(その都度)終わる」商売ではありません。長く付き合うことになる相手を「貸す側が選ぶことが出来ない」としたら不条理です。指導はあくまで「国籍では差別しないように」、ということだと解釈しましょうか。

しかたないから、中韓北の人間と判った時点で「国籍ではない別の理由」を言うことにします。お役人は、市営住宅や県営住宅、余っている供給公社の住宅に、それらの国の人間を入れてみれば、私の言っていることがよく理解できるでしょう。



※ 「断るのは当然」であっても理由は相手に伝えません。
posted by poohpapa at 06:23| プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月09日

続続・入居者は「アルコール依存症」

3回目にしてジャンルが「プロとしての見解、アドバイス」に!
と言っても、私の見解、アドバイスではなく、専門医の、である。

昨日、アルコール依存症の入居者の件で、連帯保証人であるお姉さんと、江戸川区に住む妹さんとの3人で、多摩立川保健所における専門医相談を受けてきた。非常に有意義なお話を伺えた。

その入居者はGWにアパート内で倒れて、救急車で総合病院に運ばれている。その時は本人が回復したので一晩だけ入院して翌日には退院している。駆けつけたお姉さんに医師は専門医に診せることを勧めた。

その後お姉さんが付添って、専門医のいる吉祥寺病院で診察を受けたが、担当した若い医師の態度が横柄で、しかも「そんなのは突き放せばいいんだ!」「本人が治療を受ける意欲が無いならどうなっても知らない」という言葉ばかりで、言っていることは間違っていないとしても、藁にもすがりたい家族にすれば何とも冷たい言い方で、その時の様子をお姉さんは、落胆し憤慨もして話してくれた。そんなでは専門医がいたとしても治療を任せる訳にはいかないだろう。昨日の相談医から、「依存症専門医はそんなことは言わないものなんで専門外の医師だった可能性はありませんか?」と聞かれて、お姉さんが「いえ、専門の科の先生でした」と答えると、「それはキャリア不足ですね、そんなことを言ってしまったのでは治療になりません」と驚いていた。単に言葉の選び方の問題でなく人格の問題であろう。

幸い、昨日の年輩医師と保健所の担当者はとても親身に相談相手になってくれて、素人にも解かりやすい言葉でゆっくり丁寧に話してくれたので、お姉さんも妹さんも充分納得することが出来たようだ。

「本人が『死にたい』と言ったとしても、本音はそうではありません。本人の言ってることを鵜呑みにしないことが大切です。できればやはり専門病院に入院させたり通院させるといいでしょう。本人の治療以外にも利点があるからです。他の患者とも交流することになるので、病気と闘っているのは自分だけではない、もっと重症で辛い人がいる、ということを知ってもらうことで病気と闘う意欲が継続します。本人が入院や通院を拒絶するようなら、本人が来なくても家族だけで診察を受けても良いのです。依存症は麻薬中毒と同じです。本人は、飲まないと不安になる、眠れない、体のどこかが痛くなる、食欲がなくなる、だから飲む、の繰り返しになります。時間が掛かりますが、先ずは、本人がどうしたいのか、を聞いてやってください。そこからのスタートです」、等々いちいち納得いく話だった。病気の治療というものは本人が行かないことには始まらない、と思っていたが、家族が相談を受けるという治療法があることを初めて知った。

良い相談相手に巡り会えたことで確実に治療の一歩が踏み出せそうである。帰り道、安堵の表情を浮かべるお姉さんに、しっかり家主さんの振込先口座のメモは渡してきた。滞納家賃の取立てこそが、今回の私の仕事だから、である。
posted by poohpapa at 06:00| Comment(0) | プロとしての見解、アドバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月11日

小金井カントリー倶楽部の会員権を考える

バブルの最盛期には会員権の価格が4億円を超えたという「小金井カントリー倶楽部」であるが、当時は誰もが「たかがゴルフ会員権が何で4億もするんだ」と呆れていた。
だが、それはとんでもない素人考えである。

小金井カントリーの会員には、お金持ち、というだけではなれない。
私の情報はゴルフ会員権の募集会社にいた時のものだから相当に古くて、現在はだいぶ変わっているとは思うが、(89年当時)会員になるためには、現理事でない在籍7年以上の正会員2名の紹介(推薦)があることと、自身がJGAに加盟している他のゴルフクラブに5年以上会員として在籍している男性であること、が先ず入会条件になっていた。たいていは、これでアウトである。しかも、理事による面接を受けて人格を審査される。市場に流通している会員権があって購入したとしても、会員にしてもらえるかどうかは別の問題なのだ。会員権を購入することはカネさえあれば誰でも出来るが、入会できるかどうかは分からない(難しい)のだ。会員としてプレイできなければ高額の会員権も「タダの紙切れ」になる。てことはつまり、相撲の世界にいない人間が年寄株を持っているようなもの、である。

で、面接に通ったとしても、さらに入会金個人正会員400万円、預かり保証金600万円、年会費5万円が必要であった(89年当時)

「それみろ、だから馬鹿げている」と決め付けるのは待って欲しい。
ここからが重要なのである。

小金井カントリー倶楽部は株主会員制であって預託金会員制ではないから、一人一人の会員が一口株主ということで、もしも、総会を開いて「もうゴルフなんてかったるいスポーツなんか止めて、宅地として売っちまおうぜ」という決議がなされたとすると・・・、

土地面積は約15万坪、バブル期には捨て値で売っても坪200万で3000億円、それなら間違いなく売れたであろう。

会員数498名だから、売却益は一人6億円。4億で会員権を買っても一人2億の利ザヤが稼げることになる。

ゴルフ会員権を4億で買った、と思うから高いのであって、6億の宅地を4億で買い叩いた、と思えば笑いが止まらない。ちなみに現在の相場は5千万強といったところで、現在の会員権相場と土地値でも充分元はとれる計算である。むしろ今のほうが遥かに率が良い。

人間、見方を変えるだけで価値も損得勘定も変わってくるものだ。

以前書いたようにも思うけど、30年ほど前「メジロ」を飼っていた時の話。ブドウ虫という餌はメジロにとって大好物であるだけでなく貴重な薬でもあったから、ペットショップで買うと(ブドウ虫が入っている小枝)10本一把で2000円もしていた。
ところが釣り道具屋に行くと、タダの消耗品の釣り餌でしかないから、同じく10本で200円だった。私にとっての用途はメジロの薬だが、釣り道具屋で買っていたのは言うまでもない。だいいち、メジロにとっては「どうでもよいこと」なのだから(*^^)v

で、会員制のゴルフクラブのほとんどが採用している預託金制とはそこが大きく違うから、私なら例え審査で落とされても、カネさえ有れば「小金井カントリー倶楽部」の会員権を買うだろう。万一ゴルフ場が倒産したとしても、清算すればけっして損にはならないから。
(もちろんこれは、「大きな負債は無い」ということが前提になる)

とまあ、これは「ゴルフをしない不動産屋の見方」、ではあるが(爆)

2005年07月04日

不動産協会と不動産政治連盟

このサイトでも何度か取り上げているが、都議会では昨年の所謂「東京ルール」(敷金等の精算についての紛争防止のための条例)に続いて「礼金、更新料といった制度(慣習)の条例による廃止」が取り沙汰されていて、それに対して不動産業者の8割以上が加盟している二つの協会(全宅、全日)では、「不動産政治連盟」という下部組織を使って息のかかった議員に賛成しないよう懸命に働きかけている。これは「本末転倒」であって、馬鹿な話である。

協会が今すべきことは、政治家に働きかけて業界(自分たち)に都合よく法律を変えさせることではなく、「家主の教育」と「消費者に正しい知識と認識を持たせること」ではないのか。どちらも非常に困難なもので、多少おカネが掛かっても政治家を動かすほうが遥かに楽、と考えてしまうのも分からないではない。だがそれでは、やってることは「リコール隠しや食品の不当表示をしている会社」と何ら変わりはない。そんなことを続けているとやがては自分の首を締めることになる、と、どうして気付かないのだろう。それも、「社会問題になってから慌てて政治家に働きかける」など醜態もいいところである。礼金や更新料を廃止することは理に適っている。それで「食べていけない」と言うなら、管理会社としての原点に戻って業界のルールを再構築すればよい。とまあ、何度も書いているのだが・・・(ふ〜)
ハッキリ言って、協会幹部は先が全く見えていない。

一般には馴染みの無い団体だが、「不動産政治連盟」は、(政党や派閥には関係なく)特定の政治家に政治資金を提供して、見返りに「自分たちに都合よい法案を提出、修正、廃案にしてもらうべく働きかけるための団体」、と考えて頂くと分かりやすいと思う。政党に関係なく、と言っても、共産党や社民党の議員は含まれないようだ。
力の無い政党には資金を提供するだけ無駄、ということだろうか。

不動産会社を新たに開業する場合には、法務局に営業保証金として1千万を供託しなければならないのだが、協会に加盟することによって「主たる事務所(本店)60万、従たる事務所一店につき30万」という保証金の供託で済むことになるので、ほとんどの業者がいずれかの協会に加盟することになる。協会が二団体ある、と言っても、8割以上が「全宅」に加盟していて、組織としては圧倒的に「全宅」のほうが大きい。協会に加盟する場合には、セットで「不動産政治連盟」へも加入することが義務付けられていて、これは憲法にも抵触するのでは、と考えている。最近は「不動産政治連盟」の不明朗なカネの流れが新聞で何度か取り沙汰されてもいる。

