先日、某住宅メーカーのアフターメンテナンス担当部署の女子社員から電話があった。当社で管理している貸家の修理を依頼して、修繕が完了したのだが、「家主さんに代金を請求したところ、支払いを拒否されたので、
管理会社であるオタクが払ってほしい」という用件であった。???である。
当該物件は築9年弱で、まだ新しいしキレイである。半年ほど空いていたがようやく入居者が決まり、引っ越してきた直後から、洗面所や風呂のシャワーの水漏れ、台所の水栓の不具合等々次々と出てきて、入居者から「一つ直せばまた一つ」といった具合に当社に連絡が入る。もちろん、それは仕方ないとは思う。その都度家主さんに連絡し「保証期間が過ぎていますので有料になるのですが」と了解を頂いていたのだが、さすがに5件目の修理依頼の連絡が入った時には、仕方ないと頭では解かっていても、「かんべんしてよ、家主さんにどう説明したらいいんだよ」と私も思ったものである。
家主さんに電話するとご主人が出た。謝る私にご主人は、「しかたないですよ、気にしないでください」と仰ってくださってホッとしていたのだが、住宅メーカーからの電話には奥様が出たようだ。
それで、拒否をなさったのだが、気持ちはよく解かる。これが5箇所一度に修繕を依頼されたなら「まあそういう時期にきていたんだろ」と思えなくもないが、「終わった」と思えば「また一つ」では、「なんだよ、嫌がらせかよ」と私も思ったくらいだから。
入居者がいて毎日の生活で水周りを使用していれば、かえって不具合は発生しなかったのかも知れない。そういう意味では私も少なからず責任は感じている。もちろん、建物の造りが悪いワケでもない。数ある大手住宅メーカーの中で私は最も信用している。
修理代は全部で6万3千円あまり。家主さんはご夫妻とも大変な人格者であるし、ケチでもない。以前、その家主さんのお宅を訪問していた時に、都内の業者から別の物件で「礼金を上乗せさせてもらえないか」と携帯に問い合わせがあった際、それだと客付け業者の手数料が実質200%になると聞いて、「向こうだけ200%取るなんておかしいじゃない。だったら、うちの貸家でそんな話になったら私が上乗せしてあげるわよ」と仰ってくださったくらいである。
とても温厚な方なので、たまたま虫の居所が悪かった、ということでもないだろう。おそらくは、そんなに何箇所も一時期に具合が悪くなるものか納得できていなかったのではないだろうか。
住宅メーカーの女子社員は、家主さんから支払いを拒否されて上司に相談したに違いない。その結果が「修理を依頼してきた管理会社に支払ってもらいなさい」だったものか。家主さんも「何が何でも払わない」と言ったのでないと思う。家主さんの人柄を知らない女子社員が慌ててしまったんだろうが、そういうことで管理会社が責任を取らされることになるなら、今後修理の取次ぎなど出来ない。
家主さんは事の顛末を私に連絡してこなかった。理由は解かっている。私に話せば、私が気にすることになって迷惑(面倒)をかける、と思ったからであろう。一旦は支払いを拒否しておいて、メーカーに「そちらの落ち度があるかも知れないでしょう」と意思表示しておいて、少し間を空けて支払ってくださるのも解かっている。長い付き合いだから私も家主さんの人柄をよく知っているし、家主さんもまた私の行動パターンを熟知していらっしゃるのだ。
私は、この家主さんの件ではないが、リフォーム代の支払いを滞らせていた家主さんに代わって業者に立替払いしていたこともあるし、その時に比べれば金額も可愛いものだから、家主さんにご納得頂けるまでの間くらい立替払いするという選択肢もある。
だが、今回のケースでは、
明らかに順番が違うだろう。
「家主さんの支払い拒否」⇒即「不動産屋に請求」というのでは、
自分たちですべき大事な作業が欠落しているではないか。家主さんが何故「支払いをしない」と言っているのかちゃんと伺って、丁寧に説明して、それでも支払いがなされない場合に初めて当社に「いかがしたものでしょうか?」と相談してくるのが正しい手順だと思う。相談もなく「払ってくれ」では大人の仕事ではない。
「それって、私に法的な支払い義務はありますか?」と訊くと女子社員は「法的には解かりませんが当社も職人を使っているので・・・」と言う。それだと「うちも苦しいから誰かに払ってもらわないと」になる。それで、「
ふざけるんじゃない!」と一喝した。
私は不思議に思った。その女子社員、私に一喝されてもべつに怖がらないし、度胸がいいのか、よく訓練されているのか私には解からないが、叱られたら少しは怖がってくれないと、こっちはやりにくい。
これ、女子社員が家主さんに電話して、家主さんが「支払えない」と言った際、何か「気が利かないこと」を言ってしまっていたのでは、と思う。仮に家主さんから拒否されても、「たしかに、同時期に何箇所も、それも立て続けに修繕箇所が出てきたのでは◎◎様でなくてもご納得し難いものがあるかと存じます。経年変化などの事情があったとしてもご理解頂くことは難しいものでしょう。宜しければ一つ一つについて、どこがご納得頂けないかご指摘頂ければ上司ともよく相談いたしまして施主様のご意向に沿ってご検討申し上げます」くらいに言えればまるで違ってきたと思う。もちろん、女子社員は家主さんの人柄を知らないから、逆効果になる可能性も考えたら危なくてそんなこと言えないものだろうけど。
家主さんにお支払い頂く一番手っ取り早い方法は、「私がお支払いしておきますので結構ですよ」と私が言うことだが、それでは
家主さんの信用も住宅メーカーの信用も互いに両方傷つけてしまうことになる。相手がこの家主さんなら、それくらいの額、私が弁償したって本当にちっとも惜しくはないのだが、それは避けたい。
私としても、今後何かで不具合が出た時に気持ちよく直ぐ飛んで行ってもらいたいし、何より、そんなことで家主さんの人間性を疑われたりしたならもっと辛い。電話を代わった上司には「私から上手く話をするから」と今月一杯時間を頂いた。べつに難しいことではない。タイミングを見て私から電話一本入れるだけで解決する。もっと言うなら、電話など入れなくても解決するのだ。
そして、家主さんが住宅メーカーに対して言いたかったこと、私に吐露して頂こうと思う。それが一番良い解決方法だと思う。いや、私に対しても言いたいことがあるに違いない。ちゃんとお伺いしよう。
それにしても、皆、何故そんなふうに結論を急ぐんだろう・・・。
久しぶりに啖呵を切ったが、相手が女子社員だから後味が悪い

正直、もう少し穏やかに話してあげれば良かったかな、と反省もしているが、ここんとこ仕事でいろんなトラブルに見舞われている。当たられたほうからすれば堪ったもんじゃないだろうが、人間、ほんの些細な出来事や気持ちのありようで、同じことを言われたりされたりしても、何とも思わなかったり激怒したりする。相手は若いから、そこまでの理解を求めるのは無理だったろうが、「率直過ぎる要求」に私もスイッチが入ってしまった。私もまだまだ青いのかも