マル暴専門の弁護士さんから「こと取立てに関しては、貴方は我々弁護士より腕がいいですね」と褒めて頂いたこともある私だが・・・、
その私が「これは、さすがに無理」と思える取立てを依頼された。
依頼したのは当社の管理物件の家主さん。近場に2棟のアパートをお持ちで、A棟を当社で、B棟を大手のエイ◎ルで管理している。
滞納者はB棟に入居しているK一家。平成11年から入居していて、当初から家賃が滞りがちで、その都度エイ◎ルに連絡して督促を依頼していたが一向に埒が明かず、何故か更新契約もしないまま10年経ってしまったと言う。まあ、大手は担当者がコロコロ代わるし。
たまたまA棟の入居者の更新契約書に記名捺印を頂くために訪れた私に、家主さんは切り出しにくそうに話を持ち出した。
過去10年の入金記録を見せながら、「呆れられちゃうだろうけどさ、こんなになっちゃってんだよ。どうしたもんかねえ・・・」、と言う。
どれどれ、と手書きの書類を見て「ああ21万8千円ですか・・・、ン?違いますね。なに、これ、2182000円じゃないですか」、と「0」の数を確認しながら訊くと、「そうなんだよ・・・」と声を落とす。
家主さんは人柄が滅法いい。気の毒だから、と言いそびれているうちに桁外れの滞納額になってしまったようだ。当社の管理物件でなくても、どうしてもっと早く相談してくれなかったのか、と悔まれる。
と言うか、家主さん、「余裕ありすぎ」である。それだけ滞納されていてケロッとしているのだから。当社に管理が替わる前のアパートや貸家などにも滞納者は何人もいるようだが、「少しずつでも頑張って入れてくれてんだし・・・」、と督促は積極的にはしていない。
私はハッキリ申し上げた。「この入居者、このまま入れておいても滞納は膨らむばかりでしょう。218万は諦めて直ぐ(と言っても3ヶ月ほどの猶予を与えて)出ていってもらうか、毎月必ず家賃に少し上乗せして払わせるかですが、毎月2万上乗せしてもらっても100ヶ月以上かかります。気が遠くなる話ですし、それは無理でしょうね」
100ヶ月・・・、その頃には火星に人類が降り立っているかも

実は、入居時に立ててもらった連帯保証人である実父は既に亡くなっていて、それもエイ◎ルには伝えたのに新たな連帯保証人を立てさせることもしなかったとか。明らかに「すべき業務の怠慢」である。
今まで、私が取立てを依頼されて受けた最高額は「
このケース」で、それも相談を受けた時には140万だった。その後、立ち退きまでに200万近くにもなっているが、それでも、150万は回収できている。ただし、ワケあって(上記過去ログ参照)、その後は判らない。
次いで120万で、そちらは予定通り全額取り立てに成功している。「アンタ、平気な顔してキツイこと言うね」、と言われながらも^_^;
で、今回のケース、残念ながら取立ては難しいだろう。何故なら、
会社に戻って入居者に電話してみると未就学児らしき子供が出たのだが・・・、「お父さんかお母さんに代わってください」と言うと、何やら喋りながらガチャンと切られてしまった。もう一度電話すると母親が出たので、人柄を探るべく、名乗った後で、こう言ってみた。
「今さっき電話しましたが、お子さんが出て切られちゃって・・・」
すると、ふつうなら「あ、すみませんでした」と言いそうなものだが「何でしょう?」と無愛想に訊く。それで、「家主さんから委託を受けている業者なんですけど、お家賃の件です。奥様は滞納額がどれくらいになっているかご存知ですか?」と訊くと、「主人がちゃんと払っていると思います(だから無いハズ)」と言う。ならば、と率直に滞納額が218万にもなっていることを話したのだが、とくに驚かない。ということは、全く知らなかった、ということはないだろう。
だいたいが、一緒に暮らしていれば、いくら「家賃は旦那が払うことになっている」と言っても、払っているかいないかは気配で判る。
私は、その滞納者、「払えなくて払わないのではない」、と見た。子供が元気で明るすぎる。自分たちは「食うものは食っている」のだ。
「主人が毎月少しずつ返しているんじゃないんですか?」と惚けるんで、「この3ヶ月は6万4千円の家賃に対して7万払ってもらっていますが、例え毎月2万ずつ上乗せしても100ヶ月以上かかります。それでは追いつきませんよね。今後どうするか相談する必要がありますので、なるだけ早い機会に当社までお越しください」、と伝えた。
旦那は家主さんの督促に「その場凌ぎの言い訳」をしているとのことで、旦那も旦那だが、まあ、女房のほうも「相当な玉」である。
私が「無理」だと思う理由、ハートも責任感も無いから、である。
言葉や様子から「ご迷惑をお掛けしています」「申し訳ありません」という気持ちが全く伝わってこないのだ。家主さんの「人がいい」のに乗じているようにも取れる。それは少なからずあるだろう。
全く払ってこない、のでなく、少しずつ払ってきて結局は滞納が嵩んでいく、というのが一番まずいパターンでもあるし、本当に難しい。
だが、かっこイイことを言うようだが、賃貸管理をしていて「私にしか出来ない仕事」「他の誰にも真似できない仕事」というものがある。
先日退去したA棟の入居者も36万滞納しているが、そちらは私が確実に回収するつもりだし、間違いなく出来る。余裕で出来る(*^^)v
家主さんの依頼は困難、と判っているが、最善を尽くして、家主さんに「大手より、ちっちゃい不動産屋のほうがいいな」、と言わせたい。
posted by poohpapa at 05:14|
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嫌な客
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