ちなみに、協会に新規加盟を申請すると承認まで相当な審査期間を要するのだが、「全宅」に比べて「全日」のほうが圧倒的に早く承認が下りる。ただし、年会費は高い。本当かどうかは分からないが、「全日」に加盟している会員は、「以前は地上げ屋だった(荒っぽい)業者が多い」とのことで、不動産業者としての質も落ちる、と聞いている。これは何となく分かる気がする。なぜなら・・・、
うちも「全日」だから、である(爆)

さて、日銀の短観では「景気は回復している」とのことだが、サンヨーが打ち出した1万人のリストラを始め、ソニーも、あのトヨタでさえも合理化を進めていて、各企業は経費の削減に躍起になっている。そんな中、何ら合理的な理由も見返りを求めることも無く、企業や団体が政治家に資金を提供するなら、そんなのは背任行為であるし、してはならないことだと思う。当然、何かの時には力添えを頼みたいから資金を提供しているものだろうから、ならば、それはれっきとした賄賂と考えるのが妥当ではないだろうか。

繰り返すが、「企業や団体が政治家に見返りを求めずにただ資金を提供したなら株主や会員に対する背任であって、見返りを期待して提供したなら賄賂」である。
組織として政治資金を出すこと自体が間違っていると思う。

政治家も情けない。「こんなはした金で俺を使おうと思うな!」と啖呵を切って突っ返すくらい出来ないものか(嘲笑)

私は「不動産政治連盟」など早く解体されることを望んでいる。

2005年06月17日

家賃滞納者への対応の難しさ

不動産屋が抱えるトラブルの一つに家賃滞納がある。

業者によって対応策は様々だが、首を傾げたくなるものも多い。

先ずドアへの貼紙(「家賃を払うまで部屋の使用を禁ず」等)である。
直接的な表現は不特定多数の第三者に、「その部屋の住人が家賃を滞納している」とあからさまに知らしめてしまうもので違法性が高い。貼紙をするなら、「至急連絡乞う!○○不動産」が限界である。これなら、「はは〜ん、家賃遅れてるな」とほとんど分かってしまうものでも、他にも緊急性を要する用件だって考えられるから逃げ場がある。そのうえで、貼紙をするならガムテープでガッチリ囲って容易には剥がせないようにしなければならない(笑)

次に、入居者の留守中に鍵を交換して入れなくしてしまうケース。
もちろん本人が鍵屋を呼んで入ることも可能だが、事前に通告していたかどうかに関係なく、そして家主や管理会社といえども、生活権や居住権そしてプライバシーの侵害に当たることになり、これも違法性が高い。以前TVで、新宿歌舞伎町の業者が滞納者の部屋のドアノブに鍵カバーを取り付けているのを見たが、これはもっと酷い。

相手は何ヶ月も家賃を滞納しているくらいだから弁護士に依頼するとは思えないが、実際に裁判になったら家主や業者が負けることになる。判例でも、滞納家賃がチャラになったうえ慰謝料まで認められたケースがある。

そもそも滞納者に連絡をくれるよう求めたところで、電話など掛けてくるケースは少なく、督促状の送付なども効果が無いから家主や業者もそうせざるを得ない訳で、「危ない橋」だと分かっていても実力行使に踏み切ってしまう気持ちはよく分かる。

ただ、悪質な入居者は業者や家主の失点を待っている可能性がある。管理会社は常に、どこまでなら法に触れないか、落ち度を問われないか、充分に注意を払わなければならない。本音で言えば、「無報酬で家賃回収をやらされて業務停止や慰謝料支払い命令なんてことになったら堪らない」、と思っている。家主は責任などとってはくれないのだから。

入居者の権利がより厚く保護されている現在の法の下では、管理会社には高度な判断が求められるし、貸室業など本当に割に合わない。以前にも書いたが、私は「家賃を払っていてこその居住権」だと思っている。

2005年05月08日

「悪徳」史上最長の記事(*^^)v

と申しましても、私が書いたものではございません^_^;

私の過去ログ、「国の借金と景気向上の秘策」に対して、公認会計士、税理士でいらっしゃるひろともさんからコメント欄に提言を頂きました。私の意見は「素人考え」の域を出ていませんが、ひろともさんは税務等の数字を精査するのがお仕事なだけに、非常に的を射たご意見でいらっしゃいます。コメント欄にて書き込みして頂きましたが、それですと折角の建設的な提言が埋もれてしまう恐れがありますので、(ひろともさんの事前のご了解は頂いておりませんが)記事として転載させて頂きます。ご挨拶文等を除き原文のまま順次つなげております。

相当な期間をかけて丁寧に研究された内容を「悪徳」に寄稿してくださり心から感謝しております。

なお、この記事に関しては特段の必要が無い限り、私からの返信はいたしませんのでご了承ください。と言いますのも、記事本文はひろともさんの成果でありますので・・・^_^;
いえ、本音では「難しい論議から逃げているだけ」なんですけど(汗)

で、思い出しました。一ノ関駅と藤沢町を結ぶ路線バスの中で繰り返し流れていた「暴力団、街から追い出せ、ハジキ出せ」というアナウンス、私は頭の中でこう続けていました。
アンタ闘え、わしゃ逃げる」(爆)

冗談はさておき、このご提言は、財務省のお役人、税務署職員、ひろともさんと同業の会計士さんや税理士さんに、とくにお読み頂きたい内容だと思います。私も時間をかけて精読した上で自分の意見をまとめたいと考えています。

文章量は多いものですが、私たちが本来は避けて通れないお話なので、是非とも時間をかけてお読み頂けたら、と存じます。

先ず、見出しタイトルです。


(1)月給の倍のお金を消費する人
(2)国税 税収ランキング
(3)相続税 一般庶民に 縁はなし
(4)個人金融資産1400兆円の中味
(5)個人資産を動かす税制はあるか
(6)戦後日本の直間比率
(7)ホントはいくらかわからない? 日本の国家予算
(8)相続税の増税試案
(9)消費税の税率アップに賛成です
(10)人口問題と景気回復と税制改正
(11)悪いのは政治家、官僚だけか?
(12)いま日本国民に大切なもの
 
 
 
以下本文になります。


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さて、予定より遅れてしまいましたが、「国の借金と景気向上の秘策」について、私なりのコメントをさせていただきます。
はじめに、お読みいただくにあたってご注意いただきたいことがあります。
私のコメントには相続税・贈与税、消費税など各種税制についての改革案が記されていますが、これらはあくまで試案であって、私見です。しかもにわか勉強でごまかした部分もたくさん(笑)あります。曲がりなりにも会計士・税理士を名乗っているのでいい加減な意見にならないよう努めましたが、税制の専門家にすれば一笑に付される程度のものかもしれません。
そしてこれらは私が勝手に考えたことであって、poohpapaさんやこれをお読みくださったみなさまに無理に同意を求めたりするものではありません。もちろん、私の意見が納得できるもので、全部とはいかないまでも部分的に賛同していただけるならば、それはとてもうれしいことです。
統計資料の調査や改革案の提案は国税に限定してまとめました。固定資産税なども調べればいろいろ面白いことがわかりそうですが、地方税ということで割愛しています。
最後に、相続時精算課税など現在の税制について説明した部分がありますが、字数の関係や話の流れから考えて、制度の詳細を大幅に省いたところがあり、私の説明だけで判断すると誤解をまねく可能性があります。現状の税制についてくわしくお調べになる場合は、国税庁のホームページなども合わせて参照していただければと思います。
これらをご了解の上、お読みいただければこれ以上の喜びはありません。
なにぶん話が長いので機械的に六つに分割してコメントUPいたします。

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(1)月給の倍のお金を消費する人
月々のお給料が20万円で、生活費が40万円かかるという状態がもし続いたら、借金が雪だるま式に増えていきます。考えただけでも恐ろしくて、私はそんな生活とてもじゃないけれど続けられません。でも、日本の財政はこれとまったく同じ状態です。
2002(平成14)年の国家予算(一般会計)の歳入は合計で87兆2890億円。その内訳は次のようになります。

租税及び印紙収入     43兆8332億円(A)
官業益金及び官業収入    202億円
政府資産整理収入      3266億円
雑収入           6兆 492億円
公債金          34兆9680億円(B)
前年度剰余金受入      2兆 919億円
           ----------------------------------
 合計          87兆2890億円(C)

国の収入のうち税収の占める割合は、
 A÷C=50.2%
となります。個人に例えると月収のうち働いて得られる給料が半分だけということになります。
それとは反対に収入のうち借金の占める割合は、
 B÷C=40.0%
と4割を超えています。
poohpapaさんご紹介の国の借金時計によれば、累積債務は700兆円を超え、その額は時々刻々増え続けています。
財政を立て直すためには赤字国債でごまかすのではなく、税収を増やすのが健全なやり方ですが、政治・行政の失策のつけを単純に増税で補うというのでは国民は納得いきません。
経済を活性化させ、国民の所得が増え、その結果として税収が増えるというのが理想的なのですが、果たしてそれは実現可能なのでしょうか……。


