そういう話ならば(方向音痴ではあるが)私もいちおうプロ、「どうしました?」と声を掛けた。お母さんが「コーポ〇〇というアパートを探しているのですが・・・」と言う。地図を見せてもらうと実に大雑把なもので目標物などほとんど書かれていない。そんな地図では他県の人が探し当てるのは困難なもの。
だが、一つだけ見覚えがある建物が有った。Dホームが管理するアパートである。そこを中心に考えれば場所は直ぐ見当が付く。あとちょっとで我が家ではあったが、不動産屋だと伝えて案内することにした。母親から離れて探しに行っていた息子さんが戻ってきたので、車に同乗して案内することにしたのだが、道が狭くて角が曲がれないのと一方通行が多いのとで目標物はすぐそこなのに辿り着けない。
すると、車を停めて配達中のクロネコヤマトのお兄さんが「そのアパートなら、このすぐ裏ですよ」と教えてくれたが、そんなことは分かっている。こっちは車で行けなくて難儀しているのだ。と、内心ムッときていたら、「車で行くなら、その角を曲がって、コインランドリーの前の公園の角を曲がると空き地があって、今の時間はそこに車が停められます。私に付いてきてください」と丁寧に言って走り出した。
大回りしたからけっこうな距離である。仕事中だし蒸し暑いのに、ずっと走って先導してくれた。空き地に車を停めさせると、更にそこからアパートまで案内してくれたのだ。たしかに、不動産屋より宅配業者のほうがその地域の建物のことはよく知っていて当たり前か・・・
「知らない土地で親切を受けて凄く嬉しいです」とお母さんは仰るが、お礼を言うべき相手は私ではない。もちろん、クロネコのお兄さんにもお礼を言ったが、向こうは仕事中、早々に立ち去った。
その場から、お兄さんが車を停めていた場所まで戻って私からも再度お礼を言おうと思ったのだが、もう車は停まっていなかった・・・。宅急便のお兄さん、いい働きをするなあ・・・、と感心した。
明日、ヤマト運輸に電話して事の経緯を話し、謝意を伝えさせて頂こう。
ところで、昨晩は息子さんが借りた部屋に少しだけ荷物を運びに成田から来たとのことで、その後で直ぐに帰るらしい。物件は、我々の仲間内では悪評高い大手業者からゼロゼロ物件として紹介を受けて契約しているが、訊けば契約内容の中身(とくに退去時の特約条項)には危ない点は無さそうで安堵した。
(自分は契約等に絡んでいなくても)地理不案内の人を案内するのも不動産屋の職責だと思っている。まあ、私はあまり役に立っていなくて、本当にお役に立ったのは宅急便のお兄さんではあるのだが・・・
このお母さんと、うちの町で新生活を始める息子さんが、うちの町を好きになってくれたら嬉しい。

