奥様のお母様は本当に「お嬢様」のご出身で人を疑うことを知らず、困っている人がいると自分の損得は考えず「助けて差し上げよう」と考えてしまう人で、よって常に「お母様から援助を引き出したい人」が周りに溢れることになる。もちろん、資産家である。
このままでは、「いつか全財産が消えて無くなってしまう」とのことで、今回、娘さん夫妻がお母さんと同居することになった。
引越しの前にご挨拶に寄ってくださった際、私はこう持ちかけた。
「私も、これから独立するのでお金が要ります。引越し立会いの時にお母様もおみえになるなら、お母様を騙して300万円ほど援助を引き出したいので、一緒に協力して頂けませんか?」、と。
で、昨日、立会いに行くと、噂に聞いていたお母様もいらっしゃった。
一言で言えば、「物凄く可愛い女性」である。あれほど気品が漂っている女性を久しぶりに見た。悪意が全く感じられない「天使」のような人である。その「天使」を、これから騙そうというのである(*^^)v
一通り立会いのチェックを済ませた後、いよいよ詐欺の実行に移っていった。もちろん、ターゲット以外の3人全員が仕掛け人である

私がさも具合が悪そうに「いえね、私もついに臓器の移植を受けないといけないんですよ。このままでは長く生きられないみたいで・・・」と言うと、何の疑いもなく心配そうに「それは大変ですわね」とお顔を曇らせる。「ええ、手術はアメリカで受けることになるので、渡航費用だけでも何やかやで300万はかかるんですが、自分ではその費用が捻出できないので、移植は諦めないといけないかな、と思っていまして・・・」、と私も更に暗い口調で続けると・・・、
前もって話してあったのに、娘さんご夫妻も真顔で「ああ、そうだったんですか・・・?」、と心配そうに私の顔を覗き込む。
「オイ、皆で騙そうと打ち合わせしていたのに、信じてどうする!」
との心の声を飲み込んで更に続けようと思ったが、娘さんご夫妻も私の話を信じてしまってるから、それでは最早冗談じゃなくなってしまうので、ここでタネ明かしすることに。4人で大笑いしたが、あれではどんなセールスが訪問しても全部お買い上げになるに違いない。
そのお母様、私の現状を娘さんから伺っていらっしゃったのであろうか、私に、「これ、お守りね」と仰って、高幡不動尊の「厄除け開運」ストラップをくださった。私は、その善意の塊のようなお母様を詐欺に引っ掛けて大金を騙し取ろうとしたのである(爆)
詐欺は未遂に終わったが、今は、そういう「ちょっとした心遣い」が何より嬉しい。頂いた「お守り」は常に身に着けていたい、と思う。