(2)国税 税収ランキング

歳入の半分でしかない国税収入の内訳はどうなっているのでしょう。
2002年4月から2003年3月までの租税及び印紙収入(一般会計)は43兆8332億円で、この税目別ベスト10は次のようになっています。

1 所得税    14兆8122億円(32.31%)
2 消費税    9兆8115億円(21.40%)
3 法人税    9兆5234億円(20.77%)
4 揮発油税   2兆1262億円(4.64%)
5 酒税     1兆6803億円(3.67%)
6 相続税    1兆4528億円(3.17%)
7 印紙収入   1兆3637億円(2.97%)
8 自動車重量税   8479億円(1.85%)
9 たばこ税     8441億円(1.84%)
10 関税       7936億円(1.73%)

断トツ1位は所得税。このうち源泉分(支払者から天引きされる分。通称で源泉所得税とも呼ばれる)は12兆2491億円、申告分(確定申告で申告する分。通称申告所得税)は2兆5630億円になります。源泉所得税といっても利子所得・配当所得に関わるもの、事業所得(自由業など)に関わるものなどいろいろですが、もっとも多いのが給与所得に関わるもので、これが9兆7035億円(上記とは別の資料から得た2002年分の数値)。サラリーマンや労働者がせっせと稼いで真面目に納めた税金が日本の屋台骨を支えているという構図がここからも読みとれます。
平成元年に導入された消費税の税収はいまや9兆円を超え、法人税を抜いて第2位にまでなっています。
相続税は第6位で、割合にすると3%という低い率ですが、1兆円を超える貴重な財源であることは間違いないでしょう。
第4位の揮発油税とはいわゆるガソリン税を構成する間接税の一つです。2兆円も稼いでるとは驚きです。自動車に乗る人は必ず払っています。

Posted by ひろとも at 2005年05月07日 09:18





(3)相続税 一般庶民に 縁はなし

一年間におよそ100万人もの人が死んでいます。しかしその家族が相続税を払うことになる死亡者は約4万人しかいません。
2002(平成14)年の統計では、2002年中の死亡者数は98万2千人。このうち相続税の申告対象となった被相続人数は4万4370人とされています。つまり死者全体のうち、その配偶者や子孫が相続税を納めることになった人の数はわずかに4.5%しかいないのです。この割合は年々低下傾向にあり、相続税は多額の財産を残した一部の人々のものという感覚が強くなりつつあります。
わずかに4.5%の人たちが残した相続財産の金額(課税価格)は10兆6192億円。被相続人一人当たりにすると2億3933万円です。そして、この結果としての税額は1兆2829億円にも上ります(上記「税収ランキング」の税額1兆4528億円と一致していないのは集計対象期間がずれているためです)。
相続財産額のうち一番多いのは土地で、割合にすると58.7%です。次に現金・預貯金16.7%、有価証券8.4%などの順になっています。土地家屋などの相続税評価額は一般的に購入価額より低くなるので、財産は現預金で残しておくより不動産で残した方が相続税の面では有利なのですが、近年は地価の下落などの影響もあって、現金・預貯金の比率が増加しているようです。


(4)個人金融資産1400兆円の中味

ニュースなどでよく言われる「個人金融資産1400兆円」というのは、日本銀行が公表している資金循環統計から取られた数字です。これによれば2001年末の個人金融資産(家計部門の金融資産残高)は1461兆円で国民一人当たり1148万円。内訳を見ると、現金・預金が54%、株式・出資金が7%、保険・年金が27%などとなっています。
米国の場合、個人金融資産残高は4257兆円(国民一人当たり1494万円)で、内訳は現金・預金がわずかに11%なのに対し、株式・出資金が34%もあり、保険・年金が30%となっています。為替レートの影響や、米国の統計では法人ではない個人事業主への元入金も株式・出資金として把握していることもあり(日本では個人企業への出資は把握していない)、単純な比較はできませんが、日本は米国に比べて安全資産のウェイトが高いと言っていいでしょう。

日本の個人が持つ現金・預金の額は1461兆円×54%=789兆円です。この数字をもとにちょっとした仮の計算をしたいと思います。上でも出てきた相続財産額の構成比(土地58.7%、現金・預貯金16.7%)を用いて個人が持つ土地の資産額を推定してみます。すると、
 789兆円÷16.7×58.7=2773兆円
という結果が出てきます。現実の個人資産の構成比と相続財産の構成比とが必ずしも一致するわけではないので、かなり乱暴に計算した大雑把な数字なのですが、金融資産だけでない土地家屋なども含めた個人の資産は、少なく見積もっても4000兆円は超えると言って良さそうです。
個人金融資産の半分以上を占める預貯金を証券などの投資へ向ければ、あるいは土地や家屋などの不動産を次世代へ移転させれば、経済は活性化するだろうという考え方があります。
Posted by ひろとも at 2005年05月07日 09:20





(5)個人資産を動かす税制はあるか

税収を増やすためにまず経済を活性化させる。そして経済を活性化させるために個人資産を活かす政策を実施する。そういう動きが現段階においてまったくないわけではありません。税制だけで考えても少なくとも二通りの動きがあり、ひとつは金融証券税制(主に所得税)の面から(a)金融資産所得の一体課税と(b)いわゆるタンス株についての税制、もう一つは相続税・贈与税における(c)住宅取得資金等贈与の特例と(d)相続時精算課税制度があります。

(a)金融資産所得の一体課税
この税制は現金・預貯金に偏っている個人金融資産を株式・出資金に移動させることで経済の活性化を図るというもので、いわば「貯蓄から投資へ」という政策です。いまはまだ検討段階にあり、導入されていません。
現行の所得税では、不動産所得と事業所得などはどちらかで赤字が出れば他の所得の黒字と相殺して税額を計算(損益通算)できるのですが、株式等の譲渡所得は分離課税とされているため、たとえ売却損が発生しても他の所得との通算ができません。つまり事業で100万円の黒字があって、株で100万円の損があった場合、両者は相殺できずに事業の儲け100万円は丸々課税されてしまいます。
でもこのままでは株式市場が停滞してしまうので、事業所得などとの損益通算はできなくとも、せめて利子や配当との所得は一体として考えて、株式の譲渡損は他の金融資産の譲渡益や利子、配当と通算・相殺できるようにしようというのが、金融資産所得の一体課税です。ただ、この改革案は2005年度税制改正では見送られてしまいました。上場株式等の譲渡所得等については現在7%という軽減税率が適用されているのですが、一体課税を導入すれば税率が一律20%となってしまい証券業界の反発が大きいためと言われています。次回以降の導入年度も明確にされていないので、実現はもう数年先のことになりそうです。

(b)いわゆるタンス株についての税制
タンス株とは、証券会社に預けずに自宅などに保管している株券のことを言います。タンス預金の株券版と言ったところでしょうか。
このタンス株を本当にタンスの中に眠らせておくのはもったいないとして、2003(平成15)年4月1日から2004(平成16)年12月31日の間に限って、タンス株を特定口座に受け入れられるようになっていました。
特定口座というのは、証券会社を通じて株式等を売買する場合、銀行預金のように開設する口座の一種です。一般口座と違い特定口座なら源泉徴収による納税を選択でき、売買によって発生した譲渡所得等については確定申告をしないで済ませることができます。確定申告が煩わしいと感じる方には便利な口座です(このあたりの事情、さとひろさんがお詳しいかもしれません)。
しかも特定口座への受け入れに当たって、取得価格や取得の日がわからない場合は、「みなし取得価格」による売買損益の計算ができます。みなし取得価格とは、2001年9月30日以前から保有していた上場株式は、その銘柄の2001年10月1日の終値の80%を取得価格とみなすというものです。さらに相続などで取得した上場株式等については2001年10月1日以後の取得でもみなし取得価格が適用できるという特典つきでした。
本来この制度は、相続などで取得した株券を証券市場に取り入れることによって、市場の活性化を図る目的で創設されたものでした。
しかし、実際は安く買った株でも、2001年10月1日の終値の80%の価格の方が実際の
購入価格より高ければ、みなし取得価格を使って架空の売却損を計上し、課税逃れをすることもできました。
タンス株受け入れの措置は2005(平成17)年4月1日以降再開されたようですが、上記のような課税逃れを阻止するため、原則として取得価格不明の株式は受け入れ不可となり、みなし取得価格は利用できなくなってしまいました。

(c)住宅取得資金等贈与の特例
金融証券税制が「貯蓄から投資へ」という動きであるのに対し、相続税・贈与税についての税制は中高年齢層に偏りがちな個人資産を若年層へ移転させることによって経済活性化を図ろうというものです。いわば「高齢層から若年層へ」という動きです。
住宅取得資金等贈与の特例というのは、国内に住所をもつ人が、いくつかの要件を満たす家屋等を買ったり増改築をするための資金贈与を父母や祖父母から受けた場合は、550万円まで非課税、550万円超1500万円までは贈与税を軽減するというものです。この制度は一生に一度しか使えないとか、一度適用すると5年は贈与税の基礎控除(110万円)が使えないとか、いろいろ制限もありますが、中高年層に偏りがちな個人資産を若年層に移動させるためには有効な措置なのかもしれません。

