一昨日、宅建組合の研修に参加した。
二部構成で、一部は深沢綜合法律事務所の高川佳子弁護士による「更新料支払い特約の効力」「最高裁平成23年3月24日敷引契約有効判決」「取立行為の規制等に関する法律案について」、そして二部のテーマである「賃貸住宅管理業者登録規定(案)要約」についても高川弁護士から解説があった。二部の講師である国土交通省の課長補佐に配慮して、講師が会場に到着する前に冒頭で、である。国土交通省の役人の前では言いにくい話でもあるので・・・。
高川弁護士の講演は、各地で行われている各種裁判の判決が及ぼす影響や問題点、業者が陥りやすい錯誤、今後とるべき対応などについて、理路整然としていて実に解かりやすい解説だった。
で、問題は第二部の「賃貸住宅管理業者登録規定(案)要約」である。講師は事前に配布した資料を読み上げるだけ。いくら詳細がまだ明確に決まっていないとしてもアレは無い。あんな内容ならわざわざ国土交通省から来てくれなくても、資料だけ渡して「後で目を通しといて」で終わる。しかも、案そのものの中身もお粗末だし。
渡されたパンフレットによれば、「賃貸住宅管理業務に関して一定のルールを設けることで、借主と貸主の利益保護を図ります。また登録時業者を公表することにより、消費者は管理業者や物件選択の判断材料として活用することが可能です」とあって、一見すると「とても良い制度」に思えるが、とんでもない代物である。
先ず、業者が登録をすると、業者の情報は消費者に丸裸にされることになる。そりゃあ、お客さんからすれば(社長以下全社員の個人情報、収益、管理実績、管理物件の内容等)全て知り得ることになるし何の問題もないだろうが、業者からすれば堪らない。中には、一棟のアパートの中でも賃料に差があるケースもあって、それなりに事情もあったりするから、そこからトラブルに発展する可能性もある。そもそも、部屋探しに必要ない情報まで公開するのはおかしな話である。登録しているから信用できる業者、してないから信用おけない業者、と判断されかねない。いや、むしろ、国土交通省は「それが嫌なら登録すればよい」と言ってるに等しい。
さらに、いろんな報告義務が課せられる。それらの大半は、今まで不動産業者が宅建業法に則って日頃から行っているもので、改めて余計な項目を増やされて意味の無い仕事が加わるだけの内容。
信頼関係の向上、と言うが、お客さんがそういうデータを閲覧しないなら、今までと何も変わらない。業者にとって唯一のメリット「信頼関係の向上」には一切繋がらない。なので「残るはデメリットのみ」ということになる。行く行くは登録を任意から義務化にする腹だろうが、現実が何も解かっていない。
この制度には「家主」も「客」も有るが「業者」は無い、とハナから透けて見えている。
課長補佐は「いろいろトラブルが増えてきているので・・・」と言うが、一部の悪質な業者がいることで普通に堅実に営業している業者が迷惑を被る典型である。悪い業者だけを取り締まればいいのであって、
それが困難だから全部に網を掛けてしまおう、という了見である。当然に網の中を選別することもしない。要は、一番楽な方法である。ミソもクソも一緒にしているだけなのだ。
更に、こんな危惧もある。登録業者の業務内容が公開されることによって消費者からは当然に「多くの管理物件を持っている大手業者が『より信頼される』ことになり、小規模な不動産業者は、それだけで信頼が得られなくなる可能性がある」ということだ。大手が良心的で信頼できるとは限らないし、小さな業者には小さな業者なりの良さがあるのだが、そんなことは公開される数字からは判らない。「常に営業成績のイイ奴が人柄もイイとは限らない」のと似ている。
最後の質問コーナーで、私の「これらの内容は宅建業法と大半がダブっているのに、なぜ業法の改正で対応しなかったのか?」との質問に、明確な回答は返ってこなかった。この夏にもスタートしようという制度なのに「まだ明細が固まっておりませんので」と答えるのみで、それでいて「ご理解とご協力を・・・」と言う??。その課長補佐、講師として来るならもう少し勉強してから来て欲しい。
最後に私が「この会場に来るまでは私も『登録しよう』と思ってましたけど、アナタの説明を聞いて止めることにしました」と言うと、会場からは拍手が起こった。正直、自分でも「ここまで言うのはどうか・・・」と思っていたが、同じ思いのお仲間さんがいてくれてホッとした。さらに、終了後に研修委員長と話していると、女性の参加者が寄ってきて、「先ほど質問してくださったのはあなたですか?」と訊くので、「はい、そうですが」と答えると、「有り難うございました」とお礼まで言われた。それは凄く嬉しかった。
ああいう場で意見を言うのは勇気が要る。何と言っても相手が相手だし・・・。でも、思い切って言って良かった、と思う。率直に言って、他の会員業者さんは、良く言えば「皆、私より大人」であるが、悪く言えば「皆、他力本願」である。だが、それは仕方ないとは思う。ただ、
どんな場合でも「自身の明確な考えや意思を持つこと」、そして「時にそれを自ら発信すること」というのは必要なことではなかろうか。とくに今回のケースは我々にとっては死活問題でもあるのだし。
帰りがけに支部長(当然に支部で一番偉い人)から呼び止められて立ち話をさせて頂いたのだが、同じようにお考えでいらっしゃることが分かった。私はてっきり「君、いくらなんでもアレは言いすぎだよ」とのお叱りを受けるかとドキッとしたが・・・^_^;
支部長ご自身の会社は「こういう制度」で影響を受けるような小さな会社ではない。だが、小規模な会員業者にも充分に配慮してくださっているのが伝わってきて、それは本当に有り難いことである。
他の業者さんのご判断は分からない。だが、私は登録しないつもりでいる。少なくとも、将来的に義務化されるまでは・・・。
posted by poohpapa at 05:58|
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