(d)相続時精算課税制度
こちらも(c)と同様に個人資産を若年層にという政策的意図のもとに創設された制度で、20歳以上の人が65歳以上の親などから贈与を受けた場合(金融資産などもOK)、2500万円までが非課税になるというものです。非課税枠を超えて贈与を受けた分の贈与税は、その親からの相続時にかかる相続税から差し引くことができます。
相続時精算課税には住宅取得資金等についての特例もあり、この場合親の年齢は65歳未満でもよく、いくつかの要件を満たす家屋等を買ったり増改築をするための住宅資金贈与を受けた場合、3500万円までが非課税になります。住宅取得資金等の贈与の特例と同じく一生に一度しか使えないもので、一度この制度を利用すると同じ親からの贈与については基礎控除が使えないといった制限があります。住宅取得資金等の贈与の特例も、住宅取得資金等についての相続時精算課税制度も、2005(平成17)年12月末までの制度です。延長してくれ、というのが正直なところです。

高齢層から若年層への資産移転とは直接は関係ないかもしれませんが、住宅取得の優遇措置として、所得税における住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)といった制度も時限的に設けられています。

Posted by ひろとも at 2005年05月07日 09:23





(6)戦後日本の直間比率

やや話がそれてしまいますが、直接税と間接税についてちょっとだけ考えたいと思います。直接税とは納税者と納税義務者とが一致し、納税者が直接国や地方公共団体に納めるもので、国税では所得税、法人税、相続税などがあります。間接税とは納税者が直接納めないで、納税義務者たる事業者などを通じて納めるもので、国税では消費税、酒税、揮発油税などがあります。
この直接税と間接税の税収の比率を直間比率といいます。日本の直間比率は欧州各国に比べて低いというのが現状です。ドイツは直接税42.3%に対し間接税57.7%であり、フランスは直43.1%、間56.9%、イタリア直52.9%、間47.1%などとなっていますが、日本は直56.3%、間43.7%でしかありません。
これは消費税等の一般税率が5%(消費税4%、地方消費税1%)と欧州に比べて低いからというのが第一の原因と考えられます。
他国の消費税(付加価値税)の税率を見ると、デンマーク、スウェーデン、ハンガリーは税率25%でもっとも高く、そのほかイタリア20%、フランス19.6%、イギリス17.5%、ドイツ16%などとなっています。何でも西洋と同じにすれば良いという訳ではありませんが、日本の消費税率はもう少し高くてもいいのではという根拠のひとつがここにあります。

意外なことに、日本の直間比率が戦後一貫して低かった訳ではありません。ここに昭和30(1955)年、昭和60(1985)年、平成14(2002)年の直間比率の変遷を示すデータがあります。

         昭和30  昭和60  平成14
         1955   1985   2002
直接税      51.4%  72.8%  56.3%
(内訳)
 所得税     29.8%  39.4%  32.3%
 法人税     20.5%  30.7%  20.8%
 相続税      0.6%   2.7%   3.2%

間接税      48.6%  27.2%  43.7%
(内訳)
 酒税      17.1%   4.9%   3.7%
 揮発油税    2.7%   4.0%   4.6%
 物品税     2.9%   3.9%   -
 関税      2.9%   1.6%   1.7%
 日本専売公社
 納付金     12.6%    -    -
 たばこ税    -     2.3%   1.8%
 消費税     -     -     21.4%

バブル景気の昭和60年には個人も法人も所得が増加し直接税率が72.8%にもなっていますが、昭和30年における間接税率は、現在のイタリアよりも高く48.6%に上っています。その内訳は酒税が17.1%と圧倒的に多く、日本専売公社納付金の12.6%がそれに次いでいます(日本専売公社納付金とは、たばこ・塩の専売事業による利益を国の一般会計へ納めていたもので、専売公社民営化に伴い昭和60年に「たばこ消費税」となりました。現在のたばこ税です)。
昭和30年における酒税の割合がなぜこんなに高いのか? 酒税における申告納税制度が導入される以前であったこと、酒類の価格が統制価格であったこと(よって当局が意図的に課税価格をコントロールできる)、国民全体の所得水準が低いため直接税の税収も低く相対的に間接税の比率が高くなってしまったこと、などが推測できますが核心に触れる資料はとうとう見つからず、確かなことはわからずじまいでした。
いずれにしても、戦後の日本に間接税の比率48.6%の時代があったことは覚えておいていいかと思います。


(7)ホントはいくらかわからない? 日本の国家予算

先の「(1)月給の倍のお金を消費する人」で、私は「2002(平成14)年の国家予算(一般会計)の歳入は合計で87兆2890億円」と書きました。また「(2)国税 税収ランキング」では「租税及び印紙収入(一般会計)は43兆8332億円」とも書きました。
一般的に国家予算と言ったとき、国会で主に審議されるのは一般会計なので、それはそれで間違いないのですが、予算には特別会計というものがあり、実はこれがかなりの曲者です。
特別会計とは、国が保険など特定の事業を行う場合に、事業ごとの収支を明確にするため例外的に一般会計と区分した会計の設置が認められたものです。本来は国民の受益と負担を明確化して、弾力的に予算を運用するためのものだったと言われています。
こうしてもともと例外的に認められた特別会計ですが、いまでは一般会計の歳出が81.8兆円であるのに対し、特別会計が199.7兆円もあり、一般会計の二倍以上にまで膨らんでいます(2002年の資料にちょうど良いものが見つからなかったので、2003年度の歳出ベースの資料を使っています)。一般会計、特別会計を連結して重複を除いた国家予算の歳出合計は232.6兆円と言われ、社会保障給付や義務教育負担として使われているのは60.4兆円であるのに対し、官僚の天下り先である特殊法人、独立行政法人、公益団体への補助金には15.3兆円も流出しています。特別会計全体を集計した統計はなく、一般会計とのやりくりや、競輪・競艇など公営ギャンブルからのテラ銭などもあり、出入りがとても複雑です。199.7兆円という数字もとらえ方によってはさらに増えるという話もあり、どの程度の規模か全貌がつかめていないというのが実態のようです。
現在、厚生保険特別会計や道路整備特別会計など計31の特別会計があり、一応国会でも議決されますが、ほとんど審議されないと言われています。
要するに特別会計とは、官僚組織が実質的に自由に使えるお金なのです。
最終的に天下り官僚の法外な退職金となる補助金が15兆円もあること自体、まともな国家のすることではありません。
私はこれから、相続税や消費税を増税することによって、経済の活性化と財政の安定のための方法を提案するつもりでいます。
しかし、財政を立て直すためには、まず増税を考えるのではなく、特別会計を含む国家予算を狡猾に利用した税金の無駄遣いを真っ先にストップすることからはじめるのが筋だと思います。そうした政治・行政側の身を切る努力のないままに、安易に増税を目論むやり方には、私は強い反発を覚えます。

Posted by ひろとも at 2005年05月07日 09:25





(8)相続税の増税試案
poohpapaさんは、このコラムにて金融資産の相続税を増税するという提案をされています。実は私はこれに反論するつもりでいろいろ調べてみたのですが、調べているうちに増税でもいいのではないかと考えるようになりました(^.^)
反論の根拠としては、相続税はごく一部の人のためのものなので国民全体で考えるとあまり意味がないのかなというのと、イタリアなどでは相続税がないという話(米国には遺産税があります)を聞くぐらいの漠然としたものでした。でも、1兆円もの税収をみすみす棒に振ることはないし、増税にまではなっていないもののpoohpapaさんの提案のように相続税などを利用した個人資産の流動化施策はすでに存在しており、それを拡大していくかたちで最終的に税率アップにつなげていく方法も一理あるのではないかと思うようになったのです。
ただし、単純に相続税を増税するだけでは反発を招くだけかもしれないので、一方で贈与税を軽減するのがいいのではないかと思います。具体的には、相続税の増税と贈与税の減税をセットで行い、平行して相続時精算課税などを拡大していく方法です。

(a)贈与税の軽減(子に対する贈与の緩和)
贈与税は個人から個人へ財産が移った場合にかけられる税金で、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産を合計した課税価格に課税されます。
課税価格から差し引かれる基礎控除額は1年間110万円で、この額を上回る金額に税率をかけて税額を算出します。つまり贈与税は年間110万円までは非課税となっています。なお、税率は10%、20%と段階的に上昇する累進税率で最大50%となっています。
配偶者の場合はさらに2000万円が配偶者控除として加えられるので、年間最大2110万円までが非課税となります。
贈与税軽減の一方策として、配偶者の場合と同様に、一定の要件を満たす贈与者の子に対しても500〜1000万円程度の控除枠を与えてもいいのではと思います。
同時に、放蕩息子(娘)を産出しないような施策も必要かとは思いますが、ごめんなさい現状では妙案が浮かびません(^_^;)……税制というより教育の問題?親の躾の問題??

(b)相続税の増税(税率のアップ)
贈与税とは反対に相続税は増税するのが良いと考えられますが、相続税の計算の仕方は贈与税に比べてやや複雑です。
まず法定相続人(修正法定相続人)の数によって基礎控除額を算定します。基礎控除額は、
 5000万円+1000万円×修正法定相続人の数
で決められます。基礎控除額を計算する際、法定相続人は養子は子のある場合は一人まで、子のない場合も二人までしか認められません。実際の法定相続人の人数とは異なることがあるので「修正法定相続人の数」と呼ばれます。妻と子二人(長男・長女)の場合は修正法定相続人の数は三人なので基礎控除額は8000万円となります。
話はそれますが、たいていの家の場合、亡くなった人が残した相続財産額(課税価格の合計額)はこの基礎控除の枠内に入るので相続税はかかりません。相続税が一部の金持ちのためのものと言われる理由がここにあります。
さて、課税価格の合計額と基礎控除額がわかったら、次に相続人が法定相続分をきっちり受け取ったと「仮定」して相続税額を計算します。課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額をもとに税率をかけて税額を求めるのです。
たとえば、課税価格の合計額が1億8000万円とすると、課税遺産総額は基礎控除額8000万円を差し引いた1億円です。これをもとに法定相続分の税額を仮定計算し相続税総額を求めます。妻の法定相続分は2分の1、子の法定相続分は残り2分の1を半分ずつわけるので4分の1となります。
 妻  1億円×1/2×20%−200万円=800万円
 長男 1億円×1/4×15%− 50万円=325万円
 長女 1億円×1/4×15%− 50万円=325万円
以上より相続税総額は1450万円となり、これを実際の相続分の比率で按分して「現実」に各相続人が納める相続税額を算出するのです。
相続税総額を算出するにあたって各法定相続分の税額を計算するときに相続税の税率が適用されます。上の算式に出てくる20%、15%というのがそれです。
現在は、1000万円以下は10%、1000万円超3000万以下は15%、3000万円超5000万円以下は20%……と続き、最後に3億円超は50%となっています。
私は最大税率は50%でいいかと思いますが、増税を行うのであれば、基礎控除については現状のままとし、税率の適用区分を低い金額に変更する方法をとるのがいいと考えます。
たとえば、次のように。
 1000万円以下         10%
 1000万円超5000万円以下   20%
 5000万円超1億円以下     30%
 1億円超2億円以下       40%
 2億円超            50%

poohpapaさんは、相続税増税は金融資産のみに限定し、土地家屋については従来通りとすることを提案されていますが、私は上記のような税率の適用区分の一律変更で良いと考えています。その理由としては、「5000万円+1000万円×修正法定相続人の数」で算定される基礎控除額はもともと自宅一件分程度は非課税にするという目的にあると考えられること、二つめは土地家屋の評価額は通常取得価額より低めに設定されており、もともと相続税制上優遇されていること、三つめに財産の種類別に異なる税率を適用すると相続税の計算がいま以上に複雑になること、そして最後に金融資産の世代間移転は上記の贈与税の軽減や相続時精算課税によってある程度促進されると期待できること、などがあげられます。

Posted by ひろとも at 2005年05月07日 09:29





(8)のつづきからです。

(c)住宅取得資金等贈与の特例の拡大
以上のような贈与税の軽減と相続税の増税を前提に、住宅取得資金等贈与の特例の拡大、相続時精算課税制度の拡大を同時に行うのも有効かと考えられます。
現在、住宅資金贈与を父母や祖父母から受けた場合は、550万円まで非課税、550万円超1500万円までは贈与税を軽減となっていますが、1000万円まで非課税、2000万円まで軽減のように変更しても良いように思います。

(d)相続時精算課税制度の拡大
相続時精算課税制度は2006(平成18)年以降も継続を希望したいところです。
現在、20歳以上の人が65歳以上の親などから贈与を受けた場合となっていますが、親の年齢制限は撤廃してもいいと考えられます。また非課税枠も現在の2500万円から3000万円以上に引き上げていいと思います。
相続時精算課税のうち、住宅取得資金等についても、非課税枠を5000万円程度に引き上げてもいいでしょう。


(9)消費税の税率アップに賛成です

先に戦後日本に間接税の比率48.6%の時代があったと言いました。昭和30年と現在とでは政治経済の環境、生活水準などがあまりにも違い過ぎるので単純な比較はできませんが、なぜかつては日本国民自身も許容していた直間比率がいまは許されないのか不思議です。酒税もたばこ税も、そしてかつての物品税もグリーン車の通行税も、反対する人がゼロだったとは言わないまでも、現在の消費税より風当たりが少ない(少なかった)のはなぜなのでしょう?

思うに、昭和から平成にかけての消費税導入に対する反対運動、現在の税率アップに対する反対運動は、結局のところ感情論なのではないかと思うのです。理由の一つは、偏りのある一部政党の人気取りに利用され、国民もそうした政党や便乗マスコミの論調に流されてしまっていること。もう一つは、単純に増税に向かう変化への反発が強いこと、です。
いままでの間接税は主に贅沢品にかけられたものだからという意見は十分納得が行くものです。あらゆる物やサービスに対して一律に課税される消費税は、低所得者層は所得に対する消費税の割合が大きくなるので不公平であるとの意見もあります。しかし所得の多い者は必然的に消費も多くなる傾向があるのも事実です。
それに低所得者だって人によっては酒も飲むし、たばこも吸います。必要ならば自動車にも乗ります。たばこの価格の半分以上、ガソリンだと半分近くが税金です。たばこ税は本来たばこ消費税、ガソリン税はガソリン消費税と呼ぶべきものです。もし低所得者保護のために消費税反対を唱えるなら、酒税、たばこ税、揮発油税など消費税を含めたありとあらゆる消費課税(間接税)に反対するのが合理的な行動です。それなのにことさら消費税(現在の消費税と地方消費税)だけを標的にするのは一部政党の煽動に流された感情的な行動ではないかと思われても不思議ではないでしょう。
何より間接税の良いところは、課税逃れが難しいというところです。100円のものを買えば5円、100万円のものを買えば5万円と、消費した金額に応じて確実に納税することになります。誰もが行う消費活動に対し一定の税率で課税することはむしろ公平なことだと思います。所得税の課税逃れを続けている人も消費税なら払うでしょう。要は所得課税が入る方に対する税金で、消費課税が出る方に対する税金。どっちから多く取るかだけの違いのような気がします。

ヨーロッパ諸国のように食料品、水道水、医薬品など一定の生活必需品については軽減税率(もしくはゼロ税率)を適用すること、流通の中間段階で課税事業者がどれだけ消費税を受け渡したかを証明するインヴォイスを導入すること、酒税、揮発油税などの軽減もしくは二重課税の是正を行うことなど、いくつかの条件が整えば、私は消費税の税率アップは実施すべきだと思います。子育て家族に対する所得税の軽減や、海外からの投資を促進するための法人税減税などはいずれ実施しなければいけない施策なので、間接税の比率をアップさせることで、安定した税収、財源の確保が重要になると考えられます。
そうは言っても、上のような理論的な説明で、多くの国民に感情的に納得してもらうのは難しいことだと思います。特別会計の縮小・廃止、特殊法人等への補助金垂れ流しの廃止など税金の無駄遣いをなくす代わりに実行するのがベストなのでしょうが(^_^;)
2005年税制改正では、消費税率のアップは検討されていませんが、すでに財務省内部ではたとえば10%、15%と段階的なアップを考えているものと思われます。なぜ段階的にするかと言えば、一つは世論を意識して、もう一つは税率アップ直前の駆け込み需要が少なくとも二回見込めるからです(笑)。

Posted by ひろとも at 2005年05月07日 09:32





(10)人口問題と景気回復と税制改正

2002(平成14)年に発表された推計では、日本の人口は2006(平成18)年に1億2774万人というピークに達した後、長期の人口減少過程に入ると言われています。生産年齢(15〜64歳)の人口割合は、2000(平成12)年には68.1%だったものの、2020年には60.0%に落ち込み、逆に老年(65歳以上)の人口割合は2000年の17.4%から2020年には27.8%にまで増加するそうです(いずれも中位推計の数字です)。
いま生きている人にはほとんど関係のない話ですが、2050年には2.8人に1人が老年なんだとか(笑)。国の政策がどうのこうのという以前に年金という概念そのものが破綻するような数字です。

戦後の日本経済は一貫して右肩上がりを前提に発展してきました。私の推論ですが、これはつねに人口が増え続けることが背景としてあったのだと考えられます。
経済学についても同じことが言えるように思います。日本に限らず、世界の経済がそうした人口の増加を前提に成長し、経済学も同様に市場の拡大を前提とした理論を展開してきた。それで不況だデフレだと言って嘆いている。
でもちょっとおかしいと私は思うのです。たしかに地元の商店街は寂れてしまっている。赤字法人も増えています。しかしルイ・ヴィトンの店はつねに客であふれています。シャネル、プラダ、ティファニー然り。消費は本当に落ち込んでいるのでしょうか?いまは本当に不況なのでしょうか?私にはもう、よくわかりません。
ひとつ考えられるのは、好況とか不況とか、インフレとかデフレとか、そういった経済理論はもはや古くなっているのではないかということです。これらの理論は成長を前提としたものである。しかし、いまは縮小方向へ移りつつある。もはやかつての経済理論ではいまの経済状況は説明できないところまで来ているのではないかと思うのです。
そういう意味では、もはや不況からの脱出も、景気回復もありえないように思います。好況とか不況とか景気の回復といった経済用語そのものがもはや時代遅れの概念だからです。
じゃあ、いまを説明できる理論って何よ?しかしそう問われても、恥ずかしながら私には「わからない」としか答えられません。とても難しいです。もしそれができたらノーベル賞もらえるかもしれません(笑)。
ただ、これからは間違いなく人口が減り続け、年齢構成も変わること、したがって市場規模は縮小し、消費の性質も変化していくこと、もはや右肩上がりの幻想は捨て去るべきで、政治も経済もこれらを前提とした行動へといち早く転換することが重要……といったことがわずかに言えるに過ぎません。

あまり知られていませんが、ここ数年間、税制は景気回復をめざして減税ばかり進めてきました。
所得税の定率減税をはじめすでにお話しした証券税制や住宅ローン減税、法人税でも連結納税導入やIT減税などのほか、中小企業やベンチャー企業を優遇する措置が多くとられて来ました。でも、こうした税制もそろそろ行き詰まりを迎えているようです。
減税を行えば国民は喜びます。しかし、その表裏の関係で国の借金は確実に膨らんでいったのです。落ち込んだ税収を穴埋めするには国債の発行しかないからです。
効果があまり期待できない減税を継続するより、直接税収を増やした方がいいと考えるのも無理のないことです。近い将来間違いなく、増税はじわじわとやって来ます。
すでに2005年度の税制改正では定率減税の縮小が決定しています。政府税制調査会では、現在、2006年度の改正をめざして所得税、そして地方自治体が徴収する個人住民税の改革を議論しています。
所得税では、給料から差し引くことができる給与所得控除の縮小(給与所得控除はサラリーマンの必要経費のようなもので、これが縮小されることは増税につながります)、雇用形態の変化に即した退職所得課税の見直し(これも増税)、子育て支援のための税額控除(こっちは減税)などが検討されています。
そして、いまの政府税調では検討していませんが、福祉財源の確保を目的とした消費税の増税もいずれ進められるでしょう。
私の感情としては、サラリーマンや労働者をこれ以上いじめないでほしいです。給与所得控除の縮小よりも、いままで税金払って来なかった人から税金を取る方法を考えた方がいいのではないでしょうか?ちなみに、その一つの方法が消費税の税率アップだと私は考えています。

Posted by ひろとも at 2005年05月07日 09:34




(11)悪いのは政治家、官僚だけか?
政治家は、国の予算を公共事業や補助金といった形でばらまいてリベートを受け取り、官僚は特別会計から補助金をばらまいて、天下り先で退職金を受け取る。国の借金は時々刻々と増えて行き、返済の目途など立てないままに問題は先送りされてゆく。政治家も官僚も自らの私腹を肥やすことにのみ執心し、失政失策の責任を誰も負うことなく、そのツケはいつも増税や保険料引き上げといった形で国民に押しつけられる。もはや日本の財政は企業であれば倒産の危機にあります。

では政治家や官僚だけが悪者なのでしょうか?そんなことはないはずです。公共事業を引き受けて潤うのは民間の土建業者です。金融機関や農林水産業も国の手厚い保護を受けています。政治家や官僚、公務員でなくても、何らかの形で彼らと関わることで恩恵を受けている人はかなりの割合に上るはずです。天下りだって官僚に限ったことでなく、大企業の役員が子会社や下請けへ天下りするなんてことはザラにあります。ついでに言うなら、国家資格なんかで商売する公認会計士・税理士も同じ穴の狢です(笑)。
国家の危機を政治家や官僚のせいにするのは簡単です。でもそれを言ったら、逆説的ですが、国民が無責任になってしまいます。一時期、小泉総理は政策を丸投げしていると批判されていましたが、まともに選挙にすら行かずに自分たちのこと政治や行政に丸投げしているのは私たち国民ではありませんか?
マスコミも一般の国民ももっと政治・行政に関心を持ち、もっと勉強すべきです。無駄な公共事業、補助金ばらまきや特別会計による予算の流出など、政治や行政に文句を言うことは重要ですが、なぜいままでそのようなことが許されてきたのかも同時に考える必要があるでしょう。


(12)いま日本国民に大切なもの

現在の日本の借金は国民一人当たり1500万円を超えています。
すでに話してきたように、「貯蓄から投資へ」「高齢層から若年層へ」「直接税から間接税へ」といった税制改正などにより、ある程度の財政の健全化と経済の活性化は図れるものと思います。
それでも累積債務が残ったとき、これは、最終的に誰が払うのかと言えば、やはり国民しかいないのだと思います。「過去の政治の失策が原因なのだから、おれには関係ねえや」で済む問題ではないでしょう。借金が政治の失策だとしても、その政治家を選んだのは間違いなく国民なのです。
借金をチャラにするにしたって国債を買っているのは銀行や大企業なども含めた国民なのだから、貸したお金が返ってこないという形でつけを払うことになる。どこか他の国が援助してくれる訳でなし。驚くべき錬金術でお金が湧き出る訳でなし。最後の最後は政治家も官僚も含めた国民全員が時間をかけて返していくよりないのです。
そこで必要なのは一人一人の覚悟だと思います。いまの日本人におそらく一番足りないものかもしれません。国民の一人一人が、自分の利益だけを考えるのではなく、広い視野に立って国の行く末に関心を持ち、政治や行政に関心を持ち、厳しい目で監視を続け、あるべき方向へと導いてゆく。さまざまな面での死に物狂いの覚悟が、明日の日本にとって、ますます重要になると思います。

最後になりましたが、私は納税者の一人としてこう思いたい。
「自分が納めた税金は、必ず自分にかえってくる」と。
余計な税金を払う必要は一切ありませんが、自分にそれなりの所得があれば、またそれなりの消費をしたなら、しかるべき税金を払うのはやはり私たちに課せられた大切な責務です。そして払ったらそれで終わりというのではなく、その税金がどのように使われていくのかをしっかり見届けることが重要です。
自分にかえってくる税金は、子供が学校に通ったり、舗装道路を走ることだったり、救急車に乗せてもらうことだったり、とても小さなことかもしれませんが、相手のことを思いやり、お互いが助け合った結果としてその一部が自分にかえってくる。そう思うことが、よりよい未来をつくる原動力につながると私は信じます。

Posted by ひろとも at 2005年05月07日 09:42




文字数が多いとアップできなくて、途中でさらに分割しました。
ホントに荒らしになっちゃった(^_^;)
あとがきのようなもので終わりにします。

     *     *     *

私の言ってることは、きれいごとばかり並べた理想論だと思います。もともと人間はそんなに出来の良いものではないし、そんなに勉強熱心ではありません。ただ、実現は難しくともあるべき方向を示さなければ、船は大海をさまようばかりです。船頭多くてなかなか進まなくても目標は持っていた方が良いとの思いで考えました。
それにしても、おわりのところ、かなり「ええかっこしい」です(笑)これはいまの私の偽らざる本音です。自分の税金が無駄になるなんて考えていたら「やってらんねぇ」ですもんね。いつかは自分のためになると思えばこそ、払う気にもなろうというものです。
いろいろご批判あるかと思います。私の理解に見当違いのところがあれば、あるいは物事に対する別の観点があれば、遠慮なくご意見いただければ幸いです(岩手から戻ったばかりだと思いますので、落ち着いてからで充分です)。
たいへん長くなってしまい失礼いたしました。そして最後まで読んでくださって、どうもありがとうございました。

<参考にしたもの>
○国税庁ホームページ
(今回記載したデータのほとんどはこちらの統計資料などを利用しています)
http://www.nta.go.jp/category/toukei/tokei.htm

(税制についてはタックスアンサーがなかなか役立ちます 新米税理士のあんちょこです(爆))
http://www.taxanswer.nta.go.jp/index2.htm

○日本銀行ホームページ
(「おしえて!にちぎん」がわかりやすいです)
http://www.boj.or.jp/wakaru/wakaru_f.htm

○国立社会保障・人口問題研究所
(人口問題の統計資料はこちらです)
http://www.ipss.go.jp/

○各種ブログ
(特別会計についてはこんなブログもありました)
http://blog.digi-squad.com/archives/000603.html
http://www.hyogo-ishirenmei.jp/news/2003_07-01.html

○猪瀬直樹「日本の近代 猪瀬直樹著作集1 構造改革とはなにか 新篇 日本国の研究」2001年小学館

○日本経済新聞
「所得税制『抜本改革』を読む」2005年4月13・14日付など

○その他
ほとんどは誰でも入手できる資料を使っていますが、山本守之による東京税理士会の研修資料なども利用しました。




     *     *     *



本文は以上です。ひろともさんには、私がケチョンケチョンに(当社の顧問)税理士を批判しているにも拘らず、いつも温かいコメントをお寄せ頂いておりまして心から感謝いたしております。有り難うございました。

2005年01月21日

案内されて最初に注意すべきこと

もし、皆さんが部屋探しをしていて、不動産屋からお部屋の案内を受けたら、最初に注意しなければならないことは何だとお考えでしょうか?

安全性、日当たり、環境、水回りの使い勝手、壁の厚さ(防音性)・・・etc

全部ハズレです。

不動産屋が鍵を開けて室内に入ったなら、先ず、鼻を働かせてください。
そう、「カビの臭い」がするかどうか、です。

建物の構造や環境は後からでも分かります。臭いは、しばらくすると慣れて感じなくなってしまいます。ですから、先ず「臭い」を感知すべく鼻を働かせることが重要なのです。

室内に入った瞬間にカビ臭いようなら、それがどんなに安くて素敵な部屋であっても断った方が無難でしょう。物件によっては数ヶ月空室になっていて空気を入れ替えてなかった、ということもあるかも知れませんが、それでもカビが生えない物件はあります。

不動産屋によっては、臭うことが分かっていて、案内予定が組まれていると、家主に依頼して早めに窓を開放して準備しているケースもあります。鍵を開けて室内に入ったのに窓はしっかり開いていた、という場合は、例え臭わなくても疑ってかかってください。

あと、アパートの敷地がコンクリートか土か、でも分かりますし、コンクリートであっても半地下の物件や、敷地や道路面と床の高さが同じ、なんて物件も避けた方が良いです。

当初はリフォームしてキレイになっていても、数ヶ月すると靴や洋服までがカビ臭くなってしまう部屋もあります。家財が傷むだけでなく、健康にも大きく影響してきます。日当たりが良くてもカビが生えやすい部屋というものは有るものです。注意が必要です。

今日は短めに、ピンポイント・アドバイスでした(*^^)v

2005年01月15日

仲介手数料、正直な話 3

一昨日、昨日の続きになります。一部の悪質な業者が、本来家主の収入になるべきカネを不当に得ているとしたら、それは間違いなく入居者の暮らしに影響してくる、と言えます。家主が見込んでいる(当てにしている)収益が減収になれば、什器備品の修理交換や清掃など、家主としてのサービスの低下に繋がることも考えられるからです。

大手企業が一件に付き300%の収入が無ければやっていけないとしても、それを契約金の中から賄おうとする(借主に負わせる)ことが間違いで、別の形での企業努力が在って然りです。経営が成り立たないから、ではなく、荒稼ぎをしたいだけです。規模が違うとはいえ、現にうちは手数料50%、100%でも何とか維持できているのですから。
本来、契約金は、仲介料の1ヶ月分と保険料を除けば家主に渡すべきおカネです。

さて、ここにきて、「礼金とか更新料というものを無くしよう」、という動きが都議会でも出てくるようになりました。家主や業者にとっては、昨年10月1日から施行されている、「敷金は原則として退去時に全部返還しなさい」という条例、いわゆる「東京ルール」に続く衝撃です。これについては、特約での負担を定めることまでは禁止していないので、まだ融通が利きますが、礼金や更新料を受領できない、となると賃貸仲介管理業者にとっては致命的です。礼金を広告料という名目でバックしてもらいにくくなるし、定期的な収入も無くなるからです。今になって不動産業者の組合が、傘下の不動産政治連盟から政治資金を提供している政治家に働きかけて、躍起になって阻止しようとしていますが、私からすれば愚の骨頂です。組合は、どこまで馬鹿なんでしょう。笑ってしまいます。やってることは「贈収賄」です。

今、組合や業者がすべきことは、そんなことではありません。
不動産賃貸管理仲介業の原点に返ることです。つまり、一室ごとに適正な管理料を付けて、その管理料は家主からそのまま受領すれば良いのです。例えば、200室の管理物件があって、各2000円の管理料があれば、それだけでも月に40万の収益になります。その代わり、家主に代わって共用部分の管理などの作業は全て引き受けます。
これ以外に、新規契約や保険収入なども得られる訳ですから、楽ではないでしょうが安定した収入は得られます。もちろん、そうするためには、広告料や維持費も含めて、一度全面的に適正な家賃査定をする必要も出てくるでしょう。
何より、おカネの流れに透明性を持たせることで消費者の信頼が得られます。

これを進めるためには家主に正しく理解してもらうべく、家主を教育しなければならない訳で、どんなに大変なことであっても、政治家に働きかけて「自分たちに都合よく法改正をさせたり阻止したりする」より、遥かに建設的で有意義です。分からないように理由をくっ付けて詐欺まがいにカネを払わせるのではなく、貸主にも借主にも、ちゃんと理由を説明して理解を得られるように努力すべき、と言っているのです。

ところで、免許権者である国土交通相や都道府県知事(住宅局不動産業指導課)は、手数料について不動産業者がきちんと説明していないことも、借主が正しい説明を受けないまま負担させられていることも把握しているハズです。明らかに職務怠慢です。

かつて「フロントがアホやから野球が出来へん」と言った投手がいましたが、私からすれば「組合や監督官庁が現場を知らんから正当な仕事が出来へん」、と言いたいくらいです。以前、協会の責任者宛に手紙を送りましたが、何の返事も来ませんでした(苦笑)

私は一昨日のコラムで、「目先の利益だけでものごとを判断する人は、読んだことが裏目に出るでしょう」、と言いましたが、それについて触れておきます。もし、あなたが入居申込書を書くとして、業者から契約時の精算書をもらう時、「手数料は0.5ヶ月分でいいんですよね」、と言ったとします。それで数万安く上がることになるとお考えですか。
答えは「ノー」です。何故なら、それ以前に審査で落とされますから。

入居する前から分かったようなことを言って安く上げようとする人間は、退去時の敷金清算や本来入居者の責任に帰す支払いでもゴネる可能性が高い、と思われてしまうからです。もし、よその管理会社の物件に申込書を入れるとして、「うちのお客さんはそう言ってますが」、と言おうものなら間違いなく断られるでしょう。「安目を売る」だけ損です。
言ってることが正しいかどうか、ということとは別の問題です。

世の中、とかく「自分さえいい思いをすれば良い」という人間で溢れていますが、相手の立場に立った公正な判断力を少しだけ身につけているだけで、人生が大きく開かれることもあります。業界全体で足並みを揃える必要もありますが、「力」や「数」で自己の主張や都合を押し通そうとすれば道理が歪みます。

不動産業者だけでなく、家主も消費者も、真の意識改革が求められています。

2005年01月14日

仲介手数料、正直な話 2

仲介料は本来貸主借主が半分ずつ支払うもの、と昨日書きましたが、このテーマの結論(次コラム)に行く前に、仲介手数料を別の角度から検証してみます。

最近はどの物件の業者広告を見ても、「手数料配分、客付100%」、と謳ってあって、これは、「お客さんを案内して申し込みを入れた業者に、手数料1ヶ月分を全部あげますよ」、ということを意味しています。ところが、そうなると、客付業者は喜びますが、元付業者、つまり広告を出して入居者の募集をした管理業者には一銭も入らないことになって、広告を出した費用とか通信費、人件費などが赤字になってしまいます。

そこで元付業者は家主が受け取った礼金の中から0.5ヶ月、もしくは1ヶ月分を広告代の名目で家主からバックしてもらうことになります。実質的にはこれは元付業者の仲介手数料なのですが、その名目で受け取ると、手数料の上限を定めた業法に違反したことになりますので、広告料などの名目で受け取ります。実際に、空室があると、当社の場合では決まるまでほぼ毎月広告を打ち続けるので、半年も空いていたら例え決まっても利益が出ないか赤字になります。それでも管理を続けるのは、管理を続けていれば一定の更新料収入なども見込めるからです。

家主や業者はそれで良いとして、借主の立場に立つとどうでしょう、それでは納得がいきませんよね。実質的に広告代まで払わされていることになる、と考えられますから。

私の話をここで止めてしまったら、明日以降、日本中の不動産屋でトラブルが起きることになりますので、もう少し説明を続けます(*^^)v
で、ここからが重要です。理解して頂けるかどうか不明ですし、賭けでもありますが。

もし、ここまで読んで、「冗談じゃない、じゃあ余計なカネまで出さされてたってことかよ!だったらこれからはもう払わないよ!」、と考えるなら、それは浅慮の極みです。

アパート経営にもお金が掛かります。アパートを建てて維持管理をするために、年間にどれだけの費用が必要なのかは経験上容易に計算することができます。当然、それらは家賃収入だけで賄われるべきものです。家主が会社勤めをしているからといって、ボーナスで不足分を補填するような話ではありません。広告代を家主が負担するとするなら、当然に家賃もその分を見越して値上げすることになります。全体で必要な額は概ね分かっているのですから、あとは適正に収支の調整をするだけの話です。

「そんなのは家主が負担すべきもの」、と言えば全くその通りですが、家主が身銭を切ってすべきものでもありません。当然に全体の経費に含まれるものです。

さて、手数料は元付客付0.5ヶ月ずつと法律で決まっているなら、不動産業者は厳格に法に従って経営するのが当たり前です。ところがそうすると、不動産業者はバタバタと倒産していくか、口実を作って根拠の無いカネを借主から取るようになります。今、「当社は手数料0.5ヶ月のみ」と言っている業者のほとんどは、一件の契約で、名目を付けて200??300%の手数料を手にしていた会社です。今はそこから0.5ヶ月分利益が減っただけです。うちの家主さんにも、「礼金は不動産屋への謝礼で、更新料は全部が不動産屋の手数料」だと思わされていて、挙句に広告代まで払わされていた人がいます。当時、礼金は2ヶ月が相場でしたから、その大手業者は一件契約すると400%もの手数料を得ることになります。上限100%のハズなのに、です。
それが今になって、「当社は手数料は0.5ヶ月・・・」、ふざけるな!、です。

本来、業者が手数料を100%独り占め出来るのは、自社の管理物件に直接お客さんを付けられた時だけです。ですが、10年前に比べて貸室件数は何と倍にもなっていて、どの業者も自己の管理物件に早く客付けすることに汲々としていて、手数料折半の物件など案内してくれるハズもありません。折半でも100%でも手間は同じですから。

手数料だけではありません、最近はなんと、「担当者ボーナス1ヶ月進呈」とか、「当初2ヶ月間家賃不要」などという物件まで現れる始末で、もはや「何でもアリ」の様相を呈しています。ここまでくると、ビジネスとはとても言えない歪んだ状況です。

違法性があっても、客付手数料100%で広告を出して、自社は別の名目で貸主からバックしてもらわざるを得ない事情がここにあります。ですが、いつまでもそんなことばかりしているようでは業界の健全な発展は望めませんし、消費者の信頼も得られません。

では、貸主、借主、業者は、どうしたらよいのでしょうか、どうすべきなのでしょうか。
少なくとも、自分の立場での損得に執着していたなら何の解決も見られないでしょう。

今日のコラムの内容は、一見すると、業者と家主だけが知っていればいいこと、のように思えますが、けっしてそんなことはありません。

私なりの意見(提案)も有りますので、それはまた後日書かせて頂きます。

2005年01月13日

仲介手数料、正直な話

始めにお断りしておきますが、今日の話は表面だけで理解することは危険です。
目先の利益だけでものごとを判断する人は、読んだことが裏目に出るでしょう。



賃貸の部屋探しをして、いい部屋が見つかると、申込書を入れて、審査が通ればいよいよ契約、という段取りになります。今日は、お支払い頂く仲介料についてお話します。

さて、不動産屋が受け取ることが出来る手数料は宅建業法上、貸主、借主から0.5ヶ月分ずつ、合計で1ヶ月分ということになっていますが、現行では借主だけが負担させられているのが実情です。法律では折半となっていますが、特例として、「借主が了解した場合のみ1ヶ月分全部を借主から受け取ってよい」、とされているからです。

契約前には「重要事項」の説明があって、要するに、どういう物件をどういう条件でお貸しするのか、正しくご理解頂いたうえで契約することになるのですが、その「重要事項説明書」の一番最後に、「以上の内容を理解した上で仲介手数料1ヶ月分を支払うことを了解します」、とあって、そこに署名捺印を貰うことで「了解を得た」、と見なしていますが、これは大変なマヤカシ、つまりインチキです。

お客様のほとんどは、そういう法律になっていることを知りません。申込書を書いて、契約時に必要な金額が書かれた精算書を貰うと、既に仲介手数料1ヶ月○○○円、となっています。それで何の疑問も無く「そういうもの」だと思ってしまうでしょう。

「知らない」、ということと、「理解して了解した」、ということは違います。

本来ならば、「法律上、手数料の半分は貸主さんが出すことになっていますが、貸主さんが手数料を出してくれることはまずありません。そうすると不動産屋は食べていくことが出来ません。申し訳ありませんが借主さんに1ヶ月分の負担をお願いしたいのですが、いかがなものでしょうか」、と伺って、「ああ、けっこうですよ」、と仰って頂くことが「了解した」、ということであって、知らずに払わされるのとは全く意味が違います。

では、その通りに正直に説明して払ってくれる借主さんがどれだけいるでしょうか。
信じられないことかも知れませんが、実は、全員が払ってくれます^_^;
私はちゃんと説明して、拒絶されたり渋られたことは本当に一度もありません。とは言っても、理解して了解した訳ではなく、「まあ、仕方ないか」くらいのお気持ちでしょう。

ですが、最近はその説明をしていません。駐車場を借りた若い夫婦に、いつも通り手数料の説明をすると、快く「ああ、いいですよ、それくらい」、と言っていたのですが、1年ほどして「今週末で解約するから保証金は全額返してもらいたい」、と連絡してきたので、「解約予告は1ヶ月前という規約になっているので1ヶ月先までの日割り賃料が発生しますから、その分を差し引いてお返しすることになります」、と言うと、「だったら、不動産屋に騙されて手数料を1ヶ月分払わされた、と都庁に訴えてやるけど、それでもいいのか」、とのこと。ちゃんと説明して了解を貰っていても、たった5千円でソレです。その女房も一緒になって「家主にもオタクのことを悪徳業者だと電話してやるから」などと電話をしてきて閉口しました。法律に則ってちゃんと説明していても、借主が「聞いた覚えが無い」、と言えばそれまでで、業者の言い分は通らないものです。で、止めました。
法律の主旨に則って正しく説明して後で逆手に取られるなら説明などしません。

30年ほど前に仲介料に関する法律の改正があった時に、「借主が了解すれば」などという特例を付けたことがそもそもの間違いで、それは、「貸主も負担して欲しい」、という話をすると貸主がいい顔をしないのが分かっているから、業界が、「家主を教育するより借主に負担させた方が楽」、という判断をして政治家に陳情したからに他なりません。

抜け穴ばかりで「仏作って魂入れず」では、かえって自分の首を締めることになります。今になって、かつて業法違反で業務停止処分を受けた会社の掌返したような「当社は手数料は0.5ヶ月分しか頂きません」、などという広告に戦々恐々としているなら、最初からルールを厳格に遵守していれば良かった訳で、この業界は遅れています。

では、これから不動産屋で申し込みする時に、「手数料は0.5ヶ月分でいいんですよね」、と言えば、その分、得するのか、と言うと、必ずしもそうではありません。
このコラムの冒頭の警告は、この後、意味を持ちます。

それもまた、(なるだけ早い)別の機会に!

2005年01月10日

「礼金 0、敷金 0」

これから3月末くらいまで、単身者向け賃貸アパート、マンション需要のピークを迎えます。最近よく見かけるTV??CMで気になる点についてお話してみます。

「礼金 0、敷金 0」の部屋は本当に借り得か、ということです。
率直に言いますと、借りる期間によります

礼金も敷金も掛からなければ、契約時の初期費用は、仲介料(消費税別途)と保険料と前家賃だけ、ということになります。もし、首都圏では標準的な、礼1、敷2、の部屋を借りるのと比べれば、3ヶ月分は少なくて済むことになりますが、果たして本当にそうなるのでしょうか。貸主の立場に立って考えてみてください。最近は家賃を滞納したり、部屋を荒らす入居者が多くなっています。「礼金 0、敷金 0」で貸したなら、滞納が始まればそこから即赤字ということになります。とても恐くて貸せるものではありません。貸す側は「何か担保する方法」を必ず考えることになります。そこが問題です。

いくら「借り手市場」で、空いてるよりマシ、と言っても、アパート経営も立派な事業です。赤字で経営するならただのボランティアです。では、どうするか・・・、

家賃を高めに設定します

つまり、通常6万が相場の部屋であれば、65000円、といった具合です。
5千円高くすれば2年で12万、つまり2ヶ月分の差益が出ます。それを、本来なら受け取っていた筈の礼金、敷金の穴埋めにします。元々、家賃相場というのは、厳格に「この内容ならいくら」、と決まっているものではなく幅があるものですから、その程度の差なら、「何となく高いような気もするけど、まあそんなものか」、くらいの感覚でしょう。

これを具体的に計算すれば、契約時に必要な金額合計は下記になります。

標準的な「礼1、敷2」で家賃が6万で月初めから借りるとすると、
4ヶ月+税込仲介料63000円+住宅総合保険(平均15000円)=318000円

「礼金 0、敷金 0」で家賃が65000円になった場合、同じく月初めから借りて、
家賃+税込仲介料+住宅総合保険(平均15000円)=148250円

差額は169750円となり、契約時費用は半額以下になって初期負担は軽くなりますが、3年入居すれば通算負担額は逆転することになります。「礼金 0、敷金 0」であっても、貸主からすれば、2年入居してもらえれば従前と変わりなく、借主からすれば、更新をしないのであれば損はありません。例のように「5千円アップ」と決まっている訳ではありませんが、もし学生さんが大学生活4年間を同じアパートで暮らすなら、若干の負担増になるくらいの話でしょう。

初期費用の負担が軽いことを考えれば、トントン、行って来い、ということになります。
例えば今まで6万で貸していた部屋を、家賃据え置きのまま「礼金 0、敷金 0」にすることは、常識的に考えて「出来ない相談」です。新築であれば最初から家賃を相場より高めに設定します。世の中には必ず表裏が有ります。あなたが家主だとして、アパート経営のリスクを全部自分で負うことが出来るでしょうか。

このカラクリには別の側面も有りますが、それは別の機会に。